農林業問題研究
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個別報告論文
ネットスーパー利用に関する文脈価値の分析
滝口 沙也加清野 誠喜
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2015 年 51 巻 1 号 p. 32-37

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1. はじめに

マーケティングにおける新しいパラダイムとして,「サービス・ドミナント・ロジック(以下,S-Dロジック)」が注目されている.S-Dロジックでは,企業はあくまで価値の提案者にすぎず,価値は顧客により創造される,とすることに最大の特徴がある.そうした中,顧客により創造される価値については,Vargo & Lusch(2008)により「価値は,個別的で,経験的で,文脈依存的で,意味内包的である」と説明されている.例えば,コーヒーは嗜好品として捉えられるが,それを好きかどうかは人によっても異なり,また同じ人でも時間帯や一緒に食べるもの等,コーヒーを飲む状況などによってその価値は変化する.つまり,顧客が知覚する価値は,生活の文脈に依存することを示し,購買時点での価値ではなく,使用・消費段階での価値を重視する.

上記のような文脈価値をベースとしたマーケティング(価値共創型マーケティング)では,顧客による価値創造に企業が関わることが重要となる.こうしたことから,消費者との距離が近い小売業は,製造業に比べてその優位性が高まることが村松(2010)により指摘されている.そうした小売業における新たな成長戦略として,ネットスーパー事業が注目されている.報告者らは,ネットスーパーを対象とした消費者の利用について,とくに他チャネルとの併行利用の視点からその実態を明らかにしてきた.滝口他(2014)によれば,①ネットスーパーはそれ単体で利用されるというよりは,スーパー等の他チャネルと一緒に利用されていること,②なかでも青果物は他チャネルとの併行利用のウエイトが高い品目として位置づけられること,がわかった.

そこで本稿では,ネットスーパー利用者のなかでも,他チャネルと併行してネットスーパーで青果物を購入している消費者を対象に,ネットスーパーの評価を文脈価値の視点から明らかにしていく.なお,明らかになった文脈価値から利用者を類型化し,今後,企業による価値共創型マーケティングを展開するためのターゲットを検討するための一助とする.

2. 方法

方法は,内藤(2004)によって開発された「PAC分析」を用いる.同手法はパーソナルインタビュー形式で行われ,「自由連想」「連想間の類似度評定」「(被験者及び調査者による)解釈」の3つのステップで進められる1.一般的な個別インタビューとは異なり,被験者には刺激文をもとに調査過程で作成されるデンドログラムにもとづきインタビューを進めるため,被験者による内省報告(発言)はクラスター構造という刺激にコントロールされる.つまり,デンドログラムをもとに被験者は発言及び解釈を繰り返し,それらの内容を掘り下げていく.そして最終的には調査者が,作成されたデンドログラム,被験者の発言,被験者の解釈の3点をもとにそれらの文脈を読みとり,その価値を明らかにしていくものである.PAC分析は臨床心理等の現場で用いられ,被験者の内面的な意識や態度を把握するのに適している.また,前述のように,デンドログラムにもとづいたインタビューのため,個別インタビューでありながらも結果の再現性が高く,かつ安定的であることがメリットとされる.

なお,被験者は「ネットスーパーでの食品購入頻度が月2~3日以上」でかつ,「ネットスーパーおよび他チャネルでも青果物を購入している」というスクリーニング条件で,年代及び職業が異なる8名を抽出した2

3. 結果

(1) 被験者C(40代・専業主婦)

40代の専業主婦である被験者Cの結果をみる3.Cは夫と大学生の息子の3人家族で,子育てや両親の介護がひと段落し,ようやく手に入れた自分の時間を楽しみながら毎日を過ごす.朝9時からテニスの練習に出かけ,昼から夕方までジムでトレーニング,その後帰宅し夕飯の支度と翌日の息子のお弁当用に下ごしらえをする日々を送る.専業主婦でありながらも,1日の大半を外ですごし,趣味の時間で忙しい毎日を過ごしている.

図1.

被験者CのPAC分析結果―デンドログラム―

資料:個別ヒアリング結果より筆者作成.

1)左の数値は,被験者にとっての重要順位.

2)各項目における( )内の符号は単独でのイメージ.

1は調査過程で作成されたCのデンドログラムである.同図は大きく3つのクラスターから構成される.クラスターIは「最近はネットスーパーの品質も良い」「ネットスーパーでお買い得なものをチェック」「ネットスーパーは移動時間不要,体力的にも楽」「時間設定ができ,生活時間が有効に使える」,そして「重いモノ,卵などを良く買う」の5項目で形成される.『息子のお弁当用に購入したブロッコリーも,結構新鮮で大きかったのに100円もしなかった.野菜の価格が高い時にはスーパーに比べて,ネットスーパーの方がお買い得な時がある』という発言がクラスターⅠを見ながらなされ,〈新鮮なものを楽にお得に買える,かしこい主婦でいられる〉と解釈された.同図の項目に対する単独でのイメージをみてもわかるように,クラスターⅠにはプラスの印象が強いことから,新鮮な青果物が購入できることや,買い物時間を短縮できることに満足している様子もうかがえる.そしてその結果,自分の時間が確保でき,かしこい主婦でいるための手段としてネットスーパーを捉えている.一方,クラスターⅡは「スーパーは外出のついでに買う」「必ずストックしておくものを買う」「大きさや新鮮さは分からないので,失敗しても後悔しないお買い得なものを買う」「「○○円以上送料無料」に合わせる」「日持ちのするもの」の5項目からなる.クラスターⅡに対しては,『日常的な買い物はわざわざスーパーに買いに行くことが稀で,スーパーはついでに寄る場所.やりたいことがたくさんあるので,移動時間でうまく利用したい.自転車の移動に邪魔な大きい買い物はスーパーでは出来ない.そういった意味でもネットスーパーは自分の生活サイクルと合わせて計画を立てられる』という発言がなされた.そして,Cにとりネットスーパーは,〈義務的な買い物でも,自分の時間を楽しめる縁の下の力持ちのような存在〉と解釈された.そしてクラスターⅢは「生協は時間が選べない」のマイナスイメージを持つ項目からなる.『時間が選べないのは私のライフスタイルにマッチしない』と発言がなされ,〈生協サービスの不便さ(ネットスーパーの優位性)〉と解釈された.

以上,デンドログラム及びインタビューからは,Cにとってネットスーパーは,スーパーに比べて新鮮でお得な青果物が購入できる場として評価されている.また,専業主婦であっても家事や自分の趣味に忙しく,時間を上手くやりくりするためには,食材購入のための買い物時間を短縮することで時間を確保している様子が読み取れる.ネットスーパーは生協と異なり,宅配時間が選べることで自分の時間を確保しつつ家族への食事作りをおそろかにしない縁の下の力持ちのような存在であること,そしてその結果自身がかしこい主婦でいられると総合的に読みとることができる.つまり,“家族の食を支えつつも,自分自身の時間を確保したい毎日を過ごすためには欠かせないもの”として生活の中に根付いている様子が垣間見られる.

(2) 被験者D(40代・有職主婦)

被験者Dは夫と大学生の息子,高校生の娘の4人家族で,平日の週5日は鉄道会社に勤務している.週末はホットヨガや友人との食事など,家族よりも自分優先のスケジュールで過ごすことが多い.

作成されたデンドログラムが図2である.クラスターⅠでは「まずは値段をみる」「特価なもの(お得なもの)」の2項目から構成される.同クラスターに対しては,『店舗でもネットスーパーでも価格が一緒.店舗でも価格を先に見るので,価格を気にする』という発言がインタビュー時になされ,利用時の行動として,〈価格を重視する〉という内容が解釈された.一方,クラスターⅡは「野菜,果物を買うには不満がある」「JAの直売所との比較(鮮度が劣る)」の2項目からなり,クラスターⅡでは『土日に時間がある時は,近くの直売所へ行き,野菜は基本的にはそこで買うようにしている.週末買えなかったら,ネットスーパーで買わなくてはいけないと悩む』という発言がDからなされた.つまり,クラスターの内容及びクラスターを見ながらの発言から,なるべくなら青果物は地元のもので新鮮な野菜を買いたいという思いが読み取れる.つまり,ネットスーパーは週末に予定があり,直売所で青果物を購入できなかった場合に利用するものとしている.このことから,クラスターⅡは〈(青果物を購入する)不安〉というネガティブな気持ちとして解釈された.そして,クラスターⅢでは,「自分で選べないので不安がある(必要なものだけ)」「使いたいときに配送が間に合うかが気になる」「白菜,キャベツなど重たいものを買う」の3項目から構成される.クラスターⅢを見ながら,Dからは『自分で選べば,たとえ鮮度が悪くても納得できるが,他人に頼むと不安になる.』『メニューを考えたときに間に合うならこのメニュー,間に合わないならどうしようかなと,そのときの条件を気にして利用している』『家族に受け取りをお願いする時は,冷蔵庫に入れるものはやめておこうと,受け取りの時の状況も考えて注文する内容を変える』という発言がなされ,クラスターⅢは〈利用の条件〉と解釈された.

図2.

被験者DのPAC分析結果―デンドログラム‍―

資料:図1に同じ.

1)左の数値は,被験者にとっての重要順位.

2)各項目における( )内の符号は単独でのイメージ.

デンドログラム及び被験者の発言を読みとると,Dは,主に価格に注目してネットスーパーで青果物の購入を決めているものの,出来れば地元の直売所で新鮮な野菜を購入したいと思っている.しかし,週末に自分の予定がある等で仕方なくネットスーパーで青果物を購入している状況にある.また,重い野菜を運ぶことに対する手間が省ける等,便利な印象を抱いているものの,鮮度や受取の手間といった点も気になり,あまりポジティブな気持ちで利用している様子はうかがえない.しかしながら,自分のプライベートを優先させる等で“買い物に行けなかった場合に家事の負担を穴埋めしてくれるもの”としてネットスーパーに価値を感じていると総合的解釈ができる.

(3) その他の被験者

前述した被験者C,D以外の6名の被験者について,PAC分析の結果をまとめたものが表1である.

表1. その他の被験者の分析結果―まとめ―
属性 同居家族 解釈された各クラスター名 総合的な価値
A 30代 専業主婦 夫,幼稚園の息子と娘 ○無駄な時間を使わないで,スムーズに買い物ができる
○スーパーと同じ価格で購入でき,家計が助かる
○新鮮な食材が手に入るので,食事作りの幅が広がる
食材がなくなった等の緊急時に,スピーディに自宅まで配達してくれるので,家族に新鮮でおいしい料理をつくることができる
B 30代 有職主婦 夫,4歳の息子 家族に良いものを食べさせたい
○サイトの使い勝手はイマイチ
買い物サイクル,綿密なスケジュール
スマートフォンを使って,同時に1週間分の献立を考慮しながら購入商品を検討することができるので,無駄のない計画的な食生活を送り,その結果“自身の理想とする主婦像(やりくり上手の奥さん)に近づくことができる
E 50代 専業主婦 夫,社会人の息子 ○量や天候を気にせず買い物ができるので助かる
○特売のときにたくさん買えたり,予算を気にして購入ができるので経済的
○鮮度や接客対応が良く,毎日のグリーンスムージーに必要な食材を安心して購入できる
自ら足を運ばなくても,自宅まで新鮮な青果物を必要な時に届けてくれるので,毎朝のグリーンスムージーに必要な食材を安心して購入でき,その結果,家族の健康を維持するうえでかかせない存在となっている
F 50代 有職主婦 夫,会社員の息子 ○家事の負担から解放してくれる,時間の節約で自分が楽できる
義務に感じる家事では食材の無駄をなくしたい
○少しでも新鮮でおいしい食材を買いたい
○楽するためのリスクは仕方がない
自身の都合の良い時間帯に自宅に届けてくれるので,買いもの時間を短縮してくれながらも,美味しい野菜(生産者の顔が見えるPB野菜)が購入できる
G 60代 専業主婦 夫,社会人の息子2人 ○機転が利く,賢いお母さんでいられる
○どんな良いものが届くか楽しみ,遊び心
重量のある根菜類をネットスーパーで大量に購入し,その購入した食材を使って,趣味の手料理を友人らにおすそわけすることで喜んでもらえる
H 60代 有職主婦 ○珍しい食材が簡単に手に入る等,自身や家族が食べたいと思うメニューが実現できる親近感
○品質の良い食材が手に入るので安心しておまかせできる
○どんな食材が届くのか,待つ間のわくわく感,好奇心
スーパーでは手に入らない珍しい食材が手に入る,待つ間のわくわく感を感じるもの

資料:調査結果より筆者作成.

1)表中のアルファベットは本文中の被験者と対応.なお,C,Dの「解釈されたクラスター名」と「総合的な価値」については本文中を参照のこと.

2)下線と太字は属性間にて共通した特徴を持つ内容で,図3の軸として設定した「購入商品の幅」に関連する内容については一重線,「家族を考慮する度合い」に関連する内容については太字で示す.

被験者A(30代・専業主婦)は生協宅配利用者であるが,生協で注文した食材が1週間経たないうちになくなった時にネットスーパーで青果物等を購入する.ある意味緊急時にネットスーパーが利用され,その結果,“家族に新鮮でおいしい料理をつくることができる”と価値を感じている.一方,同じ年代でも有職主婦の被験者Bは『子供が生まれてから,食べ物に気を使うようになった.味付けの工夫や果物を食べさせるようになった』といった発言等から,クラスターのひとつを〈家族に良いものを食べさせたい〉と解釈した.そして,ネットスーパーをクックパッド等のレシピサイトと一緒に使うことで,食材を無駄なく利用できると評価しており,“自身の理想とする主婦像(やりくり上手の奥さん)に近づくことができる”と総合的な価値としている.

また,被験者E(50代・専業主婦)では,『夫はお正月だけしか休みがないくらいハードな仕事をしているので,健康管理に気をつけている』との発言がなされ,〈鮮度や接客対応が良く,グリーンスムージーに必要な食材を安心して購入できる〉という解釈がなされた.そして総合的なネットスーパー利用の意味としては,自ら足を運ばなくても自宅まで“新鮮な青果物を必要なときに届けてくれるので,家族の健康を維持するうえで欠かせないもの”と読みとることができる.つまり,ネットスーパーの利用を通じ,家族の健康を守ることができると評価している.それに対し,同じ年代で有職主婦である被験者Fは,総合的な価値として“買いもの時間を短縮してくれ,美味しい野菜(生産者の顔が見えるPB野菜)が購入できる”と感じており,ネットスーパーの宅配機能や商品力を評価している.

さらには,被験者G(60代・専業主婦)は,重量のある根菜類をネットスーパーで大量に購入し,その購入した食材を使って“趣味の手料理を友人らにおすそわけすることで喜んでもらえる”という目的が実現できることにネットスーパーの価値を感じている.つまり,家族以外に喜んでもらえることがネットスーパーを利用する意味となっているようだ.一方,同年代の有職主婦Hは,“スーパーでは手に入らない珍しい食材が手に入る,待つ間のわくわく感を感じるもの”としており,前述の被験者Fと同様,ネットスーパーの商品力を評価している.

4. おわりに

本稿では,他チャネルとの併行利用のウエイトが高い青果物を対象に,併行利用の実態からネットスーパーの文脈価値を分析した.全被験者の結果を総括すると,年代や職業による違いというよりも,ネットスーパーを利用することで得られる価値が及ぼす対象の違いや,生活全体における意味付けの違いを指摘できる.具体的には,前掲表1の下線と太字で示した共通項である「購入商品の幅」の違い,「家族を考慮する度合い」の強弱,の視点から被験者をタイプ分類することができる(図3).ここで「購入商品の幅」とは,ネットスーパーの宅配機能部分に価値を感じたり,緊急時での利用といった限定的な利用に留まるか(購入商品の幅が狭い),日常生活を送る上で欠かせない存在となっているか(購入商品の幅が広い)を示す.一方,「家族を考慮する度合い」とは,ネットスーパーを自分以外の家族全体を考えて利用しているか(家族を考慮する度合いが高い),自分中心のために利用しているか(家族を考慮する度合いが低い),を意味する.

図3.

被験者のタイプ分類

資料:筆者作成.

1)詳細は本文中を参照のこと.

同図によれば,全8名の被験者は,生活の中でのネットスーパーに対する捉え方の違いによって大きく3つのタイプに分類することができる.第1に,他チャネルで食材が手に入らなかった場合や重量のある食材を購入する際にネットスーパーを利用する,限定的な利用に留まるタイプIである.ネットスーパーは「困ったときに助けてくれるもの」として捉え,緊急時や条件付きで利用するタイプである.メインで利用するチャネルがありながらも,その利用が難しい場合等にネットスーパーがその役割を担う特徴をもつ.第2に,ネットスーパーでしか買えない商品に魅力を感じ,その購入のために利用するタイプⅡである.食品通販の「お取り寄せ」のように,ネットスーパーが取り扱う商品そのものに魅力を感じ,利用するタイプであると言える.第3に,自身の生活を送るために欠かせない存在となっている,タイプⅢである.いわゆる,ネットスーパーを「生活のパートナー」としての捉えるグループである.ネットスーパーを利用することで,新鮮な野菜を必要な時に届けてくれるので,グリーンスムージーを毎朝家族に提供することができ家族の健康が維持できる,レシピサイトとの併用利用で食材を無駄にすることがなく効率的な献立と買い物のスケジュールが立てられる等,食生活に留まらず生活全体を豊かにできるものと捉えるタイプである.

なお,特にタイプⅢは,タイプⅠに比べてネットスーパー利用が日常的になっていると同時に,「家族の健康を守りたい」「理想とする主婦像(やりくり上手の奥さん)に近づきたい」といった意志の強さやそれを実現する調理技術が存在している.このことは,井上他(2010)により指摘されている,“消費者は自らのナレッジやスキルをサービスに適用するプロセスを通じて「価値共創者」として存在する”という,S-Dロジックの価値共創型マーケティングの共創プロセスとしても捉えることができる.

従来,ネットスーパー利用の評価は,購入に際しての時間や労力の省力化に焦点が置かれてきた.しかし,文脈価値という視点を踏まえると,その背景には,家族の健康を維持するうえで欠かせない食材を購入するための積極的な利用や,家族の食を支えつつも自身の時間を確保しながら毎日を過ごすために利用する姿が垣間見られる.さらには,明らかになった文脈価値から利用者のタイプ分類を行うことで,ネットスーパーにおける価値共創型マーケティングに向けたターゲット設定及びその検討に向けた示唆が得られた.今後はこれらのタイプについて,どのような使用プロセスを通じて価値が共創されてきたのか,文脈価値が持つ意味は時間や経験回数を重ねることでどのように変化していくのか,文脈価値形成の体系的分析が課題である.

1  PAC分析の特徴,調査手順及び用いた分析ソフト等の詳細については,清野他(2013)を参照のこと.

2  (株)マーシュ保有の消費者モニターから,首都圏在住の20~60歳代の男女500名(各年代100名ずつ)に,「最近1カ月以内にネットスーパーで食品を購入した」という条件で対象者を抽出し,2014年1月にネットアンケート調査を実施した.利用者は,女性で,同居家族のいる割合が高いことが明らかになった.これらの結果及び,20代は子供の有無等による生活実態が様々であることを踏まえ,本研究では首都圏在住の30~60歳代既婚女性を対象に,同年3月に東京都内のインタビュールームで調査を実施した.PAC分析の刺激文は「あなたは今,ネットスーパーで青果物(野菜,果物)を購入しようとしています.どのような「気持ち」や「思い」が頭に浮かびましたか.利用しようとしているあなたの状況や,買おうとしている商品の内容,他の購入場所との比較や検討,利用した後のあなたの行動など,あなたの日常シーンを思い浮かべながら,それぞれ思い浮かんだイメージやキーワードを順次お答えください」とした.なお,今回のPAC分析では,所得等の多様な属性は考慮してはいない.また,同分析は定量調査に先立っての重要なファクト・ファインディングスに役立つものの,一般化には定量分析が必要となる.これらについては残された課題である.

3  前掲注2のアンケートより,ネットスーパーで青果物を購入する年代としては,30代及び40代が他の年代に比べて高い.紙面の都合上,結果については40代の被験者を対象としてその詳細を述べる.他の被験者については個別のデンドログラムは示さず,特徴的な点のみを表1としてまとめた.

引用文献
  • 井上崇通・村松潤一編(2010)『サービス・ドミナント・ロジック―マーケティング研究への新たな視座―』同文館出版.
  •  清野 誠喜・ 鈴木  隼・ 滝口 沙也加(2013)「ノンアルコールビールテイスト飲料に対する消費者の態度―女性を対象としたPAC分析によるアプローチ―」『フードシステム研究』20(3),221–226.
  • 滝口沙也加・清野誠喜(2014)「食品購入チャネルとしてのネットスーパーの評価―文脈価値分析に向けた予備的考察―」『日本フードシステム学会・大会報告要旨集』,111–112.
  • 内藤哲雄(2004)『PAC分析実施法入門』ナカニシヤ出版.
  • 村松潤一(2010)「S-Dロジックと研究の方向性」井上崇通・村松潤一編『サービス・ドミナント・ロジック―マーケティング研究への新たな視座―』同文館出版,246.
  •  Vargo,  S. L. and  Lusch,  R. F. (2008) The Service-dominant Logic: continuing the evolution Journal of the Academy of Marketing Science 36(1), 1–10.
 
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