1992 年 40 巻 2 号 p. 139-144
生態学的な知見の乏しいメバルについて, 播磨灘南部沿岸海域を調査地区に選定して, その食性および成熟に関する研究を行なった。
メバルは甲殻類, 頭足類, 多毛類, 魚類などを摂餌するが, その選択性の幅はかなり狭く, 特定の餌料に強い嗜好性があることが明らかとなった。特に, アミ類, エビ類, 魚類などの浮遊性あるいは遊泳性生物をよく摂餌しているようであり, これはメバルの生活域が海底面からやや離れていることを示唆する事実と思われた。摂餌量指数は, 空胃個体が非常に多かったため, その平均値は0.143と, 非常に低い値となった。このことから, メバルはあまり頻繁に餌を摂らないという種としての特性を持っていることが推察された。
生殖腺指数 (GSI) の時期的な変動をみると, 雄では10月から11月にかけてGSI値が最大となり, 雌では雄より約1ケ月遅れて11月から12月にかけてGSI値が最大となった。GSIの変動より, 10月から12月にかけて交尾が行なわれ, 11月から1刀にかけて産仔が行なわれているものと推定され, これは他の数海域におけるメバルの成熟期とかなり共通していた。性比は, 周年を通じて大きな変化はなく, ほぼ1: 1であった。