2016 年 26 巻 p. 4-25
本論文は、情報公開法以前における文書移管が、国立大学の文書管理規則上、如何なる制定過程を通じて規定されたのか、実証的に明らかにするものである。分析対象として取り上げる東京大学では、1988年に国立大学としては最も早い事例として文書管理規則に東京大学史史料室への文書の移管が明記された。しかし、この文書移管の制度は十分に機能しなかった。その要因として、大学事務側で、移管についての具体的な手続きを定めることを避け続けてきたこと、大学アーカイブズの運営において、移管対象文書の評価選別を行わなかったことがあげられる。この結果、国立大学での文書移管は情報公開法以前においては、本格的に機能することはなかったのである。