農林業問題研究
Online ISSN : 2185-9973
Print ISSN : 0388-8525
ISSN-L : 0388-8525
個別報告論文
中山間地域における転作大豆の単収に及ぼす要因と課題
―広島県における集落営農法人を事例として―
坂本 英美駄田井 久横溝 功
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 53 巻 1 号 p. 31-36

詳細

1. 課題と目的

食料生産維持向上のためには,集落営農法人を含めた担い手経営への農地集積を図りながら,生産性を同時に向上させることが求められる.また,米価下落傾向にある現在,主食用米に代わり転作作物が収益の柱となることが期待されている.梅本(2013)は,大豆は一定量の消費のあるわが国の基礎的な食品であり,大豆の自給率の低さが問題であり,安定供給対策が必要としている.しかし,大豆作は単収が不安定かつ低位であり(農林水産省,2002–2015),そのことが生産意欲の低下,ひいては栽培管理の粗放化をもたらすという悪循環に陥っている(梅本,2013).前記の悪循環は,労働力減少の著しい地域ではより深刻な状況であると考えられる.この悪循環を断つためには,大豆作の単収水準を規定する土壌条件や栽培管理技術との関係を明らかにし,単収を高位安定化する技術の確立や技術分野への提案が必要である.土田(1989)は,大豆単収は,自然条件,圃場条件以外に,その地域の平均的技術水準にも規定されると述べている.また,土田(2009)梅本(2008)は,大豆の単収には,圃場の排水性といった土壌条件が重要な要因であることを述べている.

ところで,中国地域では集落営農が盛んで,それらは法人化も進展しつつあるなど,今後の農業の担い手として期待されている.また,2020年まで中国地域の農業生産を維持するためには,離農農家の農地を引き受けて集落営農などの法人組織経営体が約55 haの規模の経営を行うことが必要と試算されている(渡部,20151.しかし,これまでの研究では中山間集落営農法人を対象とした一定数のデータに基づいた分析,あるいは集落営農における大豆作の課題や必要とされる技術に関しては十分に検討されていない.そのようなことから本稿では,集落営農法人を対象とし,中国地域で最多である広島県における法人を分析対象とする.本稿では,広島県中山間地域の集落営農法人を対象に実施したアンケート調査に基づき,対象地域における①大豆作の現状と課題の整理2,②土壌条件,栽培管理技術,経営関連項目と大豆単収との関係性・影響の大きさの分析,③大豆単収の高位安定化のための技術的課題の検討,を行う.このうち②については,自然条件である土壌条件と,生産者の行う栽培管理技術として,土壌改善,作付体系,明渠,心土破砕,品種,播種時期,肥料投入の各技術要因7要因(計8要因)の影響を分析した.

2. 分析対象とした集落営農法人の特徴

(1) 調査の概要

「現状の栽培管理技術および今後の課題」に関するアンケート調査を,2012年7月に広島県の集落営農法人を対象に行った.配布数は219,回収数は170(回収率78%)である.また,その補完として聞き取り調査を行った.なお,以下の分析では,中山間地域に限定し,都市的地域2法人を除く168法人を対象に分析を行った3

(2) 分析方法

アンケートおよびその後に行った補完調査の回答結果に基づき,作付体系等の実態を整理し,特に大豆作において立地条件と栽培管理技術のどの要因が単収の差となって表れるのかを統計的検定を用いて分析する.その際に単収の低位性にそれらの要因がどの程度影響しているのかを明らかにするために,土壌や栽培管理技術に関する設問項目を用いた.

(3) 大豆単収に回答のあった分析対象法人の属性

経営規模は26 haが平均である.稲・麦・大豆に必要とされる経営規模要件20~30 ha(土田,2009)は平均規模やモード層においてはほぼ満たしている(表1).大豆面積は3.4 haが平均である.10 ha以上もあり,作付面積の幅が大きい.法人の設立年は最近10年が9割を占めている.

表1. アンケート対象法人の概要
項目・区分 回答法
人全体
大豆作
付法人
経営規模別法人数
   10 ha未満 21(13) 5( 6)
   10~20 45(28) 22(29)
   20~30 53(33) 30(39)
   30~50 34(21) 17(22)
   50 ha以上 6( 4) 3( 4)
大豆面積別法人数
   1 ha未満 24(30) 同左
   1~3 22(27) 同左
   3~5 19(23) 同左
   5~10 11(14) 同左
   10 ha以上 5( 6) 同左
設立年別法人数
   1989~’94年 2( 1) 0( 0)
   ’95~’00年 8( 5) 6( 8)
   ’01~’06年 67(40) 40(51)
   ’07~’11年 89(53) 32(41)

1)黒大豆は除いた.以下も同様である.

2)( )内は総数を100とした割合である.

(4) 作付体系の傾向と大豆連作の理由

大豆作付法人における転作作付体系の分類を行った結果,表2のような実態となる.

表2. 大豆作付法人の作付体系
作付体系 法人数
稲・大豆の交互作 41(53)
大豆連作 28(36)
2年3作等 8(10)
合  計 77(100)

1)( )は回答のあった77法人に対する割合である.

まず,「稲・大豆の交互作」が53%,「大豆連作」が36%と続き,「2年3作等」(輪作)は10%にとどまる.大豆を作付けしている法人において連作している法人がその4割近くを占めている.次に大豆連作の理由について検討した.

3はアンケート実施後に大豆連作の理由を問うた結果である.この連作のなかには,交互作の面積が多い法人(この場合は交互作に分類した)の作付地のうち連作している農地についての理由も含んでいる.表に示すように,大豆連作は,「山際などで水の便が悪いこと」,「獣害のため」,「土壌の透水性の極端な水準の問題」などがあがっている.つまり,条件不利圃場の存在する中山間地域固有の問題と,さらにはそれを含めて引き受けざるを得ない集落営農固有の問題が作付圃場や「作付体系」選択の背景にあり,それにより,制約を受けていることが指摘できる.これらの問題に対処するには中央部における圃場排水などの圃場基盤整備により転作大豆の生産力や栽培環境を向上させることが重要と考えられる.

表3. 大豆連作の理由
山際などで水の便悪い 獣害のため水稲作付けしない 水の抜け過剰,排水難 地権者の高齢・リタイヤで水管理困難 小区画や不整形圃場のため 元放棄地
法人数 25
(81)
6
(19)
4
(13)
1
(3)
1
(3)
1
(3)

1)( )は回答者数31法人に対する割合で,複数回答のため合計は100を超える.

2)交互作の面積が多い場合は作付体系として交互作に分類しているが,一部連作がある場合にもその法人における連作の理由を尋ねた.

3. 経営課題と大豆単収の関連要因

(1) 経営における課題

経営における今後の課題に対する回答を,収量・生育に関する要因に限定すると37%が「大豆収量安定向上」,30%が「大豆の雑草抑制」が課題と答え,上位にあがった.つまり,収量・生育関連においては大豆の課題が主であることがわかる(表4).また,大豆作付法人に絞ると「大豆収量安定向上」「大豆の雑草抑制」が特に多いことが分かる.

表4. 経営における今後の課題
全体 大豆作付法人
大豆収量安定向上 58(37) 50(67)
大豆の雑草抑制 47(30) 39(52)
麦収量安定向上 27(17) 9(12)
稲WCSの収量向上 23(15) 8(11)
大豆の病害虫抑制 14( 9) 12(16)
米粉用稲の収量向上 12( 8) 6( 8)
飼料米の収量向上 9( 6) 4( 5)
大豆収穫の早期化 9( 6) 7( 9)
麦収穫の早期化 8( 5) 4( 5)
大豆の出芽苗立安定化 7( 5) 6( 8)
麦の病害虫抑制 2( 1) 0( 0)

1)( )は回答者数に対する割合で,複数回答のため合計は100を超える.回答者数は全体:155法人,大豆作付法人:75法人である.

(2) 大豆単収の関連要因

上記経営課題を踏まえ,以下では,大豆単収と密接に関連する要因を分析した.なお,本稿での単収とはアンケートの回答による‘平年’単収(設問は「過去5年の最高・最低を除く3ヶ年平均」)のことである.

ここではまず,技術に関連する8項目において,各項目の回答サンプルを用いて,大豆単収に関する平均の差の検定(U検定)4を行った.なお,本稿の分析の主眼は,実態経営における,大豆単収に影響を与える要因の分析である.そのため,閉鎖系試験区によるデータではなく,実態の経営データが分析対象となる.それ故,社会科学的なデータ収集法であるアンケート調査を用いたので,本稿の有意差の判断に,10%水準を採用した.その結果,「土壌種類」(砂壌土とその他),「作付体系」(大豆連作と交互作と輪作),「土壌改善」(土壌改良材・堆肥両方投入とその他)において有意な差,あるいはその傾向が認められた.

なお,営農排水の実施と単収の関係を検討したが,明渠掘り,心土破砕などは,営農排水の実施と単収の関係については10%水準でも有意な差がなかった5.さらに他の大豆面積,品種,播種時期,肥料投入などとの関係についても有意な差がなかった6

そこで,上記の結果から「土壌種類」(設問は法人の主な土壌),「土壌改善」,「作付体系」を以下における分析項目とした.さらに次に,経営関連の項目として,表1の3項目のうち「大豆面積」と「設立年」を加えた5項目で分析を行った7.このうち「大豆面積」は,大豆面積規模が大きいほど,学習の経済が働き,習熟度も高いと推測されることからその代理変数である.また,「設立年」は,早くから法人化した方が収益性への注力がなされ,それにともない大豆単収向上へのモチベーションも高まるという代理変数として用いた.

4. 各要因における関連有無の背景と考察

(1) 関連要因における分析結果の考察

ここで限定した5項目に全て回答した完全回答のサンプルを用いたため,前記の分析に比較して検定の数値は低下するが,各要因における差の検定結果から以下が示唆される(表5).

表5. 大豆単収と各要因とのU検定の結果
区分 平均単収±SD
(kg/10 a)
P値
土壌種類
砂壌土 172±57 0.068
その他 143±50
土壌改善
土壌改良材・堆肥の両方投入 186±67 0.068
その他 146±49
作付体系
大豆連作 136±59 0.055
交互作と輪作 161±49
大豆面積
2 ha未満 149±50 0.630
2 ha以上 156±57
設立年
2005年以前 158±52 0.239
2006年以降 144±56

1)平均値の差の検定には,ウィルコクソンの順位和検定(U検定)を適用し,計算には統計ソフトR3.2.4を利用した.

2)ここでの単収とは平年単収のことであり,過去5年の最高・最低を除く平均で質問した実数値である.

3)「大豆連作」とは,転作部分で大豆の連作をおこなっていることであり,「交互作」は稲-大豆の交互作,「輪作」とは,2年3作等の作付体系である.

4)土壌種類のその他とは重粘土,マサ土,黒ボク,その他の選択肢が対応する.土壌改善のその他とは,土壌改良材・堆肥とも投入していない,あるいはいずれかを投入していない法人のことである.

5)上記は5項目すべてに回答のあるサンプルを抽出して分析対象としている.

第1に,「土壌改善」(土壌改良材・堆肥の両方投入とその他)と単収における検定結果については,完全回答サンプルにおいても,10%水準で有意な傾向が認められた.土壌の物理性改善,微量要素投入などの効果が考えられる.

第2に,「作付体系」(大豆連作と交互作・輪作)と単収における検定結果については,完全回答サンプルでも10%水準で有意な傾向が認められた.連作の場合は連作障害で減収が発生するなど,輪作との単収差が一定程度表れていると推察できる.

第3に,「土壌種類」(砂壌土とそれ以外)と単収における検定結果でも10%水準で有意な傾向が認められた.排水性の影響がみられることが指摘できる.一方,排水性の悪い圃場においては,工程数は増えるものの畦立て栽培などの方法がある.

第4に,大豆面積(2 ha未満と2 ha以上)においては,平均の差の検定で単収の有意差は認められなかった.

第5に,「設立年」(2005年以前と2006年以降)も単収の有意差は認められないが,設立が最近年の法人は単収が低い傾向がある.

以上の結果から,大豆には,品種,播種時期,肥料投入などの栽培条件や栽培技術実施,大豆面積,法人設立年などの経営関連項目よりも「土壌改善」,「作付体系」,「土壌種類」が,単収をより規定していることがうかがわれる.

次に,これら項目を用いて,数量化Ⅰ類により項目相互の影響を排除して関連の強さの順位を知ることを主眼に分析した.その結果,1位は「土壌改善」,2位は「作付体系」,3位は「大豆面積」であった.また,次いで「土壌種類」となる(表6の偏相関係数).

表6. 大豆単収に対する各要因の影響の強さ
要因 説明変数 レンジ 偏相関係数
(1) 土壌種類 25.9 0.23
(2) 土壌改善 49.2 0.37
(3) 作付体系 47.7 0.34
(4) 大豆面積 41.2 0.31
(5) 設立年 36.5 0.22

1)R2=0.334である.

これまで大豆栽培研究の分野で根粒菌の増殖に寄与するとされる要因としては①土壌物理性の向上,②連作回避,などがある.前述の大豆単収に関連のあった「土壌改善」と「作付体系」は,根粒菌の増殖に寄与する要因と合致するが8,それらの要因は多様な圃場を有する集落営農法人においても効果が発揮されることを示している.

(2) 営農排水作業実施法人の単収多寡の背景

営農排水作業は一般的には大豆単収向上のために必要とされている(例えば東北農政局,2015)にもかかわらず,本稿で対象とした中山間地域において単収との関連が小さかったことから,営農排水作業を行っている法人の中で単収の多寡の背景にある技術的対応と栽培条件を,補完調査によりさらに検討した.明渠を行っている法人,明渠と心破を行っている法人において,大豆単収別に高単収要因と低単収要因の調査結果を整理・分析したところ,高単収要因としては,①暗渠の本数が多く排水基盤が良好(排水作業ではなく長期の基盤投資),②圃場整備年が近年である,③大豆作付けを集落中央部で行っており交互作・輪作が可能,④播種前に同日2回耕起を行う,⑤獣害の被害を軽減できる防護フェンスがある,などがあげられた.一方,低単収要因としては①大豆作付圃場が山際であり連作,②転作消化意識,③獣害,④雑草害,⑤稲刈りと競合して,雑草防除の適期を逸失する,⑥オペレータが兼業で土日対応のため播種適期を逸失する,などであった.営農排水実施の場合は以上のように単収向上のための他の条件が合わさっていない例を多く含んでいる.

このように,高単収要因としては,排水基盤が整備されて中央部で作付けしていることが前提となっていることが多い.また,低単収要因としては,中央部でも収量を確保できないことから粗放的作付けを前提に山際の条件不利圃場を作付圃場に選択することが原因となっている.したがって,技術が収益向上に結果する前提となる条件がない場合には栽培管理技術は体系的に完結せず,1節で述べた悪循環へと繋がると推察される9

5. 結論

以上,水田畑作物の圃場条件,栽培管理技術と単収との関連,技術的課題を中心に検討した結果,次のことを明らかにした.

第1に,経営の課題としては,収量・生育関連において,大豆の項目が上位にあがることが示された.

第2に,大豆単収への影響が大きいものとしては,①土壌改善(物理性を改良する資材や堆肥の投入),②作付体系(輪作を可能にする圃場の選択),③大豆面積,④土壌種類(排水性の良否),などであった.

第3に,営農排水作業は,必ずしも単収との明確な関連性は見られなかった.それは,営農排水作業が条件不利圃場でも実施されており,主要な栽培管理作業が行われていないために効果を発揮していないからである.また,この理由としては,営農主体による実施効果がないという判断により,主要な栽培管理作業が行われていないと推察される.

第4に,大豆の「連作」の背景としては,条件不利圃場が存在する中山間地域固有の問題と,経営内にそれらを包含せざるをえない集落営農固有の問題が関わっていることが指摘できる.

以上のことから,まず,上記の要因「土壌改良材および堆肥投入」,「作付体系」,「大豆面積」,「土壌種類」が,単収に大きな影響を与えていたという事実は,営農の現場において有効な情報になる.それゆえ,大豆作は,物理性を高める「土改材・堆肥の投入」を行うとともに,「交互作・輪作」の工夫,「砂壌土」等の適地を選択しできるだけ集落の中央部での栽培を行い,一定の面積を栽培し技術の習熟度を高めることが肝要と言える.営農排水作業は,「砂壌土」の下で,「土壌改良材および堆肥投入」,「作付体系」の栽培管理技術とあわせて行う必要があると推察できる.今後,技術開発が効果をもたらすには,以上のことを前提として体系的に進める必要があろう.

一方で,排水の整備が困難な圃場の場合には,作業工程は増えるが,表面排水を容易にするために,播種方法を畦立て方式にすることなどが考えられる.また,圃場条件に応じた飼料稲,WCSなどの作付けもあわせて行う必要がある.なお,数量化Ⅰ類の決定係数が低めであることから,単収に影響を与える要因(例えば圃場整備水準や暗渠管の間隔,圃場整備年等)は必ずしも充分には判明していない.このことについては,今後に残された課題としたい.

1  渡部(2015)では,岡山,広島,山口3県の農林業センサス個票データにより分析を行っている.

2  アンケートの回答によると分析対象の168法人のうち80法人が大豆栽培している(ただし大豆単収の問いに回答したのは59法人).したがって半数近くが大豆栽培をしている.また,棚田(2007)によると「中国中山間地域では,麦は収穫期の降雨特性(梅雨期)や圃場排水性等の問題から,栽培条件が限られるため麦の作付けが極めて少なく,大部分が大豆単作となっている」としており,生産現場でも同様のことが確認できる.1節冒頭で述べたことの他に以上のような理由からここでは大豆作をとりあげた.

3  アンケートの配布数219は,アンケート実施時点での広島県内の集落営農数である.また,広島県における集落営農法人の概況については坂本・千田(2015)に示した.しかし,大豆単収に関わる技術・環境要因をさらに詳しく検討するにあたり,本稿では大豆作を行う法人を対象にした分析を主な目的とした.地域類型の区分は,法人事務所の住所をセンサスの旧村地域類型区分と照合させることにより調べた.また,補完調査は,ほぼ全農家について主に電話による聞き取り調査を行った.大豆作農家では現地調査も行った.

4  ウィルコクソン順位和検定(U検定)を用いて行った.なお重回帰を用いずバイナリ変数を用いたのは,アンケートデータでサンプル数の制約があったためである.

5  東北農政局(2015)によると平坦地を含む全国の営農排水(「排水溝・明渠」や「弾丸暗渠」)の実施率(2013年産)も80%ある等,広島県中山間地域以外の他の地域でも,営農排水の実施率は軒並み高い.

6  各項目の回答サンプルで平均値の差の検定(U検定)を行い,有意な差や傾向が認められなかった項目としては.明渠,心土破砕,品種,播種時期,肥料投入の各技術要因であり,P値は0.394~0.996であった.土壌という自然的立地特性と栽培技術が与える影響を分析した.

7  大豆面積は,統計的に有意ではなかったが,経営経済的に意味のある変数として採用した.また,分析の過程で多重共選性を検討した結果,経営規模は大豆面積と相関が高かった(5%水準で有意)ため,大豆面積のみを採用した.

8  「①土壌物理性の向上」と根粒菌量の関係については阿江・仁紫(1983)阿江(1985)を,また「②連作回避」と根粒菌量の関係については吉川・松本(2009)を参照されたい.

9  山本(2006: pp. 14–15)において農業技術導入の動機が顕在化するためには,増収などの導入効果が誘因として必要であることが述べられている.生産者への聞き取りの中でも,技術導入が最終的に所得的な結果に繋がるかどうか(主食用米との比較など)を見極めながら導入が決定されていることを確認できる.

引用文献
  •  阿江 教治(1985)「大豆根系の生理特性と増収問題」『農業および園芸』60(5),679–683.
  •  阿江 教治・ 仁紫 宏保(1983)「ダイズ根系の酸素要求特性および水田転換畑における意義」『日本土壌肥料学雑誌』54(6),453–459.
  • 梅本 雅(2008)『転換期における水田農業の展開と経営対応』農林統計協会.
  • 梅本 雅(2013)『大豆生産振興の課題と方向』農林統計出版.
  •  坂本 英美・ 千田 雅之(2015)「中国中山間地域における集落営農法人の現状と課題―広島県内集落営農法人アンケートに基づく―」『中央農業総合研究センター研究資料』10,8–77.
  •  棚田 光雄(2007)「集落営農法人における水田輪作の現状と課題」『近畿中国四国農業研究』11,67–73.
  •  土田 志郎(1989)「麦・大豆立地要因の計量分析―北陸地域を対象として―」『農林業問題研究』25(1),34–42.
  • 土田志郎(2009)「稲・麦・大豆輪作体系確立の課題」梶井功編『食料自給率向上へ!―食料自給率向上の道筋―』農林統計協会,123–137.
  • 東北農政局(2015)「営農排水対策と大豆単収との関係」(http://www.maff.go.jp/tohoku/seisan/daizu/zizyou/pdf/11_zijyo_2707.pdf)[2015年8月5日参照].
  • 農林水産省(2002–2015)『平成12~25年産作物統計』農林統計協会.
  • 山本和博(2006)『農業技術の導入行動と経営発展』筑波書房.
  •  吉川 正巳・ 松本 清治(2009)「転換畑黒ダイズの連作障害と対策」『農業技術』64(6),246–251.
  •  渡部 博明(2015)「近畿・中国・四国の農業構造と担い手展望」『中央農業総合研究センター研究資料』10,45–56.
 
© 2017 地域農林経済学会
feedback
Top