1997 年 45 巻 4 号 p. 505-511
イワガキCrassostrea nipponaの組織に殺菌因子が存在することを明らかにし, その成分について検討した。組織抽出液に溶菌活性がみられたことからリゾチーム様分子が存在することが示唆された。そこでリゾチーム様分子が主要な成分として機能しているのか, 他の殺菌成分が存在するのかを検討するために, 殺菌活性とリゾチーム様活性の相互関係について各組織での活性の強さ, 採取時期の違いによる活性の変動, そして活性におよぼすpHと温度の影響の点から調べた。殺菌活性とチーム様活性は, 消化盲嚢部で最も高く, 最高活性を示す時期も一致したが, 至適pHや熱耐性は異なるなどリゾチーム様成分以外にも殺菌成分が存在することが示唆された。さらに, 溶菌性を示さない殺菌タンパク画分を陽イオン交換クロマトグラフィーによってリゾチーム様成分から分離することができた。本研究の結果, イワガキの殺菌因子は少なくとも2つの成分からなることが明らかとなった。