水産増殖
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コウライエビに対する肝膵臓パルボ様ウイルスの病原性について
孫 修勤楠田 理一
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キーワード: コウライエビ, HPV, 病原性
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1997 年 45 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

コウライエビに対するHPVの疾病再現性と病原性を確認するために, 本ウイルスに感染した病エビの肝膵臓のホモジネートろ過液を用いて, Z-3とP-7幼生に対しては浸漬法によって, 成エビに対しては経口法によって, 実験的感染を行った。その結果, いずれも自然発病した病エビと肉眼的ならびに病理組織学的症状を示して死亡した。接種方法が異なるものの, 病変の発現はZ-3幼生では2日後に, P-7幼生および成エビでは3日後に, 前中腸粘膜または肝膵臓の上皮細胞の核の肥大が認められた。このように発病の早さには多少の差はあるものの, 本症では感染して2~3日後から病変が発現するものと思われる。感染実験による死亡率の推移を調べた結果, 死亡率はZ-3が最も高く, 次いでP-7, 成エビの順となった。HPVに感染したエビでは, 肉眼的に遊泳の異常や食欲の減退などの自然発病エビと同様な症状が認められた。病理組織学的には, 肝膵臓上皮細胞あるいは前中腸粘膜上皮細胞の核内に好塩基性または好酸性の封入体が認められた。電子顕微鏡による観察では, 封入体内に自然発病エビと同様の22~24nmの円形ないしは卵円形のウイルス粒子が観察された。これらのことから, HPVはコウライエビのゾエア期以降の稚エビおよび成エビに病原性を示すこと, そして, コウライエビのへい死原因となることが明らかになった。

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