本論文は、オーストラリア国立文書館シドニー分館が所蔵する接収日系企業史料の一つ、Nosawa & Co.史料(野澤組史料)を対象として実施した試験的整理と目録記述作成の実践報告である。
今回の整理に際しては、企業内で現用をはなれた文書を長期保存する際に用いられた、独自の文書分類法によって体系的に類別・整理された保存方式(「社内長期保存方式」と呼称)に着目し、編成基準を設定した。そして全体を11 の「シリーズ」に編成し、フォンド・シリーズ・目録の各記述を作成した。
これらを通じて、野澤組史料の構造を分析し、企業活動の特徴と記録保存方式の対応関係について考察を行った結果、「社内長期保存方式」は一定程度企業の業務体系を反映したものであることが明らかになった。そこから、「社内長期保存方式」が企業史料の体系性理解の糸口となりうること、整理・編成において「社内長期保存方式」に基づき基準を設定することは、とくに野澤組のような小規模企業史料の場合、アーカイブズ学的な視点からも適切であるとの考察を行った。
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