農林業問題研究
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個別報告論文
等級別豚肉の可変型循環変動分析
万 里
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2020 年 56 巻 3 号 p. 117-123

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Abstract

Using the monthly pork carcass production and wholesale prices of pork carcasses by grade in the central wholesale market in Japan, this study analyzed variable cyclical fluctuations from 1989 to 2018. The results revealed that the basic cycle period of pork carcass production fell from 60 months to 46 months until 2010 and then increased. For wholesale prices of pork carcasses by grade, the cycle period of the highest grade shortened from 65 to 40 months, and that of the out-of-grade shortened from 59 to 35 months. The wholesale prices by other grades of that the high, the weighted average of highest and high, the medium, and the average, each cycle period of these four grades increased from approximately 58 months to approximately 82 months.

1. はじめに

豚肉の循環変動は古くから知られ,一般的には,市場価格の変動に伴う養豚農家が生産調整を行い,出荷・供給量が変化することによって,循環変動が形成されると分析されている.今まで豚肉の循環変動に関する研究成果が多く発表されている.桜井(1952)は1922年から1938年まで17年間の年別データの移動平均により,豚肉卸売価格,と畜頭数の周期期間は4年間であると分析した.出村(1979)は1950年から1975年まで26年間の月別データを用い,スペクトル分析の結果,豚肉価格の周期が1960年以前は36ヵ月間,1960年から1975年は48ヵ月間であり,豚肉生産量の主要周期は48ヵ月間であると分析した.また,糸原(1993)は1965年から1990年までの月別データによるスペクトル分析では,豚肉市場のスペクトル・ピークはほぼ71ヵ月間であると分析した.万(2010)は1989年から2008年までの豚枝肉生産量,中央卸売市場における豚枝肉月別卸売価格を利用し,生産量と卸売価格ともに基本周期は62ヵ月間と分析した.以上のように,分析に用いるデータ期間の違いによって,豚肉の循環変動の周期期間は変化していることが分かる.今まで国内の豚肉循環変動に関する研究は豚肉卸売価格,豚肉生産量を対象とした分析はほとんどであり,等級別豚肉の循環変動に関する先行研究が見当たらなかった.豚肉の循環変動に影響する要因分析については,万(2010)は重回帰分析,鹿熊(2014)は主成分分析などの多変量分析での研究成果もあった.海外では,Dean and Heady(1958)は1924年から1956年におけるアメリカ豚肉の価格変動を分析し,1937年までの前期と1938年以降の後期では,後期の価格変動が増大したと指摘した.Shonkwiler and Spreen(1982)は1946年から1979年までの月別データを用い,アメリカの豚とトウモロコシの価格比からと畜数を導き,3.4年間周期のスペクトル密度がもっとも高く,従来の4年間周期より短縮したと結論付けた.また,Parker and Shonkwiler(2014)は1976年から2011年まで,ドイツの飼料用大麦価格と豚肉の生産者価格との比率により,半年別データと4半期別データそれぞれの計測結果,豚肉の循環変動は4.05年,4.31年であり,循環変動の位相と振幅は時間とともに変化する可能性があると指摘した.Hayes and Schmitz(1987)は,多くの生産者が豚肉の循環変動に気づき,逆の行動をとれば,豚肉の循環変動の周期期間が増長すると指摘した.これまでの研究成果から分かるように,長期的に見れば,飼養技術の進歩,飼料価格の変化,代替財価格の変動などにより,豚肉の循環変動の周期期間は固定されたものではなく,変化していると考えられる.豚肉の循環変動は市場価格不安定の原因だけではなく,養豚農家にとっても経営が安定しない要因となる.従って,豚肉の循環変動の周期期間変化の解明は養豚農家の経営安定,市場価格の安定につながり,生産者,消費者の双方から要求される重要な課題である.そこで,本研究では豚肉価格の循環周期が徐々に変化すると仮定し,時間の推移に伴う可変型循環変動の周期期間の解明を試みる.また,豚肉の等級によっては生産・消費量が異なるため,循環変動の周期期間も違うと考えられることから,等級別豚肉の可変型循環変動を分析する.

2. パワースペクトルによる周期解析

ここでは,1989年から2018年までの30年間の豚枝肉生産量,食肉中央卸売市場における豚枝肉の極上,上,省令,中,並,等外の6等級別月別卸売価格を用いて循環変動を分析する.卸売価格は日本銀行が発表する国内企業物価指数(旧卸売物価指数)の農林水産物総合指数で実質価格を求めた.

データの定常化については,センサス局法1による季節調整済系列での3次までの回帰曲線を求め2,(1)式により誤差最小の回帰曲線を傾向変動とし,(2)式により定常変動を求めた.循環変動を分析する際に,トレンドのない定常変動が必要である.ここでは定常変動に対してADF(Augmented Dickey-Fuller)検定,PP(Phillips-Perron)検定による単位根検定を行った.ADF検定には赤池情報量基準(Akaike Information Criterion: AIC)を適用した.単位根検定の結果を表1にまとめた.いずれも5%において単位根ありの帰無仮説が棄却された.図1では等級が上の豚枝肉卸売価格,季節調整済系列,標準誤差Seが最小の2次回帰曲線を示している.

表1. 定常変動の単位根検定
ADF検定 PP検定
統計量 p値 統計量 p値
豚枝肉生産量 −5.18** 0.0000 −4.13** 0.0010
等級別豚肉卸売価格 極上 −7.22** 0.0000 −3.90** 0.0023
−5.49** 0.0000 −3.49** 0.0087
省令 −5.46** 0.0000 −3.49** 0.0088
−4.82** 0.0001 −3.38* 0.0122
−5.46** 0.0000 −3.45* 0.0100
等外 −4.91** 0.0000 −3.86** 0.0026

1)帰無仮説H0:単位根あり.

2)統計量後ろの**,*はそれぞれ1%,5%における帰無仮説H0が棄却されたことを意味する.

図1.

等級が上の豚枝肉卸売価格,季節調整済系列,傾向変動

  

Se=CTIt-Tt2n (1)

CTItは季節調整済系列,Ttはそれぞれ1次,2次,3次の回帰曲線値,tは時間,nは自由度である)

  

CIt=CTItTt×100-100 (2)

CItは定常変動,Ttは標準誤差Seが最小の回帰曲線値である)

求めた定常変動の自己共分散を算出し,(3)式のパワースペクトル密度によって周期解析を行った3.(3)式のラグ・ウィンドーkiについて,スペクトル密度は負の値を取らない(4)式のParzenウィンドーを用い,打ち切り数Mとデータ総数Nの比M/Nを1/2とした4

  

fωj=12πk0r0+2i=1N-1kiricosiωj (3)

ωjは周波数(ωj=2π/p),pは周期,riは自己共分散,kiはラグ・ウィンドーである)

Parzenウィンドー

  

ki= { 1-6 iM2 + 6 iM3 0iM2 21-iM3 M2iM 0 (それ以外) (4)

2では等級が上の豚枝肉卸売価格のパワースペクトル密度を示している.第1のピークは周波数5の付近,第2のピークは周波数9の付近に現れる.周期p=2π/ωjによって換算するので,周期の月間数に換算するとそれぞれ72ヵ月間,40ヵ月間付近にある.これをもってF検定をすると,76ヵ月間の不偏分散比はもっとも大きく,約3.46であり,限界値 F284750.011.50 で,76ヵ月間の周期はF検定の1%で有意である.次に不偏分散比が大きいのは38ヵ月間で,約3.08であり,限界値 F322370.011.68 で,38ヵ月間の周期もF検定の1%で有意である.ただ,76ヵ月間の周期の不偏分散比はF分布の限界値との差がもっとも大きく,有意水準を高めていくと最終的に76ヵ月間の周期が有意となることから,等級が上の豚枝肉卸売価格の循環変動の基本周期は76ヵ月間である.

図2.

等級が上の豚枝肉卸売価格のスペクトル密度

豚枝肉生産量,等級が極上,省令,中,並,等外それぞれの豚枝肉卸売価格も同様の方法で周期解析した結果,それぞれの基本周期は58ヵ月間,58ヵ月間,76ヵ月間,74ヵ月間,74ヵ月間,38ヵ月間である.30年間の全期間データを用いた周期分析では,等級によって循環変動の周期期間は必ずしも一致しないことを解明した.

3. 循環変動分析

経済時系列の循環変動は一般的に(5)式のフーリエ級数に示すいくつかの正弦,余弦関数の和として表される.ここでは調和解析によって循環変動の位相角A0,調和項AjBjを推定し,有意水準1%のF検定により有意な調和項を残し,(5)式により循環変動を分析する.

  

Ct = A0 + j=1 m Ajcos2πtp×j+Bjsin2πtp×j (5)

Ctは循環変動,A0は位相角,AjBjは有意調和項の振幅,mは調和項数,pは周期である)

3では等級が上の豚枝肉卸売価格の定常変動と循環変動を示している.3つの正弦,余弦関数の和によって構成され,周期pは76ヵ月間である.分析した豚枝肉生産量,等級が極上,上,省令,中,並,等外それぞれの豚枝肉卸売価格の循環変動式は以下のとおりである.

図3.

等級が上の豚枝肉卸売価格の定常変動と循環変動

豚枝肉生産量(周期p=58ヵ月間)

  

Ct = 0.4236+1.0208cosπt29+0.8003sinπt29 -0.3758cos2πt29+0.0058sin2πt29

等級が極上の豚枝肉卸売価格(周期p=58ヵ月間)

  

Ct= 0.3184-4.2335 cos πt 29 -3.3492 sin πt 29

等級が上の豚枝肉卸売価格(周期p=76ヵ月間)

  

Ct = -0.0427+1.9698 cos πt38 +4.0097sinπt38 +4.6361cos2πt38+2.7739sin2πt38 -0.7417cos3πt38+1.1542sin3πt38

等級が省令の豚枝肉卸売価格(周期p=76ヵ月間)

  

Ct = -0.0798+1.9836cosπt38+4.0259sinπt38 +4.6169cos2πt38+2.7863sin2πt38 -0.7544cos3πt38+1.1431sin3πt38

等級が中の豚枝肉卸売価格(周期p=74ヵ月間)

  

Ct = -0.0971+0.2324cosπt37+5.4210sinπt37 +0.3353cos2πt37+5.5645sin2πt37

等級が並の豚枝肉卸売価格(周期p=74ヵ月間)

  

Ct = -0.1490+0.0390cosπt37+5.8857sinπt37 +0.5961cos2πt37+6.7571sin2πt37

等級が等外の豚枝肉卸売価格(周期p=38ヵ月間)

  

Ct=-0.4323+7.1835cosπt19+8.9216sinπt19

4. 可変型循環変動

長期的に見れば,技術進歩,経済成長,政策変遷,消費者嗜好の変化などに伴い,豚肉の生産量,市場価格の循環変動が,周期,振幅は必ずしも不変のものではなく,徐々に変化すると考えられる.今まで多くの研究においても,分析するデータ期間の違いによって循環変動の周期期間は違うことが指摘されている.本研究では,豚枝肉生産量,等級別豚枝肉卸売価格の周期期間は長期にわたって変化すると仮定し,(2)式で算出した定常変動を用いて循環変動の分析区間を決め,1ヵ月ずつ移動しながら(3)式により周期解析を行い,(5)式で分析区間の循環変動を算出する.各分析区間の周期期間,振幅の平均値を持って可変型循環変動を分析する5

分析区間を決める際に,少なくとも全期間データ循環変動の周期期間の2倍以上長さのデータがなければ周期解析はできない.分析区間データは長ければ長いほど,周期解析の精度が高くなる.また,循環変動の周期期間は可変的であると仮定すれば,分析区間の周期期間は全期間データ循環変動の周期期間より長くなることも考えられる.2節のパワースペクトル解析の結果を見ると,豚枝肉生産量及び等級別豚枝肉卸売価格の7系列において,全期間データ循環変動の周期期間が短いものは38ヵ月間(約3.2年間)であり,長いものは76ヵ月間(約6.3年間)である.分析区間データの長さは全期間データ循環変動の周期期間の2倍以上が必要で,且つ同一条件での結果は比較に向くため,7系列ともに分析区間データの長さを180ヵ月間(15年間)にした.

4は分析区間が180ヵ月間,等級が上の豚枝肉卸売価格の可変型循環変動,定常変動を示している.図3と比較すると,可変型循環変動のほうが全期間データ循環変動より,定常変動との一致性は高いことが分かる.それぞれの循環変動はどれほど定常変動を説明しているかを計るため,(6)式の決定係数R2を算出した.また,全期間データ循環変動,可変型循環変動Ctを目的変数とした場合,循環変動を構成するフーリエ級数の正弦,余弦関数の数が違うため,自由度調整済決定係数 R-2 を(7)式で算出し,表2にまとめた.いずれも可変型循環変動と定常変動との決定係数が大きい.さらに,(1)式のCTItを定常変動CItに,Ttを循環変動Ctに置き換え,全期間データ循環変動,可変型循環変動それぞれと定常変動との標準誤差を算出し,表3にまとめた.可変型循環変動の標準誤差は全期間データ循環変動の標準誤差より小さい.つまり,可変型循環変動のほうは全期間データ循環変動より,定常変動に近いことが分かる.循環変動は定常変動から分析したことから,可変型循環変動は全期間データ循環変動より実測値に近いこととなる.長期的に見れば,循環変動の周期,振幅が徐々に変化している.

図4.

等級が上の豚枝肉卸売価格の定常変動と可変型循環変動

表2. 循環変動と定常変動との自由度調整済決定係数 R-2
全期間データ循環変動 可変型循環変動
豚枝肉生産量 0.2726 0.5655
等級別豚枝肉卸売価格 極上 0.2599 0.7329
0.4582 0.7513
省令 0.4591 0.7490
0.4155 0.7190
0.4318 0.7101
等外 0.3121 0.7188
表3. 循環変動と定常変動との標準誤差Se
全期間データ循環変動 可変型循環変動
豚枝肉生産量 1.5559 1.2110
等級別豚枝肉卸売価格 極上 6.4918 4.5278
5.4288 3.7480
省令 5.4246 3.7517
6.5024 4.5415
7.2673 5.2555
等外 11.9894 7.7510

  

R2=CIt-CI- ×Ct-C -CIt-CI- 2×Ct-C -22 (6)

CItは定常変動,Ctは循環変動である)

  

R-2=1-1-R2×N-1N-w (7)

wは定数項を含む説明変数の数である)

豚枝肉生産量,等級別豚枝肉卸売価格の可変型循環変動の周期期間は時間の推移に伴い変化していることから,時間tの関数とする周期期間pt,自由度調整済決定係数 R-2 を算出すると,以下のとおりである.

豚枝肉生産量( R-2 =0.8502)

  

pt = 65.23-0.7203t+ 0.0233t2 -2.81× 10-4 t3 +1.57× 10-6 t4 -4.12× 10-9 t5 +4.09× 10-12 t6

等級が極上の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.8599)

  

pt= 65.25-0.0665t

等級が上の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.9813)

  

pt= 58.14+0.0626t

等級が省令の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.9810)

  

pt= 58.35+0.0619t

等級が中の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.9904)

  

pt= 57.00+0.0726t

等級が並の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.9865)

  

pt= 57.36+0.0666t

等級が等外の豚枝肉卸売価格( R-2 =0.9510)

  

pt = 58.90+0.0294t+ 2.60× 10-4 t2 -1.55× 10-6 t3

豚枝肉生産量の場合,周期期間は2010年まで60ヵ月間から65ヵ月間の範囲にあったが,その後2015年にかけて46ヵ月間までに短縮したあと,2018年末までに80ヵ月間に増長した.等級別豚枝肉卸売価格については,等級が極上の場合,周期期間は65ヵ月間から40ヵ月間までに短縮してきた.等級が上,省令,中,並の場合,いずれも周期期間が増長傾向にあり,58ヵ月間前後から82ヵ月間前後までに変化してきた.等級が等外の場合,周期期間は59ヵ月間前後から2001年末まで64ヵ月間に増長した後に短縮しはじめ,2018年には,35ヵ月間までに短縮した.長期的に見れば豚枝肉の等級によって,その循環変動の周期期間の変化は必ずしも同じではないことを解明した.

5. まとめ

本研究では,豚枝肉生産量,中央卸売市場における等級別豚枝肉卸売価格,2018年まで30年間の月別データを利用し,センサス局法により季節調整を行い,回帰分析で傾向変動を求め,時系列定常化を行った.定常変動のパワースペクトル解析により周期を解析し,全期間データ循環変動及び分析区間循環変動での平均値による可変型循環変動を分析した.結果をまとめると以下のとおりである.

① 全期間データ循環変動分析では,豚枝肉生産量,等級別豚枝肉卸売価格それぞれの循環変動の周期期間は必ずしも同じ長さではない.等級別豚枝肉卸売価格について,等級が等外の豚枝肉卸売価格の基本周期期間は38ヵ月間で短く,他の等級の豚枝肉卸売価格の基本周期期間の約半分である.

② 可変型循環変動の周期分析では,豚枝肉生産量の周期期間は2010年から2015年まで短縮した後,2018年まで80ヵ月間に増長した.2010年から2015年にかけて周期期間の短縮は,2010年4月から8月までの間に宮崎県を中心に発生した牛,豚など家畜の口蹄疫と,2011年3月に発生した東日本大震災の影響が大きいと分析できる.口蹄疫による豚の殺処分数は22.79万頭にのぼり,当時の全国豚飼育総数の2.3%に当たる6.また,東日本大震災は被災地の養豚業に大きな打撃を与えた.これらのことによって,豚枝肉生産量が減少した.2008年5月ごろから始まった豚枝肉生産量増加の循環周期は長く維持できず,2011年5月ごろに谷につく短い周期となり,豚枝肉生産量の循環変動の周期期間を短縮させた最大な理由である.

③ 等級が上,省令,中,並の豚枝肉卸売価格は,分析した30年間において,可変型循環変動の周期期間は増長している.原因の1つは養豚農家の規模拡大が周期期間の増長に影響を与えたと考えられる.農林水産省編(1989–2018)によると,1戸当たりの豚の平均飼養頭数は,1989年の236頭から2018年の2,056頭まで8.7倍も増加した.大規模化と専業化が進んだ結果,豚舎,給餌機などの機械設備への投資が増大し,市場価格の変化に伴う大規模な生産調整が難しくなる.図5からも分かるように,食肉中央卸売市場における等級が上,省令,中,並の取引成立頭数が多い.規模拡大に伴う出荷頭数の多い豚枝肉卸売価格の周期期間が増長している.

図5.

食肉中央市場における等級別取引成立頭数

資料:農林水産省編(1989–1990)農林水産省編(1991–2018)による.

④ 等級が極上,等外の豚枝肉卸売価格は,分析した30年間において,周期期間が短縮されてきた.食肉中央卸売市場における等級別取引成立頭数を見ると(図5),極上がもっとも少なく,次いでは等外である.養豚農家の大規模化が進む中,市場価格の変化に伴う生産調整は,出荷頭数の少ない極上や,等外などを中心に行うことが考えられる.これら等級の豚枝肉卸売価格は,従来の豚肉循環変動に分析される繁殖用メス豚の増頭から肉豚の生産,出荷までの3年間から4年間の周期期間に回帰してきたと考えられる.

⑤ 農林水産省「食料需給表」によると,豚肉の需要量は1989年度の207万トンから2018年度の265万トンへと58万トン増加したに対し,国内生産量は1989年度の160万トンから2018年度128万トンへと32万トン減少した.供給量の不足を輸入量によって補い,輸入量が増大したことが分かる.豚肉は輸入品と国産品の差別化が図られづらく,安価な輸入豚肉の増加は国内養豚農家の経営を圧迫する.豚肉価格低下時に規模の経済性による大規模化は,出荷頭数の多い等級の豚枝肉卸売価格の周期期間増長の一因であるとも考えられる.

本研究は豚枝肉生産量,等級別豚肉の可変型循環変動を分析し,決定係数,標準誤差を用いて全期間データ循環変動,可変型循環変動の比較分析を行った.今後ではクロスバリデーションなどの手法を用いたより精緻な評価などの課題が残る.

1  センサス局法はアメリカ・センサス局ホームページUnited States Census Bureauからダウンロードできる.

2  回帰曲線による傾向変動を表す時,4次以上の回帰曲線には循環変動が含まれる恐れがあることから,3次までの回帰曲線とした.

3  パワースペクトル解析については,川嶋・酒井(1989)日野(1994)出村(1979)を参照されたい.

4  ラグ・ウィンドーについては,出村(1979)万(2002)を参照されたい.

5  可変型循環変動の分析方法は万(2002)万・笠原(1998)を参照されたい.

6  豚飼育総数は農林水産省編(1989-2018)を参照されたい.口蹄疫による豚の殺処分数などは農林水産省編(2011)を参照されたい.

引用文献
 
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