抄録
本稿の目的は,月別・都市別に集計された擬似パネルデータを用い,わが国のたばこ消費の推定を行うことである.わが国のたばこ価格は,たばこ税増税にともなう価格改訂以外に変動がないため,通常の需要関数による分析は適切でない.そこで,複雑な消費支出の変動を把握するために,ワーキング・モデルを対数支出の2次関数に拡張したエンゲル曲線を推定した.さらに時系列方向のダイナミックな変動をとらえるために誤差修正モデルとして定式化し,また地域差をとらえるために固定効果モデルとして推定した.分析の結果,たばこの需要は消費支出の変動に対して極めて非弾力的で,負のトレンドが観察された.また,たばこ税増税直前の駆け込み需要による消費増加効果に対して,増税直後の消費減少効果は比較的小さかった.さらに,いくつかの都市間には顕著な地域差が存在することが明らかになった.