2001 年 49 巻 4 号 p. 501-505
ふ化直後のマダイとトラフグにカロテノイド(マダイ:β-カロテンあるいはアスタキサンチン,トラフグ:β-カロテン)で栄養強化したワムシを投餌し種苗生産を試みた。マダイでは,ふ化後20日の飼育で,β-カロテン及びアスタキサンチン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。トラフグでは,ふ化後28日の飼育でβ-カロテン強化区の生残率が対照区と比較して高くなった。両魚種ともに全長からみた成長にはカロテノイド強化による有意な差は認められなかった。飼育最終日の仔魚より脾臓を採取し,リンパ球の幼若化反応を検討したところ,両魚種ともにPWM20μg/mlあるいはCon A100μg/mlの刺激で,カロテノイド強化区が対照区に比較して有意に高い幼若化の反応性を示した。これらの強化ワムシでマダイやトラフグの種苗を飼育することにより,種々の感染症に対して抵抗力の高い健康な種苗の生産の可能性が考えられた。