1) 真珠養殖で用いる塩酸テトラサイクリン (TC-HC
l) 処理核の挿核による挿核後のアコヤガイの生残率の向上と脱核率の低下を検証し, TC-HC
l処理核の抗菌性, アコヤガイへの吸収および安全性についても検討した。
2) TC-HC
l処理核は
Edwardsiella tarda NuF84,
Enterococcus seriolicida NG8206,
Vibrio sp. KP-01,
V.anguillarum, Pseudomonas fluorescensの5種に対し阻止円を形成したことから抗菌性があると考えられた。
3) TC-HC
lを200~220μg塗布した核を挿核したアコヤガイの組織中のTC-HC
l濃度は, 内臓塊が最も高かった。また個体総TC-HC
l量の平均値は6時間後に最高値の133μ9となり, 7日目には約10μ9となった。
4) 通常の4倍量である800~880μgのTC-HC
lをアコヤガイに投与し, 無給餌飼育した。その結果, 45日後の生残率がTC-HC
l処理核を挿核した場合に86.7%, TC-HC
lを塗布せずに挿核した場合に63.3%, 挿核手術をしなかった場合に83.3%であり, TC-HC
lを800~880μgまで投与してもアコヤガイの生残に影響を及ぼさないと考えられた。
5) 高知県と愛媛県で合計8000個体のアコヤガイに4回に分けてTC-HC
l処理核と未処理核を挿核し生残と脱核を比較した。その結果, 全ての場合でTC-HC
l処理核を挿核した方が未処理核を挿核した場合より生残率が高かった。脱核率についても1例を除き全てでTC-HC
l処理核を挿核した方が低かった。従ってTC-HC
l処理核をアコヤガイへ挿核することによって, 従来の核を挿核するより生残率が向上し, 脱核率も減少することが明らかとなった。
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