本研究は,学習障害等の読み書き困難のある子どもの学習保障や学びの創造をめざして,ICT利用の可能性と今後の研究を展望する。そのために,近年の日本と海外における事例研究及び実証研究から,学習障害のある児童生徒に対するICT活用の効果を整理した。主に,「読み」「書き」「意欲」「自立」「心理的ウェルビーイング」に対するエビデンスに焦点を当てた。これら5つの領域の効果に関する文献検討を行ったうえで,テクノロジー(例えば,音声読み上げ機能,文書作成アプリ,スマートペン,アイデア描画アプリ,音声認識,e-learningシステム)の導入とその使用方略指導が,学習障害の子どもの学習保障と新たな学びの創造に貢献できることが考察された。最後に,GIGAスクールの実現に向けたこれからの日本の学校教育を背景にしながら,(1)ICT活用のアセスメントとフィッティング方法の確立,(2)ICT活用のエビデンス構築,(3)ICT活用を支える学校環境づくり,といった3つの重要な研究課題を提案した。