2016 年 52 巻 4 号 p. 211-216
近年,地域貢献への若者への期待はますます高まりつつある.特に,文科省が進めるCOC事業など,大学の機能分化,生き残り戦略の中で,多くの大学生が地域貢献活動に参画するようになっている.大学生や大学への期待は高まっているが,こうした動きを一過性のブームに終わらせないためにも,地域連携活動の効果を適切に評価し,地域の持続的な発展に資する活動としていくことが課題となる.
活動評価については,地域連携活動は目に見える成果が期待されるため,活動を通してのアウトプットやその量といった,いわば外的効果に目を奪われがちである.それ自体は問題ではないものの,通俗的に「魚を与えるより,魚の釣り方を教えよ」という言葉があるように,関係する主体の力量を高めていくこと,地域へのインプットやその質といった,いわば内的効果に目を向けるべきである.特に,大学生の地域への関与には時間の制約やコストなどからくる限定性があるため1,ひとつの連携先に継続性をもって外的効果(「魚」)を与え続けることは容易ではない.しかしながら,このような地域連携活動の内的効果を,どのように捉え,評価すべきかについて,十分な検討はされていないのが現状である.
そこで本研究では,大学生が中心となる地域連携活動が,具体的にどのような内的効果をあげているのかを明らかにすることをとおして,評価の枠組みを提示することを目的とした.なお,本研究では,地域連携活動の内的効果を,個人・組織・地域の3層から分析する.それは「個人,組織,社会などの複数のレベルを別個にアセスしたのでは,相対としての視点を失いかねない」ためである2.
さらに,分析枠組みについては,独立行政法人国際協力機構(2008)のCPI(C=キャパシティ,P=パフォーマンス,I=インパクト)モデルを骨格とし本論文における分析の枠組みとした.
社会開発における内的効果を重視した発展の概念としては,エンパワメントとキャパシティ・ディベロップメントという概念がある.前者は,「人々が他者との相互作用を通して,自らの力量を高め,自律し自尊した最適な状況をつくりだしていくプロセス」と定義できる3.後者は,独立行政法人国際協力機構(2008)によると「途上国の課題処理能力が,個人,組織,社会など複数のレベルの総体として向上していくプロセス」と定義されている.エンパワメントとキャパシティ・ディベロップメントの概念は,個人・組織・地域(組織の環境基盤)が力量をもつべきであるとする点で重なるが,キャパシティ・ディベロップメントは,組織を基点に包括的なプロセスを促進することに力点がおかれている4.
いうまでもなく,本研究の方向性としては,学生団体さらには地域連携組織を基点として地域の力量を高める方法を志向している.大学の地域連携活動は,学生の教育の機会でもあるが,地域にとっても自らの力量を高め,将来ビジョンを再選択する機会でもある.既往研究では,地域連携活動が学生に及ぼすセルフエンパワメントに関する研究はあるが5,地域側のキャパシティ・ディベロップメントに力点を置いたような研究は本領域ではみられず6,その効果を測る指標の検討が課題となっている.
(2) 研究対象と調査方法事例対象として,Enactus7(36カ国1,700大学,7万名が参画する大学生の起業家精神を養成する国際的プログラム)という学生プロジェクトの国内大会の過去10年間の優勝・準優勝プロジェクトを選定した(表1).
| No | 大会名 | 大学名 | 主な地域課題 | 題名/概要 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | SIFE2006 優勝 |
高崎経済大学 | 地域就労支援 | Human Resources Development Local Community Revitalization/ 若者の若者による若者ための総合的な就活・社会参画の仕組み |
| 2 | SIFE2006 準優勝 |
滋賀大学 | 地域観光振興 | Promoting Hikone City Tourism/ QRコードをつかって携帯を活用し彦根観光を振興する仕組みを構築 |
| 3 | SIFE2007 優勝 |
滋賀大学 | 地域観光振興 | Preserve the historical heritage of smaller cities through tourism/ QRコードをつかって携帯を活用し彦根観光を振興する仕組みを運用 |
| 4 | SIFE2007 準優勝 |
一橋大学 | 高齢化地域支援 | Revitalization of Fujimidai Shopping Arcade/ 老齢化した団地の商店街に大学と市民が連携してコミュニティスペースを経営 |
| 5 | SIFE2008 優勝 |
大阪芸術大学 | ゴミ削減 | Changing the world through the power of Design/ 大学生のデザイン力を活かして包装廃棄物を削減するプロジェクト |
| 6 | SIFE2008 準優勝 |
京都大学 | ゴミ削減 | Miyacology, Moppen/ ReduceとReuseを促進するために,WEBサイトや著作,イベントを開催 |
| 7 | SIFE2009 優勝 |
関西学院大学 | 地域就労支援 | CASA de Asia在日アジア女性の働く場づくり/ 女性の強みであるクッキングスキルを活かし母国料理を提供するビジネスを開発 |
| 8 | SIFE2009 準優勝 |
滋賀県立大学 | ゴミ削減 | A RECYCLING System of Waste Plastic/ 廃棄プラスチックからリサイクルプランターをつくるプロジェクト |
| 9 | SIFE2010 優勝 |
滋賀大学 | 地域観光振興 障害者支援 |
彦根いきいきプロジェクト/ 06–07年の情報サービスに加え作業所の経営の合理化のために経営指導を実施 |
| 10 | SIFE2010 準優勝 |
神戸芸術工科大学 | 障害者支援 | ミックスサイダー 知的障害者アートを商品化/ 学生がデザインを通して障害者の自立を支援する新しいブランドビジネス |
| 11 | SIFE2011 優勝 |
早稲田大学 | 教育格差解消 | e-educaton/ バングラディシュの農村部の高校生を対象としたDVDによる授業 |
| 12 | SIFE2011 準優勝 |
関西学院大学 | 地域就労支援 高齢化地域支援 |
アジア人女性就労支援,限界集落活性,フェアトレードショップ社会 企業サポートセンターを拠点に国内外の8つ社会的課題解決に挑戦 |
| 13 | SIFE2012 優勝 |
早稲田大学 | 教育格差解消 地域観光振興 |
e-education,REC佐渡旅プロジェクト/ 昨年度優勝したe-educationの試みを4カ国に展開.佐渡でも観光開発を実施 |
| 14 | SIFE2012 準優勝 |
京都大学 | 地域固有性の継承 | 日本最高峰の宇治抹茶本簾手摘の抹茶農家を守るプロジェクト 1件残る伝統的な栽培方法である宇治「手摘み本簾」茶農家を守るプロジェクト |
| 15 | Enactus2013 優勝 |
滋賀県立大学 | ゴミ削減 障害者支援 |
Hanawa 廃棄物バスターズ/ペットボトルキャップからリサイクルプランターをつくり,リースして作業所がメンテナンスサービスを提供 |
| 16 | Enactus2013 準優勝 |
兵庫県立大学 | 地域固有性の継承 | 播磨の在来種をつなぐことで地域を元気にする/もちむぎ,はりま王にんにくという在来品種を食育等に活用し次世代に地域継承するプロジェクト |
| 17 | Enactus2014 優勝 |
兵庫県立大学 | 地域固有性の継承 | 在来種で地域を元気に/播磨の風土に根ざした3つの在来品種を活用し,次世代に品種の多様性を継承するプロジェクト |
| 18 | Enactus2014 準優勝 |
早稲田大学 | 教育格差解消 | 日本語の森―オープンエデュケーション×日本語教育/youtubeを利用したオープンエデュケーションで外国人向け質の高い日本語教育環境の提供 |
| 19 | Enactus2015 優勝 |
琉球大学 | 地域観光振興 | 修学旅行というツールを活用した学校現場の学習機会創出プロジェクト/高校生の修学旅行を主体的に学べる平和教育等の教育外教科を行う旅行として提供 |
| 20 | Enactus2015 準優勝 |
金沢芸術工芸大学 | 高齢化地域支援 地域固有性の継承 |
N-project―若者が能登も農業も日本酒も盛り上げる!―/ 学生が日本酒をプロデュースし.酒造りからラベル作りまで実施 |
資料:各チームのアニュアルレポートに基づき筆者が作成
このプログラムの優劣は1年間の実践の成果をセルフアセスメントしたアニュアルレポートと当日プレゼンテーションした内容を,企業の実務家やNPO代表などが審査して決定する.研究対象とした理由は,日本では10年以上,世界では1975年以降,継続的に続いている世界的プログラムであり,ビジネスモデルやプランといったアイデアでなく,活動実績を重視する点,その後の影響や展開の有り無しも確認できる点からである.
調査方法は,第1に,過去10年分(2006年から2015年)の優勝・準優勝チームがプレゼンテーションに際して提出したアニュアルレポートを入手し事例分析をおこなう.第2に2012年から2015年までの4大会において参与観察し情報収集を行った.第3に,Enactus Japanの事務局を訪問し,共同代表らと意見交換を行った.
まず,どのような地域課題に対応した活動であるのかを整理した.CPIでは,Iのインパクトにあたる.20事例のアニュアルレポートに記述された活動内容から,地域連携活動がインパクトを与えた地域課題は7つに区分できた.若者や滞日アジア人の地域就労支援(事例1,7,12),地域観光振興(事例2,3,9,13,19),高齢化地域支援(事例4,12,20),ゴミ削減(事例5,6,8,15),障害者支援(事例9,10,15),教育格差の解消(事例11,13,18),地域固有性の継承(事例14,16,17,20)に整理できる.地域課題は1事例に1つというわけではない.1年間の成果の中に,①別々の地域課題解決を別々のプロジェクトとして実践(事例9,12,13),②同一課題で複数のプロジェクトを関連づけて実践(事例1,4,6,9,16,17)や,③別々の地域課題を一つのプロジェクトで融合して解決する実践(事例15,20)の3つに整理できた.②については,プロジェクトで得た成果を水平に展開することで,その有効性を実証する事例も確認できた.③については,例えば,事例15ではゴミ削減のために廃棄プラスチックで製造したプランターを,作業所が管理することで,障害者支援に展開させている.
(2) 経済・社会・環境へのパフォーマンス次に地域課題に対して,学生たちの活動がどのようなパフォーマンス,すなわち成果を与えたのか整理する.CPIでは,Pのパフォーマンスにあたる.ここでは持続可能な発展の3ボトムである環境・経済・社会の視点から成果を整理した.
まず,経済への成果としては,起業家的アプローチによる,売り上げ創出と経費の削減である.前者には,商品開発やPRなど利用促進・販売拡大(事例2,4,10,14,15,19,20)や,間接的な手数料の徴取(事例3,6,18),農産物の産地化(12,16,17),訓練を通じたサービス向上(事例7)があった.後者に関しては,訓練費用削減・低コストな教材提供(事例11,18),廃棄コストの削減(事例8,15),栽培コストの削減(事例16,17)への影響がみられた.環境への影響は,資源利用の削減(事例5,6,7,15),移動負荷の削減(事例4,11,13),地球にやさしい代替方法への転換(事例10,16,17),耕作放棄地等の遊休資源の活用(事例12,20)への影響である.社会への影響は具体的には,ターゲットへの教育訓練の提供(事例1,5,7,9,11,13,18,19),WEB・メディアでの社会へのリーチ(事例2,3,6,10,16,17),啓発交流などターゲットへの直接体験の提供(事例14,16,17),店舗や商品製造等の共同経営(事例4,8,20),担い手・雇用の創出(12,15,16,17)への成果である.
(3) 個人・組織・地域の力量獲得効果次に,CPIにおけるCにあたるキャパシティへの影響を個人・組織・地域の3つの視点から整理する.
個人の力量獲得の効果については表2のように整理できる.学生(事例1,11,13),外国人(事例7,11,12,13,18),消費者(事例5,6),農家(事例14,16,17),店主(事例3,9),障害者(事例10,12,15)が対象となった.その第1は,学生や外国人や農家などが〈知識やスキルの獲得〉機会を得るケースである.第2は〈社会的役割の獲得〉のケース,第3は消費者などに〈新たな選択肢の獲得〉機会を提供する事例に整理できた.
| 〈知識やスキルの獲得〉 |
| ・410名の大学生が就労知識や経験を習得(1) ・日本語能力N2級の合格者の輩出(18) ・屋台,ケータリング,カフェなど,段階的に挑戦(7) ・年収分の教育を無料受講し 18名が現役合格(11) ・バングラディシュでは30人の大学合格者を輩出(13) ・開発した観光メニューを農家に運営方法を伝達(14) ・店主の情報発信スキルの獲得(3) ・在庫管理,販売戦略,人材管理のノウハウの獲得(9) ・売り上げや販売について考える機会(10) |
| 〈社会的役割の獲得〉 |
| ・メンテナンスを担うことで社会的役割を獲得(15) ・自分たちの絵や裁縫で社会参画する方法(10) ・障害者やひきこもりをクレソン栽培で雇用(12) |
| 〈新たな生活選択肢の獲得〉 |
| ・アートなエコバックを購入し1万名が使用(5) ・2Rに関連ショップや活動に出会う機会を提供(6) ・栽培農家や地域の担い手に在来品種へ関わるきっかけを提供(16,17) |
資料:各チームのアニュアルレポートに基づき筆者作成.
組織への力量獲得の効果は,表3に示すように整理できる.対象としては,作業所(事例9,10,12,15),企業(事例6,8,10,14,18,20),店舗(事例2,3,6,14),高校(事例19),NPO(事例6,7,10),各種支援センター(事例1,7,12,16,17,19)となっている.その効果は,第1に,〈担い手やリーダーの獲得〉である.第2は,〈ビジネスパートナーの獲得〉である.第3は〈カウンターパートとなるNPOの獲得〉である.第4は〈活動の認知の拡大〉,第5は〈大学からの支援の獲得〉に整理できた.
| 〈担い手やリーダーの獲得〉 |
| ・有名な教師が教材作成.OB/OGが講演会で啓発(18) ・海外の大学生との協力体制の構築(13) ・作業所の職員が経営知識を取得(9) ・栽培する担い手の増加(17) ・地域雇用3名,障害者の複数名雇用(12) ・学生による株式会社の設立(19) |
| 〈ビジネスパートナーの獲得〉 |
| ・広告収入により無料で受講できる体制を構築(18) ・株式会社を設立し旅行代理店と連携(8) ・リユース店舗199店と連携して手数料を得る(14) ・百貨店や関連企業と連携して商品化して販売(10) ・米農家と酒蔵,印刷会社と連携し商品を提供(20) ・企業と行政と連携して店を紹介するサイトを設置(6) |
| 〈カウンターパートとなるNPOの獲得〉 |
| ・NPOと産学連携でトレーニングの場を提供(7) ・卒業生のNPOと大学研究室が連携して取り組む(6) ・就労支援センターを中心に産学官連携して支援(1) ・作業者と3つの企業とで協議組織をつくり推進(15) ・NPO設立し大学生と市民が共同で店舗経営(19) |
| 〈活動の認知の拡大〉 |
| ・新聞やメディアでのPR(8,10,14) ・作業所利用者の仕事を社会で見える化(15) ・PRイベントでの体験提供(16,20) ・SNSによるネットワーク拡大(6,12,16,18,20) |
| 〈大学からの支援の獲得〉 |
| ・ゼミを核に産学官民でリサイクルシステムを構築(8) ・市観光課と大学が連携し,店舗との連携(2,3) ・地域連携センター,社会起業サポートセンター等の支援(7,12,16,17,19) ・学生団体が連携してレシピ等開発を役割分担(16,17) |
資料:各チームのアニュアルレポートに基づき筆者作成.
地域の力量獲得の効果については,表4に示すとおりである.過疎地域(事例12,20)や地方都市(事例2,3,8,16,17,19),郊外団地(事例4)が対象となっている.その効果は,第1に〈ビジネスモデルの豊富化〉,第2に過疎地域や地方都市の〈地域イメージやブランドの向上〉,第3に〈地域の誇りの再生〉に整理できた.
| 〈ビジネスモデルの豊富化〉 |
| ・廃棄プラスチックを利活用するビジネスを獲得(8) ・沖縄への修学旅行で教科外教育が可能に(19) |
| 〈地域イメージやブランドの向上〉 |
| ・観光客が携帯で簡易に地域情報を獲得(2,3) ・世代間で交流できる団地の居場所づくり(4) ・耕作放棄地のクレソン栽培の産地化(12) ・在来品種レシピを親子食育教室で地域還元(16,17) |
| 〈地域の誇りの再生〉 |
| ・在来品種を地域特産品としてPR(16,17) ・能登,農業,日本酒を若者に向けてPR(20) |
資料:各チームのアニュアルレポートに基づき筆者作成.
地域の力量獲得という内的効果を持続的に発展させることで,継続的な外的効果の発揮が期待できる.
特に,受賞事例の中には,受賞後も持続的に取り組みを発展させて,数年後にさらなる効果をあげて受賞している事例も確認できる(事例2・3・9,事例7・12,事例8・15,事例11・13,事例16・17).つまり,大会後も,継続的に改善に取り組むことで,外的効果を持続させ発展する活動もある.さらに,複数回受賞をしていない活動の中にも,内的効果を持続的に発展させ受賞に結びつけた実践(事例5,19,20)もある.
そのような事例がどのような内的効果を持続的に発展させる方法をとっているかについて整理すると以下の5つに整理できた.大学の地域連携部門が基盤となり,大学の資源を活かし内的効果を持続させた活動(事例16,17),前節の個人への内的効果で示した教育・職業訓練などの結果,エンパワメントされた対象者が新たな担い手となり,地域側に教えあう互助関係が生まれ持続的発展性が担保された活動(事例11,13),NPOが中間支援し産学官民の連携や協議組織により持続がはかられる活動(事例2,3,7,9,12),企業がビジネスパートナーになり商品販売を担う活動(事例5,8,15,20),学生が株式会社を設立し持続する活動(事例19)である.つまり,内的効果を持続的に発展させるためには,地域の中でも組織の力量を高めるプロセスデザイン8が特に有効といえる.
本研究の知見を,地域連携活動の内的効果モデルとして整理したのが図1である.

地域連携活動の内的効果発展モデル
本論では,個人・組織・地域の3層における学生活動の効果を分析した.結果,その効果は,個人においては知識・スキルの獲得,社会的役割の獲得,新たな生活選択肢の獲得の3つに整理できた.組織においては,担い手やリーダーの獲得,ビジネスパートナーの獲得,カウンターパートとなるNPOの獲得,活動の認知の拡大,大学からの支援の獲得の5つに整理できた.地域においては,ビジネスモデルの豊富化,地域イメージやブランドの向上,地域の誇りの再生の3つに整理できた.また,こうした内的効果を持続可能にする方法として,支援対象者が新たな担い手となる好循環の構築,企業との連携,NPOとの連携,大学の資源を基盤とした地域連携,学生の起業の5 つの仕組みが抽出された.これらは,今後の大学生による地域連携活動の内的効果を評価する具体的な指標として活用できると考えられる.
いうまでもなく,大学生の活動という特性上,地域への内的効果以上に,大学生自身がセルフエンパワメントされていることも忘れてはならない8.一方で,大学生が良いと考える活動を,必ずしも地域も良いと思うわけではない9.今回の研究で提示した枠組みを活用しながら,大学生による地域連携活動の内的効果を個人・組織・地域の三層で自己点検して,相互チェックすることが重要である.つまり,直接的アプローチで魚(外的効果)となる「目に見える影響をあたえる」ことが目的ではなく,間接的アプローチで,「釣り方」となる「地域課題解決のために相互に力量を獲得し自らできることを増やす」ことに力点をおくべきである.あえて極論するなら,短期間に1,000人に魚を渡すことが使命ではなく,1人にいかに質の高い魚の釣り方を連携で生み出すか,すなわち,課題解決に必要な外的効果から逆算して,一人一人の力量を高める間接的アプローチが,長期的に有効となろう.また,大学の支援機関は,そうした働きかけを行えうる経験豊富な地域人材を,いかに戦略的に蓄積していくかが今後の課題である.
なお,本稿では,活動の評価指標に関しては,学生の活動実態をもとに,その枠組みを示すに留まっている.具体的な評価をおこなうためには,この枠組みを基礎に,定性的,定量的な評価指標の開発が不可欠である.今後の研究課題としたい.