2020 年 59 巻 p. 9-27
本稿の目的は,2018年7月―2019年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌4誌と2019年9月に開催された日本教育心理学会第61回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。対象となった研究は日本教育心理学会第61回総会でのポスターによる研究発表と学会誌に掲載された論文であり,それぞれを分けて動向を概観した。分析の対象となった研究は,中学校段階,高校段階,大学段階,成人期以降,多世代にわたるものに分類された。またそれぞれの段階でテーマ別に分類し,研究内容を要約して記載した。
動向分析の結果,まず青年期研究における中学生・高校生を対象とした研究と大学生を対象とした研究の量的なバランスの偏りの問題を指摘し,学会レベルで必要となる対応について問題提起を行った。さらにサンプリングやサンプルサイズの問題を指摘し,研究知見の一般化の問題について議論した。