農林業問題研究
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個別報告論文
カナダにおける農業経営改善支援プログラムの新たな展開
―オンタリオ州およびサスカチュワン州を事例として―
内山 智裕
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2016 年 52 巻 3 号 p. 154-159

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1. はじめに

我が国の農業経営をめぐっては,担い手の経営発展を促進するため,様々な農業経営施策が講じられてきた.平成27年3月策定の「食料・農業・農村基本計画」では,認定農業者を中心とした担い手が「主体性と創意工夫を発揮して」経営発展できるよう,重点的な支援を行うとされている.また,同年6月改定の「日本再興戦略」では,農地集積,生産コスト削減,法人数,六次産業市場規模などにおいて,意欲的な成果目標(KPI)が策定されている.

本論では,これらの目標達成のために不可欠となる「農業経営力」向上に向けた農業者の主体的な取り組みと,その支援政策について考察する材料として,カナダにおける「Growing Forward 2(以下:GF2)」を取り上げる.

カナダでは,2008年からの5年間,農業および関連産業の発展を支援するプログラム「Growing Forward」(以下:GF)が実施された.GFの中には,農業経営発展を主体的に促すプログラムが含まれる.その特徴は内山(2013)に詳しく論じられているが,簡潔に述べれば,①農業経営の強み・弱みを析出するセルフ・チェックリストの設計と活用,②セルフ・チェックに基づいた各農業経営の経営改善の取り組みに対するソフト面での財政支援,にまとめることができる.

GF2は,GFの結果を受け,2013年から5年間の予定で実施されており,農業経営改善に関するプログラムにも修正が加えられている.そこで本論では,GF2のうち,農業経営改善に関する領域の内容と実施状況について,2015年8月に実施した現地聞き取り調査に基づき整理するとともに,我が国における農業経営支援施策の在り方についても考察を加える.

2. 対象事例の概況

(1) カナダにおける歳出削減と対象州の位置づけ

カナダは,1990年代に財政の立て直しに向けて,各省庁の経費20%削減,国家公務員14%削減をはじめ,農業補助金の削減など,短期間で連邦政府予算の大幅な歳出削減を行った経緯がある.連邦制下のカナダでは,各州政府が強い財政自主権を持つため,連邦政府の予算削減を受けた各州の対応にも多様性が見られた.中でも対照的であったのがオンタリオ州とサスカチュワン州である.オンタリオ州は,州職員の給与削減,人員削減などを実施したのに対し,サスカチュワン州は,社会保障給付・公務員制度には大きな変更を加えず,その他の歳出削減や増税による財政黒字化を図った.このような対応の違いは,連邦政府と各州政府が予算を分担しているGFおよびGF2の実施体制にも影響を与えていることから,本論ではオンタリオ州(以下:ON),サスカチュワン州(以下:SK)を対象事例とする.

ONおよびSKの農業概況を示した表1によれば,トロントなどの都市が存在するONは比較的面積規模が小さいのに対し,カナダ中部のSKでは穀物・油糧種子などの大規模経営が展開している.

表1. 分析対象州の農業概況(2011年)
ON SK カナダ全国
農場数(実数) 51,950 36,952 205,730
うち油種・穀物 24.5% 77.0% 30.0%
うち肉牛 13.6% 11.7% 18.2%
農地面積(百万acre) 12.7 61.6 160.1
平均規模(acre) 244 1,668 778
農場受取総額(10億ドル) 11.9 9.4 51.1
平均年齢(歳) 54.5 54.2 54.0

(2) GFおよびGF2の実施概要

2008年から2012年に実施されたGFでは,「農業・食料産業分野の発展や持続性確保」のため,連邦・州政府が共同で様々な施策を実施した.農業経営分野では,「セルフ・チェックリスト」および「経営改善に向けたソフト面での取り組みへの助成」が行われている.

2013年から2017年の予定で実施されているGF2は,GFの成果を受け,拡充されたものである.基本的な方向性はGFと同様であるが,次の2点が異なっている.第一に,「農業・食料産業およびバイオプロダクト(Agri-Based Bioproducts)産業」を支援の対象とし,さらに「イノベーション」の発揮を強く支援することである.第二に,農業経営分野のみならず,環境分野,家畜衛生分野などの支援施策を統一的に実施する点である.GF時には,分野ごとに予算が割り当てられていたが,GF2では全体予算の枠内であれば予算執行の融通が利くため,時宜に応じて特定の分野に重点的に予算が執行できる体制となった.

3. ONにおけるプログラム実施状況

(1) GFにおける枠組み

GFの概要は以下の通りまとめられる.

第一に,プログラム実施は,①8領域165項目のチェックリストによる農業者の自己点検1,②自己点検結果に基づく経営改善計画(アクションプラン)の策定,③アクションプランに基づく経営改善の取り組みに対する助成実施,といった流れで行われる.

第二に,チェックリストは,表2で示す内容となっており,各設問に対して,緑・黄・赤の3つの選択肢(絶対基準)のうち自らの経営に最も当てはまる1つを選択するよう設計されている.具体的には,「緑」の選択が多い領域ほど,取り組みが高度であることを示す.

表2. チェックリストの内容(ON)
領域 設問 主な内容
マーケティング 27 通常出荷・農場直売等の展開や先物契約などを確認
生産 21 品質・技術や生産費・指標化などを確認
財務管理 21 財務諸表,部門別計算,投資計画,リスクマネジメントを確認
人的資源管理 8 労働法規,コンフリクトマネジメントなどを確認
社会的責任(環境) 27 環境保全,コミュニティ,業界団体などの活動を確認
継承計画 24 継承時の(個人)・経営・所有権の把握・計画を確認
事業構造 8 企業形態(会社・パートナーシップ等)の活用状況を確認
事業戦略 29 経営目標・強み・優先事項などの確認

資料:オンタリオ農業・食料・農村問題省.提供資料.

第三に,具体的な助成体系は表3のとおりである.最初に財務分析に取り組み,スキル開発,ビジネスプランニングと展開していくことを想定している.

表3. ONの助成内容(GF期)
支援対象 財務分析 スキル開発 高度なビジネスプランニング アクションプラン実行支援
支援内容 5日間の財務分析サービス(一定期間後のフォローアップ含む) リーダーシップ,戦略策定,コミュニケーションなどの研修 マーケット調査,ビジネスプラン作成(経営継承,多角化)など 契約書・法律文書の作成,ライセンス・商標・特許・認証の登録など
内容(助成率・上限額) 農業者負担100ドルとし,2,400ドル上限 受講費用の50%,3千ドル上限 専門家費用の50%,1プラン8千ドル,3プラン2万ドル上限 費用を1回限りで50%,3千ドル上限
新規就農者向け 上記と同様 75%,4,500ドル上限 75%,1プラン12,000ドル上限(3プラン上限は同様) 75%,4,500ドル上限

資料:表2に同じ.

第四に,実施を円滑化すべく民間セクターが活用されている.ONでは,州政府職員の削減時に,州内の普及事務所も大幅に縮小された.かつては州内52郡全てに事務所を設置していたが,13か所に統合された.この体制では従来の普及指導は実施不可能であることから,プログラムのデリバリーは民間団体(オンタリオ土壌作物改良協会:OSCIA)に委託し,OSCIAがワークショップ開催を通じて農業者にセルフ・チェックおよびアクションプランの策定を促している.このワークショップのコーディネーターを,農業者あるいはその配偶者がOSCIAの臨時職員として務めている.また,財務分析やスキル開発といったサービスも普及組織ではなく,民間セクター(税理士・会計士・弁護士など)が活用されている.州政府は,チェックリストの開発と助成金の支給に特化している.

(2) ONにおけるGF2実施体制

GF2では農業経営分野のみならず,他分野のプログラムも統一的に実施されている.①環境・気候変動対応,②動植物健康,③市場開発,④労働生産性向上,⑤保証システム(食品安全性・トレーサビリティ・動物福祉),⑥経営・リーダーシップ開発,の領域が設定されており,農業経営分野は③,④,⑥に含まれている.

2013年のGF2実施に当たり,農業経営分野の実施体制として,次の2点が変更された.第一に,助成応募資格の緩和である.応募者にはワークショップ参加が義務付けられていたが,GF2では一旦義務ではなくなった.第二に,助成申請の上限額が,「経営体当たり35万ドル」となり,表3にみられたような,個々の申請額の上限が撤廃された.もっとも,このような実施体制には問題があるとされ,2015年からはワークショップ参加義務と,個々の申請額の上限が復活している.その理由として,担当者は,「申請金額の高騰」「申請内容の質低下」「採択率の低下(予算制約がある中で,巨額な申請が通ると,他の申請が通らなくなる)」を挙げている.

ここで助成申請資格を改めて整理すると,オンタリオ州内で実質的な農業経営を行うこと(州内で農産物を生産し,税務申告を行う,年間農産物販売額7,000ドルが必要な農業経営登録番号を保持)とされており,経営規模や経営者の年齢といった制限は課されていない.

(3) GF2における助成内容と審査

GF2では,農業経営に関して,先述の3領域(市場開発・労働生産性向上・経営リーダーシップ開発)それぞれに関する「アセスメント」「プランニング」「スキル開発・研修」の実施に際して50%補助(上限は順に2,500ドル,10,000ドル,3,000ドル),さらに高度な内容の取り組みには,35%補助(30,000ドル上限)の支援を行っている.

このうち,アセスメントとは,市場機会,コスト低減,財務分析などを第三者に依頼する場合の費用助成,プランニングとは,新規市場開拓,労働生産性向上,継承計画などのプランニングに際して第三者から受ける助言などへの費用助成,スキル開発とは,マーケティング,労働生産性向上,経営スキルなどに関する研修受講費や教材費への助成を指す.2013–2014年の2か年において,州内で約1,300件(850万ドル)が採択されて,7割は経営・リーダーシップ開発に関するものである.

表4. ONの助成内容(GF2)
領域 アセスメント プランニング スキル開発
市場開発 市場機会に関する第三者レポート 既存市場拡大・新規市場開拓に資する第三者の助言 マーケティングスキル開発に関する教材・授業料
労働生産性向上 単位当たり労働費,流通費,廃棄物などの低減にかかる第三者レポート 労働生産性向上にかかるプラン策定のための第三者に対する費用 労働生産性に関する理解の増進,向上を促すスキル・知識,競争力を向上するための取り組みにかかる研修・教育費用
経営・リーダーシップ開発 財務・生産に関する分析にかかる第三者への費用 継承・拡大・人的資源管理・事業計画などの策定にかかる第三者費用 農場での活動,生産,経営スキル・知識などに関する研修・教育費用

資料:表2に同じ.

さらに高度な経営改善の取り組みについては,市場開発を例にとれば,市場戦略(国内外の市場情報の収集などに際しての第三者に対する費用,単発の商品テストの実行費用),付加価値化(法規チェック,原材料探索,加工にかかる活動の第三者に対する費用,商品テスト,パッケージ関連費用,新たな加工施設導入にかかる資本コスト)などがある.2013–2014年の採択実績は530件(1,300万ドル)である.

一経営あたり,同時に2つまで申請可能である(ただし少なくとも1つはアセスメント,プランニング,スキル開発のいずれかであることが求められる).申請時には,申請領域ごとの質問票に回答した上で申請書を提出する.質問票への回答および申請書の内容が審査され,採択が決定される.

なお,高度な経営改善の取り組みのうち,イノベーションをもたらすと判断された案件は,補助率が35%から50%へ引き上げられる.

以上のGF2の取り組みをGFと比較した場合,第一に,実質的に助成の枠組みに変更がないものとしてスキル開発,第二に,拡充されているものとしてプランニング,第三に,支援内容が縮小されたようにみえるものとして財務分析とアクションプラン実行支援がある.ただし,最後の点について州政府担当者は,支援内容を縮小するわけではなく,GF2が他のプログラムと統一的に実施されており,支援内容に整合性をとる必要があったこと,またGFの財務分析に当たる支援は,GF2でもプランニングや高度な経営改善の取り組みに含められるため,従前と同様の支援が可能であるとの見解であった.

4. SKにおけるプログラム実施状況

(1) SKの取り組みにおけるONとの相違

SKにおける基本的な流れはONと同様である.すなわち,セルフ・チェックによる自己評価→経営発展計画の策定→助成申請へと進む.SKの担当者は,事業の意義として,規模拡大の進展により1つの意思決定が経営に与える影響が大きくなっており,農業者のマインドセットを変えてもらうことを指摘している.

SKのONとの相違点は次のとおりである.第一に,チェックリストが簡略化されている.ONでは165項目であったのに対し,SKではONのチェックリストを参考に49項目まで絞り込んだ.第二に,セルフ・チェックや農業経営発展計画の策定は,ワークショップ形式ではなく,普及指導員との相談に基づいて行う.SKでは,州内の普及事務所に10名の農業経営分野のスペシャリストを配置している.また,担当者によれば,SKの農業者はワークショップ形式よりも1:1の指導を好む者が多い.実際,ワークショップを開催したところ,参加者が非常に少なかったという.

(2) SKにおける助成内容

SKにおいてGF時に実施した助成内容は,セルフ・チェックリスト8領域の経営改善の取り組みに関する民間サービスの活用あるいは教育・研修プログラムへの参加にかかる費用の75%,4,000ドルを上限に助成するものである.2012年4月までに約3,000人が助成を受給した.GF2開始後は,支援内容を充実させ,各領域2,000~8,000ドルを上限に,75%,総額10,000ドルまで助成する内容となっている(表5).コンサルティング費用と研修費用で助成上限額に差がついているが,州政府担当者は,コンサルティングに頼るよりも自ら知識などを身に着けようとする研修を重視しているためだと説明する.実際,コンサルティングに依頼する場合が多いと想定される経営戦略,継承計画を除き,研修を選択した方が助成上限額は高い.また,総額1万ドルまでは複数申請が可能であるが,コンサルティングは1つのみ申請可となっている.

表5. SKにおける助成上限額と採択件数(GF2)
領域 研修 コンサルティング
経営戦略 3,000(42) 5,000(220)
マーケティング 8,000(282) 2,000(259)
生産経済 5,000(232) 2,000(176)
人的資源 5,000(8) 2,000(7)
財務管理 5,000(147) 2,000(147)
継承計画 3,000(3) 5,000(285)
事業構造 3,000(22) 2,000(286)
環境戦略 3,000(0) 2,000(0)

資料:サスカチュワン農業省提供資料.

1)カッコ外はドル,カッコ内は件数.

なお,GFには青年農業者枠があり,補助率が90%に引き上げられる特例があったが,GF2では廃止されている.この点については,補助率を上げることよりも,経営発展計画作りの際に個々の事情に対応すると担当者は説明している.

SKにおける助成申請資格は,州内の居住者かつ年間農場販売総額35,000ドル以上となっている.この金額はONの5倍だが,担当者によれば,SKの平均農場規模は大きく,この制限はホビー農場を排除する程度の意味合いでしかなく,あらゆる規模・年齢の生産者が応募可能という.

(3) セルフ・チェックと助成申請の状況

1は,SKにおけるセルフ・チェックリストの回答結果のうち,「弱み」と回答した割合を比較整理したものである.GF期(2008年~2012年4月),GF2期(2013年~2015年8月)についてまとめた.両時点とも,「人的資源」「継承」に弱みを抱えていることがわかる2.2時点においてそれほど大きな差異はみられない.

図1.

セルフ・チェックの弱みの比較(2012年,2015年,SK)

資料:表5に同じ.

SKにおける助成件数は表5にまとめた.全体としてはコンサルティングの方が多い.特に,経営戦略,事業構造,継承計画は主にコンサルティングが活用されている.一方,財務,マーケティング,生産経済は研修とコンサルティングがそれぞれ活用されている.なお,助成総額は約520万ドルである.

(4) 農場における活用事例

GF2によるコンサルティング活用事例として,SK内のC農場を取り上げる.C農場は,小麦2,800エーカー,キャノーラ1,700エーカー,レンティル豆1,800エーカー,アルファルファ1,000エーカー,牧草地1,600エーカーの他,肉牛繁殖(母牛425頭),採卵鶏(24,200羽飼養)を生産する複合経営である.3世代7名が農業に従事する家族共同経営である.C農場は法人化しており,家族5名が株主となっていたが,農業を継承しない家族員の利害を反映した継承計画作りのため,GF2のコンサルティング助成を活用した.経営主は,継承計画の策定が必要だと認識していたため,プログラムの利用は時宜にかなっていたこと,農業を継承しないきょうだい・いとこの処遇が課題だったこと,3業者から提案をもらい1社をコンサルタントとして採用,会計士・税理士・弁護士がチームとして対応してくれた結果,分社化することができ,非常に役に立ったことを指摘している.

5. まとめ

以上,カナダ2州における農業経営改善支援施策をみた.2州の共通点としては,次の2点が挙げられる.第一に,農業経営の改善に向けたソフト面の支援の重要性と有効性が認識されていることである.GFからGF2への移行過程で予算が拡大している.また,その効果については,現時点では州政府担当者の主観的評価の域を出ないが,助成対象経営からフィードバックを得ることで検証する予定である.第二に,農業者による主体的な経営改善の取り組みと民間セクターの活用を重視している点である.ONとSKでは普及組織の在り方が異なることを反映し,プログラムの普及方法に違いがみられるが,実際の経営改善に向けた研修・コンサルティングは民間セクターを活用するという点で一致している3

また,2州で共通して聞かれた問題点は,アドバイザー料金の高騰であった.この点については,助成金の支給対象となるサービスを提供する業者を登録制とするなどの対策を取っているが,根本的な解決には至っていない.

最後に我が国の農業経営支援政策への含意を示したい.第一に,農業経営発展に資するソフト面での支援施策の重要性である.その際に,従来の普及事業と民間セクターの協働,さらには民間セクターの育成をいかに展望するかが課題となる.第二に,主体的な経営改善の取り組みの重要性である.我が国でも,「新たな農業経営指標」などの仕組みはあるが,活用されているとはいいがたい.農業経営指標の発展的な改訂,個々の農業経営における改善点と実際の支援内容を同調させる政策プログラム設計も必要となるだろう.

第三に,地域の置かれた農業構造や普及体制に応じた農業経営支援体制の構築である.ONでは,普及組織のマンパワー不足と,トロント都市圏を抱え,多様な農業が展開されている地域特性を反映し,民間セクターを積極的にとりこんでいる.また,SKでは,伝統的な普及体制が一定程度維持されていることに加え,自経営に関する情報を他の農業者と共有したがらない農業者気質を反映した支援体制を構築している.我が国において,農業経営の主体的な経営改善の取り組みを伝統的に支援してきたのは,協同農業普及事業である.ただし,近年では普及指導員の業務多様化や人員減少,民間による農業者支援の拡大,先進的な農業者の増大などの状況変化があり,普及事業の今後の運営方向として,公的機関が担うべき分野の取り組み強化,民間活力の活用推進,先進的な農業者とのパートナーシップの構築などの対応が求められている(農林水産省,2015).カナダでの取り組みを踏まえ,我が国において農業経営にどのような支援サービスが提供できるのか,普及事業と民間活力のあり方を,農業経営学の見地から改めて検討する必要がある.具体的には,カナダで見られたようなワークショップ形式による支援,農業者同士の情報交換による経営発展支援などを,我が国においても地域の普及体制や農業構造などの状況に応じて取り入れることが検討課題になると考えられる.

1  チェックリストの詳細は,市川・内山(2012)に詳しい.

2  人的資源管理の内容は,雇用管理(賃金決定や法令遵守),家族の役割分担,コンフリクトマネジメント,ワークワイフバランスと多岐にわたっており,これらのうちどの部分が特に「弱み」として捉えられているかは,得られた情報から読みとることができなかった.

3  内山(2014)が示すように,先進国における普及事業の民間活力活用の流れは,カナダでも同様であると考えられる.

引用文献
 
© 2016 地域農林経済学会
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