2017 年 66 巻 3 号 p. 209-221
【背景・目的】食物アレルギーの原因食品とされる小麦粉は,その飛散性のため,ふるい操作により他の食品へ意図せず混入する可能性がある.今回,小麦粉の飛散性に着目し,飛散した小麦アレルゲンの混入防止に役立つ知見を得ることを目的とした.
【方法】3種類の粉ふるいを用い,飛散した小麦粉の軌跡や速度ベクトルを測定し,飛散動態を解析した.また,シャーレ-イムノクロマト法で小麦アレルゲンの飛散距離を測定した.
【結果】小麦粉の粒子径分布は,粒子径14.2μmと60.4μmで2つのピークを示し,終末沈降速度はそれぞれ約8mm/s,約150mm/sであった.ふるい操作後,飛散した大きな小麦粉粒子は垂直に落下したが,粒子径がおよそ30μm未満の粒子は空気の流れに乗って周辺に飛散し,小麦アレルゲンとして5mまで飛散した.
【結語】ふるい操作により飛散した小麦粉は,粉ふるいの種類に関わらず他の食品に意図せずに混入し得ることが示唆された.混入防止のため,独立した調理室か,袋の中で取り扱う等の対応が必要と考えられた.