2008 年 8 巻 p. 60-79
「文書館学的史料整理論」については、手間がかかり実践が難しいといったコストパフォーマンスの観点からの批判が寄せられているが、欧米のアーカイブズ整理論を参考にして提唱された「段階的整理」の考え方には、むしろこの観点に近い要素が見出せる。そこで、段階的整理の実践をめぐる以下の課題を取り上げ、アーカイブズ整理に関するアメリカの手引書類ではこの観点を考慮しているかを調査した。1)シリーズをどう設定するか、2)分析的整理はどのレベルまで行うべきか、3)物理的整理はどのレベルまで行うべきか。いずれの課題に関しても、アメリカの整理手法にはコストパフォーマンスを重視する視点が貫かれており、段階的整理法を理解・実践する際にもこの視点は有効であると考える。