年報カルチュラル・スタディーズ
Online ISSN : 2434-6268
Print ISSN : 2187-9222
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日本のゲイ男性における親密性とシシィフォビアに関する一考察:
出会い系アプリの使用経験から
金子 初輝
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2022 年 10 巻 p. 149-170

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抄録
 近年では出会い系アプリを便利なツールとして捉え、プライベートを充実させるために使用する人が増えている。しかし、欧米圏の研究者はアプリ内で蔓延する露骨な差別を問題化し、その傾向がゲイ男性向けに作られたプラットフォームで顕著であると指摘している。この研究では、日本でゲイ男性向けアプリを使用している12人にデプスインタビューを行い、現代のゲイデート文化事情を探索すると共に、アプリなどの技術変化が親密性にどのように影響し、そして差別行為と繋がりがあるのかを調査した。ゲイコミュニティに存在するメジャーな差別として、シシィフォビア(女々しいと感じる男性に嫌悪感を抱く、性的対象から排除する)を事例として取り上げる。先行研究と一致する形で、極めて性的で、効率重視、そして即座に繋がれるアプリの特性が、差別を発生しやすくしている現状がインタビューから浮かび上がった。そして、好みは個人の問題だと認識されており、プロフィール上での侮辱的な言葉使いもある程度は仕方がないと正当化されていた。しかし、日本の利用者間で好まれるさりげない排除行為は、そのような問題が存在することをオンライン上で不可視化している可能性がある。又、ゲイ男性向けアプリでは誇張された男性性を演出することが戦略になることも多いが、必ずしも男々しく、筋肉質な外見を重視するわけではない日本の規範的な男らしさが相俟って、一見シシィフォビアを曖昧にしている。
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