This study aims to explain the process of initiating meal preparation by examining changes in the behaviors and perceptions of meal preparation of men in two-earner households that prepared meals for themselves. In some cases, men started cooking for the first time when they lived alone but later discontinued the practice, only to resume it after getting married. For instance, one man acquired cooking skills through guidance from his wife and another man’s perception of cooking changed because of his wife’s expectations for shared housework responsibilities. The analysis revealed that, apart from perceptions of sharing housework, three interconnected factors played a vital role in sustaining their efforts: cooking skills, the meal preparation environment, and the meal preparation perception.
かつては専業主婦世帯が多く存在していたものの,近年では共働き世帯が増加傾向にあり,専業主婦世帯の2倍を超している(労働政策研究・研修機構,2022).こうした状況においては,家事分担のあり方が問われるが,「男性が家事・育児・介護に主体的な役割を果たしていくことがますます重要」(内閣府男女共同参画局,2020)との指摘があるように,実際の状況をふまえれば不十分な状況にある.
食事づくりは,家事の中でも実施頻度が高く,子どもがいる家庭では相手を考慮して行われるため,家事と育児の双方において重要となる(高山,2015).
これまで共働き世帯の食事づくりについては,規定要因を明らかにする研究が中心的に行われてきた.筒井(2011)は,妻が常時雇用であるほど夫の家事の取り組みが増加することを明らかにしたうえで,家事のなかでも食事づくりは能力を要し,毎日決められた時間に行う必要があることから,正規雇用の男性が関わることの難しさを指摘している.しかし,男性が主体的に家事に取り組む重要性が問われている状況においては,共働き世帯の男性がこうした食事づくりの能力をどのようにして獲得いくことが可能であるのか,そして,食事づくりに取り組む上で必要となる条件はどういったものなのか,など今後の可能性を見据えた議論が求められる.一方,高山(2015)は父親を対象に,家事分担としての食事づくりに対する意識について子どもが生まれることで変化していく様子を明らかにしている.しかし,食事づくりは幼少期などの過去の経験もその能力に含まれる(駒場他,2014).つまり,結婚前の男性における食事づくりの実態にも注目した分析が必要となる.加えて,子どもが生まれることによる変化については,子どもがいないケースとの比較分析によりその特徴を整理することが求められる.
滝口・清野(2023)は,単身世帯における若年男性の食事づくり定着に至るプロセスを分析している.しかし,食事づくりは食べる人の状態や食嗜好に合わせて行われる(駒場他,2014).したがって,家族を有する男性にも目を向けること,そして昨今の共働き世帯増加の状況をふまえれば,共働き世帯の男性を対象とした実態把握が不可欠となる.
質的研究法のひとつで,当事者の行動選択や意思決定に関する変化を時間の流れとともに理解し,そのプロセスを可視化して捉える,複線径路・等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling:以下,TEM)(安田・サトウ,2017)がある.TEMを用いることで,現在食事づくりを行っている共働き世帯の男性が結婚前後を含むこれまでにどのような食事づくりに関する経験をしてきたのか,そうした一連の過程を把握することが可能になる.
そこで本研究では共働き世帯の男性が食事づくりに取り組むまでのプロセスについて,子どもの有無による違いにも注目しながら,世帯ごとの特徴を明らかにすることを目的とする.
インタビュー調査はTEMにもとづき行った.質的研究の報告に関する統合基準(Tong et al., 2007)をふまえ,調査概要をまとめると表1の通りである.対象者は「夫婦ともに正社員勤務」をしており,「週に1日以上夕食を作っている」および「食事づくりを3年以上継続している」という条件で抽出した首都圏在住の26~42歳の既婚男性9名である1(表2).子どもがいる場合は子の年齢によっても生活習慣が異なってくることが考えられるため,対象者の年齢を考慮し,末子の年齢を6歳未満とした.
| 項目 | 本研究における対応 | |
|---|---|---|
| 研究チームと再帰性 | 個人の特徴 | インタビューは質的調査を専門とする民間会社で調理や食行動のインタビュアーの経験がある第一著者(女性)が行った. |
| 参加者との関係 | 対象者に研究目的や方法を説明するとともに参加は自由意思を尊重する旨を伝え同意が得られた上でインタビューを行った. | |
| 研究デザイン | 理論的枠組み | TEM(複線径路・等至性モデリング)を用いた. |
| 参加者の選択 | (株)ドゥ・ハウスのアンケートモニターより,条件に合致し調査協力の同意が得られた対象者を9名抽出した. | |
| データ収集 | インタビューは2021年7~9月にオンライン上で1人の対象者につき2回行った.インタビューは1回あたり約60分となり,内容は許可を得てICレコーダーに録音した.インタビューガイドは事前に対象者へ共有しそれに沿って質問を行った.具体的には「初めて食事作りを行った頃」,「食事作りを継続して取り組むようになった頃」,そして「定着している現在」,のそれぞれにおける行動や心情について質問をすることを事前に伝えインタビューを行った. | |
| 分析 | データ分析 | TEMの調査方法に精通し質的調査の実務経験のある専門家または研究者の3名(男性2名,女性1名)で行った.具体的には,次の手順を分析者全員の合意が確認されたうえで進むように行った.①インタビュー内容から逐語録を作成し,逐語録からデータの意味内容のまとまりを切片化し抜き出した.②対象者それぞれの内容を時系列で並び替えた.③対象者間で類似の内容をまとめ,その内容を表現するような見出しをつけた.そのうえで,「食事作りが定着する」という経験を焦点化し,そこへ向かうように分岐していく個人の選択や意思決定を図(TEM図)に可視化した. |
資料:筆者作成.
1)表側の項目には質的研究を報告するための統合基準(Tong et al., 2007)にもとづく内容を記載している.
2)TEMにおける分析終了の目安をふまえ,本研究では1回目のインタビュー終了後に各人のTEM図を作成し,2回目のインタビューでそれを提示し双方が納得するTEM図を作成できたことを確認し分析を終了している.
| ID | 年齢(歳) | 継続年数 | 職業 | 頻度 | 子の年齢 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 夫婦二人 | A | 29 | 10年以上 | 技術職 | 週に5日 | |
| B | 34 | 約6年 | 営業職 | 週に4日 | ||
| C | 35 | 10年以上 | 事務職 | 週に4日 | ||
| D | 42 | 10年以上 | 技術職 | 週に3日 | ||
| 子どもがいる夫婦 | E | 26 | 約5年 | 営業職 | 週に4日 | 2歳 |
| F | 33 | 10年以上 | 営業職 | 週に2日 | 3歳 | |
| G | 38 | 10年以上 | 営業職 | 週に2日 | 3歳 | |
| H | 39 | 10年以上 | 専門職 | 週に2日 | 11,5歳 | |
| I | 39 | 約4年 | 技術職 | ほぼ毎日 | 8,5,3歳 |
資料:事前アンケート調査をふまえ筆者作成.
TEMは研究者の研究関心事に近い経験を「等至点」として焦点化し,非可逆的時間という考え方のもとで多様な径路を記述していく.径路において多くの人が通過する点を「必須通過点」として視覚化することで,普段人々が常識だと感じ見過ごしてしまっている出来事にも目を向けながら径路を可視化していく.本研究では,現在食事づくりを行っている共働き世帯の男性を対象とすることから,「食事づくりを検討する」という内容を「分岐点」(何らかの分岐が生じている状態・経験を示す)に,最終的な焦点として位置づけられる等至点に「食事づくりが定着する」を設定した.なお,分岐点や等至点では,何らかのせめぎあいや緊張状態が発生していると捉える.分岐点から等至点への歩みを後押しする力を「社会的助勢」,阻害する力を「社会的方向づけ」,として把握し意思決定の背景にある要因も理解する.
作成されたTEM図は図1の通りである.その結果,4つの時期に分けられた.

夫婦二人世帯の食事づくり定着に至るまでのプロセス(TEM図)
資料:インタビュー調査より筆者作成.
1)TEM図の作成にあたっては荒川他(2012)を参考にした.分岐点後や等至点への歩みを後押しする力を「社会的助勢」として白抜きの矢印で,阻害する力を「社会的方向づけ」として黒塗りの矢印で示す.また,点線で括られた箇所は実際には選択されなかった経験である.
2)本研究では対象者の行動選択の背景にある要因を捉えることを目的として,内容を具体的に把握・類型していることから,同じ人が複数の経験にまたがる(分岐しているように見える)箇所も存在している.
第Ⅰ期では次の4つの必須通過点が確認された.第1に【食事は母が作る】である2.そこでは【食事づくりに関心があ】り,【母の食事づくりを手伝う】ことで調理技術を身に着けたケース,【家事をしない父を反面教師にして生きようと思】い【家庭科やテレビの料理番組で調理方法を知る】ケース,【料理の手伝いはしていない】が【調理方法は母に聞いて教えてもらう】ケースに分かれる.第2に【自分や家族に食事を作ることはない】である.第3に【一人暮らしをする】である.その後【料理に挑戦したい】,限られた生活費のなかでやりくりすることから【食費を節約したい】や【低価格で食べられるお店が近くにない】,【両親から食材が送られる】,【栄養が気になる】などの意識や状況が確認された.第4に,【本やネットでレシピを知る】である.材料や手順をレシピで知り食事を作るようになる.
そしてこれまで取り組んだことのない食事づくりを実践することへの苦労が社会的方向づけとしてありながらも,一人暮らしという環境の変化により食事づくりに挑戦したい前向きな気持ちが社会的助勢となり,分岐点【食事づくりを検討する】から【初めて食事を作る】に至る.
2) 第Ⅱ期:食事づくりは最低限「毎度作るのは面倒くさいので凝った料理は作っていない(B)」や「洗い物や片付けもしなくてはいけないので,面倒くさい(D)」のように,自分のために行う【食事づくりは面倒でこだわりもない】と感じる人もいるなかで,全対象者が必須通過点【作り方や味付けの仕方がわからず大変で,食材を使い切る難しさを感じる】に至る.例えば,手伝い経験がある場合であっても「食事づくりは結構大変だった.ネットでレシピをみても,調理器具や味つけ,切り方も合っているのかわからず大変だった.自信がなかった(B)」のように,食事を作る難しさを感じている.また,「1人分作るには材料費もかかり食材も余ってもったいない(A)」や「野菜を買っても1人だと使い切るのも難しい(D)」のように,1人分の食事を作る難しさも感じている.
その後,【学業やアルバイト,仕事などが忙しくなる】状況を経ながら,必須通過点【食事づくりは最低限,少ない頻度でやる程度】に至る.「今ほど料理は作っていない(B)」や「必要にかられて好きなものだけ作るようにしていた(C)」,「外食の機会も増えた(D)」のように,現在のように高い頻度で食事を作ることはなかった様子がわかる.
3) 第Ⅲ期:妻と同居し食事づくりの頻度が増える必須通過点【妻と同居する】ことで,必須通過点【家事の分担はできる人ができる範囲でやればいいと思う】という意識を抱く.「このご時世,女性も働いて忙しいと思うので,できることは分担しようと小さいころから思っていた(A)」や,「共働きでお互いの負担を減らすためにも,できる人が食事を作ることになった(B)」のように,働く妻の大変さを考慮して家事を分担する意識が生まれる.中には【妻は料理や食に関心がない】ことから,自身が食事づくりを行うようになった人もいる.さらには,妻と同居する前に【働きながら家事をやる大変さを知る】など,「昔みたいな昭和の時代ではないので,お互いができることをやればいいと思って食事を作っている(D)」のように,夫婦で助け合って家事を行いたい意識の存在もうかがえる.
そして,必須通過点【食事のときくらいは妻と一緒の時間を過ごしたい】を経て,「妻から教えてもらうことで調理器具が増えモチベーションにつながった(B)」のように【妻に教えてもらう】ことで,必須通過点【自ら食事を作り自宅で妻と食べたい】から必須通過点【食事づくりの頻度が増える】に至る.
4) 第Ⅳ期:食事づくりが定着するひとり暮らしの時に比べ食事づくりを積極的に行うようになり,必須通過点【ネット動画やサイトでレシピを調べる】を経て,必須通過点【レパートリーが増える・変わる】に至る.「ひとり暮らしと違って野菜なしの夕食を作れなくなった.汁物も作るようになった(C)」のように,妻のために献立を考え食事を作るようになり,「妻の反応やコメントもうれしい(B)」など【相手の反応があり,料理が好きになる】という意識も生まれる.食事づくりの頻度が高まるなか,【調理道具が増える】という変化や,【二人なので食材を使い切る難しさを感じない】などにより,必須通過点【メリット・モチベーションを感じる】ことで,等至点【食事づくりが定着する】に至る.妻に食事づくりをお願いする状況が社会的方向づけとして存在しながらも,食事づくりの楽しさや成功体験により食事づくりを好意的に思う意識が社会的助勢となり食事づくりが定着している.
(2) 子どもがいる夫婦世帯の食事づくり定着に至るまでのプロセスTEM図(図2)より,3つの時期に分けられた.
1) 第Ⅰ期:初めて食事づくりを行う必須通過点【食事は母が作る】に至るまでには,実父の家事状況(【父は家事・料理をしない】,【父も家事や料理をする】)や料理への関心度,母の手伝い経験の違いにより,径路が様々存在する.【母の手伝いはしない】ケースもあれば,【興味があり,母の食事づくりを手伝う】ことを通じて,調理技術を身に着けたケース,【家庭科で習う】ことで調理技術を身に着けたケースも見受けられる.
いずれも実家暮らしで家族に食事を作ることはなかったが,その後径路は3つに分かれる.1つは【妻と同居する】ケース,2つ目は【一人暮らしをする】ケース,3つ目は【母が不在で食事の用意がない時が月に数回ある】ケースである.なお,【食費を節約したい】という意識が必須通過点で共通している.
1つ目の実家暮らしから妻と同居するようになった場合は,妻と同居する前に【調理のアルバイトを始める】.その後,妻と同居し【家事の分担は妻と半分ずつだと思う】という意識や,アルバイトで調理技術を獲得することで【自分で作った方が美味しいと思う】という意識が芽生え,【レシピ動画で作り方やレシピを知る】ことで,分岐点【食事づくりを検討する】から必須通過点【初めて食事を作る】に至る.つまり,妻に食事づくりをお願いする状況が社会的方向づけとしてありながらも,アルバイトで身に着けた調理技術を自宅でも活用したい気持ちが社会的助勢として存在している.
2つ目の【一人暮らしをする】では,【男性が料理をするのはかっこいいと思う】,【料理に挑戦したい】という意識が生まれる.加えて,外食に比べて【栄養が気になる】ことから,【アルバイト】や【本】などから調理技術やレシピを学び,分岐点【食事づくりを検討する】から必須通過点【初めて食事を作る】に至る.初めての食事づくりに取り組む苦労が社会的方向づけとしてありながらも,一人暮らしという環境変化により食事づくりに挑戦したい前向きな気持ちが社会的助勢となっている.
3つ目の母が不在で食事を作らざるを得なかった場合は,【近くにお店がない】なか家庭科で調理技術を見つけたことをふまえ【特に参考にしたものはない】を経て,必須通過点【初めて食事を作る】に至る.したがって,自分以外の家族に食事づくりをお願いする状況が社会的方向づけとしてありながらも,調理を行うことへの抵抗がないことが社会的助勢となり,食事づくりに取り組むようになる.
2) 第Ⅱ期:食事づくりの時間を確保する食事づくりがうまくいった経験やその様子を投稿したSNSの反応により【うれしい気持ちからまた作ってみようと思った】や【アルバイトで学んだ調理経験から自宅での調理意欲がわいた】といった意識,【特に不安なく作ることができた】という印象を食事づくりに抱く.しかし中には,「週に1日まとめ買いをしていたので,買った食材を使わなくてはいけないことを面倒に感じる(I)」や「後片付けが面倒(G)」のように,【食材管理や後片付けが面倒に感じる】状況もある.そして,【手作りしない方が安く済ませられると思う】や,アルバイト等が忙しくなり【以前に比べて食事を作る時間がなくなる】ことで,【外食や買ってきた総菜等,出来合いのものを食べるようになる】,【以前に比べて食事を作らなくなる】様子が確認された.一方,食事づくりや後片付けを面倒に感じず【時間に余裕があったので継続して作っていた】ケースも存在している.
そして,【妻と同居】後は径路が3つに分かれる.1つは【食事づくりは苦ではなかった】とし,継続するケース,もう1つは「奥さんも「そこまで負担ではない」と言っていたので,家事も手伝い程度だった(I)」のように【家事や食事づくりは妻に任せ,自分はしなかった】ケース,そして最後の1つは,【妻はほとんど料理をしない】ケースである.
そうしたなか,【子の誕生,妻の職場復帰】を経験する径路もある.「子どもが生まれ妻から「さすがに手伝ってよ」と文句が出た.休日の食事を作ることになり,大変だけど「やるか」と思った(G)」や,「子どもが2人生まれて,妻だけでは家のことを対応できず,自身の役職をおろした(H)」のように【妻の様子や発言から自分が食事を作る必要性を感じ】,必須通過点【食事づくりの時間を確保する】に至る.なお,【転職したり,残業なく帰宅している】場合においても,同様の必須通過点に至る.
3) 第Ⅲ期:食事づくりが定着する【妻も一緒に料理を楽しむことができる】と感じ【食事づくりを再開】する.「子どものために薄味で野菜の多い和食を作るようになった(E)」や「子どもが食べてくれれば手間や時間を惜しまず作りたい(F)」と,必須通過点【子どものためにも手作りしたい】に至る.
また,食事づくりを続けるなかで食事づくりの能力や意識に変化がみられるようになる.「働いていて時間も限られているので,作り置きや下ごしらえをするようになった(E)」や「最初は作るものを決めて材料を買っていたが,今は食材からレシピを考える(I)」のように,【効率的に無駄なく料理したい】という意識が生まれる.また,子や妻の存在により,【家族のためなら食事づくりは楽しい】,家族のために【レパートリーが増えた】ことを実感する人もみられた.さらには,「実父の反面教師もあるので,背中で男でもちゃんと家事をやるということを示したい(F)」や「子どももいつかは一人暮らしをするんだから,食事づくりをする父の姿を「見とけ」って思う(G)」のように,子どもへの教育として【男性でも料理をするのが当たり前だと子どもに思ってもらいたい】という意識が生まれ,等至点【食事づくりが定着する】に至る.つまり,妻に家事や育児を任せる状況が社会的方向づけとしてありながらも,子どものために手作りで栄養のある食事を積極的に作りたい気持ちが社会的助勢として存在している.
食事づくりに取り組む過程においては,能力を習得する過程のみならず,取り組む際の環境やそれらによって意識が変化するなど,能力・環境・意識の3つの要因が関わり合いながら定着に至っている.
共働き世帯の男性においては,手伝いや家庭科で調理技術を学んだ経験があっても食事づくりは行われず,ひとり暮らしなどの環境変化をきっかけに,挑戦したい意識が生まれ,本やネットの情報を参考に初めて取り組むようになる.しかし,授業やテレビ,ネットといった文字情報だけでは難しさを感じ,食事づくりを煩わしく思うといった挫折を経験する.さらには,忙しくなるなどの環境変化から食事を作らなくなる.そうしたなか,結婚という環境変化により分担意識だけではなく,食事を作りたいという意識やその必要性を感じる.妻の教えや動画のように調理工程が容易に理解できる情報を活用することで挫折経験から立ち直り,調理技術を習得する.その後,食べる人の存在から食事づくりを好意的に思う意識が生まれ,献立を考えたり効率を重視するといった調理技術以外の食事づくりの能力を習得し,定着に至る.なお,滝口・清野(2023)で分析された単身世帯では,仕事の忙しさ等から食事づくりが行われなくなる時期があるものの,調理については苦手意識を感じることなく技術を習得していく様子が確認されている.つまり,挫折経験や立ち直りの経験をしながら食事づくりが定着していく過程は共働き世帯の特徴であることが指摘できる.
そして,子どもがいる世帯では,結婚後に家事分担意識が生まれない場合でも,子の誕生により妻を通じて意識が変化し,仕事を調整するなど環境を変えることで時間を確保し食事づくりを再開する過程も存在する.そして食事づくり再開後には,子の誕生という環境変化により,手作りしたい気持ちや楽しさが生まれ,男性でも食事づくりに取り組むことが当たり前という考えを子に伝えたい意識が芽生える.食材や食べる人を意識した食事への関心,食生活を楽しむ意識,ジェンダー意識の感覚や考え方,を養うことを目的とした教育が子に行われる.こうした過程は,夫婦二人世帯には見られなかった特徴である.
以上のように,食事づくりの能力を取得する過程においては,環境や意識といった存在も重要となり,それらを総合的に検討することが求められてくる.夫婦二人世帯では家族との時間を実現するために,子どもがいる場合は,妻が食事づくりを行えない状況を理解することで自ら取り組む必要性を認識する等により,最終的には子への教育のために,食事づくりを継続している.つまり,食事づくりが定着している共働き世帯の男性にとって食事づくりは,それを行うことが目的ではなく,家族と共に過ごすための手段として取り組まれている.したがって,子どもの有無に関わらず,家族との関わりを持とうとする強い意識が共働き世帯の男性における食事づくり定着のうえで重要な条件となっている.
本研究は公益財団法人江頭ホスピタリティ事業振興財団の助成を受けて行った研究成果の一部である.