年報カルチュラル・スタディーズ
Online ISSN : 2434-6268
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最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 岩崎 稔
    2020 年 8 巻 p. 3-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
    ジャーナル オープンアクセス
  • ――「日本大地震啓示録」の批判的談話分析を通して――
    張 碩
    2020 年 8 巻 p. 11-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
    ジャーナル オープンアクセス
    東日本大震災により東京電力の福島第一原発に深刻な事故が発生後、日本国内に留まらず、全世界の原発政策に重大な影響を及ぼしている。筆者の母国中国では、政府が同年の3月16日に原発の新規建設計画の審査・承認の暫定的凍結を決定したが、関連報道ではその後原発運行・推進に傾いたことが見受けられる。
     福島原発事故が発生した際に、中国のメディアは連日事故に関する報道を流し続けた。その中で、中国中央電視台で東日本大震災と福島原発事故の情報を取得した人が74.8%に達した1)。本稿は中央電視台で放送された唯一の長篇ドキュメンタリー番組シリーズ『日本大地震啓示録』を分析することを通して、(1) 中国のテレビメディアは原発および福島原発事故をめぐる報道中に隠されたイデオロギーを解明し(2) それらのイデオロギーを維持するのに使用された言語要素を明らかにすることを目的とする。今まで、福島原発事故をめぐる中国メディアの報道に関する研究は多いが、談話分析の研究は殆どないため、本稿では、分析にあったては主にトポス(Wodak 2001,2010) と前提(Fairclough 2003) の理論枠組みを用い、『日本大地震啓示録』におけるナレーション、ジャーナリストおよび専門家などの談話 から5 つの抜粋を取り上げ、ミクロ分析を行う。それによって、福島原発事故の被害が悪化することを避けられると主張し、事故の深刻化を東京電力と日本政府に帰責する意図を解析できた。また、同番組において、専門家は原発の必要性・重要性を強調し、原発の稼働を当然視するイデオロギーも読み解かれ、さらに『日本大地震啓示録』はそれらのイデオロギーが視聴者に受け入れられやすいように使用された言語ストラテジーを明らかにした。
  • ――女性向けアダルトビデオを視聴するファンに着目して――
    服部 恵典
    2020 年 8 巻 p. 35-57
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
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     ポルノグラフィは、社会的にも社会学的にも議論の係争点であり、ジェンダーの平等が論点となる場合にはとりわけそれが際立つ。その端緒となる反ポルノ派フェミニストの理論が有する問題の1 つに、女性によるポルノの「見方」の多様性を狭めてしまうがゆえに、女性を「被害者」の位置に固定化してしまい、女性が消費者となるポルノグラフィの存在 をうまく説明できないという点がある。
     しかし、女性向けポルノの先行研究が行ってきた、①「正しい」女性表象でないという分析、②「女性」が揺るぎがたく持つ優位性があるという分析、③男性向けポルノと同様の価値観で成り立つという分析、のいずれにも課題が残る。この解決方策として、本稿は女性向けアダルトサイト研究の知見から、ジェンダー化されたジャンル区分そのものを問 う重要性を指摘した。そして「女性向けアダルトビデオ(以下AV)のファンは男性向け/女性向けAV という区分をいかに捉えて視聴しているか」という問いのもとで11 名へのインタビュー調査を行った。
     調査結果から、主流のAV に対するアンチテーゼとして生まれた経緯のある女性向けAVを視聴していても、ファンは単純に男性向けAV を批判するのではなく、「男優ファン」であるがゆえに男性向けAV の視聴を自然にファン活動に組み込んでいたことが明らかになった。しかも男性向け作品を「仕方なく」視聴するのではなく、ある種のトラウマ経験がある女性であっても、両方に良さを感じながら楽しんでいた。また男性向け/女性向けを越境した視聴を行うだけでなく、そうした区分の必然性を揺るがすような捉え方もしていた。こうしたファンの実践は、ジャンル研究の文脈では、デコーディングによるジャンルの脱構築、第三波フェミニズムの文脈では、「被害者」ではなく「消費者」としての「女性」に 着目した、女性性の再構築ないし転覆の可能性の模索であるといえる。
  • 宮永 隆一朗
    2020 年 8 巻 p. 59-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
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     「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」。杉田水脈議員の言葉は、狭義のLGBT に留まらず閉経後の女性など様々な理由で子供を作らない人を「生産性」の名の下に排除する。しかし、クィアな老人は、生産性の論理により二重に周縁化された存在でありながらも、クィアさと老いを対立関係に置く私たちの社会の規範的言説によって想像困難なものにされている。
     本稿はクィアさと老いを二項対立ではなく交差する変数としてとらえ、両者を共に排除する「生産性」の暴力に抗うクィア・エイジングの理論の意義を主張し、その理論的観点から映画『ベンジャミン・バトン』における老いの表象を批判的に検討する。ホモフォビアの言説とクィア・スタディーズは、クィアさを専ら未成熟さ・若さと描くことにより、皮肉にも共にクィアな老人を不可視化してきた。こと2000 年代後半アメリカ社会では、ベビーブーマーの高齢化により加熱するポジティヴ・エイジングのイデオロギーが、「健康な老い」を称揚する裏側で異性愛規範や強制的な健常的身体性を強化した。こうした中で制作された2008 年の『ベンジャミン・バトン』は老いを個人のアイデンティティやライフスタイルの問題に還元することでポジティヴ・エイジングのイデオロギーと共鳴する。一見ステレオタイプ的老いの表象に抗う本作は、老いへの不安を抱える中年ベビーブーマーに「老いなど存在しない」という快楽を提供すると同時に、異性愛規範や支配的な身体のイデオロギーを反復することで成立する。
     本稿はクィアさと老いがいかに相反する規範的言説をなし、その衝突の場であるクィアな老人の想像を困難にするか明らかにする。ストーンウォールの立役者であるベビーブーマーのLGBT が年金世代となり、生産性の名による暴力が正当化される今、私たちは生産性の論理が二重に周縁化するクィアな老人を描き、こうした暴力に抗う、クィア・エイジ ングの理論を開かなければならない。
  • ――ジャン・ボードリヤールの68年論――
    小泉 空
    2020 年 8 巻 p. 83-100
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
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     本稿の目的は、フランスの思想家、ジャン・ボードリヤールが、フランスで1968年に起きた五月革命に立ち会うことで、どのような政治理論を練り上げたかを明らかにすることである。68年五月革命は、その直接行動主義、反権威主義、自主管理といった運動スタイルによって、フランスに限らずその後の社会運動に大きな影響を与え、文化面、思想面でも大きな影響を及ぼしてきた。だが同時に五月革命は多くの批判の対象ともなっており、とりわけ2011年のオキュパイ・ウォールストリート以降、一部の左派理論家からは、五月革命的な運動スタイルの限界を指摘する声も上がっている。そこで本稿は、ボードリヤールの68年論を例にとりながら、あらためて今日における五月革命の意義を考えようと試みる。まず今日の五月革命をめぐる言説を検討しながら、ボードリヤールの68年論を再考する意義を明らかにする。次にボードリヤール68年論の特徴を、複数性、ユートピア、特異性という概念をキーワードに分析する。第3 に一部の論者が批判の対象としている、ボードリヤール68年論と消費社会の絡み合いについて検討する。最後に、ボードリヤール68年論の批判に対抗するために、ボードリヤール68年論のポイントとは、革命が伝播していくプロセスへの着目だということを明らかにする。
  • ――観光化とそのプロセスを通して――
    澤田 聖也
    2020 年 8 巻 p. 101-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文では、沖縄の民謡クラブ(復帰前)と民謡酒場(復帰後)のコミュニティに注目し、両者のコミュニティがどのように変化してきたのか、そのプロセスを明らかにする。一般的に、現在の民謡酒場は観光芸術の文脈で語られ、観光客が期待する「沖縄らしさ」を演出したものになっている。しかし、民謡酒場の歴史を辿ると1960年代に民謡酒場の前身である民謡クラブから始まり、そこでは、地元の演奏者と客の相互コミュニケーションを通した強いコミュニティが形成されていた。民謡クラブには、観光芸術とは無縁の空間が広がっていた。だが、1972年に沖縄が本土復帰を果たすと、沖縄には、観光客が訪れるようになったことで、民謡クラブの客層が徐々に地元民から観光客に移り、それに伴いながら民謡クラブのシステム、音楽、環境なども変化していった。
     復帰前の民謡酒場が、「演奏者―客」の連帯感が強い相互コミュニケーションがあったコミュニティに対し、復帰後は、「演奏者―客」の連帯感が弱いコミュニティーになった。それは客層の変化も大きく関係しているが、それ以外にもコミュニティの紐帯を強固にしたり、緩めたりする要素が含まれている。コミュニティの形成には、人と人の関係性だけでなく、モノと人の関係性も重要であり、ANT の視点も入れながら、本論文では、復帰前後のコミュニティの変化のプロセスを明らかにする。
  • ――利害一致論からの一考察――
    源 邦彦
    2020 年 8 巻 p. 127-150
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
    ジャーナル オープンアクセス
     支配集団である白人による黒人(米国アフリカ系奴隷子孫)の母語(黒人言語)に対する科学的ディスコースの構築という観点から、黒人言語に関する研究の歴史は四つの時期―第一期:異常英語論、第二期:誤謬英語論、第三期:欠陥英語論、逸脱英語論、第四期:民族英語論、固有言語論―に分けて考えることができる。各時代は特定の社会変動と社会構造に一致し、黒人言語についての研究は、諸権利獲得と人種間平等への機運が黒人のあいだで高まり、白人の既得権益が脅かされるとパラダイムシフトする傾向にあったといえる。
     本研究で扱う第三期の欠陥英語論は、東西冷戦、1954 年の公教育施設での人種隔離政策に違憲判決を下したブラウン裁判、1964 年以降の各種公民権法制定など大きな社会変動のなか、黒人による権利要求の高まり、白人による既得権益の死守などが相互作用した結果、基本的には白人側が一方的に構築した科学的パラダイムであると考える。この時代は、アフリカやアメリカの黒人社会など非白人地域に関する研究、すなわち欧米中心主義的な知識の構築に向けて、米政府や同国慈善財団が社会科学に莫大な投資を行う時期で、黒人言語の言語的病理性を説く欠陥英語論、その言語的正当性を説く逸脱英語論という、黒人言語の解釈を巡り一見相対立する立場をとる両分野に対して投資が行われていた。本稿では、利害一致論(Bell 1980, 2004)の観点から、既存社会構造の維持に貢献し、その一部は時代横断的にも見られる、欠陥英語論の五つの特徴―カラーブラインド・ディスコース、誤謬としての黒人言語、疾患としての黒人言語、排除されるべき黒人言語、逃避的相関分析―を分析する。第二次世界大戦までの生物学的決定論に立脚した近代的人種主義とはある部分では決別した欠陥英語論が、どのようなディスコースを構築し、どのように人種主義を合理化し、どのように既存の社会体制を維持しようとしていたのか、利害一致論の視座か ら論究する。
  • ――「日大930の会」の活動を中心に――
    趙 沼振
    2020 年 8 巻 p. 151-173
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
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     1968年、日本大学では右翼思想団体や体育会系サークルを利用して学生活動に暴力的な統制を加えるなどしていた大学理事会による約20億円の使途不明金が、東京国税局の告発によって発覚した。日大全共闘は、私立大学の教育をめぐるこのような問題点への一つの応答として学生による運動体として形成され、大衆団交を求めて日大闘争を進めた。
     このように日大全共闘が結成されて50年目を迎えた2018 年、日大のアメリカンフットボール部をめぐる「悪質タックル問題」が社会的な論議を引き起こしていた。これと時期を同じくして、「日大930 の会」事務局が日大全共闘50 年の節目に「日大全共闘結成50周年の集い」を開催しており、かつて大学運営の民主化を要求して闘争に参加した元学生らの再結集を機に、日大当局に対する見解を明らかにした。
     本稿では、日大全共闘に結集した仲間たちで成り立った同窓会組織の「日大930の会」に着目し、彼らに行ったインタビュー調査の内容を通じて、日大闘争の経験を文章化する作業の一環となった記録活動の様相と意義について考察する。「日大930の会」は、日大闘争をめぐる膨大な量の記憶を檻から解放させるために、日大全共闘の当事者への呼びかけを続けながら、『日大闘争の記録――忘れざる日々』の記録本シリーズを発行した。彼らが「悪質タックル問題」に対してとった行動から、全共闘運動の記録活動が改めて意味づけられた。つまり、「日大930の会」は、あいかわらず日大全共闘として自分自身を歴史の対象として客観的に考察するための、記録作業に取り組み続けてきたことが、今日でも日大全共闘の持続性と現在性に対して自覚的に意識を向け、その系譜を提示したのである。
  • 北村 匡平
    2020 年 8 巻 p. 175-178
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/09
    ジャーナル オープンアクセス
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