2014 年 20 巻 p. 52-69
本論文では、市制町村制下における村役場文書の引き継ぎについて検討し、東京府北多摩郡砂川村と、愛媛県東宇和郡魚成村の明治36年(1903)の引継目録の比較を行った。両者の共通点として、1)村長引継文書と収入役引継文書との区別が存在したこと、2)残存率は比較的高いが近世文書は少ないこと、相違点として、3)文書の保存年限制は砂川村では適用されなかったが、魚成村では適用されたこと、4)砂川村では引継目録の記載形式に村長交代が反映し、郡役所が強力な指導を行ったが、魚成村では郡役所の関与が少ないこと、5)砂川村では戸籍関係文書及び町村制施行以前の文書が引継目録に多数記載されているが、魚成村では少ないこと、の5点を指摘した。