農林業問題研究
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個別報告論文
地域固有農産物の開発プロセスにおける主体間関係
―大和の伝統野菜「結崎ネブカ」を事例として―
國吉 賢吾中塚 雅也
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2017 年 53 巻 2 号 p. 92-98

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1. 背景と目的

近年,グローバル化や農山村地域の衰退を背景として,他の地域とは異なる地域固有の資源を活用することにより,地域の活性化を目指す活動が注目されている.しかし,こうした資源活用には地域固有性を特産品とするゆえの様々な制約もあり,困難な点も多いのが現状である.また,地域特産品による地域活性化を目的とし,地域固有の資源を活用する場合でも,当該地域の範域のみに,限定的に存在する特別な資源を持つ地域ばかりとは一概にいえない.こうした現状に対し,國吉・中塚(2016)は特産品の開発において,地域固有性は開発の過程で獲得されてゆくとしており,他の地域にも存在するような資源であったとしても,地域固有性を帯びてゆくことができると分析している.

現在,地域固有の特産品として様々な資源が着目されており,各地の伝統野菜や在来品種などを対象として多数の研究が進められている.伝統野菜活用に際して大石(2011)は,生産者団体や消費者だけでなく,行政や流通業者,飲食店など様々な主体間の関係により成立しているとし,その活用における複数の主体間連携の重要性を指摘している.さらに具体的な運営方法や現状について,山口(2015)は在来品種活用での生産者組織の種子管理体制や買取体制及び販路確立が生産量の拡大に繋がるとして,体制構築の必要性を述べている.また鶴田・藤原(2014)は本稿で取り上げた奈良県の伝統野菜である結崎ネブカを事例に,JAの関与による組織化された種子の地域内保全の現状を明らかにしている.以上のように,単体の主体の体制面や機能面に関する分析はなされている.しかし,主体の連携が重要であると指摘されている以上,複数の主体に着目し,各主体が果たす機能とその機能が主体間の関係性に与える影響というプロセスを明らかにすることは重要である.

そのため本稿では,地域に存在する資源を見出し,その資源を固有の資源として位置づけ,地域特産品として開発するプロセスを対象とし,複数の関係主体が果たす機能とその主体間の関係性および主体間のつながりを促す要因について,明らかにすることを目的とする.

2. 研究の方法

本研究の分析には,國吉・中塚(2016)で示された特産品開発の地域固有性獲得プロセスを研究の枠組みとして援用する.この枠組みでは,特産品開発において歴史への紐づけ,他との差別化,性質の多様化という3つのフェーズを経過して固有性が獲得されるとしている.具体的には,この枠組みに沿って結崎ネブカの事例における展開を3フェーズに分割し,各フェーズで固有性が獲得される際の主体間の関係性の変化をみることにする.

そこで本研究では,奈良県川西町で活用される大和の伝統野菜1である結崎ネブカを調査対象として選定した.結崎ネブカは川西町を含む,より広域な奈良盆地一帯でかつて広く生産されていたとされるが,現在は川西町以外では生産されておらず,近年,地域固有性を獲得してきたプロセスがあったと考えられる.調査の対象は結崎ネブカの開発において,主要な主体として関わる川西町商工会(以下,商工会),JAならけん川西支店(以下,JA川西支店),結崎ネブカ生産部会(以下,生産部会)等とし,その関係者への聞き取り調査と内部資料の調査を実施した.聞き取り調査の内容は,調査対象者が所属する主体の結崎ネブカ運営における役割である.調査期間は2016年8~10月である.

3. 事例とその展開

調査対象先である川西町は,奈良県北西部に位置する人口8,485人(2015年),面積5.93 km2の平地農業地域であり,貝ボタンの生産や能楽観世流発祥の地としても全国的に有名である.結崎ネブカは,戦前に奈良盆地一帯で広く栽培されていた葉ネギの一種であるが,柔らかく流通過程で傷みやすい等の理由から次第に栽培されなくなった.かつては川西町結崎地区にて盛んに生産されていたとの記録が残っている.

生産部会の会員数や栽培面積の推移等の経年変化を表1に示す.2004年の結崎ネブカの本格的な生産開始から,栽培面積は2.5 a(2004年)から100 a(2010年)へと増加し,出荷量は26 t(2014年)にまで増加している.生産部会員の多くは,定年退職した年金生活者であり,2015年には会員数は20名となっている.出荷者一人当たりの平均出荷額は約50万円~100万円の間で推移しており,平均栽培面積は約6 a(2015年)である.2015年の青ネギの年間平均取扱単価2は469円/kgであり,結崎ネブカの同年の平均出荷単価は585円/kgと約2割高であるが,苦労が多い割に市場価格としての反映がされていないとの生産者の声が多い.しかし,結崎ネブカの出荷単価は契約で予め1,750円/3 kg前後として決められているため,生産者の安定的な出荷額の予測が可能となっている.

表1. 結崎ネブカの規模の経年変化
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
栽培面積(a) 2.5 15 35 40 75 85 100 1) 120
生産部会員数(人) 7 10 10 12 15 20
出荷者数(人) 15 16 16 20 20 18
出荷額(百万円) 7.3 11.3 10.5 12.4 16.1 10.1
出荷量(t) 12.2 18.8 17.6 20.7 26.7 16.8

資料:JAならけん川西支店(2010),JAならけん川西支店提供資料より筆者作成.

1)「―」部分は不明のため,記載していない.

結崎ネブカの事例展開を先の3フェーズの枠組みに当てはめて考えると次のように整理することができる.第1フェーズは,対象となる資源と地域の歴史とが紐づけされる段階である.結崎ネブカの場合,2002年に町おこし事業において結崎ネブカの歴史性が着目され,その翌年の2003年に川西町内から種子が発見されたことから,資源と地域の歴史との紐づけが行われているため,2002~2003年が第1フェーズと考えられる.第2フェーズは他との差別化であり,他にはない性質を獲得するフェーズである.結崎ネブカは,2010年に地域団体商標が取得され,他地域において実質的に生産が不可能となり,限定的な性質を獲得しているため,2004~2010年が第2フェーズと考えられる.第3フェーズでは性質の多様化として,親近性や郷土性等の多様な性質が獲得される.2011年,川西町の学校給食への活用により結崎ネブカが地域の人々に親しまれる存在としての活用が図られていることから,2011年以降が第3フェーズと考えられる.以上の結崎ネブカの主な展開と当てはまるフェーズを表2に示す.

表2. 結崎ネブカの主な展開とフェーズ
時期 主な展開 フェーズ
2002年 商工会主導の事業で歴史ある結崎ネブカに着目 第1フェーズ
歴史への紐づけ
2003年 結崎ネブカの種子がU氏から発見
2004年 商工会主導で生産者3名による本格生産開始 第2フェーズ
他との差別化
2005年 奈良県が結崎ネブカを大和の伝統野菜に認定
商工会がロゴマークの商標を取得
2006年 JA川西支店に生産部会発足
2008年 農林水産省の地域ブランド化支援事業に採択
2010年 奈良県農業協同組合が地域団体商標を取得
2011年 川西町の川西幼稚園にて給食として利用 第3フェーズ
性質の多様化
2013年 畿央大学健康科学部と連携し,レシピ開発
2014年 食品製造販売B社が冷凍お好み焼きを開発
2015年 地域固有農産物として,複数の主体が連携運営

資料:主な展開部分は,JAならけん川西支店(2010)より筆者作成.

4. 主体の関係とその機能

(1) 第1フェーズ
図1.

結崎ネブカ関係主体と機能(2002–2003年)

資料:聞き取り調査により筆者作成

2002~2003年に形成された主体の関係と主体が果たす機能を図1に示している.2002年から商工会が町おこし事業を3年計画で実施した.その際,事業の対象とする地域資源を検討するため,川西町内の梅戸・下永・唐院・吐田・保田・結崎の各大字へ15部ずつ自治会長や総代を通し,商工会によって地域住民に地域資源に関するアンケート調査が実施された.川西町は能楽観世流の発祥地として知られており,多くの地域住民が認識している.生産部会副会長のA氏は,「結崎のネブカは知らなかったが,面塚は知っていた」としている.面塚と呼ばれる観世流発祥地には,能とネブカに関する言い伝えがある.『川西村史』(川西村史編集委員会,1970)によると「面と葱種が天から降ってきた.その面を埋めたのがこの塚である」という伝承が残っていたとされる.当時,多くの住民は結崎ネブカの存在が既に消失したと考えている一方で,この言い伝えは認識していた.アンケートの結果にも地域資源に関する質問項目では,住民から結崎ネブカや面塚が回答として挙げられており,戦前に結崎地区で結崎ネブカの生産が多かったとの記録や能楽観世流発祥地における能楽とネブカの言い伝えが評価され,最終的に町おこし事業としては,川西町における結崎ネブカ生産に絞られた.

町おこし事業は商工会が主導していたため,農業関係者に限定されず,自治会や商店,地域行政等の地域の様々な主体が参加していた.当時,自治連合会会長であったU氏も事業の会合に参加していた.2003年に農家でもあるU氏から,自家消費用に自宅で採種・栽培している葉ネギの情報がもたらされる.U氏は農家として苺やほうれん草,九条ネギ等の出荷経験があり,1984年には奈良県農業賞を受賞している.葉ネギの採種も出荷していた九条ネギとの交雑を避けるため,別の場所で栽培するなど,意図的に品種維持に努めてきた.U氏は当時70歳を超えており,2代前から採種を継続していた.商工会が確認したところ,柔らかく折れやすいとされる結崎ネブカとしての特徴を備えていたことから,この葉ネギを結崎ネブカとして以降扱うこととした.この時点で結崎ネブカという地域住民から取り上げられた歴史性と実物の葉ネギとの関係が形成され,資源と歴史との紐づけが実施されている.

(2) 第2フェーズ

商工会はU氏から結崎ネブカの種子の提供を受け,2004年には種子を町内の他2名に提供した.U氏を含む3名にて農産物が生産され,商工会が生産者から農産物を買取り,流通に携わる形で本格的な生産を開始した.生産体制を確立すると同時に商工会は情報媒体への広報活動を行っている.2005年には奈良県によって結崎ネブカが大和の伝統野菜に認定され,同年に商工会は結崎ネブカの商標を取得した.2006年にU氏を会長として生産部会がJA川西支店内に発足した.生産部会の発足には,奈良県の中部農林振興事務所からの助言があり,部会規約等の作成が行われている.当初はJAで生産し,流通は商工会で行うことを検討したが,農産物特有のクレーム対応が商工会では困難であるとの理由から,生産と流通がJA川西支店で実施されることとなった.同年頃からJA川西支店を経由しない結崎ネブカが市場に流通するようになっていたため,地域団体商標を取得する方向に話が進む.2010年当時は,商標法で商工会が地域団体商標を取得することは認められていなかったため3,奈良県農業協同組合が取得する方向で話が進んだ.

地域団体商標を取得するためには販売量や県外知名度などがその指標となる.奈良県農業協同組合は商工会と連携し,積極的な広報活動をすると共に,取得時には一時的に奈良県農業協同組合へ商工会が持つ商標の貸与も行われ,2010年に地域団体商標を取得した.地域団体商標の取得は,2008年に採択された農林水産省の支援事業における成果となり,申請等は奈良県中部農林振興事務所が支援した.奈良県農業協同組合が地域団体商標を取得したことで,実質的にJA川西支店を経由せず,結崎ネブカを生産することはできなくなった.商標による法の拘束力を活用することで結崎ネブカに地域の限定性が獲得され,他との差別化が行われている.2006~2010年に形成された主体の関係と主体が果たす機能を図2に示す.

図2.

結崎ネブカ関係主体と機能(2006–2010年)

資料:聞き取り調査により筆者作成.

1)生産部会の発足,地域団体商標登録,栽培技術の指導に関する支援を意味する.

生産部会の会員は,会員規約においてJA川西支店以外への出荷は認められていない.生産部会で生産された結崎ネブカは,全てJA川西支店を通じて流通されており,流通量の約90%は奈良県中央卸売市場へと出荷されている.また,JA川西支店は結崎ネブカの採種に関与している.職員が生産部会の数人の特定の圃場から結崎ネブカの葱坊主をいくつか収集し,翌年に種子は生産部会の会員に対して配布される仕組みである.生産者の多くは,自身でも採種を実施しているため,JAによる種子管理と生産者による管理が並存している.また毎年,初出荷前である8月中旬頃,中部農林振興事務所とJA川西支店が生産部会への営農指導を行っている.日常的な栽培上の問題に関してはJA川西支店が対応しているが,対応が困難な問題が発生した場合,中部農林振興事務所の栽培技術に関する専門的な支援を受けている.10~11月の出荷が最盛期となる頃,結崎ネブカの柔らかく流通過程において傷みやすい特質からクレームによる返品数が多くなる.クレームが発生した場合,中央卸売市場からJA川西支店に対して返品される.結崎ネブカの商品には商標が添付されており,商工会は商標の使用料を生産部会より収集することで,商標の管理を行っている.

(3) 第3フェーズ

2011~2016年に形成された主体間の関係と各主体が果たす機能を図3に示している.2011年に,川西町内の川西幼稚園の学校給食において結崎ネブカがメニュー化され,川西町内での消費が生まれている.また,商工会が地域の商工会員へ結崎ネブカの利用への働きかけを実施したことにより,町内の飲食店や商工会会員によって結崎ネブカが活用されている.さらに2012年には商工会が主導し,商品開発プロジェクト「結崎ネブカ倶楽部Ten」を開始した.結果として2014年に,お好み焼き等を製造する奈良県内のB社が製造・販売する形で,冷凍お好み焼き「結崎ネブカ焼」が完成し,県内の農産物直売所などで販売されている.2013年には商工会が小規模事業者地域力活用新事業の全国展開支援事業4を活用し,畿央大学健康科学部健康栄養学科と共に,結崎ネブカのレシピ開発を行っている.

図3.

結崎ネブカ関係主体と機能(2011–2016年)

資料:聞き取り調査により筆者作成.

2010年11月から,生産部会によって「結崎ネブカだより」が発行されている.川西町役場,JA川西支店,商工会,中部農林振興事務所の四者による編集会議を行い,各主体で紙面を分割して担当している.また,毎年の初出荷に際して出荷基準を統一する目揃会,3月頃の出荷終了後に行われる総会には商工会や中部農林振興事務所も継続して参加している.

5. 地域固有農産物の開発プロセスの解明

(1) 主体間の関係性

結崎ネブカの展開は,商工会が主導する形で取り組みが開始されている.その際,地域住民が持つ情報を取り出しており,その情報は地域の歴史性であった.その後,U氏という農業に関する豊かな知識と技術を持つ主体により,葉ネギの種子が提供された.以上の様に,第1フェーズでは活動を主導する主体,情報を提供する地域住民,資源を管理・提供する個人の三者によって歴史との紐づけが実施されている.これらの流れの中,それまでU氏一人であった生産者が,3名に増加し,2006年からは生産部会という形で組織化されるまでになった.組織化に伴って,生産物の出荷量が増加し,それらを流通する主体としてJA川西支店が加わっている.また,2005年には奈良県が大和の伝統野菜への認定という形で関与し,その後は県の政策的な背景も加わり,公的機関である中部農林振興事務所が生産者の組織化や栽培に関する技術指導,地域団体商標への申請等に関する支援を実施している.第2フェーズでは,歴史と紐づけられた資源の生産量を増加させるために組織化された生産主体,農産物の流通主体,政策的に関与する主体,栽培技術や政策・法律等の専門知識に関する支援が可能な主体が加わることによって地域団体商標という形で他との差別化が実施されている.

第3フェーズでは,地域内の学校との連携として給食への導入や地域内の商工会員での新たな活用が実施されている.また,新商品の開発を目標として加工食品の製造・販売会社との関係が生まれている.また,消費者の消費を促し,また新たな商品開発という意味でレシピ開発を行った畿央大学とも新たに関係を形成している.このように第3フェーズでは,結崎ネブカを消費する主体と共に商品開発を目的とした主体が新たに加わっている.以上,各フェーズにおいて新たに加わる主体を図4に示す.

図4.

各フェーズにおいて新たに加わる主体

開発プロセスの各時期における,主要な関係主体である商工会,生産者,JA川西支店及びその他の主体が担う機能を図5に示す.第1フェーズの歴史との紐づけ段階において,結崎ネブカは以前より栽培していたU氏が単独で生産と種子管理を行っていた.次に,第2フェーズの他との差別化段階が開始する2004年には本格的な生産と流通が開始したため,広報と農産物流通を行う主体として商工会が機能している.商工会が広報活動により販路を生み出し,基本的な生産組織と流通形態を確立している.しかし,結崎ネブカは元々柔らかく,流通過程で折れやすいという特質を持っているため,市場から姿を消していた経緯がある.そのため出荷量の増加に従って,市場からのクレームが増加し,対応する必要があった. 2006年には,JA川西支店内に生産部会が設置されたのと同時に,流通機能も商工会から農産物の流通を専門とするJA川西支店へ移転されている.商工会は広報活動と共に,2005年に取得した商標の管理による関与を継続している.JA川西支店は,生産者によって管理されていた種子管理に関与を始め,生産者による種子管理と並存する安定的な種子供給機能を果たすようになっている.また,大和の伝統野菜認定に対する奈良県の政策的な関与や地域団体商標取得に際して,中部農林振興事務所の専門的な支援が,この段階で実施されている.第3フェーズの性質の多様化段階では,商工会が主導して,他の主体と関係を新たに形成し,商品開発を開始した.

図5.

各主体の持つ機能の推移

各主体が持つ機能を変更しながら結果として各々の専門機能に特化する形に移行している.結果として,生産部会は生産と種子管理を担い,JA川西支店は流通を専任的に行うという分業体制が確立した.また,JA川西支店は種子管理にも関与し,生産部会員が実施する種子管理を補完する形で並存して種子管理機能を有している.一方,商工会は当初から主導的な役割を果たし,最初に生産や流通の基本的な形態を作ったが,流通においては専門的事業体であるJA川西支店に機能を移転した上で商標管理により関係を維持し,さらに新たな商品の開発へと展開することで,継続的な発展に寄与している.

(2) 主体間のつながりを促す要因

地域固有農産物の開発における主体のつながりを促す要因を以下にまとめる.

第一に,地域固有をうたうための適切な地域範囲の設定である.元々,結崎ネブカに関する言い伝えとかつて多く生産されていたという記録は川西町結崎地区に限定したものだが,結崎地区を含む川西町の商工会が端緒となったことやJA川西支店が担う流通の機能や商品ロット数の問題から川西町全体へと地域の範囲が拡大された.

第二に,連携する各主体が適切な利益を受け取ることができることである.従来,商工会が農産物流通に関与することは少ないが,商標管理によるロイヤルティ収入を理由に関与が持続しているといえる.JA川西支店に関しても通常の農産物出荷と同様,農産物出荷手数料を徴収している.また,生産部会員は買取価格が固定されており,他産地からの影響を受けない安定した利益を見込むことが可能となっている.

第三に,重要な生産に関してであるが,地域内で活用されていない人的資源を,生産主体として取り込むことである.生産部会員は,定年退職した高齢者が多い.こうした地域に存在する人的資源に対して,JA川西支店が営農指導や補助的な種子管理などのきめこまやかな支援を行うと共に,地域にネットワークを持つU氏を生産部会のリーダーとして配置することで,多数の生産主体としての取り込みが可能となり,生産部会員数の一貫した増加に繋がっていると考えられる.

6. まとめ

本稿では,地域固有農産物の開発プロセスとして奈良県の大和の伝統野菜である結崎ネブカを事例に,地域固有性獲得プロセスの枠組みを援用し,分析を行った.結果として,各フェーズにおいて関係する主体が連携し,その機能を移転,補強しながら発展していることが明らかとなった.また地域固有農産物の開発においては地域の適切な設定,各主体が適切な利益を受け取ること,生産においては地域の活用されていない人的資源の取り込みが重要であると示唆された.

1  2005年の大和野菜認定審査会は,奈良県で戦前から栽培され地域の歴史・文化を受け継いだ独自の栽培方法で生産されており,味・香り・形態・来歴に特徴を持っていること,一定規模の産地化と安定した供給が見込めるものを認定基準としている(奈良県農林部マーケティング課,2009).

2  奈良県(2015)によると,青ネギの全国産地の平均取扱単価は469円/kgであった.

3  2010年には,事業協同組合等の特別の法律により設立された組合等に出願可能な団体が限定されていた.2014年8月から登録主体の拡充が行われ,商工会も出願可能となっている.

4  地域の小規模事業者が地域の資源を活用して,全国規模のマーケットを視野に入れた新事業展開を支援するため,商工会議所,商工会及び都道府県商工会連合会が小規模事業者等と協力して行う特産品開発や観光開発などの取り組みに対し,幅広い支援を行う中小企業庁の補助事業.

引用文献
 
© 2017 地域農林経済学会
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