教育心理学年報
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II 展望
日本における自己調整学習とその関連領域における研究の動向と展望
―学校教育に関する研究を中心に―
岡田 涼
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2022 年 61 巻 p. 151-171

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抄録

 本論文では,日本での自己調整学習とその関連領域における研究の動向を明らかにし,今後の研究の方向性を明らかにすることを目的として研究レビューを行った。特に,近年の学校教育において自己調整学習への関心が高まっていることに鑑み,小学生から高校生を対象とした研究に焦点をあてた。2011年以降に日本の主要雑誌に掲載された論文を検索し,52論文を抽出した。レビューの結果として,(a)小学生から高校生までを対象とした研究があり,英語や算数・数学における研究が多いこと,(b)自己調整学習の主要な要素であるメタ認知,動機づけ,学習方略のいずれも研究の対象となっているものの,3つの要素すべてを扱っている研究は少ないこと,(c)自己調整学習の要素を用いて学業成績を予測するような調査研究から,介入によって自己調整学習を促そうとする実践的な研究まで幅広くみられること,が明らかになった。日本における今後の研究の方向性として,自己調整学習の理論と教育実践とのつながりをもつ研究が増えていくことが予想される。そのなかで,「理論をもとに実践を創る研究」と「理論をもとに実践を切り取る研究」の2つの方向性を示唆した。

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© 2021 日本教育心理学会
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