2017 年 66 巻 10 号 p. 1236-1239
症例は同居中の64歳女性(症例1)および37歳の長男(症例2).症例1は,6月より咳嗽,微熱を認め,症状増悪をきたし,9月に臨床症状,画像所見,気管支肺胞洗浄液と経気管支肺生検の所見,血清抗トリコスポロン抗体陽性,環境誘発試験陽性から夏型過敏性肺炎と診断した.その後12月に同一理髪店に勤務する症例2も咳嗽の増悪をきたし,血清抗トリコスポロン抗体陽性を含む診断基準を満たし,夏型過敏性肺炎と診断した.症例1は,帰宅誘発試験が陰性で,職場環境誘発試験が陽性であった.本症例は夏型過敏性肺炎の家族内発症例であるが,原因環境要因は,住居ではなく同一の職場にあると考えられた.また症例2は冬季診断例であった.
夏型過敏性肺炎は,大半が夏季に発症し診断され,家族内発症のほとんどが住居環境に起因すると考えられてきた.特に専業主婦に多くみられ,本症例のように女性での職場環境による発症や冬季診断例は,夏型過敏性肺炎の臨床像が,社会環境の変化に伴い従来とは異なってきている可能性を示唆し,貴重な症例と考えられる.