図書館情報学は、時代の変化に合わせて、従来の図書館学とドキュメンテーションやそれから生じた情報学を重ね合わせて1960年代に成立した学問領域である。しかし進展する情報技術の革新により、1980年代に入ると、文献情報中心であった図書館情報学は、いくつものライブラリー・スクールの閉鎖といった大きな試練に立たされた。これを、Nancy A. Van HouseとStuart A. Suttonは、死滅危惧種であるパンダに倣って、図書館情報学のパンダ・シンドロームと命名した。 このVan Houseらの問題提起と図書館情報学教育に関する現状把握プロジェクト(KALIPER)の知見に基づき、以後、打開策が積極的に検討され、今では、図書館情報学教育は、①図書館に限定しない広い問題設定、②他の専門分野の導入と利用者中心の立場、③IT科目の増設、④専門性についてカリキュラムの試行、⑤柔軟に受講できる教育の提供、⑥広範な学位の提供などが行われている。また、現下の図書館情報学の研究領域は、「情報技術、情報・知識(コンテンツ)、情報システム、人間の情報行動、またがる領域」の五つのカテゴリーにまとめられる (Joan Durrance)。わが国でも狭いニッチを脱却すべく進展方向が模索されている。
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