アーカイブズ学研究
Online ISSN : 2434-6144
Print ISSN : 1349-578X
〈企画研究会:アーカイブズの〈力〉-歴史からの検証-〉
近世日本のアーカイブズ
利用の側面を中心に
冨善 一敏
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2007 年 7 巻 p. 20-38

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抄録

本論文は、日本近世(江戸時代)のアーカイブズについて、当時の人々の利用のあり方を検討したものである。第1章ではこれまでの文書管理史研究について、「アーカイブズ学的文書管理史」と、「儀礼・由緒論的文書管理史」をキーワードに整理した。

第2章では、村方文書の保存・管理と利用について、信濃国諏訪郡乙事村の事例を扱った。当村では文化10年(1813)大規模な文書整理を行い、1 点毎の検索が可能な文書目録帳を作成し「帳蔵」に収納した。以後名主が作成した文書は任期終了時に村役人立会の下改めが行われ、1)帳蔵に収納される非現用文書、2)年々交代する名主の手元に置かれる現用文書、3)作成当時の名主が保存する年貢・村入用関係文書という、その機能と保存場所を異にする3 つの文書群に分化したことを指摘した。

第3章ではモノとしての文書の利用について、武蔵国秩父郡大野村で行われた検地帳祭りを取り上げ、近世の村方文書が一方ではマジカルな世界の中で存在したことを指摘した。

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© 2007 日本アーカイブズ学会
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