農林業問題研究
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個別報告論文
地域と継続的に関わる地域おこし協力隊出身者の特性と活用
柴崎 浩平中塚 雅也
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2016 年 52 巻 3 号 p. 130-135

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1. 背景と目的

これまで,農山村地域が抱える諸問題を解決するべく,いかに外部人材を活用するか,といった議論がなされてきた.その一つに都市と農村の交流の促進が挙げられる.都市農村交流は注目されて久しいが,近年では地域住民と外部人材の主体的関係を意味する「協働」など,交流の「質」の深まりに関する議論(図司,2013)や,様々な主体が地域に関わり連携を図るといった地域の主体の拡がりに関する議論(中塚,2011)など,多様な主体を農山漁村の担い手として取り込む重要性やその効果が注目されている.

都市農村交流と同様,移住・定住促進についてもこれまで様々な取組みがなされてきた.近年では,地域おこし協力隊制度など,いわゆる地域サポート人材関連施策が注目を浴びている.本研究でも取り挙げる地域おこし協力制度とは,農山漁村への定住・定着を促進することを目的とした総務省の事業であり,隊員の主な管理主体である自治体行政に隊員1人あたり400万円程の財政支援がなされている.隊員の任期は最長3年と設定されており,隊員数は今後も増員されることが予想される1.また,同制度の成果としては,約半数近くが任期終了後も当該地域に定住しているといった総務省の報告もあり,高い注目を浴びている.一方,近年ではテレワークなどの働き方や,二地域居住や流動的な居住にみられるように,地域との関わり方そのものが多様化している.そのため,地域サポート人材関連施策において,定住は目的となりうるのかといった問題提起もなされている(図司,2013).

このような背景から,外部人材を活用するにあたっては,定住を促進するという視点だけでなく,いかに継続的な関わりを創出し,農山漁村の担い手として取り込むか,といった視点も必要であると考える.地域と継続的に関わる非居住者に関する先行研究には,地域に再訪しやすい・しにくい理由を整理したもの(川見他,2008)や,継続的支援をおこなう組織の形成プロセスを明らかにしたもの(藤木他,2012),集落に関わる地域外の多様な主体の存在を把握したもの(阿部・菅原,2015)などがみられる.しかし,それらの者が地域に対してどのような感情を抱き,行動としてどういった関わりを保持しているのか,といった総合的な視点から地域との関わりを分析したものはみられない.また,地域おこし協力隊を対象とした研究は蓄積されつつあるものの,他出した者を対象とした研究はみられない.

そこで本稿では,他出後も地域と継続的に関わっている地域おこし協力隊出身者を事例とし,地域と継続的に関わる非居住者の行動的側面および心理的側面からみた特性を明らかにすることを第一の課題とした.そのうえで,それらの者が地域の担い手となりうる可能性,および外部人材を活用する主体に求められる視点を考察することとした.

2. 研究の方法

対象者を選定するにあたって,他出後も地域と継続的に関わっている地域おこし協力隊出身者から,新たな対象者を紹介してもらう,いわゆるスノーボール・サンプリングをおこなった.その結果集まった元隊員7名を対象とした.そして,各90分程の聞き取り調査を2015年6~7月にかけておこなった.

聞き取り調査の内容として,行動的側面については,地域へ訪れる頻度や目的といった訪問を有する関わりに加え,訪れる以外の関わりを尋ねた.心理的側面については以下に述べる概念を参考に,地域との情緒的・功利的な心理状態について尋ねた.

地域との心理的な関係についてはこれまで,愛着やアタッチメントなどの概念が注目され,知見が蓄積されてきた2.これらは,人文地理学や社会心理学などの分野で議論されてきた,地域との情緒的なつながりに着目した概念である.また,近年では主に組織行動論において議論されてきたコミットメント概念を地域に援用した研究もみられる3.組織へのコミットメントの主要概念は,大きくわけると2つある(鈴木,2002).1つ目は,愛着や同一化,組織メンバーとの仲間意識など,組織への好意的な感情を基に成り立つ情緒的コミットメントである.2つ目は,「活動を中止したら失うか無価値になることから首尾一貫した行動へ結びつく性質」を意味するサイドベットや,しがらみ,経済的財など,組織との功利的なつながりを意味する概念で構成される功利的コミットメントである.本稿では,これらの概念を参考にしつつ,質問項目を作成した.

なお,本稿における地域の範域は,地域おこし協力制度において市町村行政が隊員の主な管理主体となっていることから,大きくても市町村を想定した.

3. 結果

(1) 対象者の概要

対象者の概要は以下の通りである(表1).年代は20歳代後半~30歳代前半が大半を占め,最年長は50歳代前半である.性別は男性が4名,女性が3名,前職業は学生が2名,その他はコンサルタントや塾講師,写真家などである.活動地域は,山形県が3名,福島県が2名と東北地方が大半を占め,その他は徳島県と京都府である.赴任期間は,約3年が4名と大半を占めるが,約2年が2名,約半年が1名存在する.他出している期間は約2年が5名と大半を占め,他2名は約1年である.なお,D氏は任期終了時から約1年間,活動地域に居住していたため,他出している期間は約2年となっている.現居住地は,東京や大阪などの都市部の者が4名,活動地域と居住地が同一都道府県である者が3名である.それら3名は,いずれも活動地域の近隣市町村に居住している.現職は,大学や税理士事務所,公共団体に勤めている者が5名,ライターや写真家など自営業従事者が2名である.また,G氏以外は協力隊の期間を経て,職業が変更している.

表1. 調査対象者の概要
年代
(性別)
前職業 活動地域
(出身地)
任期終了時
(赴任期間)
他出期間 現居住地 現職
A 20代後半
(女)
大学院生 山形県
(福島県)
2013.3
(約3年)
約2年 東京都 大学助手
B 30代前半
(女)
まちづくりコン
サルタント職員
徳島県
(大阪府)
2013.6
(約2年)
約2年 大阪府 税理士事務所勤務
C 20代後半
(男)
大学生 山形県
(大阪府)
2014.3
(約3年)
約1年 山形県 ライター,アルバイト
D 50代前半
(男)
林業団体職員 京都府
(大阪府)
2012.3
(約2年)
約2年 京都府 NPO法人職員
E 30代前半
(女)
塾講師 福島県
(宮城県)
2013.9
(約3年)
約2年 福島県 公共団体職員
F 30代後半
(男)
公益財団職員 山形県
(神奈川県)
2014.3
(約3年)
約1年 東京都 公設秘書
G 50代前半
(男)
写真家,文筆家 福島県
(千葉県)
2013.3
(約半年)
約2年 千葉県 写真家,文筆家

資料:インタビューより筆者作成.

(2) 行動的側面

次に,活動地域との関わりに関する行動的側面として,訪れる目的や頻度など,訪問を有する関わり,および訪れる以外の関わりや目的を尋ねた.

訪れる目的をまとめたものが表2である.まず協力隊時代にお世話になった方々へ挨拶をするために訪れるといった「挨拶回り」がみられた.また,活動地域で行われているイベントや祭りへの参加,あるいは赴任期間に自身が発案し開催・復活したイベントや祭りの運営の補助のために,地域を訪れているといった関わりがみられた.これらを「イベント・祭りへの参加・補助」としてまとめた.その他には,一時的な収入源を確保するためのアルバイトや,在籍しているNPO法人の事業など「仕事の一環」として訪れるといった関わり,雪かきの手伝いや放射線量の計測など「生活の支援」として訪れるといった関わりがみられた.

表2. 活動地域を訪れる目的
訪れる目的(発言した隊員) 項目
協力隊時代にお世話になった方々へ挨拶をするため(全隊員) 挨拶回り 挨拶周り
活動地域で行われている祭りやイベントへの参加するため(F) イベント・祭りへの参加 イベント・
祭りへの
参加・補助
赴任期間に自身が発案し開催された,または復活した祭りやイベントの補助のため
(A, D, E)
イベント・祭りの補助
一時的な収入源を確保する(アルバイト)ため(C) 仕事の一環 仕事の一環
所属しているNPO法人の事業の一環のため(D)
写真の撮影のため(F)
雪かきや,収穫の手伝いをするため(D) 生活の支援 生活の支援
放射線量の計測や避難先を紹介するため(F)

資料:インタビューより筆者作成.

続いて,訪れる頻度や滞在期間をまとめたものが表3である.「訪れる頻度」は,多い者で月2回程度,少ない者で2年に1回であった.現在の居住地と活動地域(表1参照)の地理的な制約を受けるため,距離的に遠い者は地域を訪れる頻度が少なくなる傾向が伺える.例えば距離が近いE氏は,頻度が多く,距離が遠いA氏は,頻度が少ない.また,他出期間(表1参照)が長くなるほど,頻度が減少する者も存在する.例えばD,G氏は,他出した1年目は月1回程度訪れていたが,2年目になると年3回程度となっていた.「滞在期間」をみると,日帰りや,2~3泊程度,多くても1週間程度であった.現在の居住地と活動地域の距離が遠い者は宿泊する傾向が伺える.

表3. 当該地域に訪れる頻度と滞在期間
訪れる頻度 滞在期間
A 年に2,3回程度 3泊程度
B 2年に1回 2泊
C 2ヶ月に1回程度 日帰り
D 月に1回~年に3回程度 日帰り
E 月に2回程度 日帰り
F 年に1~3回程度 3泊程度
G 月に1回~年に3回程度 1日~1週間程度

資料:インタビューより筆者作成.

続いて,訪れる以外の関わりをまとめたものが表4である.主な発言をみると,まず,地域が抱える問題に関する講演活動や写真の展示会を開催するといったように,広く情報を発信するといった関わりがみられた.また,現在親交のある事業者に活動地域や住民を紹介する,移住・観光先として地域を紹介するといったように,地域や住民を他者に紹介・推薦するといった関わりがみられた.さらに,東京において農産物の販路開拓を手伝うといったように,地域間を仲介する,といった関わりがみられた.これらを「地域の仲介・紹介」としてまとめた.その他には,地域づくりに関する話をおこなうために活動地域の同郷会に働きかける,東京を訪れた自治体職員と地域づくりに関する勉強会を行う,といったように,地域づくりに関する意見交換をおこなう,といった関わりがみられた.また,定期的に住民と食事などをおこない,情報交換をおこなうといった関わりがみられた.これらを「地域住民との情報・意見交換」としてまとめた.その他にも,活動地域に関する東京でのイベントの補助や,資料づくりを行うといったような「イベントなどの補助」,活動地域の農産物を買うようにしているといった「地域商品の購買」がみられた.

表4. 活動地域との訪れる以外の関わり
主な発言(発言した隊員) 項目
地域が抱える問題に関する講演活動や写真の展示をしている(G) 地域の情報の発信 地域の
仲介・紹介
現在親交のある事業者に,活動地域や住民を紹介する(D, F) 地域(住民)の
紹介・推薦
友人・生徒へ観光先として活動地域へ紹介する(A)
移住先を探している知人に活動地域を薦める(F)
東京において農産物の販路開拓を手伝う(F) 地域間の仲介
地域づくりに関する話をするために活動地域の同郷会へ働きかける(F) 地域づくりに関する
意見交換
地域住民との
情報・意見交換
東京を訪れた,地域の自治体職員と勉強会を開催し,意見交換をおこなう(F)
定期的に地域住民と食事をする・情報交換をする(A, D, E) 地域住民との情報交換
活動地域に関する東京でのイベントの補助を頼まれる(A) イベント
などの補助
イベント
などの補助
自身が関わっていた活動に関する資料づくりを頼まれる(B)
活動地域の農産物を買うようにしている(A, E, F) 地域の農産物の購買 地域商品の購買

資料:インタビューより筆者作成.

(3) 心理的側面

次に,心理的側面から地域との関わりを明らかにするため,地域との情緒的・功利的な心理状態について尋ねた.具体的には「地域のことをどのように思っているのか」や「当該地域に住みたいと思うか」,「地域との関わりを弱くすることは可能か」,「関わりが無くなるとどのような損失を受けると考えられるか」などである.その結果をまとめたものが表5である.

表5. 心理的側面からみた活動地域との関わり
主な発言(発言した隊員) 項目
現在の関わりを発展させるといった形で関わっていきたい(D, E, F, G) 積極的な貢献意欲 貢献意欲
(賛同できる)活動に誘われたら,関わりたい(A, B) 受動的な貢献意欲
関わりたい気持ちはあるものの,今は自分のことで精一杯なので,難しい(C) 貢献意欲と現実の
ギャップ
関わっていきたいが,よそ者である自分がどこまで関わっていいのか戸惑う(A, D, F) 関わることへの
戸惑い
地域と関わる
ことや方法に
関する戸惑い
関わっていきたいが,志を共有できるような同年代の知り合いが少なく,地域の情報が入ってこないため,関わり方がわからない(A, B) 関わる方法に
関する戸惑い
地域と関わりがあることを誇りに思っている(A, B, C, D, E, F) 誇り 誇り・愛着
地域に会いたい人がおり,地域に対して愛着を持っている(A, B, C, D, E, F) 愛着
地域が抱えている問題を自分の問題のように思う(D, E, F, G) 同一化 同一化
いつになるかはわからないけど,できたら住みたい(F) 限定的な
居住意向
訪問(居住)
意向
都会も田舎もどっちも好きだから,できれば二地域居住したい(E)
住みたいとは思わない.たまに行くのがちょうどいい(A, B, C, D, G) 訪問意向
地域の人が今でも期待してくれている,地域の人からいろいろと誘われるので,地域との関わりをなくすことは難しい(D, E, F) 強いしがらみ しがらみ
関わりをなくしたくはないが,関わりを弱くすることは難しくない(A, B, C, G) 弱いしがらみ
地域でできた人間関係が心の支えになっているので,関わりをなくすことはできない(C, F) 精神的な支え 精神的
サイドベット
地域との関わりを無くしてしまうと,周囲から得られていた自分の信頼がなくなる(A, D, G) 周囲からの信頼
地域との関わりをなくす自分が悲しい・嫌だ(B) 自身の
パーソナリティ
地域との関わりがなくなると,現在できている事業ができなくなる(D) 現在おこなっている
事業・職業
経済的
サイドベット
地域での経験があって,現職を紹介してもらっているので,地域との関わりがなくなると,損失を受ける(E)
地域との関わりを今後の自分のキャリアにつなげていきたいと考えているので,関わりがなくなると損失を受けることになる(D, F) 今後のキャリア

資料:インタビューより筆者作成.

主な発言をみていくと,まず,自身が現在おこなっている活動を維持・発展させていきたいといった積極的な貢献意欲や,賛同できる活動に誘われれば関わりたいといった受動的な貢献意欲,関わりたい意向はあるものの現状が忙しく地域と関わることが困難であるといった貢献意欲と現実のギャップを確認することができた.これらを「貢献意欲」としてまとめた.一方で,自身がよそ者であることから,地域に関わることに躊躇するといった関わることへの戸惑いや,どのように関わればいいかわからないといった関わる方法に関する戸惑いを確認することができた.これらを「地域と関わることや方法に関する戸惑い」としてまとめた.また,地域との関わりがあることを誇りに思うといったことや,地域や住民に愛着を感じているといった「誇り・愛着」,地域が抱える問題を自分の問題のように感じているといった「同一化」といった項目を確認することができた.そして,可能であるならば,住みたい・二地域居住をしたいといった限定的な居住意向を確認することができた.一方で,居住意向はないが「たまに訪問するくらいがちょうどいい」といったように,訪問先として当該地域と関わり続けたいといった意向を確認することができた.これらを「訪問(居住)意向」としてまとめた.

その他には,地域住民に期待されている,何かと誘われるため,つながりを弱くすることは難しいといった強いしがらみを確認することができた.一方,「地域とのつながりをなくしたい」といった意向は保持していないものの,つながりを弱くすること自体は難しくないといった「弱いしがらみ」を確認することができた.これらを「しがらみ」としてまとめた.そして,地域での人間関係が今でも精神的な支えになっているので,つながりをなくすことはできないといった,精神的な支えを喪失することに対する懸念や,地域との関わりをなくすと,周囲から得ている信頼を失うことになるといった,周囲からの信頼を喪失することへの懸念,関わりをなくす自分が嫌だといった自身のパーソナリティへの影響に対する懸念,といった項目が確認できた.これらを「精神的サイドベット」としてまとめた.また,地域との関わりがなくなると,現在おこなっている事業ができなくなる,地域での活動があったために現在の職に就くことができたため損失を受けるといった現在おこなっている事業・職業への影響に関する懸念が確認された.その他にも,現在の関わりを今後のキャリアに活かしたいと思っているので,地域との関わりがなくなると,今後のキャリアにつながらないといった今後のキャリアへの影響に関する懸念が確認できた.これらを「経済的サイドベット」としてまとめた.

4. 結論

以上本稿では,他出後も地域と継続的に関わっている地域おこし協力隊出身者を事例とし,地域と継続的に関わる非居住者の特性を行動的側面および心理的側面から明らかにした.本節では,それらの結果をまとめたうえで,地域と継続的に関わる非居住者が地域の担い手となりうる可能性および,外部人材を活用する主体に求められる視点を考察する.

まず,行動的側面からみた特性としては,「挨拶回り」や「イベント・祭りへの参加・補助」,「仕事の一環」,「生活の支援」といったように,訪れる目的が多様であることが明らかとなった.また,訪れる頻度は少なくて1回以上,多くて月2回程度であり,滞在期間は日帰りから,長くて1週間程度であることが明らかとなった.これら頻度や期間は,現居住地と活動地域の地理的な制約を受けるため,距離が遠い者は,頻度が少なく,地域を訪れた際には宿泊し,逆に距離が近い者は,比較的頻度も多く,日帰りで地域を訪れる傾向が改めて確認された.

一方,訪れる以外の関わりとしては「地域の仲介・紹介」や「地域住民との情報・意見交換」,「イベントなどの補助」,「地域商品の購買」などが挙げられ,その多様さが明らかとなった.これまで,地域と継続的に関わる非居住者については,地域へ訪問するという直接的な関わりに関心が払われていた.しかし今回,訪問を伴わなくとも,ネットワークや情報のハブとして,またはサポーターとして地域を支えている実態が明らかとなった.今後,こうした地域外での役割を重視した視点も必要といえる.

心理的側面からみた特性としては「貢献意欲」や「地域と関わることや方法に関する戸惑い」,「誇り・愛着」,「同一化」,「訪問(居住)意向」,「しがらみ」,「精神的サイドベット」,「経済的サイドベット」などを抱えながら地域と関わっているということが明らかとなった.地域で得た経験やそこで出来た人間関係が,情緒的な要素と功利的な要素で構築されていると考えられる.

もちろん,これら明らかになった項目の程度や頻度は各人によって異なるため「地域と継続的に関わる非居住者」と一括りにして議論を深めることは難しい.しかし,本稿でもみられたように地域との関わりが自身の「今後のキャリア」と密接に関わっていることや,情緒的・功利的コミットメントは地域づくりへの参加意欲と相関が認められていること(中塚,2008)を考慮すると,今後も継続して地域と関わり続け,担い手として機能しうる非居住者の存在が示唆された.

最後に,外部人材を活用する主体に求められる視点を2点述べるとする.1つ目は,本稿で明らかにした特性を高く保持する非居住者を「定着人」として,評価・サポートしていくといった視点である.もちろん,これまでも交流人口など,常住人口とは異なる概念で地域に関わる者を捉えるといった視点も存在した.しかし,それが意味する範囲は広範であり,少なくとも本稿で明らかにした特性を捉えきれていないという点で,十分であるとは言い難い.人口の自然減少に拍車がかかる今日において,そういった視点の重要性は増していると考える.2つ目は,地域への訪問を有する関わりを促進するだけでなく,地域への訪問を必要としない関わりを促進するといった視点である.本稿でもみられたように,地域を訪問するといった関わりは,現居住地との地理的な制約を大きく受けるため,訪れる以外の関わりにも着目する必要があるといえる.

1  総務省によると,2009年の制度施行時から,隊員数は大幅に増加しており,2014年度では1,511名となっている.また,政府は地方創生政策の一環として今後も隊員数を増加させる方針を発表している.

2  例えば地域への愛着は地域活動についての熱心さ(鈴木・藤井,2008)などと強い関係があることが明らかにされている.

3  例えば中塚(2008)は,属性と経験によるコミットメントの相違を分析し,地域へのコミットメントは,企業組織と同じく情緒的・功利的コミットメントの概念で解釈が可能であったことなどを明らかにしている.

引用文献
 
© 2016 地域農林経済学会
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