2004 年 1 巻 p. 58-68
アーカイヴズと歴史学のアカデミーは相互に自律性をもっているが、基礎にドキュメンテーションをもつという点で共通した性格ももっている。今後、その協力の基礎は、データベースとネットワークになるであろう。コンピュータがドキュメンテーションの仕事に入り込んできた理由は、第一にわれわれの扱う素材、「紙」がきわめて大量に存在すること、第二に、精細な記録性を必要とすること、第三にデータの共有性であった。しかし、それに対する社会的認識と社会的費用をどう確保していくかを考える場合、おのおのの努力を前提とした上で、やはり現状では歴史教育と地域文書館から問題を提出するほかないというのが現実ではないか。その場合、国際水準のアーカイヴズの形成という課題は、それが日本の社会の「体質」に関わっている以上、きわめて困難であることを事実としてふまえなければならないだろう。このような問題の性格は、歴史学のみでなく、法学・経済学をふくむアカデミーの側が深刻に議論する必要を指し示している。