農林業問題研究
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個別報告論文
フードバンク運営者の満足度決定要因
髙橋 知笑大江 靖雄
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2021 年 57 巻 2 号 p. 69-76

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Abstract

Food banks attract growing concern as a countermeasure to tackle food loss and deepening poverty issues among urban children. However, full scale research is still scarce. Thus, this study investigated operators’ satisfaction and its determinant factors using a nationwide web-based questionnaire survey. We received 60 responses and employed a binary logit model and co-occurrence network analysis. The results revealed that those with stable food suppliers and partnerships with local municipalities, and located in east Japan had higher satisfaction levels. Meanwhile, those providing food to individuals had lower satisfaction as doing so required more time and labor. Further, many food banks face financial difficulties because most are non-profit organizations (NPOs) with weak financial bases. Thus, securing partnerships with the public sector will be necessary.

1. はじめに

近年フードバンク活動が全国的に広まっている.フードバンク活動の意義として,食品ロス問題と貧困問題の両方の問題の改善につながることが挙げられる.フードバンク活動について,農林水産省(2017)は「包装の破損や印字ミス,賞味期限に近づいたなどといった理由から,品質には問題がないにもかかわらず廃棄されてしまう食品・食材を,食品製造業や食品小売業等から引き取り,福祉施設や生活支援を必要とする個人などに譲渡を行う活動」と位置づけている.

その仕組みとしては,個人,農家,企業などの食品寄贈提供元からフードバンク団体が食品を受け取り,支援を必要とする福祉施設,個人など食品寄贈先に再分配する流れとなっている.近年日本で広がりを見せている背景としては,まずまだ食べられるにもかかわらず廃棄されている食品である「食品ロス」が日本では年間643万トン発生しており(農林水産省,2020),食料資源の有効活用,地球温暖化の抑制の面から改善が必要であることが挙げられる.また,相対的貧困率と子どもの貧困率が1985年から30年にわたり上昇傾向にあり(厚生労働省,2017),その対応策が求められていることがある.

フードバンクに関する既往の研究としては,国内よりも先にフードバンクが発展してきた海外の事例を対象にした研究がある.韓国におけるフードバンクシステムの事例分析(佐藤,2017)や台湾における事例分析(日詰,2020),オーストラリアにおける事例分析(小林,2019)など各国のフードバンクを対象に研究が行われてきた.一方で,国内を対象にした多様な研究も行われている.まず,フードバンクとの連携を対象にした研究では,大学との連携(三宅,2019),自治体との連携(中村・八木,2013),地域活性化という観点での地域との連携(原田,2018)など多様な連携対象に関する研究がある.また,運営側を対象にした研究も数多く存在する.運営概況の事例分析という観点からは,名古屋のフードバンクを対象に事例分析を行い欧米韓と比較分析した研究(小林,2012),山口県のフードバンクを対象にした研究(今村,2019)などがある.

事例分析の他にも,運営サイドの観点から最適なスタッフの配置を管理するシステムを対象にした研究(植松他,2020),目的別に団体を分類し食育の観点から分析した研究(佐藤・中村,2016),扱う生鮮食品の現状と可能性を分析した研究(櫻井,2019)など様々な観点で研究されている.

他方で,利用者を対象にした研究では,フードバンクの受益者である個人・団体のQOLの評価(松本・小西,2016)が行われてきた.また,全国のフードバンク団体の統計データとしては農林水産省実施の活動実態把握調査(農林水産省,2017)がある.しかしフードバンク団体の運営満足度に作用する要因についての分析は,その持続性に重要な条件であるにも関わらず行われていない.本研究では,運営満足度をフードバンクの運営状況に対する全体的な満足の度合と定義する.

そこで本研究では,全国のフードバンク団体を対象に,運営満足度に作用する要因を計量的に分析し,今後のフードバンク活動における支援策を展望する.

2. フードバンクの現状

2017年に発表された農林水産省実施の活動実態把握調査では,フードバンク活動の団体数は2017年1月末時点で77団体確認されている.

団体は全国に存在し,44都道府県で少なくとも1団体以上が活動している.また,フードバンク団体の全国組織である一般社団法人全国フードバンク推進協議会が定期的に行っている調査では,2019年の9月時点で日本国内のフードバンク団体数が100団体を初めて超えたと発表された(全国フードバンク推進協議会,2019).また現在ではすべての都道府県で少なくとも1団体が活動しているという.このことから,フードバンク団体が全国にわたって活動し,新設される団体数も増加傾向にある.

3. 調査・分析方法

本研究では全国のフードバンク団体を対象に調査を行った.まず全国組織である一般社団法人全国フードバンク推進協議会を対象に電話による聞き取り調査を行い,フードバンク活動の概況について調査を行った(調査期間:2019年10月).

調査対象は,当初はフードバンク推進協議会に把握している団体のリストの提供を依頼したが,非公開との回答だったため,農林水産省の調査対象リストを使用した.農林水産省のリストについては,公開されている最も網羅性の高いリストであることからこれを利用した.調査方法については,フードバンクは全国に位置しているため,Web調査の方法を採用した.質問項目としては,農林水産省(2017)の先行調査票を参考にして,運営形態,食品の提供元・提供先,輸送方法,活動を始めた目的,活動の課題など,運営状況と団体の属性を把握する項目を設けるとともに,回答者の具体的思いを把握するための自由記述を含め合せて31項目を設定した.続いて,電子メール,問い合わせフォーム,Facebookのメッセージ機能で連絡を取ることが不可能な2件を除いて連絡可能な96件の団体に,上記の項目に関してgoogleフォームを活用してアンケート調査票を送付依頼し,実際の運営担当者に回答を依頼し,ウェブ上で回答する形式で回収した.その間,回答率を高めるべくリマインダーメールを送信した.そのうち60件から回答を得た(回答率62.5%,調査期間:2019年11月~12月).分析方法はロジットモデルにより運営満足度の要因の計量的解析と,定性情報分析として自由記述に関して共起ネットワークを用いてテキスト分析を行った.以上の2段階の相互補完的な分析により,運営満足度に作用する要因およびその背景と課題を考察する.

4. 調査結果の概要

実施した上記のアンケート調査結果についての概要をみてみよう.まず,表1は運営の概況を示している.それによると,実施団体は全国的に分布している.その法人格についてみると,NPOが6割を超えているものの(61.6%),認定NPOとなっている団体は1割程度に過ぎない(13.3%).半数近くは,非認定のNPO法人のままで活動している状況にある(48.3%).活動開始の時期については,2010年代後半が6割近くを占めており(58.4%),調査時点で開始4年以内の実施団体が多い.

表1. フードバンクの運営概要
項目 細目 構成比(%)(回答数) 項目 細目 構成比(%)(回答数)
地域分布 北海道 8.3(5) スタッフ総数 1~5人 45.0(27)
東北 15.0(9) 6~10人 18.3(11)
関東 28.3(17) 11~15人 18.3(11)
中部 8.3(5) 16~20人 6.7(4)
近畿 11.7(7) 21~30人 5.0(3)
中国・四国 11.7(7) 31~40人 0(0)
九州・沖縄 16.7(10) 41人以上 6.7(4)
100.0(60) 100.0(60)
法人格 認定NPO法人 13.3(8) 常勤スタッフの割合 0%(常勤なし) 56.7(34)
その他のNPO法人 48.3(29) 20%未満 18.3(11)
法人格なし 11.7(7) 20~40%未満 5.0(3)
一般社団法人 10.0(6) 40~60%未満 8.3(5)
社会福祉法人 8.3(5) 60~80%未満 3.3(2)
自治体による運営 3.3(2) 80%以上 8.3(5)
その他 5.1(3) 100.0(60)
100.0(60) 有給スタッフの割合 0%(有給なし) 51.7(31)
活動開始時期 2000~2010年 15.0(9) 20%未満 20.0(12)
2011~2012年 10.0(6) 20%未満 3.3(2)
2013~2014年 16.7(10) 20~40%未満 6.7(4)
2015~2016年 31.7(19) 40~60%未満 1.7(1)
2017~2018年 25.0(15) 60~80%未満 16.7(10)
2019年 1.7(1) 100.0(60)
100.0(60)

資料:アンケート調査結果より作成.

次に,活動の担い手である運営スタッフの状況についてみると,5人以下が45.0%で,常勤スタッフの割合がゼロ(常勤なし)は,半数以上に達している(56.7%).さらに,有給スタッフの割合でも半数以上は,有給なしで運営されている実態にある(51.7%).つまり,実施団体の大半は,小人数で,非常勤や無給で運営されている状況といえる.

以上から,小規模で脆弱な運営基盤の下で,実施されている実態を把握できる.このことから,運営者の活動への強い思いにより活動が行われることが示唆されるため,この点について自由記述に関する分析でさらに考察を行うことにする.こうした実態から,運営において地方自治体の行政との連携した活動については,「連携して活動している」(90.0%),「連携して活動していない」(10.0%)という結果で,回答した9割のフードバンクで行政との連携を行っている.食品ロスの削減という目的に対する効果に関しては,「とても感じる」(16.7%),「まあまあ感じる」(53.3%),「あまり感じない」(28.3%),「わからない」(1.7%)という結果で,7割が効果を感じている(図1).

図1.

食品ロスの削減という目的に対する効果

資料:アンケート調査結果より作成.

1)( )内はサンプル数.

また,貧困対策という目的に対する効果では,「とても感じる」(35.0%),「まあまあ感じる」(50.0%),「あまり感じない」(10.0%),「全く感じない」(3.3%),「わからない」(1.7%)という結果で,85.0%が効果を感じている(図2).つまり,いずれの目的に対しても7割以上の運営者は効果を感じているが,貧困対策に対する効果への評価がより高くなっている.運営に対する満足度(5段階)については,「非常に満足」(5.0%),「やや満足」(35.0%),「どちらでもない」(40.0%),「やや不満」(16.7%),「非常に不満」(3.3%)という結果が得られた(図3).以上の満足度の結果を満足(非常に満足とやや満足)と非満足(満足以外)に二分すると,非満足が過半数を超え6割に達していることから,運営に対して満足していない運営者の方が多いことが判明した.

図2.

貧困対策という目的に対する効果

資料:アンケート調査結果より作成.

1)( )内はサンプル数.

図3.

運営に対する満足度

資料:アンケート調査結果より作成.

1)( )内はサンプル数.

5. 分析モデル

上記の集計結果を踏まえて,運営満足度に作用する要因を分析するため,ロジットモデルで分析を行った.被説明変数を満足度とし,上記のように満足度が二分する結果となったことから,非常に満足・やや満足を合計した「満足」を1,「どちらでもない」・「やや不満」・「非常に不満」を合計した「非満足」を0と置いた.なお,「どちらでもない」は積極的に満足を示している訳ではないため,「非満足」に区分した.また,5段階の順序ロジットモデルについても当初計測を試みたが,良好な結果は得られなかった.

上記の理由から,被説明変数を2値データの運営満足度として変数化した.説明変数には,①食品の提供元,②食品の提供先,③行政との連携,④運営団体の属性の四つを設定した.これらの要因がフードバンクの活動の活動状況に作用する結果,その運営満足度を規定すると想定するモデルである.

具体的な変数としては,①食品の提供元:卸売業(yes=1, no=0),②食品の提供先:個人支援(yes=1, no=0),③行政との連携:行政と連携して活動(yes=1, no=0)×食品ロスの削減という目的に対する効果を感じる(yes=1, no=0),行政と連携して活動(yes=1, no=0)×障碍者施設に提供(yes=1, no=0),④運営団体の属性:所在地域が東日本(yes=1, no=0)を用いた.なお,③行政との連携に関しては,行政と連携して活動(yes=1, no=0)という変数に食品ロスの削減という目的に対する効果を感じる(yes=1, no=0)という変数と,障碍者施設に提供(yes=1, no=0)という変数をそれぞれ掛け合わせる交差変数を用いている.これは行政との連携の効果をより具体的にみるためである.当初は,それぞれの変数を単独で用いて計測を試みたが,有意ではなかったため交差変数として用いることにした.

用いた変数はすべてダミー変数であるため,記述統計としては表2に示すとおりである.フードバンクに関するこの種の分析は初めてであるため,これらの変数以外にも,検索的に事前の予備的な計測ではアンケート調査結果に基づいて,ほぼすべての変数について変数として用いた.しかし,安定して統計的な有意な結果を得られたのは,上記の説明変数であった.上記の変数設定は,実際の運営状況に照らしても不自然な想定ではないと考える.

表2. 計測モデルに用いた変数(ダミー変数)の記述統計
No. 項 目 構成比%(回答数)
Yes No
1 運営満足度 38.0(24) 62.0(36) 100.0(60)
2 食品の提供元:卸売業 57.7(34) 43.3(26) 100.0(60)
3 食品の提供先:個人支援 83.3(50) 16.7(10) 100.0(60)
4 行政との連携:行政と連携して活動 90.0(54) 10.0(6) 100.0(60)
5 食品ロスの削減という目的に対する効果を感じる 70.0(42) 30.0(18) 100.0(60)
6 交差項:No.4×No.5 56.7(34) 43.3(26) 100.0(60)
7 障碍者施設に提供 63.4(38) 36.7(22) 100.0(60)
8 交差項:No.4×No.7 65.0(39) 35.0(21) 100.0(60)
9 運営団体の属性:所在地域が東日本 53.3(32) 46.7(28) 100.0(60)

資料:アンケート集計結果より作成.

6. 分析結果・考察

3は,ロジットモデルの計測結果を示している.計測はStata16を用いて行った.標準推計とロバスト推計およびそれらの限界効果を示している.両者でパラメータは異なることはないが,標準誤差に差が生じるため,有意水準に若干の差が生じているものの,両者の間で解釈に違いが出るほどではない.また,複数の指標による確認のため,参考値としてVIFと分散不均一性については,OLSでの結果を用いたが,多重共線性や分散不均一性はいずれもみられなかった.以下,計測結果について,まずパラメータからみてみよう.

表3. フードバンク運営満足度のロジットモデル計測結果
被説明変数:運営満足度(満足=1,非満足=0)
区 分 説明変数 通常推計 ロバスト推計 VIF(参考)
パラメータ 限界効果 パラメータ 限界効果
①提供元 卸売業から提供(yes=1, no=0) 1.2357*
(1.81)
0.2680*
(1.92)
1.2357*
(1.75)
0.2680*
(1.85)
1.08
②提供先 提供先が個人支援(yes=1, no=0) −1.8637*
(−1.89)
−0.4349**
(−2.17)
−1.8637**
(−2.33)
−0.4349**
(−2.68)
1.17
③行政との連携 行政と連携して活動(yes=1, no=0)×障碍者施設に提供(yes=1, no=0) 1.2379*
(1.79)
0.2685*
(1.95)
1.2379*
(1.75)
0.2685*
(1.90)
1.20
行政と連携して活動(yes=1, no=0)×食品ロス削減という目的に対して効果を感じる(yes=1, no=0) 1.3198*
(1.73)
0.2747**
(2.00)
1.3198*
(1.90)
0.2747**
(2.15)
1.11
④団体の属性 所在地域が東日本(yes=1, no=0) 1.7373**
(2.31)
0.3719***
(2.61)
1.7373**
(2.23)
0.3719**
(2.50)
1.12
定数項 −2.2540*
(−1.88)
−2.2540*
(−1.93)
サンプル数:60,尤度比カイ二乗値:22.72***,マクファーデンの疑似決定係数:0.2814
(参考)Breusch-Pegan/Cook-Weisberg検定 カイ二乗値:1.61

1)***は1%,**は5%,*は10%で有意であることをそれぞれ示す.

2)VIF,分散不均一性の検定はOLSによる参考値.

3)( )はz値を示す.

まず①提供元:卸売業が正の値となった(10%有意).これは一定量が安定して供給されるためと考察できる.続いて②食品の提供先:個人支援が負の値となった(5~10%有意).これは個人への提供は団体への提供に比べ分配・配達にかかるコストが大きいためと考えられる.

③行政との連携については,「行政と連携して活動」と「食品ロスの削減という目的に対する効果を感じる」の交差項と,「行政と連携して活動」と「障碍者施設に提供」の交差項はともに正の値となった(10%有意).先述したように,いずれも行政との連携に関する変数とのクロス変数にする前は有意にならなかった変数である.このことから,障碍者施設への提供では,フードバンク単独で行うよりも行政との連携を図ることで,より効率的な活動につながり運営の満足度を高めることになると考えられる.前述した組織基盤の脆弱さが反映されているということができる.

④運営団体の属性として,東日本が所在地域である場合は正の値になった(5%有意).これは東日本が関東という人口集積地を含むため運営団体・取扱量が多く,そうした立地条件が経験や情報のシェアを可能として運営スキルの高まりにつながり,結果として運営満足度を高めると考えられる.

次に,限界効果をみると②食品の提供先で個人支援を行う場合が−0.4349と負で最も大きい値を示していることから,最も運営満足度を下げる要因となっている(5%有意).したがって,個人支援は,NPOのような組織基盤の脆弱な団体では,運営上の負担が小さくないということができる.

7. テキストマイニング分析結果・考察

アンケート内の自由記述欄では回答全体の60件中20件で記述回答を得たため,その記述情報について,KH Coderを用いてテキストマイニングにより分析した.その結果が,共起ネットワーク図として図4で示されている.

図4.

フードバンクの運営に関する要因の共起ネットワーク図

1)実線は点線と比べて共起関係がより強いことを示す.

20件というサンプル上の制約について留意する必要があるが,運営者の率直な思いが記述されていることから,運営概要や計測結果の妥当性を確認する点で意義があると考える.

その結果をみると,まず「資金」「不足」「提供」「団体」「個人」「苦慮」という単語の間で関連性がみられた.このことから資金の不足により,個人や団体への食品提供に苦慮していることがわかる.限界効果の計測結果を,テキスト情報から裏付ける結果といえる.また,「国」「貧困」「責任」「啓発」「自治体」「非常」「届ける」「食品」という単語の間で関連性が認められた.これは貧困問題の改善には国・自治体との連携が不可欠であることを示しており,本研究の前段のアンケート調査回答結果やロジットモデルの分析結果とも整合的である.

さらに,「食品ロス」「削減」「推進」「施行」「期待」という単語の間においても関連性が析出された.これは2019年に施行され,食品ロスの削減のための施策としてフードバンク活動の支援を挙げている食品ロス削減推進法への期待感を示すと解釈できる.以上の結果から,運営上の課題や制度面の整備,特に貧困問題の改善という面から,行政との連携がより求められることを示している.

8. むすび

本研究では,全国のフードバンクの運営担当者を対象としたアンケート調査結果を基に,その運営満足度に作用する要因の解析やその背景についても考察を行った.

ロジット分析の結果から,まず比較的安定した食品の提供元を有し,行政と連携した活動を行い,所在地域が東日本である団体が運営における満足度が高いといえる.

以上を踏まえると,食品の提供元・地方自治体の行政・団体の食品提供先とのより深い連携が同満足度を高めるために重要であり,安定した活動につながると考えられる.

その反面,利用者に直接食品を提供する個人支援では同満足度が低下することから,フードバンクと利用者の間に何らかの仲介組織が入ることも検討に値するかもしれない.本聞き取り調査の結果から,フードバンク間で食品を相互に融通し合うことも行われている事実がある.こうした連携関係をさらに発展させることも有効な一策といえる.しかし同時に,これは食品の提供ルートの複雑化の一因ともなりうるため,そのメリット・デメリットを慎重に検討する必要があると考える.

テキストマイニングによる結果は,上記の計測結果とも整合的であるものの,フードバンクの運営組織の財政・人的基盤の脆弱さを考慮すると,食品ロス削減という面からだけでなく重要性を増す貧困対策という面においても行政サイドからの連携と支援は今後とも必要といえる.

最後に,今回は未解明なフードバンクの運営満足度の分析に焦点を当てたため,以下の点については,触れることができなかった.具体的には,運営に関する意思決定システムの問題,回答者の社会経済的特性,および貧困対策に対する具体的な連携のあり方や受益者側の効果の解明については,残された今後の研究課題としたい.

付記:本研究には,科学研究費補助金No. 18H0 3965およびNo. 20H04444.の支援を受けている.

引用文献
 
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