水産増殖
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小笠原諸島父島におけるアカハタ養成魚からの周年採卵
川辺 勝俊加藤 憲司木村 ジョンソン
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2000 年 48 巻 3 号 p. 467-473

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抄録

1)小笠原父島沿岸域で釣獲したアカハタ養成魚を用いて, 1988~1998年にかけて採卵した結果を報告した。
2)採卵に使用した親魚は60~230尾であり,平均全長は30cm前後であった。また,雄の方が雌より有意に大きかった。
3)月別の平均産卵日数は, 4~11月が7.1~9.2日で圧倒的に多く, 1~3月と12月は1.8~3.6日であった。産卵が行われた水温帯は19.5~29.7℃であったが, 22~28.9℃での産卵が全体の87%を占めた。
4)年別の採卵数は25×106~140×106粒であった。月別の平均採卵数では,4~11月の期間はいずれも40×106粒以上であったが,他の月は10×106万粒以下であった。また,日間採卵数は1×103~13×106粒で,平均885×103粒であった。
5)浮上卵率は0~98%(平均48.7%)であった。
6)平均で90%以上の高いふ化率がみられたのは5~12月(水温21.5~29.7℃)であった。逆に,1~2月(水温19.5~22.4℃)はふ化まで至らない場合が多かった。
7)浮上卵の平均卵径は717~847μmであった。月別では比較的水温が高い6~11月の卵径が小さく800μm以下であったが,他の月では800μm以上であった。また,卵径と産卵水温との間には負の相関性が認められた。
8)月齢別の産卵率,採卵数は月齢10日頃から月齢17~19日まで上昇してピークを迎えた後は下降した。
9)以上の結果から,本種の種苗生産適期は5~11月と考えられたが,特に産卵回数や採卵数が多く,卵径が比較的大きい5~6月が最適であると考えられた。

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