2018 年 57 巻 p. 61-78
本稿の目的は,2016年7月から2017年6月までの間に教育心理学の領域で行われた社会心理学的研究の動向を概観するとともに,学校教育のいくつかの論点に限定した展望を論じることであった。本稿の前半では,まず,日本教育心理学会第59回総会における社会心理学的な研究発表の動向を整理した。その結果,「授業(対話的な学び)」「教員等の指導・支援行動」「社会的スキル」などに関する研究発表が多くみられた。つぎに,『教育心理学研究』に掲載された論文のなかから社会心理学的な要素を含んだ研究を取り上げて概観した。つづく本稿の後半では,教室の「対話的な学び」と「教師教育」という2つのトピックに焦点をあて,社会心理学の視点からの考察を展開した。そこでの主な論点は,(a)教室の「対話的な学び」と集団の構造,(b)教室の「対話的な学び」と友人関係,(c)教師教育における「省察的実践」と「協同的実践」,であった。