抄録
教育心理学領域の測定・評価に係わる研究について, 2010~2011年の動向を概括した。従前から続く傾向として, 心理尺度の作成に係わる研究が数多く進められた。しかし本年は, 心理学的な構成概念や測定尺度の過度の氾濫や過剰供給に対する危機感から, 尺度の妥当性の検証の必要性を訴えると共に, 具体的な検証方法を提案するセミナーや発表が多くなされたのが特徴的であった。また近年, 心理測定や教育評価, テスト理論の研究領域は, その発展に伴って細分化が進んでいる。試験やテストに関連した教育評価の研究は, 教育心理学会からテスト学会などに発表の場が移動しつつあるように見受けられた。そこではテスト理論や統計手法の開発, IT技術の活用などのテスト技術に関する研究が精力的に進められる一方, 社会で実際に運用され, 受験者の処遇を左右するテストや試験の場面で発生している具体的な問題に向き合い, その解決を目的とした研究も行なわれている。これらの研究は, 教育心理学の従来からの課題でもある研究と教育実践の社会的な繋がりを考える上で, 大切な方向性の1つを示すものと考えられる。