アレルギー
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製パン, 製菓業従事者におけるアレルギー症状と関連因子に関する研究
松村 康広新妻 知行伊藤 久雄
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1994 年 43 巻 5 号 p. 625-633

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抄録

小麦粉などを使用している製パン, 製菓業従事者36人(男33, 女3, 平均年齢29.1歳)の臨床症状と症状発現に関すると考えられる因子について検討した. 症状は鼻症状が13例, 皮膚症状, 眼症状, 呼吸器症状がそれぞれ8例であった. 44.4%の症例で小麦粉特異IgE抗体が陽性で, 陽性者では好酸球数, IgE抗体, 小麦粉特異IgG1抗体が有意に上昇しており, 小麦粉特異IgG4抗体も上昇傾向にあった. さらに暴露期間の長い者ほど小麦粉特異IgG1抗体が低値で, 小麦粉特異IgG4抗体も同様な傾向にあった. 環境整備後, IgE抗体, 小麦粉特異IgG1抗体の減少が認められた. これらIgGサブクラスは抗原暴露の一つの指標と考えられたが症状発現への役割は明らかではなかった. 小麦粉特異IgE抗体陽性者ではダニ, 大麦, ライ麦にも陽性を示すものが多く, アトピー素因の関与が示唆された. さらに, 15.4%の症例ではα-アミラーゼやパパインなどのような添加物質による感作も認められ, 従事者のアレルギー症状は, 種々の物質による復合感作であると考えられた.

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© 1994 日本アレルギー学会
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