農林業問題研究
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個別報告論文
米の価格形成の要因分析
万 里
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2016 年 52 巻 4 号 p. 217-222

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1. 緒論

米は日本農業の基幹作物であるだけに,その政策,市場流通,価格に関する研究は多数あり,農林水産省も米に関する統計データを充実させている.近年では,荒幡(2014)は減反40年における農政,米の生産費,単収などの国際比較,減反面積の配分方式,土地利用及び過剰在庫,減反補助金,日米の生産費減反率弾力性の計量比較分析などを行った.稲熊(2014)は政策の転換,生産調整の見直し及びその課題を分析した.薬師寺(2002)は自主流通米と計画外流通米の価格関係を分析し,小池・三島(1994)は自主流通米と政府米の流通構造の変貌を取りまとめた.また,小池(相原)(2013)は米市場に関する研究成果を取りまとめた.しかし,今までの研究では,農政の転換,または自主流通米,政府米,計画外流通米など,農政による流通方法が違う米の類別間の分析,或いは非定常時系列による分析期間内の長期的傾向性を含む計量分析が多かった.

本論文では,米の政策転換に伴う生産,流通への規制変化を取りまとめ,米の生産調整開始から現在まで,米の政府買入価格,生産費,生産量,消費量,在庫などの変化が,需要と供給によって形成された自主流通米小売価格・入札価格,米の相対取引価格へのリアル的影響をとらえるため,長期的傾向性を取り除いた定常化時系列による計量分析を行う.ただし,定常化時系列での分析は,生産,消費,価格などの長期的関連性の計測に向かないが,本論文は米の需要と供給の変化に伴う価格形成への短期的要因分析に限定し,その関係解明を試みるものである.

2. 米の生産,消費の変化とデータ準備

戦後の米生産は,食料不足のために奨励された.1967年の1,440万トンを超える大豊作により,当時の消費量1,200万トンとの間に200万トンの余剰が生じた.その後,3年連続豊作と食糧管理法の下での政府全量買上げにより,1970年に米の在庫は720万玄米トンまでに膨らみ,食管赤字の問題が生じた.一方,米の消費量は1963年の1,341万トンをピークに,食の多様化,洋風化に伴って減少し,米の生産過剰が顕著化してきた.

米の生産過剰を解消するため,試行期間を経て,1971年に政府は本格的な生産調整(減反政策)を実施し,今まで続いている.生産調整の開始とほぼ同時期の1969年に,食糧管理法の下で実施した全量買上げによる食管赤字を解消するため,自主流通米ルートが創設され,米市場への規制緩和が始まった.しかし,1986年まで政府は,農家の経営保護と家計軽減のため,米の売渡価格よりも,米の生産費に基づき,算出した買入価格が高く,いわゆる逆ざや米価のため,農家は食味の良い米を自主流通米に回し,それ以外の米を政府に買ってもらい,食味の悪い政府米の売れ行きが悪いこともあって,1980年代初頭まで政府は過大な在庫米を抱えた.1971年から1974年までに740万トン,1979年から1983年までに600万トンの在庫米を処分し,在庫米処分による経済損失は合せて3兆円以上にもなった.図1から分かるように,自主流通米ルートの創設後,高い価格で米を販売するため,生産現場でも良質の米の生産に努力し,国が買上げる政府米の数量は年々と減少し,その代わりに自主流通米の数量が増大してきた.ただし,増大した自主流通米の価格は政府が買上げる政府米の逆ざや米価によって支えられたといえよう.1995年に食糧管理法の廃止,2004年に改正食糧法の施行により,米の流通は完全自由化し,計画外流通米,自主流通米などの区分もなくなった.

図1.

期末在庫,制度別米の流通量推移

資料:食糧庁(1970–1993, 1994–2001),農林水産省総合食料局(2002–2008)農林水産省(2015a)による.

1)国内米の数字である.

2)期末在庫は,2002年までは10月末の数字で,2003年以降は6月末の数字である.

政府買入価格は1995年の食糧管理法廃止まで,原則として生産費及び所得補償方式で算出され,工業部門と農業部門との報酬格差解消が1つの目的であった.1970年代,1980年代の米過剰により,必ずしも厳格に遵守して算出されず,実際の政府買入価格は生産費及び所得補償方式で算出した補償米価より低く,この差が徐々に大きくなったとの指摘もある(神門,1993).

本論文は米の価格形成に影響する要因を解明しようとしているが,米の価格といっても,政府買入価格・売渡価格,自主流通米価格,小売価格,相対取引価格など多種多様ある.また,農政の変遷に伴い,たとえ同じ名称の価格であっても,その形成条件が変化することもある.ここでは1970年~2013年の44年間を3つの期間に区切って重回帰モデルにより分析する.第1期間は1970年~1989年の20年間であり,重回帰モデルの被説明変数は自主流通米小売価格とする.この期間は,自主流通米制度が創設されるとほぼ同時に,本格的生産調整が実施され,食糧管理法の下においても,政府は米に対する統制を緩和し始める時期でもある.この時期の自主流通米価格は全農と卸売業者との相対価格であり,政府買入価格よりは需給を反映して形成された価格といえよう.第2期間は1990年~2003年であり,重回帰モデルの被説明変数は自主流通米価格形成機構(1995年に自主流通米価格形成センターに改称)での入札価格を用いる.1990年に自主流通米価格形成機構を設立すると同時に,米の流通について,政府備蓄以外はほぼ自由化されたが,自主流通米価格形成機構への上場義務と値幅制限の中で自主流通米価格が入札によって形成され,価格形成の主導権は卸売業者に移った.また,1995年に米の生産,流通を統制する食糧管理法の廃止,食糧法の施行,ミニマム・アクセス米の輸入開始など,政策転換期であり,政府米数量の変動が大きい時期でもある.図1からでも確認できるように,この時期前半の1990年には,政府は年間消費量の1/5弱の177万玄米トンの米を買上げたが,1993年の不作で,政府の買上げはほとんどない年もあった.その後,いったん備蓄が強化され,1998年の期末在庫が約300万玄米トンに達したあと,政府の買上げ数量が急激に減少し,年間50万玄米トン以下にとどまり,数玄米トンしか買上げなかった年もあった.第3期間は2004年~2013年であり,重回帰モデルに用いる被説明変数は米の相対取引価格である.この期間は全国米穀取引・価格形成センターへの義務上場廃止に伴う上場米の減少により,2011年に全国米穀取引・価格形成センターが解散された.また,改正食糧法の施行によって自主流通米などの区分もなくなるなど,米の自由流通の時代といえよう.

重回帰分析の前に,価格データのデフレート,時系列の定常化など,分析データの準備を行う.自主流通米小売価格,自主流通米入札価格,米の相対取引価格,政府買入価格は農産物総合価格指数(2000年=100)を用いてデフレートし,実質価格を算出した.米の全算入生産費については,農業生産総合資材価格指数(2000年=100)によって実質価格を算出した.また,1993年の不作で,米の国内生産量は著しく少ないため,前後年生産量の平均値で修正した.さらに,デフレートした自主流通米小売価格,自主流通米入札価格,米の相対取引価格,政府買入価格,米の全算入生産費,及び国内生産量,国内消費量1などの時系列に対して,長期的傾向性による影響を取り除くため,最小二乗法による3次までの回帰式 T i k をそれぞれ(1)式で求め,(2)式で標準誤差Sekを算出し,誤差最小の回帰式を用いて(3)式で時系列の定常化を行った.回帰分析の結果を表1にまとめた.全算入生産費は2次回帰式が最適である以外,1次回帰式が最適である.

表1. 回帰式の定数,係数,標準誤差
定数
a
1次係数
b1
2次係数
b2
標準誤差
Sek
自主流通米
小売価格
19706.7 469.46 1327.37
自主流通米
入札価格
18841.9 –179.17 1201.44
米の相対取引価格 15296.6 –53.40 1057.75
政府買入価格 17416.5 –102.03 760.99
全算入生産費 14796.0 770.97 –18.19 1219.09
国内生産量 1240.1 –9.78 82.50
国内消費量 1194.1 –7.92 38.78

1)自主流通米小売価格,自主流通米入札価格,米の相対取引価格,政府買入価格,全算入生産費の単位は円/60 kg,国内生産量,国内消費量の単位は万トンである.

  

T i k = a + j = 1 k b j t j (1)

(kは回帰式の次数であり,k=1,2,3である.tは時間である)

  

S e k = i = 1 N ( O i T i k ) 2 n (2)

(Oiは回帰式 T i k を算出する原系列, T i k は(1)式で求めた回帰値,Nはデータ総数,nは自由度である)

  

Y i = O i T i k × 100 (3)

(Yiは定常系列,Oiは回帰式 T i k を算出する原系列, T i k は(2)式の標準誤差最小の回帰式による回帰値である)

1に示す回帰式の1次係数を見ると,1970年~1989年の自主流通米小売価格は上昇傾向にある.これは自主流通米ルートが創設された当初,国民の良食味米志向への対応を目的の1つとしていたため,産地銘柄米のみを自主流通米として登録でき,自主流通米の価格は全農と卸売業者との交渉によって形成され,実質的には政府買入価格の金額を上乗せる形で設定された(小池(相原),2008:p. 63).消費者側では,高度経済成長による家計の改善,国民の良質米志向などで,自主流通米の需要が増加し,価格が上昇したと考えられる.しかし,1990年からの自主流通米価格形成機構での入札価格,2004年以降の米の相対取引価格は下落傾向にある.これは1993年の不作を除き,米の生産過剰基調が続き,バブル経済の崩壊による経済不況も一因であり,米価の下落傾向が続いたものである.政府買入価格,国内生産量,国内消費量は1次回帰式の標準誤差が最小であり,これらの指標は1970年から一貫にして減少傾向にある.全算入生産費は2次回帰式が適しており,1990年代初頭までは上昇傾向にあるものの,近年では農業生産法人の増加などによる生産規模の拡大などで,米の平均生産費は低下傾向にある.

説明変数の独立性を検討するため,ここでは全算入生産費,国内生産量,国内消費量,政府買入価格の定常化系列及び米の在庫,生産調整面積,作況指数の原系列を用いて,相関係数と分散拡大係数を算出し,表2にまとめた.表2右上の相関係数を見ると,全算入生産費と国内生産量,全算入生産費と作況指数,国内生産量と作況指数,政府買入価格と作況指数,米の在庫と生産調整面積の間に,それぞれ1%水準で有意な相関がある.しかし,相関係数の場合,疑似相関の可能性もあるため,分散拡大係数を算出し,表2の左下にまとめた.一般的に分散拡大係数の絶対値は5以上の場合,重回帰分析におけるマルチコが起こりやすいとされ(奥野他,1975),表2の分散拡大係数では,絶対値が5を超える値はなかった.

表2. 説明変数の相関係数と分散拡大係数
全算入生産費 国内生産量 国内消費量 政府買入価格 米の在庫 生産調整面積 作況指数
全算入生産費 –0.4200** –0.2967 –0.0434 0.3749* 0.0478 –0.4770**
国内生産量 –0.5955 0.1848 0.3371* –0.1788 –0.1234 0.8733**
国内消費量 0.3739 –0.5638 0.0357 –0.1710 –0.3237* 0.0576
政府買入価格 –0.2520 0.0822 –0.1084 0.0660 –0.0690 0.3968**
米の在庫 –0.7109 0.9131 0.3169 –0.0427 –0.4500** –0.0633
生産調整面積 –0.2284 0.3979 0.5834 –0.0191 0.9935 –0.1062
作況指数 1.3813 –4.5978 0.7139 –0.6814 –0.9135 –0.2423

1)右上は相関係数,左下は分散拡大係数である.

2)相関係数に付された**,* はそれぞれ1%,5%水準で有意であることを示す.

3. 重回帰分析

ここでは,説明変数をそれぞれ(3)式で定常化した政府買入価格,国内消費量,国内生産量,全算入生産費,及び米の在庫,生産調整面積,作況指数の原系列にし,被説明変数のいずれも(3)式で定常化を行ったが,1970年~1989年では自主流通米小売価格,1990年~2003年では自主流通米価格形成機構での入札価格,2004年~2013年では米の相対取引価格にした.(4)式に従う重回帰分析を行い,偏回帰係数の検定を行った.その結果を表3にまとめた.また,(4)式変数の意味は表4のとおりである.本論文は44年間における米の価格形成に影響する要因を比較するため,3つの期間において同じ説明変数を利用した.

表3. 重回帰分析の結果
1970年~1989年 1990年~2003年 2004年~2013年
偏回帰係数βi 標準偏回帰係数 β i t値 偏回帰係数βi 標準偏回帰係数 β i t値 偏回帰係数βi 標準偏回帰係数 β i t値
i 1 0.218 0.159 0.832 –0.509 –0.404 0.963 0.589 0.432 1.456
2 –0.579 –0.434 2.466* 3.215 0.553 1.245 –3.926 –0.626 1.621
3 0.109 0.149 0.222 3.668 4.785 2.122 –6.227 –2.606 4.100**
4 –0.002 –0.065 0.300 –0.067 –0.841 1.446 –0.156 –0.637 2.380*
5 0.594 0.829 5.020** –0.805 –0.436 0.665 1.256 0.942 2.033
6 –0.064 –0.206 0.847 1.811 3.444 2.612* –0.005 –0.004 0.008
7 0.424 0.425 0.871 –4.015 –4.387 2.093 –6.292 –2.033 4.805**
重相関R 0.93 0.84 0.98
調整済R2 0.79 0.37 0.80
D.W.比 2.38 2.67 2.93

1)被説明変数は,1970年~1989年は自主流通米小売価格,1990年~2003年は自主流通米価格形成機構(1995年から自主流通米価格形成センター)での入札価格,2004年~2013年は米の相対取引価格である.

2)**,*はそれぞれ1%,5%水準で有意であることを示す.

表4. 被説明変数・説明変数
変数 意  味
被説明変数 P1 自主流通米小売価格
P2 自主流通米価格形成機構(自主流通米価格形成センター)での入札価格
P3 米の相対取引価格
説明変数 Pg 政府買入価格
Qc 国内消費量
Qp 国内生産量
Qs 米の在庫(2002年までは10月末現在,2003年以降は6月末現在)
C 全算入生産費
A 生産調整面積(減反面積)
R 作況指数

  

P j = a + β 1 P g + β 2 Q c + β 3 Q p + β 4 Q s + β 5 C + β 6 A + β 7 R (4)

(jは分析期間を表し,それぞれP1,P2,P3である)

  

β i = β i σ i σ j (5)

β i はi説明変数の標準偏回帰係数,βiはi説明変数の偏回帰係数,σiはi説明変数の標準偏差,σjは被説明変数の標準偏差である)

3では,(4)式で求めた偏回帰係数βiに関して,説明変数,被説明変数の単位の違いにより,直接説明することはできないため,(5)式でそれぞれ説明変数の標準偏回帰係数 β i を算出した.標準偏回帰係数は,例えば表3の1970年~1989年の場合,標準偏回帰係数 β 1 は政府買入価格が自主流通米小売価格に0.159倍寄与することを意味する.表3を見ると,1990年~2003年の調整済決定係数R2が0.37でやや小さい以外,重回帰分析の結果はおおむね良好である.

1970年~1989年の重回帰分析の結果では,β2,β5の偏回帰係数はそれぞれ5%,1%水準で有意であり,国内消費量,全算入生産費は自主流通米小売価格に影響する要因である.この期間において,自主流通米小売価格に対し,国内消費量β2の係数はマイナスであり,つまり,米の国内消費量が減少すると自主流通米小売価格が上昇し,一見おかしい結果である.これは前にも述べたが,1970年代からの高度経済成長による家計の改善,国民の良質米志向などで,良質の自主流通米の価格が上昇したためだと分析できる.さらに,1986年まで政府の逆ざや米価は自主流通米小売価格を下支え,米全体の消費量が減少していたにもかかわらず,自主流通米の需要が増加し,自主流通米小売価格が上昇したからと考えられる.このことは表1でも分かるように,自主流通米小売価格の回帰係数は正であり,自主流通米小売価格が上昇傾向にあった.全算入生産費について,1986年までは生産者保護のため,生産費及び所得補償方式で算出した高い政府買入価格が自主流通米小売価格形成の下支えとなり,全算入生産費は自主流通米小売価格と正の相関にある.

1990年~2003年の結果では,β6の偏回帰係数は5%水準で有意である.この期間は,1993年の米不作,1995年の食糧管理法の廃止と食糧法の施行,同時期にウルグアイ・ラウンド農業交渉の合意によるミニマム・アクセス米の輸入開始など,米の生産,流通,価格に大きな影響を与える出来事が多い期間であり,政策の転換期でもある.生産過剰傾向が続く中,自主流通米入札価格は生産調整面積に影響され,国内では米の消費量が減少する中,生産調整面積が増えると自主流通米入札価格が上昇する.

2004年~2013年の重回帰分析の結果を見ると,D.W.比は2.93でやや大きい値であるが,有意水準5%では残差に負の相関が検出できなかった.また,β3,β4,β7の偏回帰係数は1%あるいは5%水準で有意であり,米の相対取引価格は国内生産量,米の在庫,作況指数に影響され,中では特に国内生産量,作況指数による影響度合いが大きい.2004年に改正食糧法の施行により,米の流通は完全自由化され,計画流通米,自主流通米などの区分もなくなり,やみ米という呼び名も世間から消えた.しかし,米の生産過剰は変わらなく,生産調整が継続されたが,生産調整面積の配分方式は,生産減少面積配分(ネガティブ配分)から主食米の年間生産数量配分(ポジティブ配分)に変わった.また,2010年から農業の多面的機能の維持,自給力の増大などの農政の下で,補助金は米を含む主要作物生産全般に配分するように変わった.この期間において,米の生産量が増加したり,作況指数が高かったり,在庫が多かったりすると,米の相対取引価格が低下する.

4. まとめ

本論文では,本格的生産調整の開始,自主流通米ルート創設の1970年から2013年まで44年間において,価格及び生産量,消費量データの定常化で長期的傾向性を取り除き,3つの期間に分け,自主流通米小売価格,自主流通米入札価格,米の相対取引価格それぞれを被説明変数とした重回帰分析を行い,需要と供給によって形成された価格の短期的影響に限定して分析を行った.米の価格形成の短期的要因は,農政の変遷に伴う期間ごとに違いが見られる.米の統制が強い1970年代,1980年代では,米全体の国内消費量が減少していたものの,自主流通米の需要が増加し,自主流通米小売価格が上昇した.また,生産費及び所得補償方式の原則で算出した政府買入価格は自主流通米小売価格の下支えになっていた.1990年代,2000年代前半では,米に関連する国内外の事情変化もあるが,生産調整面積は自主流通米入札価格に大きな影響を与えた.改正食糧法施行の2004年以降,政府は米の流通,価格形成から手を引き,政府備蓄米の価格も相対取引価格を参考にして決める.しかし,米の生産過剰を解決しておらず,生産調整面積の配分方式を変えたものの,継続した.米の相対取引価格は生産量と直結し,生産量の増加により,米の価格が下落する需給関係を反映するものとなった.

米は日本人の主食であり,日本農業の基幹作物であるだけに,自由貿易交渉が進む中,米の生産調整が廃止された後も,米の生産,流通,価格に注目し,その変化を分析する必要があると思われる.

1  データの出所は以下のとおりである.自主流通米小売価格,政府買入価格は食糧庁(1970–1993, 1994–2001),農林水産省総合食料局(2002–2008)から,自主流通米入札価格は社団法人米穀安定供給確保支援機構(2015)から,作況指数,国内生産量は農林水産省(1970–2013b)から,米の国内消費量は農林水産省(1970–2013c)から,全算入生産費は農林水産省(1970–2013a)から,農産物総合価格指数,農業生産総合資材価格指数は農林水産省(1970–2013d)から,生産調整面積は稲熊(2014)から,米の在庫,米の相対取引価格は農林水産省(2015b)からである.

引用文献
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