This paper aims to clarify the consumers’ preferences in locally-grown farm products, such as rice, vegetables, and fruits. From the viewpoint of ensuring sustainable consumption and production patterns compatible with SDGs, local food production and consumption will be required more than ever before. The results of this study show that consumers’ preferences depend on the product in question. For example, the most important characteristic is “taste” for rice, and “price” for vegetables and fruits. It is also revealed that consumer is not aware of supporting local environmental benefits through purchasing locally-grown food. The implication here is there is a potential for promoting locally-grown foods. As a reflection of consumers lifestyle recently, it is statistically shown that high health consciousness urges consumers to buy vegetables, rather than rice and fruits.
SDGs seek a plan of action to transform everyone into a sustainable society. One easy action is to strengthen consumers’ purchase of locally-grown food products. The findings of this study also offers suggestions for formulating effective strategies for promoting locally-grown food products.
2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)は,持続可能な社会のために必要な17の目標を設定しており,とりわけ目標12には「持続可能な生産消費形態を確保する」ことがアジェンダに挙げられている.
近年,地場産農産物の消費は,食料自給率の向上,食生活の見直し,環境保全,地域経済の活性化など,生産者や消費者だけでなく,社会にとっても望ましい生産と消費と考えられ,この目標12に対する具体的なアクションとして期待されている1.そのため,地場産農産物の地場消費を意味する「地産地消」の促進が求められる.
また,この動きとは別に,「倫理的消費(エシカル消費)」という考え方が1980年代から北欧を中心に広がりを見せている.倫理的消費について,消費者庁の「消費者基本計画」では「地域の活性化や雇用なども含む,人や社会・環境に配慮した消費行動」と定義している.国内でも,これを促進させるために消費者庁により「『倫理的消費』調査研究会」が2015年に立ち上げられ,SDGsの目指す持続可能な社会と認識を共有している(消費者庁,2017:p. 1).
既述のような近年の動向から,地産地消を促進させる必要性が改めて求められている.Micheletti(2003:pp. 2–3)は,日常的な消費の選択において,一人一人の消費は微少であっても,それらが集合化することにより,社会を変えることができる,と述べている.消費の選択如何では持続可能な社会へと仕組みを変える可能性があり(消費者庁,2017:p. 25),地産地消はその社会へと変える選択肢の一つであると考えられている.
本研究の目的は,地場産農産物の購買促進に向けて,消費者の選好を明らかにすることである.次節で詳しく述べるように,地場産農産物の購買促進に関しては多くの研究が存在する.しかしながら,それらの多くは特定の農産物に限定したものであり,複数品目を対象とした研究は限定的である.本研究は,米,野菜,果物を対象品目として共通の分析モデルにより同時に分析することが特徴である.
本研究の対象は,滋賀県野洲市である.同市は琵琶湖の南東に位置する面積80平方km,人口約5万1千人(2019年9月現在)の自治体である.同市は近江平野の自然環境を生かして米作りが盛んであり,また,その立地から京都,大阪のベッドタウンとしての転入も進んでいる.
本研究では,同市に居住する成人4,000人に対して市民意向調査を実施し,地産地消に関する購買行動を含め,市民の満足度や市政に関する質問について819人より回答を得た.その内容は,回答者の価値観やライフスタイルを含めた多様な個人属性が調査されており,野洲市との共同研究として地産地消を促進させるための要因分析に活用が期待できる.
地場産農産物の購買促進に関しては多くの研究がある.牧山・三富(2004)は購入者の属性や意識をスーパー直売コーナーの購入者に対して調査を実施し,地場産農産物の購入者確保のためには,地場産というイメージだけではなく品質という実態を伴った農産物を用意する必要があるとしている.同様に来店者を対象として,山本他(2009)は,消費者が地場産農産物を評価する要因,および妥当な価格プレミアムの水準について,表明選好法により分析している.その結果,高い経済評価を与える要因として消費者意識では「より詳細な産地名を重視する」「安全性が高そう」などを抽出している.また,支払意志額(WTP)については一般野菜よりも1割弱高いという結果を得ている.地場産農産物のWTPが一般野菜よりも高くなる要因として,Thilmany et al.(2008)は,地元農家の支援や地域経済の活性化が相対的に重要であることを明らかにした.
大庭他(2006)は,実際の購買行動への影響を地元との関わり合いの程度や農への関心・関わりから分析し,「安全な野菜志向」が強いこと,「農とのつながり」も購買促進に有効であることを示唆している.Brown(2003)も地場産農産物の消費者選好の要素として,家族内に農作業経験者がいることや環境活動への参加は農産物の価格プレミアムを受容することを報告している.
地場産農産物の購買促進が環境保全につながることから,西村他(2012)は,滋賀県の「魚のゆりかご水田」が生物多様性保全に寄与するという知識を消費者が獲得することにより,その水田で栽培された米の購買意志を強めるということ,また,徳永他(2015)は地元農産物の購入を環境配慮行動と捉え,その行動要因として旬野菜の栄養素に関する情報提供やCO2排出量削減情報の提示が,消費者の意識改革に有効であることを明らかにしている.
マーケティングの視点から,藤島・岩崎(2010)は,性別・年代などの人口統計的要因よりも,消費者の食に関するライフスタイルを重視した農産物のダイレクト・マーケティングの重要性を指摘している.また,Zepeda and Li(2006)は,省エネや健康,価格を訴求した販促キャンペーンは消費者に伝わるものの購買行動に結びつきにくく,地場産農産物を調理する楽しみを訴求する方が効果的である,と分析している.
これらの先行研究における調査の多くは,最終的に地場産農産物の購買を促進させる要因を規定することを目的としたものであり,調査内容も地場産農産物の購入状況やその購入理由を尋ね,その背後にある要因として研究者の仮定する消費者の属性や経験を質問するケースが多い.しかし,本調査では,多くの先行研究で見られる特定の農産物のみを対象とせず,米・野菜・果物を同時に調査しているのが特徴である.このため,購入促進要因に関してより実務的な商品間の差異が分析できる.また,後述する同時調査から,回答者の広範な個人属性を利用して,先行研究にはない有意な説明変数が見いだされる可能性がある.
本調査は2019年2月に,野洲市内に居住する全成人から無作為に抽出された4,000人を対象に,郵送により実施した.回答が期日までに返送されたのは819件,回収率は20.5%であった.
調査票では,地場産農産物の購入頻度,購入理由,購入場所をそれぞれ米,野菜,果物ごとに質問した.また,関連する項目として回答者の自家菜園などでの栽培経験も尋ねた.
「地場産」の説明では「おおよそ野洲市もしくはその周辺地域で収穫された農産物」である旨を文章で提示した.これは内藤(2006:pp. 47–48)の「行政区域でいえば,広くても同一市町村あるいは同一都道府県内の範囲とするのが妥当であろう」とする説を支持し,さらに,調査地域近辺では隣接市町村で収穫された農産物も直売所で多く販売されている.以上のことを勘案し「地場産」の定義を定めた.また,回答者が地場産農産物のアンケートであることを認識するように各商品の設問毎に「地場産」の文字を太字で示した.
表1に回答者の属性を示す.同表には,野洲市全体の性別,年齢,職業に関する構成比率も併記した.人口動態要因以外にも,本研究と同時に調査された野洲市の市民意向調査には環境や省エネ意識,地域への愛着度,健康管理の現状と意識,防犯・防災への考え方,地域社会へ貢献の意向,交通インフラの利用状況,近隣コミュニティーの親密さの程度,自己啓発活動への意欲,自治会活動への参画度合など,極めて広範なデータが存在する.
| 属性 | 水準 | 人数 | 構成比率 | |
|---|---|---|---|---|
| 回答者 | 野洲1) | |||
| 性別 | 男性 | 396 | 49.9% | 49.6% |
| 女性 | 397 | 50.1% | 50.4% | |
| 年齢 | 20–30歳代 | 150 | 19.0% | 28.2% |
| 40–50歳代 | 239 | 30.3% | 33.2% | |
| 60–70歳代 | 343 | 43.4% | 30.3% | |
| 80歳以上 | 58 | 7.3% | 8.3% | |
| 年収 | 200万未満 | 50 | 8.0% | ― |
| 200–400万未満 | 197 | 31.6% | ― | |
| 400–600万未満 | 133 | 21.3% | ― | |
| 600–800万未満 | 113 | 18.1% | ― | |
| 800–1,000万未満 | 63 | 10.1% | ― | |
| 1,000–1,200万未満 | 38 | 6.1% | ― | |
| 1,200万以上 | 29 | 4.7% | ― | |
| 職業 | 第1次産業 | 16 | 2.1% | 2.2% |
| 第2,3次産業 | 378 | 49.0% | 54.0% | |
| 公務員・教員 | 39 | 5.1% | 4.7% | |
| 無職 | 319 | 43.8% | 39.1% | |
| その他 | 19 | 2.5% | ― | |
1)野洲市構成比率データ出所:
・年齢構成:住民基本台帳(H29.3.31現在)
・職業構成:H27国勢調査(産業大分類別就業者数)
・無職=人口−就業者数−20歳未満の数
以上のような調査項目から,分析の指標としての個人属性データについては,先行研究に関わらず市民意向調査の一部結果も含めて分析する.
まず,アンケートの質問を構成する変数の定義(表2)と記述統計量(表3)を示す.目的変数となる地場産農産物に対する購入頻度,および地場産農産物に対する購入理由,購入場所の各説明変数は,栽培経験を除き,米,野菜,果物ごとに調査されている.
| 変数 | 定義 |
|---|---|
| 目的変数 | |
| 購入頻度 | 日常的に購入=3,たまに購入=2,ごくたまに購入=1,購入しない・わからない=0 |
| 説明変数 | |
| 購入理由(3選択肢まで可) | |
| 安 全 | 安全だから=1,そうでない=0 |
| 応 援 | 地元農業を応援したい=1,そうでない=0 |
| 価 格 | 価格が手頃だから=1,そうでない=0 |
| 環 境 | 地域環境に貢献したい=1,そうでない=0 |
| 食 味 | 食味が良いから=1,そうでない=0 |
| 信 頼 | 信頼できるから=1,そうでない=0 |
| 新 鮮 | 新鮮だから=1,そうでない=0 |
| 購入場所(択一式) | |
| スーパー | おもにスーパーで購入=1,それ以外=0 |
| 直売所 | おもに直売店で購入=1,それ以外=0 |
| 地元小売店 | おもに地元小売店で購入=1,それ以外=0 |
| 移動販売 | おもに移動販売で購入=1,それ以外=0 |
| その他の場所 | おもに上記以外で購入=1,左記以外=0 |
| 購入有無ダミー | 購入頻度で購入しない・わからない=0 それ以外=1 |
| 栽培経験(共通) | 販売目的での作業=3,自給自足程度の作業=2,家庭菜園程度の作業=1,作業経験はない=0 |
| 変数 | 米 | 野菜 | 果物 |
|---|---|---|---|
| 目的変数 | |||
| 購入頻度 | 1.412 | 1.590 | 1.041 |
| (標準偏差) | (1.338) | (1.067) | (0.995) |
| 説明変数 | |||
| 購入理由 | |||
| 安 全 | 0.236 | 0.331 | 0.222 |
| 応 援 | 0.169 | 0.210 | 0.157 |
| 価 格 | 0.203 | 0.300 | 0.186 |
| 環 境 | 0.028 | 0.022 | 0.024 |
| 食 味 | 0.175 | 0.125 | 0.150 |
| 信 頼 | 0.209 | 0.178 | 0.139 |
| 新 鮮 | 0.160 | 0.525 | 0.380 |
| 購入場所 | |||
| スーパー | 0.253 | 0.452 | 0.279 |
| 直売所 | 0.107 | 0.245 | 0.226 |
| 地元小売店 | 0.018 | 0.018 | 0.013 |
| 移動販売 | 0.000 | 0.002 | 0.002 |
| その他の場所 | 0.160 | 0.015 | 0.014 |
| 購入有無ダミー | 0.577 | 0.779 | 0.605 |
| 栽培経験 | |||
| 栽培経験 | 0.762 | 0.775 | 0.778 |
| (標準偏差) | (0.765) | (0.778) | (0.778) |
このため,回答者によっては,いずれかの農産物で目的変数に欠損があり,分析対象となる件数が商品ごとに異なってくる.今回は,米・野菜・果物の購入頻度への回答者数をそれぞれの分析対象件数とした.表4に,調査票での選択肢とした購入頻度の単純集計を商品別に示す.これらの商品ごとの合計値が分析対象件数である.なお,「購入しない・わからない」とした回答者の購入理由はすべて“0”をデータ入力値とした.また,購入理由は3選択肢まで可とした2.
| 日常的に購入 | たまに購入 | ごくたまに購入 | 購入しない・わからない | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 米 | 255 | 101 | 65 | 310 | 731 |
| 野菜 | 166 | 265 | 142 | 163 | 736 |
| 果物 | 59 | 203 | 184 | 291 | 737 |
表5には,商品別の購入理由を示した.この表から,商品ごとに購入理由の類似点と相違点が明らかになる.比較のため,各購入理由の回答数を比率で示している.野菜と果物は新鮮さの割合が他の購入理由に比べ顕著である.米は各購入理由の比率が同程度である.また,3商品に共通する点は,環境の割合が他の購入理由に比べ極めて低いことである.地場産農産物に対する消費と地域環境への貢献との結びつきについては,あまり意識されていないことがわかる.
| 米 | 野菜 | 果物 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 購入理由 | N | 比率 | N | 比率 | N | 比率 |
| 安全 | 165 | 19.5% | 238 | 19.4% | 160 | 17.4% |
| 応援 | 121 | 14.3% | 151 | 12.3% | 113 | 12.3% |
| 価格 | 134 | 15.8% | 216 | 17.6% | 134 | 14.5% |
| 環境 | 20 | 2.4% | 16 | 1.3% | 17 | 1.8% |
| 食味 | 126 | 14.9% | 90 | 7.3% | 108 | 11.7% |
| 信頼 | 148 | 17.5% | 128 | 10.4% | 107 | 11.6% |
| 新鮮 | 113 | 13.3% | 378 | 30.8% | 274 | 29.7% |
| その他 | 21 | 2.5% | 11 | 0.9% | 9 | 1.0% |
| N合計 | 848 | 1228 | 992 | |||
表6は,各商品が主にどこで購入されているのか,その割合を示している.各商品ともスーパーが主たる購入先であるが,野菜,果物については直売所の利用も多い.米はスーパーと直売所だけでなく,その他からの購入比率も多く,主に3か所から買い求めていることがわかる.なお,分析時点での移動販売は米0件,野菜・果物各1件であったため,その他の場所に含めた.
| 米 | 野菜 | 果物 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 購入場所 | N | 比率 | N | 比率 | N | 比率 |
| スーパー | 173 | 46.5% | 280 | 61.7% | 175 | 52.2% |
| 直売所 | 73 | 19.6% | 152 | 33.5% | 142 | 42.4% |
| 地元小売店 | 12 | 3.2% | 11 | 2.4% | 8 | 2.4% |
| その他の場所 | 114 | 30.6% | 11 | 2.4% | 10 | 3.0% |
| N合計 | 372 | 454 | 335 | |||
最後に,栽培経験における集計値を表7に示す.回答者の約6割が何らかで栽培経験を有していることがわかる.農業センサスによれば,平成27年の兼業農家率(販売農家数に占める兼業農家数)は,全国平均で66.7%であるが野洲は81.1%と高くなっており,比較的家庭菜園を含め栽培経験を得やすい環境にあると考えられる.この栽培経験の違いが地場産農産物の購入行動に影響することも考えられるため,次節の分析モデルに含めることとした.
| 販売目的 | 自給自足 | 家庭菜園 | 経験なし | |
|---|---|---|---|---|
| N | 25 | 76 | 317 | 281 |
| 比率 | 3.6% | 10.9% | 45.4% | 40.2% |
本研究における調査は,地場産農産物の購入促進要因を購入頻度に影響を与える要因によって規定しようというものである.すなわち,購入頻度の多い人は,どのような理由や,どの場所で購入しているのか,或いは,どのような個人属性やライフスタイルをもっているのか,を分析する.
目的変数となる購入頻度は,「日常的に購入する」から「購入しない・わからない」までの4段階リッカート尺度により質問している.このため回答は離散的な変数となり,かつ,頻度の多寡という順序をもつため順序ロジットモデルにより分析する.
一般的に購入頻度に関する質問項目では「週に1回」「月に2–3回」など具体的な数値を用いることが多いが,本研究では「日常的に購入する」「たまに購入する」などの主観的な表現を使用している.その理由は(1)回答者の負担を軽減するため,(2)具体的な頻度は回答者ごとによって意味合いが異なるため(たとえば,地場産農産物を日常食としていても個人や家族の好みにより購入頻度的が異なり,主観的表現の方が回答者の異質性を考慮できるため),(3)主観的尺度での分析は,社会心理学や経済学の分野ではごく一般的に用いられるため,である.とくに2番目の点については購入頻度の尺度に関して,主観的な解釈の相違が極力起こらないよう,選択肢の表現方法に留意した.
なお,順序ロジットモデルは非線形であり,限界効果を推計パラメーターから直接的に解釈することはできない.そのため,分析結果では推計値に加えて各選択肢の限界効果の推計結果を含めることとした.
購入場所については,購入有無ダミー(表2参照)を準備し,各購入場所との交差項(購入有無ダミー×各購入場所)を導入した.
説明変数については,表2以外にも一般的な個人属性を含め8変数をモデルに用いた(表8参照).これらは,地産地消の消費に関連して地域社会との関わりを示す属性,また,健康志向に対する消費者意識を示す属性等であり,野洲市の市民意向調査の結果をそのまま利用したものである3.なお,表2の説明変数「地元農業を応援」と表8の「地域社会へ貢献」は類似した内容であり相関が懸念されたが,確認したところ相関係数は0.1程度で問題はなかった4.
| 説明変数 | 定義 | 平均 | SD1) |
|---|---|---|---|
| 地域社会へ貢献 | Q:住んでいる地域に貢献したい「強くそう思う=4」から「全くそう思わない=0」の5段階で回答 | 2.59 | 0.74 |
| 性別 | 男性=1,女性=0 | 0.49 | 0.50 |
| 居住年数 | Q:お住まいの地域(自治会)の居住期間 | 29.00 | 19.60 |
| 1年未満から50年以上までを9段階で回答(各ランクの中心値となる年数をデータとして入力) | |||
| 15歳以下ダミー | 15歳以下の子あり=1,なし=0 | 0.29 | ― |
| 健康志向努力 | Q:自分の健康状態に関心をもち健康管理に努めている | 1.96 | 0.80 |
| 「当てはまる=3」から「当てはまらない=0」の4段階で回答 | |||
| ボランティア活動 | Q:ボランティア活動への参加状況,「毎日~週数回程度=4」から「まったくない=0」の5段階回答 | 0.56 | 1.01 |
| 世帯人数 | 同一住居の人数(複数世帯を含む) | 3.33 | 1.50 |
| 世帯収入 | 200万円未満から1,400万円以上までを8段階で回答(各ランクの中心値となる金額のデータを百万円単位としてモデルに入力) | 5.75 | 3.25 |
1)SD:標準偏差
米・野菜・果物の分析結果を,それぞれ表9,表10,表11に示す.なお,各表中において「購入しない・わからない」は,便宜上「購入しない・不明」と表現している.まず商品毎にその限界効果の変化を概観し,その後,各属性について3商品を横断的に考察する.なお,回答者には,すべて地場産農産物であることを前提に調査が実施されている.
| (米) | 推計値 | 限界効果 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 購入しない・不明 | ごくたまに購入 | たまに購入 | 日常的に購入 | |||||||||||
| 説明変数 | 係数 | 標準誤差 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | ||||
| 安全 | 1.481 | 0.306 | −0.249 | −5.811 | *** | −0.100 | −2.285 | * | 0.131 | 5.225 | *** | 0.218 | 3.709 | *** |
| 応援 | 0.709 | 0.320 | −0.131 | −2.489 | * | −0.037 | −1.193 | 0.075 | 2.426 | * | 0.093 | 1.866 | ||
| 価格 | 1.847 | 0.313 | −0.287 | −7.060 | *** | −0.143 | −3.015 | ** | 0.135 | 5.234 | *** | 0.296 | 4.448 | *** |
| 環境 | 1.168 | 0.646 | −0.181 | −2.583 | * | −0.102 | −1.152 | 0.096 | 3.827 | *** | 0.187 | 1.371 | ||
| 食味 | 2.233 | 0.347 | −0.318 | −7.985 | *** | −0.189 | −3.640 | *** | 0.122 | 3.765 | *** | 0.385 | 4.858 | *** |
| 信頼 | 1.016 | 0.300 | −0.183 | −3.845 | *** | −0.057 | −1.661 | 0.102 | 3.757 | *** | 0.137 | 2.731 | ** | |
| 新鮮 | 0.156 | 0.316 | −0.031 | −0.506 | −0.004 | −0.357 | 0.018 | 0.499 | 0.018 | 0.476 | ||||
| 購入有無×スーパー | 2.469 | 0.342 | −0.367 | −7.323 | *** | −0.182 | −4.185 | *** | 0.140 | 4.780 | *** | 0.410 | 6.347 | *** |
| 購入有無×直売所 | 3.121 | 0.452 | −0.332 | −7.801 | *** | −0.290 | −5.787 | *** | 0.011 | 0.236 | 0.611 | 7.214 | *** | |
| 購入有無×地元小売店 | 5.225 | 1.174 | −0.309 | −7.763 | *** | −0.365 | −7.754 | *** | −0.171 | −4.191 | *** | 0.845 | 17.375 | *** |
| 購入有無×その他場所 | 4.545 | 0.454 | −0.437 | −9.757 | *** | −0.318 | −6.955 | *** | −0.050 | −1.568 | 0.805 | 17.727 | *** | |
| 栽培経験 | −0.297 | 0.190 | 0.061 | 1.551 | 0.005 | 0.656 | −0.034 | −1.537 | −0.033 | −1.545 | ||||
| 地域社会へ貢献 | 0.234 | 0.191 | −0.048 | −1.221 | −0.004 | −0.606 | 0.027 | 1.203 | 0.026 | 1.210 | ||||
| 性別 | −0.054 | 0.251 | 0.011 | 0.214 | 0.001 | 0.202 | −0.006 | −0.214 | −0.006 | −0.214 | ||||
| 居住年数 | 0.013 | 0.008 | −0.003 | −1.673 | 0.000 | −0.660 | 0.001 | 1.642 | 0.001 | 1.669 | ||||
| 15歳以下 | −0.155 | 0.320 | 0.032 | 0.476 | 0.002 | 0.443 | −0.018 | −0.483 | −0.017 | −0.495 | ||||
| 健康志向努力 | 0.049 | 0.158 | −0.010 | −0.309 | −0.001 | −0.283 | 0.006 | 0.309 | 0.005 | 0.309 | ||||
| ボランティア活動 | 0.022 | 0.119 | −0.005 | −0.187 | 0.000 | −0.184 | 0.003 | 0.187 | 0.002 | 0.187 | ||||
| 世帯人数 | 0.176 | 0.106 | −0.036 | −1.652 | −0.003 | −0.668 | 0.020 | 1.638 | 0.019 | 1.652 | ||||
| 世帯収入 | −0.042 | 0.042 | 0.009 | 0.983 | 0.001 | 0.580 | −0.005 | −0.978 | −0.005 | −0.980 | ||||
| N | 731 | |||||||||||||
| 対数尤度 | −315.53 | |||||||||||||
| McFadden R2 | 0.65 | |||||||||||||
1)***, **, *はそれぞれ0.1%,1%,5%の有意水準を示す.
2)説明変数の購入有無×(購入場所)は購入有無ダミーとの交差項であることを示す.
| (野菜) | 推計値 | 限界効果 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 購入しない・不明 | ごくたまに購入 | たまに購入 | 日常的に購入 | |||||||||||
| 説明変数 | 係数 | 標準誤差 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | ||||
| 安全 | 1.085 | 0.208 | −0.096 | −4.935 | *** | −0.159 | −4.784 | *** | 0.135 | 5.198 | *** | 0.119 | 4.399 | *** |
| 応援 | 1.243 | 0.228 | −0.096 | −5.457 | *** | −0.182 | −5.149 | *** | 0.123 | 5.510 | *** | 0.155 | 4.261 | *** |
| 価格 | 1.531 | 0.213 | −0.124 | −6.250 | *** | −0.218 | −6.332 | *** | 0.154 | 5.977 | *** | 0.188 | 5.565 | *** |
| 環境 | 1.231 | 0.588 | −0.078 | −3.276 | ** | −0.178 | −2.452 | * | 0.075 | 2.253 | * | 0.180 | 1.523 | |
| 食味 | 1.253 | 0.304 | −0.087 | −4.932 | *** | −0.183 | −4.363 | *** | 0.098 | 4.568 | *** | 0.172 | 3.082 | ** |
| 信頼 | 0.713 | 0.242 | −0.060 | −3.249 | ** | −0.108 | −2.855 | ** | 0.087 | 3.581 | *** | 0.081 | 2.475 | * |
| 新鮮 | 1.610 | 0.212 | −0.169 | −6.065 | *** | −0.209 | −6.398 | *** | 0.222 | 6.764 | *** | 0.157 | 6.439 | *** |
| 購入有無×スーパー | 1.632 | 0.237 | −0.147 | −5.793 | *** | −0.225 | −6.148 | *** | 0.188 | 6.274 | *** | 0.184 | 5.539 | *** |
| 購入有無×直売所 | 0.695 | 0.274 | −0.059 | −2.791 | ** | −0.105 | −2.457 | * | 0.086 | 3.026 | ** | 0.078 | 2.171 | * |
| 購入有無×地元小売店 | 1.737 | 0.867 | −0.091 | −3.959 | *** | −0.229 | −2.911 | ** | 0.027 | 0.235 | 0.294 | 1.428 | ||
| 購入有無×その他場所 | 1.562 | 0.682 | −0.088 | −4.019 | *** | −0.214 | −3.012 | ** | 0.050 | 0.690 | 0.252 | 1.633 | ||
| 栽培経験 | −0.264 | 0.141 | 0.026 | 1.832 | 0.039 | 1.844 | −0.040 | −1.840 | −0.025 | −1.860 | ||||
| 地域社会へ貢献 | 0.258 | 0.146 | −0.025 | −1.730 | −0.038 | −1.726 | 0.039 | 1.727 | 0.024 | 1.746 | ||||
| 性別 | 0.046 | 0.193 | −0.005 | −0.236 | −0.007 | −0.237 | 0.007 | 0.236 | 0.004 | 0.237 | ||||
| 居住年数 | 0.006 | 0.006 | −0.001 | −0.995 | −0.001 | −1.000 | 0.001 | 0.999 | 0.001 | 0.999 | ||||
| 15歳以下 | 0.120 | 0.252 | −0.012 | −0.486 | −0.018 | −0.474 | 0.018 | 0.486 | 0.012 | 0.468 | ||||
| 健康志向努力 | 0.261 | 0.120 | −0.026 | −2.112 | * | −0.038 | −2.114 | * | 0.039 | 2.111 | * | 0.025 | 2.148 | * |
| ボランティア活動 | 0.109 | 0.097 | −0.011 | −1.110 | −0.016 | −1.113 | 0.016 | 1.113 | 0.010 | 1.114 | ||||
| 世帯人数 | −0.057 | 0.081 | 0.006 | 0.707 | 0.008 | 0.707 | −0.009 | −0.706 | −0.005 | −0.709 | ||||
| 世帯収入 | 0.007 | 0.032 | −0.001 | −0.214 | −0.001 | −0.214 | 0.001 | 0.214 | 0.001 | 0.214 | ||||
| N | 736 | |||||||||||||
| 対数尤度 | −477.64 | |||||||||||||
| McFadden R2 | 0.52 | |||||||||||||
1)***, **, *はそれぞれ0.1%,1%,5%の有意水準を示す.
2)説明変数の購入有無×(購入場所)は購入有無ダミーとの交差項であることを示す.
| (果物) | 推計値 | 限界効果 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 購入しない・不明 | ごくたまに購入 | たまに購入 | 日常的に購入 | |||||||||||
| 説明変数 | 係数 | 標準誤差 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | 限界効果 | t値 | ||||
| 安全 | 1.458 | 0.247 | −0.215 | −6.458 | *** | −0.032 | −0.923 | 0.225 | 4.903 | *** | 0.022 | 3.158 | ** | |
| 応援 | 1.058 | 0.281 | −0.157 | −4.513 | *** | −0.021 | −0.677 | 0.163 | 3.223 | ** | 0.015 | 2.325 | * | |
| 価格 | 1.976 | 0.255 | −0.262 | −8.135 | *** | −0.101 | −2.174 | * | 0.324 | 6.716 | *** | 0.039 | 3.510 | *** |
| 環境 | 1.002 | 0.631 | −0.138 | −2.210 | * | −0.041 | −0.508 | 0.163 | 1.316 | 0.016 | 1.011 | |||
| 食味 | 1.452 | 0.288 | −0.197 | −6.126 | *** | −0.065 | −1.422 | 0.237 | 4.150 | *** | 0.025 | 2.697 | ** | |
| 信頼 | 1.368 | 0.290 | −0.189 | −5.820 | *** | −0.056 | −1.268 | 0.222 | 3.894 | *** | 0.023 | 2.621 | ** | |
| 新鮮 | 1.650 | 0.237 | −0.269 | −7.193 | *** | 0.015 | 0.464 | 0.232 | 6.049 | *** | 0.022 | 3.555 | *** | |
| 購入有無×スーパー | 2.173 | 0.276 | −0.296 | −8.035 | *** | −0.095 | −2.095 | * | 0.348 | 7.243 | *** | 0.042 | 3.520 | *** |
| 購入有無×直売所 | 1.258 | 0.297 | −0.185 | −4.834 | *** | −0.029 | −0.858 | 0.195 | 3.675 | *** | 0.019 | 2.456 | * | |
| 購入有無×地元小売店 | 1.148 | 0.939 | −0.150 | −1.853 | −0.064 | −0.458 | 0.193 | 1.013 | 0.020 | 0.739 | ||||
| 購入有無×その他場所 | 2.350 | 0.737 | −0.216 | −6.340 | *** | −0.287 | −1.989 | * | 0.421 | 3.932 | *** | 0.082 | 1.350 | |
| 栽培経験 | 0.263 | 0.150 | −0.048 | −1.726 | 0.013 | 1.361 | 0.033 | 1.740 | 0.003 | 1.629 | ||||
| 地域社会へ貢献 | 0.010 | 0.167 | −0.002 | −0.061 | 0.000 | 0.061 | 0.001 | 0.061 | 0.000 | 0.061 | ||||
| 性別 | −0.030 | 0.216 | 0.006 | 0.140 | −0.001 | −0.140 | −0.004 | −0.140 | 0.000 | −0.140 | ||||
| 居住年数 | 0.007 | 0.007 | −0.001 | −1.098 | 0.000 | 0.998 | 0.001 | 1.094 | 0.000 | 1.088 | ||||
| 15歳以下 | 0.227 | 0.287 | −0.040 | −0.810 | 0.009 | 0.898 | 0.029 | 0.765 | 0.002 | 0.746 | ||||
| 健康志向努力 | 0.178 | 0.134 | −0.032 | −1.319 | 0.009 | 1.146 | 0.022 | 1.316 | 0.002 | 1.286 | ||||
| ボランティア活動 | 0.240 | 0.107 | −0.044 | −2.225 | * | 0.012 | 1.621 | 0.030 | 2.203 | * | 0.002 | 2.017 | * | |
| 世帯人数 | 0.018 | 0.093 | −0.003 | −0.198 | 0.001 | 0.197 | 0.002 | 0.198 | 0.000 | 0.198 | ||||
| 世帯収入 | 0.007 | 0.036 | −0.001 | −0.181 | 0.000 | 0.180 | 0.001 | 0.181 | 0.000 | 0.181 | ||||
| N | 737 | |||||||||||||
| 対数尤度 | −372.15 | |||||||||||||
| McFadden R2 | 0.60 | |||||||||||||
1)***, **, *はそれぞれ0.1%,1%,5%の有意水準を示す.
2)説明変数の購入有無×(購入場所)は購入有無ダミーとの交差項であることを示す.
「日常的に購入する」における限界効果の値は地元小売店,その他の場所,直売所,スーパーと購入場所が上位を占めている.商品属性では,食味,価格,安全の順で大きい.その他の場所とは,不特定な場所であるが,回答では農家から直接購入,の記述が多く見られた.お米の購入に関して,すべての購入場所は商品属性よりも影響度が大きく,購入促進要因となっている.この理由として,他の農産物とは異なり購入時における商品の重さに要因があると考えられるが後述する.商品属性では食味が限界効果の値が一番大きく,地場産のお米は安全よりも食味に対して消費者選好が強いという結果が示唆された.
「たまに購入する」場合の限界効果の値は,上位からスーパー,価格,安全と続く.値の大きさから,「日常的に購入する」場合と比べると,全体的に購入に与える影響度が小さくなっている.また,上位の属性の種類も変化し,購入場所としてはスーパーだけとなっている.
個人属性(性別,健康志向努力など)の限界効果は,購入頻度に関わらず大きな変化はみられない.また,統計的有意となった属性はなかった.
(2) 野菜「日常的に購入」における限界効果の大きい属性は,順に価格,スーパー,食味,新鮮,応援と続くが,値に大差はない.一方,「たまに購入する」では新鮮,スーパー,価格が上位となっており,安全,応援,食味がその後に続く.野菜は米と比べると相対的に購買頻度が高く,お手頃価格に対する消費者選好が示唆されている.
購入場所としてスーパーと直売所が有意となったが,「日常的に購入」,「たまに購入する」とも限界効果の値はスーパーの方が大きい.野洲市内の販売店における事前調査では,野菜の品揃えに関しては直売所の方が充実している.しかし,商品属性以外にも,スーパーにおける他の利便性が選択に影響している可能性が考えられる.
個人属性では,健康志向努力のみが有意となった.健康と野菜との関係が示唆される.
(3) 果物「日常的に購入」における限界効果は,順に,スーパー,価格,食味,信頼,安全,新鮮となっている.購入場所はスーパー以外にも直売所が有意となっている.商品属性では,野菜と同様に価格が1位となっているが,その限界効果の値からは,購入に対する影響力は小さいと考えられる.
「たまに購入する」場合の限界効果の値は,順に,その他の場所,スーパー,価格,食味,新鮮と続く.その他の場所を選択した回答者(表6参照)は少なく,購入場所として農協の記述も見られたが,ここでは議論の対象にしない.
購入頻度増加にともなう限界効果の変化の大きさは,米とは逆に「日常的に購入する」方が「たまに購入する」場合と比べると,全体的に購入に与える影響度が低くなっている.
個人属性については,ボランティア活動が唯一有意を示した.
以上の結果を踏まえ,地場産農産物の購買行動を規定する属性に関して3商品を横断的に考察する.
(4) 購入理由表9,表10,表11が示す通り,多くの変数が地場産農産物の購買を有意に規定する要因として特定されたが,個々の説明変数を「たまに購入」,「日常的に購入」に着目すると,商品によりその傾向は異なっている.具体的には,米では食味や価格であること,野菜ではさらに新鮮であることが,統計的有意性や全体的な係数値から解釈できる.米は貯蔵可能であるため,消費者は鮮度を重視しないと推測できることであるが,今回の結果はそのことが定量的に裏付けられたものと理解できる.果物では両方の購入頻度において,お手頃な価格が購入促進への影響に対して相対的に大きいという結果を示した.
各商品に共通する要因において,価格が限界効果の大きさ順で上位にあり,価格に対する消費者選好の程度の強さを示唆している.「日常的に購入」では,環境保全への貢献がすべての商品で有意ではない.表5の商品別購入理由の結果も,地域の環境保全に貢献を選択した回答者の割合が小さくなっている.食味については,すべての商品について有意であり,購入頻度の多い消費者にとっては,係数の符号が正であることから,地場産農産物の購入促進要因となりうる.なかでも,米にとって,食味は最も重要な商品属性として分析されている.その他,安全や信頼もすべての商品において有意となっている.
地元農家を応援したいからという購入理由では,米の一部の購入頻度を除き,すべての商品で有意であり限界効果の値も正となっている.地場産農産物の消費によって地元農業を応援している傾向が示唆される.
以上のような購入理由から,一般の農産物よりも地場産が選好されると考えられるが,次に,それらがどこで購入される傾向にあるのかを検討する.
(5) 購入場所と個人属性購入場所ではスーパーが野菜と果物の購入促進の程度に対して他の購入場所よりも大きい影響を示している.実際の買い物では,野菜や果物だけを買いに行くことは少なく,他の日用品とともに購入されるのが日常である.消費者にとって,スーパーは,他の商品に対する品揃えの豊富さ,価格の手頃さ,近年のショッピングモール内での立地等,商品属性以外の利便性があり,これらを総合的に勘案した結果の選好が,野菜と果物では,身近な購入先のなかでも,スーパーであると考えられる.
米については「日常的に購入」の購入場所として,地元小売店の限界効果の値が1位となっている.地元小売店での購入は,重い米袋を運ばずとも自宅玄関先まで配達してくれることが多い.価格もスーパーと遜色がなければ,配達のような地元密着サービスが購入促進に寄与していると考えられる.表1からも,回答者の約50%が60歳以上であり,米の購入先として,自宅へ配達可能な地元小売店に対する選好が示された.このように,スーパーでは買い物での利便性,地元小売店は商品配達など,直接の商品属性以外の要因により,普段から利用する購入先として,主に規定されていると考えられる.
表8に示した個人属性で,いずれかの商品で有意になった変数はボランティア活動,健康志向努力の2変数であった.ボランティア活動は果物にのみ有意を示した.限界効果の値を他の有意な変数と比較しても目立って小さく,相対的に購入促進効果への影響は限られるものと推測される.健康志向努力は,野菜にのみ有意である.健康志向努力は,野洲市の調査用紙によれば「自分の健康状態に関心をもち,(中略)健康管理に努めている」ことについて自分があてはまるかどうかを問う質問である.日常的な健康意識の高低が,地場産野菜の購入に少なからず影響していることになるが,その程度はボランティア活動と同様に小さい.
上記以外の個人属性は,どの商品においても有意ではない結果となった.
(6) 栽培経験既述のごとく,栽培経験はいずれの商品においても有意とはならなかった.藤島・岩崎(2010)の述べている,産直志向を高める等の地場産農産物の購入促進に間接的ではあるが,農業経験は有利に作用する属性,との結果には至らなかった.
栽培経験が地場産農産物の購入促進に有意を示さなかった理由として,野洲市の地域性が考えられる.表7を見ると,栽培経験を有していても農家のような農産物の自給自足が可能な回答者が存在し,さらに家庭菜園でも自宅の庭や市民農園を利用しておれば自給可能な野菜が生産可能と考えられる.このため,野洲市における栽培経験は,農産物の一部が自給可能となる可能性があり,販売店での購買行動に結びつきにくいことが考えられる.野菜では,購入頻度の多い層での栽培経験の限界効果は負を示しており,購買に対しては抑制要因となることが推測される.しかし,本調査での質問文は「あなたの農作物の栽培作業の経験について,近い項目を1つ選んでください」と設定しており,その選択肢も表2で示したとおりであることから,経常的に栽培をしているか否かは不明である.
以上のような理由から,栽培経験が有意とならなかったと考えるが,経験の有無だけではなく,調査地域によっては,栽培継続の有無や栽培の目的も地場産農産物の購入促進に影響する可能性があり,今後の研究課題として指摘される.
(7) 小括「日常的に購入」する人にとっては,身近に利用している購入場所でも,米は地元小売店,野菜と果物はスーパーが,相対的に購入促進に対して最も大きく貢献していることが示唆された.その理由として,米では5 kg,10 kg等の米袋を運搬するのは困難であり自宅配達可能な地元小売店が選好される可能性がある.野菜や果物については,地場産農産物の品揃えに関して直売所はスーパーよりも豊富であるが,他の生活必需品とともに購入する消費者にとっては,地場産農産物であってもスーパーで購入する傾向にある.これらは,一般の農産物にもあてはまる選択理由であるが,(4)で検討した購入理由により,地場産が選択されることになる.
以上の考察から,「日常的に購入する」人にとっての商品ごとの販売促進要因を購入理由と購入場所から整理すると,米では「おいしくて安全で,お手頃価格のお米を地元小売店で販売」することである.野菜は,「おいしくて新鮮でお手頃価格の野菜をスーパーで販売」することが購入促進につながる.果物では,「おいしくて信頼でき,お手頃価格の果物をスーパーで販売」することである.
本研究では,地場産農産物の購入要因について,米,野菜,果物を商品別に分析した.購入理由や購入場所,栽培経験などについて,滋賀県野洲市の一般成人を対象に郵送アンケートにより収集したデータを順序ロジットモデルにより推定した.その結果,購入理由や購入場所については,各商品に固有の要因がありつつも,全体に共通する要因もあることが明らかとなった.
購入要因別では,商品属性に関して,米が食味やお手頃価格,安全が,野菜では新鮮や価格,食味が,果物では,価格や食味,新鮮が限界効果の値の大きさで上位を占めた.また,地元農家への応援という購入理由では,米の一部を除き,すべての商品で有意となった.このことから,購入者は地域の生産者をある程度意識し,その農産物の購入を介して応援していることが示唆された.
地域環境保全への貢献を挙げている回答者は,各商品とも全体の2–3%程度であり極めて低い.捉え方によっては,地場産農産物の生産が地域の環境保全に役立つことを教育や告知などにより広めれば,今後の購入促進が期待できる.
栽培経験については,すべての商品で有意とならなかった.野洲市においては,栽培経験は,栽培により農産物の一部が自給自足されている可能性があり,地場産農産物の購入に結びつかないことも考えられる.しかし,今回の調査では栽培経験者が野菜等の栽培を継続しているか否かは不明であり,今後の研究課題である.
個人属性では,ボランティア活動が果物に,健康志向努力が野菜においてのみ有意であった.しかし,日常的に購入する層にとって,ボランティア活動の限界効果の値が相対的に小さく購入促進効果への影響は少ないと考えられる.健康志向では,野菜の消費と健康との結びつきが消費者意識において醸成されていることが示唆されたが,ボランティア活動と同様に限界効果の値は小さい.
野洲市の市民意向調査から得られた年齢・性別・収入・世帯人数などの人口動態要因については,いずれの商品でも有意な結果は得られなかった.しかし,実際の分析では,その一部を利用しただけであり,今後,野洲市地域の特性も考慮したさらなる調査により新たな知見が得られる可能性がある.
冒頭でも述べたように,持続可能な社会の実現において,地場産農産物を購入することは消費の面での実現手段の一つである.それはSDGsの目標12を達成するためのアクションでもある.目標12は「つくる責任 つかう責任」とも表現されており,農家が環境や安全に配慮しながら農産物を生産し,消費者がこれを積極的に消費することで,地域の環境保全や経済活性化につながり,SDGsの目指す持続可能な社会の実現へ向けての好循環が生まれると考えられる.
最後に,本研究の限界・課題として内生性の問題を指摘しておきたい.すでに述べたように,本研究の推定モデルにおける購入場所に関する変数は,いずれも地場産農産物の購入有無との交差変数となっている.一般に購買行動は,財の属性以外にも個人属性や地域属性などにも規定されることから,潜在的な内生性が指摘される.データ上の制約から,本研究ではこれらを外生的に取り扱っているが,今後の発展的研究では,購買行動の内生性を明示的に取り扱うことを課題として検討していきたい.
本研究の分析は,滋賀県野洲市を対象としたアンケート調査を基に実施したものである.本研究の分析結果を踏まえつつ,今後は他の自治体やより広範囲な調査分析をおこない,より一般性の高い知見を導出することを直近の課題としたい.
当研究は,滋賀県野洲市との共同研究により実現したものです.特に,野洲市企画調整課の皆様にはご支援ならびにご理解を賜り深謝いたします.