教育心理学年報
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I わが国の教育心理学の研究動向と展望
学校心理学に関する研究の動向と課題
―近年の『教育心理学年報』における議論を踏まえて―
永井 智
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2025 年 64 巻 p. 112-134

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抄録

 本稿では2023年7月から2024年6月末までの1年間に,わが国で発表された学校心理学に関する研究の動向を概観した。その上で,2015年以降学校心理学部門で指摘されてきた学校心理学の研究動向における課題と,現在の研究動向との対応状況について考察した。日本教育心理学会総会における発表96件と,公刊論文36件を概観した。その結果,公刊論文においては(a)実践研究やシングルケースデザインの研究などは実施されるようになっていること,(b)一方で,サンプルサイズ設計や縦断調査デザインを用いた調査は少ないこと,(c)間主観性,環境やシステムなど,当該領域で主流となっている研究デザインを適用しただけでは実現困難な視点に基づく研究の報告は依然として見られないことなどを報告した。今後の課題として,研究・実践の更なる展開だけでなく,そこで得られた知見を共有し,次の研究・実践へと効果的に活用していく基盤を構築していくことの重要性を指摘した。

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