水産増殖
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対馬西岸におけるサザエの生殖年周期
藤井 明彦大橋 智志
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1997 年 45 巻 4 号 p. 467-477

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抄録

1987年4月から1990年9月にかけて対馬厳原町阿連地先で採取された殻高31~145mmのサザエ1, 544個体を用い, 生殖腺指数 (GSI) , 生殖腺組織の季節変化を観察して, 本種の生殖年周期について調べた。
GSIは, 4.月から急激に増加し, 5~7月の間にピークに達した後, 8月, 年によっては9月にかけて減少した。生殖腺の組織学的観察では, 4月以降卵巣で卵黄の蓄積, 精巣で精子形成が活発化し, 5~7月上旬の間は成熟卵と精子で満たされ, 9月にかけては生殖細胞を放出した個体が観察された。したがって, 本海域における産卵期は6~8月で, この間の水温は20~24℃であった。なお, 成熟盛期や産卵期の長さには年によって相違があった。
また, 年齢別の孕卵数は, 3歳19万個, 4歳61万個, 5歳89万個となり, 殻高80mmを越えた4歳以上で急に増加した。今後, 再生産を確保して資源増殖を図るためには, 3歳以下の保護を考慮する必要がある。

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