2016 年 52 巻 4 号 p. 205-210
大学を取り巻く環境が厳しさを増し,各大学が附属施設を携えて特色ある教育を展開することが困難になりつつある.そのようななか,各大学が連携し特色ある教育施設を共同利用する「教育関係共同利用拠点」制度が創設された(2009年9月より施行).この制度では,大学農場,水産実験場,実習船,留学生センター等の大学附属の教育関係施設が対象となっており,33大学57施設(2015年8月)が認定を受けている.また大学農場に限れば,7大学7施設が認定を受けている.この制度が今後どの程度継続されるのかは不透明であるが,自大学だけでなく他大学の教育も担うという,大学附属教育関係施設の今後の展開方向の1つを示していると言える.このため,大学農場においても,これまでのように自大学の実習教育を担うだけでなく他大学と連携した展開が求められてきている.
教育施設を共同利用する意義として,大学ごとに施設を保持する必要がなくなるため経費の節減が可能になる経済的意義や,様々な大学・学部が他大学の教育施設を利用する機会が生まれ,幅広い分野の専門教育や教養教育の充実化を図ることができるという教育的意義が指摘されている(広島大学,2014).一方,大学農場の農業実習については,学年や専攻によって受講意欲に差異があること(神田他,2005)や,専門的知識の習得に加え仲間づくりなど副次的効果があること(阿部・堀内,2003)が指摘されるなど,主に教育面での研究蓄積が見られる.しかし,これらは自大学の農学系学生を対象として得られた結果であり,今後求められる他大学と連携した農業実習はこれまでほとんど扱われていない.現在,拠点認定を受けた教育施設は経費の補助を受けながら教育活動を行っている.今後,こうした経済面での支援がどの程度継続されるか不透明ななか,他大学と連携した農業実習を持続的に展開していくには,まずは連携教育による効果や運営上の課題を明らかにする必要がある.
そこで本研究では,教育関係共同利用拠点制度の認定を受けた大学農場を取り上げ,第一に,他大学と連携した農業実習の実施傾向,第二に,大学農場側,利用大学側双方の連携教育実施の利点,課題を明らかにした.そして以上の結果から,今後,大学間で連携した農業実習を展開していく上での方策を考察した.
(2) 教育関係共同利用拠点「教育関係共同利用拠点」制度では,認定施設が他大学に教育を提供するにあたり,①認定大学もしくは利用大学が単位認定する科目の一環として行われること,②認定大学の教員が教育を担うこと,③利用大学の学生が負担する実習費及び提供される教育内容は,自大学の学生と同様及び同質の条件であること,④著しく不便な地域に認定施設が位置している場合は,認定大学が交通手段の確保等の必要な配慮を行うこと,という条件が設けられており,認定大学は,こうした条件を満たした教育を実施する上で必要な経費の補助を受けることができる.以上の要件を概観すると,認定大学は経費補助を受けながらも人員や経費の多くを提供する状況になっており,利用大学の負担は少ないことが伺える.
また認定期間は5年であるが,認定期間終了後,審査を経て再度認定を受けることが可能となっており,大学農場の場合,3施設が再認定を受けている(2015年8月).
本研究では,大学農場における他大学と連携した農業実習の意義や今後の展開方向を探るため,共同利用拠点として認定を受けている大学農場を対象に研究を行った.まず,全認定大学農場(7農場)を対象に資料収集,各大学農場のホームページ,一部担当者への聞き取りにて実施状況を調査し,利用大学や実施方法の傾向を明らかにした.
そして,2014年に認定を受けた神戸大学大学院農学研究科附属食資源教育研究センター(以下,神戸大学農場)を取り上げ,運営の実態や他大学実習の利点,課題を調査した.具体的には,2014年度の他大学実習の実施状況を整理し,実施日程,実施コマ数等の運営上の特徴を明らかにした.そして他大学と連携した農業実習の評価を神戸大学農場側,利用大学側,双方に聞き取りにて尋ね,利点や課題を分析した.なお調査対象は,神戸大学農場側については他大学実習に関わる教員及び技術員の計9名,利用大学側については2014年度の利用大学の担当教員6名である.調査期間は2015年2~8月である.
認定農場の他大学実習の実施状況(2014年度)を表1に示した.認定年度では,制度創設の翌年である2010年が半数近くであるが,2012~2014年の認定もありばらつきがみられる.実習内容では広島大学,宮崎大学がそれぞれ酪農,肉用牛生産と特定分野に絞った実習を行っていたが,その他は複数分野にまたがって実施していた.また,宮崎大学,神戸大学の肉用牛,信州大学の高冷地農業,静岡大学の茶のように,所在地域の農業の特徴を兼ね備えた実習を実施している農場がほとんどであった.
| 施設名 | 東北大学川渡フィールドセンター | 宇都宮大学農学部附属農場 | 信州大学アルプス圏フィールド科学教育研究センター | 静岡大学地域フィールド科学教育研究センター | 神戸大学食資源教育研究センター | 広島大学瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター | 宮崎大学フィールド科学教育研究センター |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 拠点名 | 食と環境のつながりを学ぶ複合生態フィールド教育拠点 | 首都圏における食・生命・環境の複合型フィールド教育共同利用拠点 | 中部高冷地域にける農業教育共同利用拠点―高冷野菜と畜産を組み合わせたフィールド教育― | 東海地域における暖地型農業実践教育拠点―茶・ミカン・トマトによる習熟度対応型フィールド教育― | 農場と食卓をつなぐフィールド教育拠点 | 食料の生産環境と食の安全に配慮した循環型酪農教育拠点 | 九州畜産地域における産業動物教育拠点 |
| 期間 | 2010–14年 2015–19年 |
2010–14年 2015–19年 |
2013–17年 | 2012–16年 | 2014–18年 | 2010–14年 2015–19年 |
2013–17年 |
| 実習の特徴 | 畜産,作物,森林,循環型農業に関する実習 | 酪農,作物(イネ)を中心とした実習 | 高冷地農業(キャベツ等)と畜産系等の実習 | イネ,野菜,柑橘,クリ,チャ,施設園芸等の実習 | 野菜,果樹,畜産に関する実習 | 酪農の実習が中心 | 肉用牛の生産管理に関する実習が中心 |
| 実績 | 4大学, 160人・日 |
6大学, 360人・日 |
9大学, 200−270人・日 |
15大学, 640人・日 |
11大学, 380人・日 |
9大学, 250人・日 |
9大学, 210人・日 |
| 実施形態 | 8日 公募型: 2泊3日2回,オーダー型: 0泊1日2回 |
13日 オーダー型: 1泊2日5回, 2泊3日1回 |
15日 オーダー型: 0泊1日1回, 1泊2日1回 便乗型: 3泊4日3回 |
― | 16日 公募型: 2泊3日1回 オーダー型: 0泊1日5回, 1泊2日1回, 2泊3日2回 |
12日 公募型: 3泊4日2回 オーダー型: 3泊4日1回 |
15日 オーダー型: 1泊2日2回, 2泊3日1回, 3泊4日2回 |
| 利用大学の専攻1) | 栄養1, 食産業1, 環境1,不明1 |
栄養5,環境1 | 農学1,獣医1, 看護2,語学1,不明4 |
― | 農学2,獣医1,栄養7, 食産業1, バイオ1, 生活2,福祉1,文1 |
農学6,栄養1,生物系2 | 獣医5,不明4 |
| 利用大学の所在地2) | 宮城3,東京1 | 東京3,埼玉2,神奈川1 | 長野3,埼玉1,東京5 | ― | 兵庫8,大阪3,岡山1 | 広島2,岡山1,山口1,愛媛1,香川1,鳥取1,滋賀1,神奈川1 | 宮崎2,沖縄1,山口1,大阪1,北海道1, 海外2,不明1 |
資料:信州大学(2015),広島大学(2015),宮崎大学(2015),平成27年度春季全国大学農場協議会会議資料,著者による聞き取り(東北大学)にて作成.
1)数値は延数.同一大学でも専攻の異なる学生が参加している場合があるのと,利用プロジェクトごとにカウントしているため,大学数と一致しない場合がある.
2)数値は延数.利用プロジェクト数でカウントしているため,大学数とは一致しない場合がある. また所在地は,利用学部の所在地を示している.
他大学実習の実施状況を確認すると,利用大学数は4~15大学,利用延数は160~640人・日,実施日数は8~16日であった.実習の実施形態について整理する.まず各大学農場が実施する実習タイプを,利用大学の要望に応じて日程,実習内容を計画するオーダー型,大学農場が予め日程,内容等を決め,参加者を募集する公募型,自大学の学生向けに開講している実習に,利用大学が便乗して参加する便乗型の3タイプに分類した1.各農場の実習タイプをみると,宇都宮大学,宮崎大学は全ての実習をオーダー型で実施し,神戸大学は公募型も実施していたが実施回数ではオーダー型が中心であった.一方,信州大学,広島大学は,オーダー型も実施していたが,信州大学では便乗型,広島大学では公募型を中心に実施していた.なお,これらの2大学は,それぞれ便乗型,公募型のプログラムを複数用意し,日程,内容を明示して募集活動を行っていた(信州大学,2015;広島大学,2015).実習期間については0泊1日が最短で,1泊2日,2泊3日,最長で3泊4日と様々な期間で行われていた.
利用大学の特徴を整理する.まず専攻では,農学系9,獣医系7,栄養系14,食産業系2であり,専攻が把握できた44のうち72.7%が農業との関連性の強い専攻であった.一方,看護,文学など農業との関連性が低い分野もあった.利用大学の立地では,立地が把握できた48のうち,各大学農場が所在する都道府県内と所在県から隣接2県以内2の近隣県の立地が各18(37.5%)であり,比較的近距離からの利用が75%を占めていたが,遠隔地からの利用も25%存在していた.また神戸大学,宇都宮大学という大都市圏の近隣に位置する大学農場では,所在県内もしくは近隣県内からの利用がほとんどであったが,近隣に大都市がない信州大学,宮崎大学では遠隔地からの参加が中心となっており,大学農場の所在地によって異なる傾向が見られた.
本研究では,他大学実習の運営実態や評価を明らかにするため神戸大学農場を事例として選定した.神戸大学農場は,拠点農場のなかでも利用日数も多く,幅広い形態で実習を行っているため,多くの知見が得られると考え事例として選定した.
神戸大学農場は,兵庫県加西市に位置し,敷地面積は約40ha,実習基盤として作物(イネ,バレイショ,タマネギ),果樹(ナシ,ブドウ,カキ),畜産(但馬牛)の生産活動が行われている.また専任教員6名が所属しており,うち1名は他大学実習を拡大するにあたって配置された人員である.農業実習は,6名の専任教員と技術職員13名が担当しており,自大学の農学部向けには6科目を開講している.
(2) 他大学実習の運営状況運営体制として,利用大学との窓口となり全体のコーディネート業務をおこなう教員1名を充てており,利用大学との日程や実習内容の調整を行っている.また実習自体は,自大学の実習と同様に専任教員と技術員が担当しており,1コマに対し教員1~2名,技術員1~3名が実施する体制であった.
他大学実習の受入れ方法として,公募型,オーダー型,便乗型のプログラムが用意されていた.公募型では,他大学の実習利用の機会を設けるため大学コンソーシアムひょうご神戸(以下,コンソーシアムと記す)3の単位互換科目として「農場と食卓をつなぐフィールド演習」(以下,フィールド演習と記す)を開講しており,コンソーシアムを通して加盟大学の学生を主な対象として募集していた.
次に,運営上の特性を明らかにするため,2014年度の他大学実習を取り上げ,実施概要を整理し表2に示した.2014年は,公募型である「フィールド演習」と7つのオーダー型実習が実施されていた.また便乗型実習自体は用意されていたが,応募がなく実施されていなかった.「フィールド演習」には,コンソーシアムを通して神戸親和女子大学文学部,神戸松蔭女子学院大学人間科学部(栄養系,生活系)の学生が参加していたほか,関西国際大学人間科学部(食産業系),美作大学大学院生活科学研究科(栄養系),相愛大学人間発達学部(栄養系)の学生も参加しており,合計5大学が利用していた.また実習日程をみると,9月に集中的に実習を実施していることがわかった.なお,実習は9月以外にも5,6,10月に行われているが,5月の兵庫大学の実習以外は土曜,日曜と休日での実施であった.これは,利用大学のカリキュラム上,授業期間中は平日での実施が難しいことや,複数日程を確保できるのが学生の夏季休暇中に限られるためであった.
| 利用大学及び科目 | 大阪市立大学生活科学部 | 兵庫大学健康科学部 | 兵庫大学健康科学部 | 兵庫県立大学環境人間学部 | 神戸女学院大学人間科学部 | 大阪府立大学生命環境科学域 | 吉備国際大学地域創成農学部 | 農場と食卓をつなぐフィールド演習 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 方法 | オーダー型 | オーダー型 | オーダー型 | オーダー型 | オーダー型 | オーダー型 | オーダー型 | 公募型 |
| 日程 | 5/24土, 9/4木-5金 |
5/27火 | 10/19日 | 6/14土 | 9/11木- 13土 |
9/16火- 18木 |
10/4土 | 9/1月-3水 |
| 学年 | 1–3年生 | 4年生 | 3年生 | 1年生 | 3,4年生 | 1,2年生 | 2年生 | 2–4年生, 修士1年生 |
| 時間1) | 3,7コマ | 3コマ | 10コマ | 2コマ | 11コマ | 20コマ | 4コマ | 19コマ |
| 人数 | 16名 | 7名 | 80名 | 35名 | 16名 | 19名 | 47名 | 24名 |
資料:著者による聞き取り.
1)1.5時間を1コマと換算して算出した.なお,学生数や実習内容によっては学生を2~3班に分け,同時に2~3の実習を実施している場合があり,その場合,個々の実習ごとにコマ数を数えた.
実施負担に直接関係する実施コマ数を確認する.結果,合計で79コマの実習が行われていた.大学教育では通常1科目15コマであることを基準にすると,4~5科目に相当する実習を提供したこととなる.また,そのうち57コマが9月の実施であり,実習が集中していることを示す結果となった.
(3) 実習の評価・意向 1) 大学農場側の評価大学農場の評価について,担当教員,技術職員に対し,聞き取りにて調査した結果を表3に示す.
| 利点 | ・拠点認定に至り,特別経費が申請できた. ・多様な専門の学生に対応するため教員,技術員の教育に対するモチベーションが向上した. ・多様な専門の学生に対応するため,実習内容や説明方法を見直すきっかけとなった. ・実習内容を充実させるために作物の種類を増やすなど,新しい取組みにチャレンジするきっかけとなった.また,他大学の実習だけでなく,自大学の実習内容の向上にもつながった. |
| 課題・今後の意向 | ・担当教員の任期切れ後,対応が困難になる. ・自大学の実習も同時期に行われているため,9月のほとんどが実習日となり負担が大きい. ・立場によるが,他業務に割く時間が減少する. ・日帰りや1度きりの実習が多く,十分な教育効果があるのか不安. ・食や栄養といった農場(農学部)が有していない知識を持つ学生が実習に来ているので,農場の取組みを一緒に考えたり,相互学習的な実習を行えれば農場としてもメリットも大きい. |
資料:著者による聞き取り.
まず利点として,拠点施設の認定を受けたことにより特別経費が得られるといった経済的な利点のほか,教育の質的向上,モチベーションの向上と教育面でポジティブな評価がされていた.
一方,課題としては,専任教員の任期切れ後の負担増加,特定時期への実習集中による負担増加,及び他業務に用いる時間の減少といった労働負担の増加が示された.また,日帰りや1度のみの実習が多いため,教育効果を不安視する意見もあった.さらに,今後の実習意向として,栄養系など神戸大学農場が有していない知識をもつ学生や教員が実習に参加しているので,神戸大学農場の生産物の販売方法について意見交換するといった相互学習的な内容の実習ができれば,利点も大きいという意見もあった.
2) 利用大学側の評価利用大学の担当教員に対し,実習の評価および今後の意向について聞き取りにて調査を行った4.結果は表4に示す通りである.まず,実習内容には全担当教員が満足しており,次年度も参加したいとの意向が得られた.また,利用大学によってカリキュラム上での実習の重要性は異なるものの,利用大学の専門教育,教養教育の質的向上に役立っていると評価されていた.さらに一部の大学では,カリキュラム上必要にもかかわらず自大学では賄えない教育活動を神戸大学農場が担っていることも示された.
| 利点 | ・実習は満足しており今後も参加したい(全大学) ・カリキュラム上必要であり,また自大学では(施設がないため)実施したくてもできない内容を実施できている(大阪府大,吉備大) ・カリキュラム上必要ではないが,専門分野の教育上必要と考えている内容を教えることができる(兵庫大,兵庫県立大) ・大学の方針として現場学習を重視しているため,実習を提供してもらえるのは有難い(関西国際大) ・専門性というよりも教養教育としてフィールドで体験しながら学ぶことに意義を感じている(神戸女学院大,大阪市大) ・農村体験と比べ,短期間で幅広い内容を経験できる点が良いと感じている(大阪市大) |
| 課題・今後の意向 | ・学内での予算措置が難しいため,(バス代等の)経費負担が必要になれば,参加を取りやめる可能性が高い(兵庫県立大) ・管理栄養士を養成する上で,実習の必要性は高いと考え参加しているが,カリキュラム上実習は必要ない.そのため,今後カリキュラムの改変によっては参加できなくなる可能性がある(兵庫大) ・本来であれば複数日程実習を組めればいいが,学内のカリキュラム上難しい(吉備大) ・(バス代等の)経費負担が必要になった場合,自大学で措置できると考えているため,継続して参加したい(吉備大,神戸女学院大,大阪府大) |
資料:著者による聞き取り.
一方,課題,今後の意向については,カリキュラム,財源に関する内容がみられた.カリキュラムについては,利用大学のカリキュラムが学外での実習実施に対応していないため,今後の実施や実習プログラムを発展させる上で制約があることが示された.また,財源については,拠点制度の財源がなくなれば,利用大学側での財源の確保が難しいため,実習を取りやめる可能性が高いとの意見がある一方で,利用大学側で財源を確保して実習を継続したいとの意向もあり,利用大学の置かれている状況によって意向が異なっていた.
本研究は,大学農場が他大学と連携した農業実習を持続的に担う方策を検討するため,第一に教育関係共同利用拠点制度の認定農場における他大学実習の実施状況を調査し,実施傾向を明らかにした.第二に神戸大学農場を事例に,運営実態並びに大学農場側,利用大学側の利点や課題を分析した.
利用大学の傾向として,栄養系,農学系,獣医系といった食や農業に関連性の強い大学・学部の利用が多いこと,また,利用大学の立地は大学農場の近隣だけでなく,遠隔地からの参加も25%を占めていること,実習受け入れ方法として,公募型,オーダー型,便乗型の3タイプ存在し,オーダー型主体で実習を受け入れている大学農場が多いことがわかった.また,神戸大学農場を事例とした分析から,利用大学のカリキュラムの都合上,学生の夏季休暇中に実習が集中しやすいことが明らかになった.
そして大学農場側の実習評価,今後の意向として,教職員の教育モチベーション,実習内容の質的向上のきっかけとなる一方で,特定時期に実習が集中するため負担も大きいことが示された.さらに,利用大学側の評価・意向として,実習への満足度は高く,一部の大学ではカリキュラム上不可欠な科目となっているなど高く評価されている一方,財政的,カリキュラム上の制約があり,大学によっては継続した実施が困難な可能性があることが示された.
(2) 他大学と連携した農業実習の展望以上の結果から,他大学と連携した農業実習を展開する上での教育関係共同利用拠点の意義と課題を考察する.まず農業と関連性が強い分野を中心に多様な分野の大学が実習を実施していたこと,事例として取り上げた神戸大学農場では,一部の利用大学にとってはカリキュラム上不可欠な科目として実施されていたことから専門教育の充実化に寄与していると評価できる.加えて,農業との関連性が低い分野の大学の参加も見られ教養教育の充実化においても貢献していることが指摘できる.
一方,実習受け入れの労力負担が大きいことが確認された.また,大学農場側の利点として,財政的支援,実習内容の質的向上,教職員のモチベーションの向上が確認されたが,このうち財政的支援が最も大きく,他の2つは副次的な利点と考えられる.そのため,今後,財政的支援がなくなる可能性があることを考えると2つの利点をより発展させる必要性が示された.
以上の状況を踏まえ,大学間で連携した農業実習の運営方法として2点示したい.1点は,公募型,便乗型実習の活用である.現在,多くの大学農場ではオーダー型実習を中心に利用大学を受け入れている.オーダー型の場合,利用大学の要望に細やかに対応できるが,利用大学ごとに実習を組むため全体の実施日数が増え,労力的負担が大きくなる.そこで今後は,自大学向けの実習に便乗して実施する便乗型,複数大学を一度に実施できる公募型の実習に移行していくことが望ましい.そのためには,予め他大学の利用を想定したスケジュールの調整や,レベルに応じたプログラムの策定が必要である.なお,便乗型を中心に実施していた信州大学は,便乗型実習のプログラムを複数用意し,日程,実習内容を明示して募集活動を行っていた.当然この募集内容のみが,便乗型中心で実施できている理由ではないが,利用大学に便乗型への参加を促す上で,重要な活動であると言える.もう1点は,相互学習型実習の導入である.他大学の実習では,農学以外の多様な専門を有する学生が実習に参加している.こうした専門知を自大学の学生が学んだり,大学農場が抱える課題の解決に生かすことができれば,大学農場側の利点も発展できると考える.