水産増殖
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トリパンブルーおよびトリパンレッド標識法によるミナミヌマエビの遡上生態の観察
丹羽 信彰横山 達也
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1997 年 45 巻 4 号 p. 437-443

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抄録

兵庫県夢前川水系菅生川の菅生ダムより1.3km下流付近において, 陸封性であるミナミヌマエビに生体染色剤Trypan BlueおよびTrypan Redの注射法による標識放流を初めて応用し, 遡上性を見い出した。1995年6月1~4日に511個体にT.R.を, 8月16~20日に546個体にT.B.を標識放流した。放流地点より遡上したエビは16個体で, このうち最も遡上した個体は, 3週間後に64.2m上流に遡上した。また, 下流側からは標識個体は一切再捕されなかった。1996年6月10~17日に649個体にT.R.を, 7月24~29日に898個体にT.B.を堰堤の下流側に標識放流した。その結果, 8月4-5日晴天の夜間観察で, 堰堤の中段で初めて標識個体 (T.B.雄1雌1, T.R.雌1) を再捕した。標識エビは最大垂直落差が40cmで, 水面から鉛直に上方28cmの壁面を越えた堰堤の中段から再捕された。その時の状況から, 堰堤にたまった枯れ草をよじ登ってきたものと考えられる。

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