2017 年 27 巻 p. 73-87
2千ゼロ年代以降、欧米主要国等ではアーキビストに求められる職務及び能力・知識について新たな論議を進め、能力保障型の人材育成を展開させた。オーストラリアでは、「教育」、「研修」その他の学習の機会を戦略的に関連付けて活用する必要が提唱されたことが端緒となり、2006年には専門職団体が共同により知識、概念及び専門職開発の方針、2010年には職務、能力及び給与の手引書を公表し、専門職開発を進めた。アメリカ合衆国では、アーキビスト協会が2002年に公表・準拠型をとる大学院教育課程に関する指針を公表し、2016年までの間に、記録情報管理やデジタル資料管理を含め、アーカイブズの資料と機能により重点を置くこととした。また1965年にアーキビストの職務分類基準を定めた同国人事管理局が、同協会と接点を持ちつつ、2千ゼロ年代以降その基本要件にアーカイブズ学を位置づけた。両国の取り組みには相違があるものの、専門職団体、国立アーカイブズ、大学等高等教育機関及び政府機関等が専門職の職務及び能力等について検討を重ね、アーカイブズとアーカイブズ学への集中の度合いを高めて人材育成を進めたこと、日本でも同様の検討とそれに基づく戦略的な人材育成の展開が必要であることを述べた。