抄録
オーストラリアの思想家デボラ・バード・ローズをはじめ、21世紀初頭、人間と動物の境界線については環境哲学の領域において激しい論争が行われている。本稿では、メキシコの画家フリーダ・カーロ(1907-1954)の作品と人生を動物主義的(動物中心主義の目線を通して)に解釈し、異文化交流を伴う人間ならざるものとのオルタナティブな関係を探求する。具体的には、フリーダ・カーロの二つの自画像《フラン・チャンと私》(1937)及び《小さい猿のいる自画像》(1945)を、アレクサンドル・フランソワ・デスポーツの《狩猟服姿の自画像 》(1699年頃)と比較しながら分析する。それにより、フリーダ・カーロの自画像における流動的な絵画構成と、メキシコの田舎や先住民グループに共通する「ナワリズム(Nahualism)」との関係性を読み解き、現代芸術家たちが動物のオルタナティブなビジョンを形成することによって、環境についていかなる思索を展開しているのかを明らかにするものである。