To examine the characteristics of the effects and issues of human resource development (HRD) of employees in agricultural corporations in Japan, this study compares the main farm products, with a focus on greenhouse vegetables. We analyzed data from a questionnaire survey conducted in 2016. The results are as follows. (1) “Everyday meeting” and “support for obtaining qualification” are the most common effective measures. (2) “Hiring” and “securing” competent employees are the most common issues. (3) Greenhouse vegetable corporations have more issues in terms of shortage of personnel for training employees. (4) Moreover, their implementation of HRD is at a lower level. This could be due to differences in the expectations for non-management employees of Greenhouse vegetable corporations. (5) “Preparation manuals” and “securing employees of similar age” seem to be effective, however “job rotation” and “independent division system” are not. Hence, more insight into motivation improvement for non-management employees and career development for women are especially important.
わが国の新たな農業の担い手として雇用型農業法人が注目される中で,農業法人における人材育成が重要な課題となっている.近年,農業法人の大規模化の進展により常時雇用者数と就職就農が増加するにつれて,人材育成がますます重要性を増してきている.とりわけ雇用労働力の活用が不可欠な施設野菜作において,生産現場や部門を任せられる人材の育成などの方策が求められている.各地の事例により様々な取り組みが行われているものの試行錯誤の段階であり,より具体的な人材育成方策の知見を提示していく必要がある.
これまでに農業法人の人材育成に関する研究としては,迫田(2011)が水田作企業経営の詳細な事例調査により人的資源管理の特質を明らかにし,青山他(2018)や青山他(2019)が酪農経営および養豚経営を対象に人的資源管理の変遷と従業員満足度を解明している.また,澤野他(2018)が雇用型農業法人の経営幹部育成に向けた実態と課題を指摘している.アンケート調査による分析では,木南他(2011)が農業法人における従業員離職行動とそれに関わる人的資源管理の評価を示しており,さらに,澤田他(2018)が農業法人アンケート調査をもとに人材育成施策が離職行動に与える影響を解明し,岩瀬他(2018)は企業参入法人の人材育成方策の特徴を明らかにしている.
このように既存の研究において事例調査やアンケート調査の分析をもとに農業法人の人材育成に関する研究が進められている.しかしながら,施設野菜作経営の人材育成に関する研究は必ずしも多くない.また,生産品目の違いによる人材育成方策の効果の違いについては明らかにされていない.
そこで本研究では,施設野菜を主力生産品目とする農業法人に焦点を当て,人材育成方策の効果にどのような特徴があるのか,またどのような課題があるのかについて,他の品目との比較分析を通して明らかにすることを目的とする.
分析に用いるデータは,2016年10~12月に日本農業法人協会を通じて行ったアンケート調査である.調査対象は日本農業法人協会会員などの農業法人であり1,郵送により実施した.配布数が約2,300,回収数が774(回収率34%)である.そのうち,農業生産を直接行っている769の経営体を本研究の分析対象とする.
アンケート調査では,①経営概要(生産品目,法人設立年数,売上高,役員数,正社員数,正社員の構成,事業部門数など),②経営展開の意向および正社員の将来意向(規模拡大意向,事業拡大意向,経営者が考える正社員の将来意向など),③人材育成上の課題,④人材育成・人材定着方策の効果への評価について把握している.
なお,④では人材育成方策の効果についての13項目と,人材定着の効果についての6項目を設定し,項目ごとに実施状況を把握するとともに,各方策が人材育成に与える効果について,経営者の評価(5 非常に効果がある,4 やや効果がある,3 どちらともいえない,2 あまり効果がない,1 全く効果がない)を把握し,点数化している2.
(2) 分析視点本研究では,生産品目の違いにより人材育成・人材定着方策の効果は異なるのではないかという仮説をもとに施設野菜を主力生産品目とする農業法人に焦点を当てつつ分析を行う.多くの農業法人は複数の品目を生産しているため,ここでは農業法人の主力生産品目による比較分析を行うこととする.人材育成・人材定着方策の効果に関する回答で分析上十分なサンプル数を得られた「稲作」「露地野菜」「施設野菜」「果樹」の4つの主力生産品目の農業法人のデータに限定し,クロス集計および分散分析による比較を行う.分析に用いたデータのサンプル数は,施設野菜84,稲作252,露地野菜88,果樹68である.ただし,質問項目により数値が異なるため,サンプル数について図表の注に付記することとする.
(3) 分析対象法人の概要分析対象法人の経営概要を表1,正社員の構成等を表2に示す.法人の設立年数は平均13年~17年であり比較的若い農業法人が多いといえる.平均売上高は施設野菜が2.7億円,露地野菜が3億円であり経営規模が比較的大きいことがうかがえる.また,施設野菜を主力生産品目とする農業法人では,売上高1億円以上の法人が約6割を占めている.
| 施設野菜 | 稲作 | 露地野菜 | 果樹 | |
|---|---|---|---|---|
| 平均法人設立年数(年) | 16.6 | 14.8 | 13.4 | 16.6 |
| 平均売上高1)(億円) | 2.7 | 1.1 | 3.0 | 1.7 |
| 平均役員数(人) | 2.9 | 3.7 | 2.9 | 3.7 |
| 平均正社員数(人) | 10.4 | 5.8 | 7.9 | 8.5 |
| 男性(人) | 6.7 | 4.3 | 5.8 | 5.2 |
| 女性(人) | 3.7 | 1.5 | 2.1 | 3.2 |
| 平均パート・アルバイト数(人) | 18.9 | 7.0 | 15.4 | 7.0 |
| 平均事業部門数 | 2.2 | 3.0 | 2.1 | 2.8 |
資料:農業法人アンケート調査より作成.
1)施設野菜の売上高別割合は「~3千万円」12.5%,「3~5千万円」10.0%,「5千万円~1億円」15.0%,「1~2億円」30.0%,「2~5億円」20.0%,「5~10億円」7.5%,「10億円~」5.0%である.
2)サンプル数は,施設野菜84,稲作252,露地野菜88,果樹68である.
| 施設野菜 | 稲作 | 露地野菜 | 果樹 | |
|---|---|---|---|---|
| 親族が占める平均割合(%) | 36.0 | 54.8 | 39.3 | 45.6 |
| 平均年齢(歳) | 38.6 | 42.9 | 35.8 | 38.9 |
| 平均勤続年数1)(年) | 7.5 | 7.4 | 4.6 | 6.8 |
| 平均年収2)(万円) | 280.5 | 272.4 | 263.9 | 224.5 |
資料:表1に同じ.
1)平均勤続年数の中央値は,施設野菜5.5,稲作5.0,露地野菜6.0,果樹4.7である.
2)平均年収の中央値は,施設野菜300,稲作278,露地野菜300,果樹286である.
3)サンプル数は,施設野菜68,稲作162,露地野菜70,果樹47である.
施設野菜と露地野菜の役員数は平均2.9人で,稲作や果樹と比べると少なく,社員に親族が占める平均割合も比較的低い.一方で,施設野菜では正社員数が平均10.4人で最も多くなっており,かつ正社員のうち女性の人数が果樹と同程度に多いという特徴がみられる.また,施設野菜の農業法人はパート・アルバイト数が平均18.9人と最も多いことも特徴となっている3.
施設野菜と露地野菜の事業部門数は平均2部門であり,比較的少ない.これは野菜作の法人の場合,稲作や果樹と比べて消費者への直売や加工を行う法人の割合が少ない4ことが一因ではないかと考えられる.しかし,施設野菜の法人の約8割が「規模拡大したい」「事業拡大したい」という意向を有している5ことから,今後の経営展開としては規模拡大や事業拡大の方向にあるものと考えられる.
正社員の構成をみると,正社員の平均年齢は36~43歳となっている.平均勤続年数は施設野菜,稲作,果樹が6.8~7.5年であるのに対して,露地野菜が4.6年と比較的短くなっている.これは,露地野菜の法人では独立する社員が少なくないためではないかと考えられる.
農業法人の正社員の人材育成を検討する上では,経営者が正社員に将来どのようになってほしいと考えているかを把握することが重要である.
そこで,経営者からみた正社員の将来的な意向について,経営後継者,幹部従業員,一般従業員等の項目ごとに平均人数を把握した(表3).どの生産品目でも「一般従業員のまま」や「決めていない」人数が最も多い.特に施設野菜を主力生産品目とする農業法人では,社員数自体が多いため「一般従業員のまま」が平均7.9人,「決めていない」が平均6.3人と多くなっている.「管理職等の幹部従業員」は,施設野菜で平均3.6人,稲作で平均2.4人,露地野菜で平均3.5人,果樹で平均2.6人となっており,施設野菜と露地野菜で比較的多い.「経営後継者」は施設野菜で平均1.8人,稲作で平均1.4人,露地野菜で平均2.2人,果樹で平均1.7人と大きく違わないものの,「独立」は露地野菜で平均3.4人となっており比較的多い.
| 施設野菜 | 稲作 | 露地野菜 | 果樹 | |
|---|---|---|---|---|
| 一般従業員のまま | 7.9(55.4) | 4.3(47.5) | 4.2(36.2) | 4.5(43.6) |
| 管理職等の幹部従業員 | 3.6(81.5) | 2.4(73.7) | 3.5(88.4) | 2.6(80.0) |
| 経営後継者 | 1.8(26.2) | 1.4(52.0) | 2.2(33.3) | 1.7(27.3) |
| 共同経営者 | 2.4(10.8) | 1.5(7.3) | 1.8(8.7) | 2.3(14.5) |
| 独立 | 1.8(29.2) | 1.6(7.8) | 3.4(21.7) | 1.7(16.4) |
| 決めていない | 6.3(15.4) | 3.6(19.0) | 4.2(20.3) | 4.9(25.5) |
資料:表1に同じ.
1)表中の人数は平均人数を示している.また,括弧内は1人以上いる割合(%)を示している.例えば,表中の「一般従業員のまま」の「施設野菜」では55.4%,即ち36法人が1人以上いる回答をし,その平均人数が7.9人という結果を示している.
2)質問は「将来,正社員(親族以外)にはどのようになってほしいと考えていますか.人数を記入してください」である.
3)サンプル数は,施設野菜65,稲作179,露地野菜69,果樹55である.
また,「管理職等の幹部従業員」になってほしい正社員が1人以上いる割合についての結果をみると,露地野菜で約9割,施設野菜と果樹で約8割,稲作で約7割となっている(表3).一方,「経営後継者」になってほしい正社員が1人以上いる割合は,稲作で約5割と比較的多く,施設野菜,露地野菜,果樹では3割前後となっている.このように農業法人の経営者からみた正社員の将来的な意向について品目により異なる傾向がみられることが指摘できる.
(2) 人材育成上の課題農業法人における正社員の人材育成上の課題について1位の結果をみると(表4),全ての生産品目で最も多いのが「優秀な人材の確保」である.施設野菜で46%,稲作で39%,露地野菜で33%,果樹で41%の法人が優秀な人材の確保を最大の課題としている.
| 施設野菜 | 稲作 | 露地野菜 | 果樹 | |
|---|---|---|---|---|
| 優秀な人材の確保 | 46.4 | 38.5 | 33.0 | 41.2 |
| 優秀な人材の定着 | 11.9 | 14.3 | 15.9 | 14.7 |
| 次世代幹部候補の育成 | 6.0 | 10.7 | 15.9 | 8.8 |
| 指導・育成できる人材の不足 | 13.1 | 10.3 | 10.2 | 10.3 |
| 経営者自身が育成する時間がない | 4.8 | 6.0 | 4.6 | 5.9 |
| 金銭的な余裕がない | 3.6 | 3.2 | 5.7 | 5.9 |
| 方法・ノウハウが不明 | 6.0 | 1.2 | 6.8 | 1.5 |
1位の課題として2番目に多いのは,「優秀な人材の定着」であり,稲作で14%,露地野菜で16%,果樹で15%となっている.ただし施設野菜では「指導・育成できる人材の不足」が2番目に多く,13%となっている.この結果から,施設野菜を主力生産品目とする農業法人では,人材の定着以上に,指導・育成できる人材の不足がより大きな経営課題になっているものと考えられる.
(3) 人材育成・定着方策の実施状況人材育成方策の実施状況の結果についてみると,全ての品目でとりわけ「毎日のミーティングの実施」の実施割合が高く,施設野菜で55%,稲作で70%,露地野菜で60%,果樹で54%となっている(図1).次に「研修会への参加」の実施割合も高く,特に果樹では56%である.3番目に実施割合が高い項目は全ての品目で「資格取得支援」となっている.反対に,最も実施割合が低い項目についてみると,施設野菜で「計画的なOJT」が12%,稲作で「ジョブローテーション」が16%,露地野菜と果樹で「長期的なキャリアパス」がそれぞれ19%と16%となっている.

また,人材の定着方策の実施状況の結果についてみると,全ての品目で最も実施割合が高い項目は「社内懇親会等の開催」であり,施設野菜で55%,稲作で69%,露地野菜で71%,果樹で63%となっている(図2).反対に最も実施割合が低い項目は,全ての品目で「育児・介護休暇制度の導入」であり,施設野菜で14%,稲作で26%,露地野菜で31%,果樹で19%にとどまっている.

品目別に比較すると,全ての人材育成方策の項目において施設野菜は他の品目より実施割合が低い傾向にある(図1).同様に,人材定着方策の実施状況の結果も,施設野菜は全ての項目で他の品目より実施割合が低い結果となっている(図2).
このように施設野菜が主力生産品目の農業法人では,経営規模が大きく正社員数が多いにも関わらず人材育成・人材定着方策の実施割合が低い傾向にある結果となっている.施設野菜の農業法人では,経営者からみた正社員の将来的な意向が「一般従業員のまま」という人数が多く,他の品目と比べ将来の期待の仕方が異なっており,人材育成方策の重要性を感じていないため実施割合が低いのではないかと考えられる.また,施設野菜の場合,トラクターの運転など大型特殊免許が必要な作業が少なく,他の生産品目と比べて資格取得の機会が少ないと推察され,そうしたことも人材育成・人材定着方策の実施割合が低い要因となっているのではないかと考えられる.
(4) 人材育成・人材定着の効果への評価続いて,人材育成方策の効果への評価についての結果を図3に示す.「毎日のミーティングの実施」の効果への評価が最も高く,施設野菜で4.1,稲作で4.2,露地野菜で4.2,果樹4.1となっている.また,果樹では「資格取得支援」も4.1と高い評価となっている.2番目以降は,施設野菜では,「資格取得支援」,「作業改善案の収集」,「マニュアルの整備」,「同年代従業員の複数確保」の順に高い評価となっている.同様に露地野菜でも「作業改善案の収集」,「資格取得支援」,「同年代従業員の複数確保」への評価が高い.一方,稲作と果樹では「部門分担制の導入」や「経営者との定期的な面談」への評価が比較的高くなっている.

反対に,効果への評価が最も低かった項目についての結果をみると,施設野菜と稲作で「ジョブローテーション」がそれぞれ2.9と3.3,露地野菜で「希望に応じた部門配置」が3.5,果樹で「同年代従業員の複数確保」が3.3となっている.
施設野菜とそれ以外の品目とで人材育成方策の効果への評価を比較するために分散分析を行った結果,「部門分担制の導入」,「ジョブローテーション」の2項目について5%水準で有意差がみられた.多重比較の結果,施設野菜を主力生産品目とする農業法人では,稲作と比べて「部門分担制の導入」の効果への評価が有意に低く,また露地野菜と比べて「ジョブローテーション」の効果への評価が有意に低いことが明らかとなった.
こうした特徴は,正社員数やパート・アルバイト数が多く,部門数が少ないことや,他の作物に比べて天候に左右されにくく比較的作業を定型化しやすい施設野菜の生産における特性などが影響しているのではないかと考えられる.また,社員への将来の期待の仕方が他の品目と異なっていることも影響していると考えられる.特にジョブローテーションは経営者育成につながるジェネラリスト育成の方策のため,効果への評価が低いのではないかと推察されるとともに,施設野菜の場合,部門数が少ない組織構造のため,部門分担制が適用されにくいものと推察される.
続いて,人材定着の効果についての結果を図4に示す.人材定着の効果への評価が最も高かった項目は,施設野菜と稲作では「作業環境の改善」がそれぞれ3.9となっている.露地野菜では「能力給の導入」が4.0,果樹では「社内懇親会等の開催」が3.7で最も評価が高い.また,全品目で「地域水準以上の給与体系」も比較的評価が高くなっている.反対に評価が低かった項目は,施設野菜で「能力給の導入」が3.6,稲作と露地野菜で「育児・介護休暇制度の導入」がそれぞれ3.4と3.3,果樹で「退職金制度の導入」が3.3である.分散分析を行った結果,人材定着の効果に関しては統計的に有意な差はみられなかった.これらの6項目はいわゆる労務管理に関わる項目であるため,品目による差がそれほどには生じにくいのではないかと考えられる.
以上のように,農業法人における正社員の人材育成方策の効果への評価について分析した結果,全品目で共通して「毎日のミーティングの実施」と「資格取得支援」の効果への評価が最も高いこと,また,「作業改善案の収集」,「マニュアルの整備」も効果への評価が高いことが明らかとなった.これらの項目は農業法人に共通して重視すべき人材育成方策といえる.一方,主力生産品目が施設野菜の農業法人では,他の品目と比べて「ジョブローテーション」や「部門分担制の導入」で効果への評価が低い傾向となっており,異なる特徴がみられた.
また,正社員の人材育成上の課題としては,全品目で共通して「優秀な人材の確保」が第一の課題となっている.次いで,「優秀な人材の定着」が多くの農業法人で課題となっている一方,施設野菜では「指導・育成できる人材の不足」の方がより大きな課題となっていることが明らかとなった.
しかしながら,施設野菜の農業法人は比較的大規模かつ正社員数が多いにも関わらず,現状では人材育成方策の実施割合が低い.したがって,より一層積極的に人材育成方策を取り入れていくことが肝要である.施設野菜で実施割合が低い一因としては,経営者からみた正社員の将来的な期待の仕方が他の品目とやや異なるためではないかと考えられる.一般従業員のままでどのようにモチベーションを高めていくか,従業員の能力をいかに高めるかなど,何らかの仕組み作りが必要である6.さらに,施設野菜の農業法人では女性正社員数が多いことから,女性のキャリア形成の仕組みについても十分に考慮することが望まれる.また,人材育成に関する経営手法等の情報を入手する機会が必ずしも多くないことが推察されるため,経営者が人材育成について学べる機会や情報等を提供することが重要と考えられる7.
施設野菜の農業法人の約8割が規模拡大や事業拡大の意向を有していることから,今後,大規模化や多角化などの経営展開をしていく上でも正社員の人材育成は避けて通れない課題である.指導・育成できる人材の不足が課題となっている点を念頭におき,人材育成方策を導入することが肝要といえる.
そうした点を踏まえ,人材育成方策の導入をすすめる際には,施設野菜を主力生産品目とする農業法人では,特に農業に関する技術や技能に関するマニュアルを整備することや,同年代従業員を複数確保すること,計画的なOJTなどを重点的に行うことが効果的ではないかと考えられる.これらの項目は効果への評価が高いにも関わらず,実施割合が3割に満たない項目である.マニュアルの整備は,施設野菜の栽培管理・作業管理の上で親和性が高く8取り入れやすい方策であり,かつ指導・育成できる人材の不足への対応策となりうると考えられる.同年代従業員の複数確保を行うことは,人材の定着につながりうる方策であり,重視すべきと考えられる.また,計画的なOJTは,現時点では施設野菜の農業法人で最も実施率の低い項目となっているものの,効果への評価が高いことから人材育成方策として導入に値するものと考えられる.反対に,ジョブローテーションや部門分担制に関しては,個別の法人ごとに必要性を見極めた上で,従業員の能力や適性を考慮しながら導入を検討するべき方策と考えられる.
このように,本研究では生産品目の違いからみた農業法人の人材育成方策の効果の特徴と課題を,施設野菜に焦点を当てつつ明らかにした.ただし,本研究では,実際にどのような人材育成方策がとられているか,先進的な事例の調査をもとに具体的に解明することが課題として残されている.また,施設野菜の中でも葉菜類と果菜類を区別した分析はされておらず,直売・加工など6次産業化の事業を行うケースと行わないケースで人材育成方策の効果が異なるのかどうかといった点は明らかにされていない.これらについては今後の課題としたい.