2025 年 61 巻 2 号 p. 95-102
This study analyzes the evolution of buyer structures in the Tokyo Metropolitan Central Wholesale Market from 1958 to 2019, focusing on changes in distribution destinations. It highlights how shifts in Japan’s food distribution system, particularly since the 1980s, have been driven by the rise of large-scale retailers and the food service industry. These developments led to a significant decline in the share of traditional small retailers, who were gradually replaced by large buyers such as supermarkets and restaurants. The study also examines changes in distribution schedules prompted by large buyers’ demand for earlier transactions. The data reveal two major periods of transformation: the 1970s–80s and around 2000, both of which align with regulatory changes and the growth of direct and pairwise trading. These transitions reflect broader structural changes in Japan’s food and retail sectors.
20世紀中葉以降の日本における生鮮品流通は,産地からの生鮮品供給と小売の需要とが卸売市場で結び付けられることによって成立してきた.一方,1980年代以降は,量販店や中食・外食産業(以下,業務用とする)の台頭が進み,卸売市場内外で買い手と売り手間における複雑な交渉の調整問題が発生するようになった.卸売市場経由率(重量ベース)も,1980年前後の青果85.5%と水産86.0%をピークに減少しており(農林水産省,2024),1980年代は生鮮品流通の転換期であったと言える.
1980年代以降は,「売り手となる産地や仲卸業者の取引依存度が買い手側のそれよりも相対的に小さいことで,買い手のバイイング・パワーが発生する」という問題に注目が集まっており(森高,2013),生鮮品流通の川中から川下における,取引相手や取引方法の変化が取引結果に影響するメカニズムが分析されてきた.例えば,堀田(2000)は,量販店の勃興によって一般小売店が淘汰される中で,従来の取引相手を失った仲卸業者が大ロット納品を条件とする量販店との取引に踏み切り,今までより不利な条件で交渉を行うようになった事例を紹介している.また,1980年代以降に卸売市場で増えた量販店等との交渉取引では,価格だけの調整問題より一層複雑な観点(取引数量・取引価格・価格決定タイミング・決済日など)の調整が求められるようになった(堀田,2000).特に,大規模な取引を行う量販店が,セリの実施を前提とした従来の取引時間より早い時間の取引を望んだ点が先行研究では注目されており,取引時間の変化は,卸売市場内部の伝統的な取引プロセスを変化させる契機の一つだった可能性がある.
買い手構成,制度,および社会状況が,生鮮品流通の川中から川下における取引結果に及ぼす影響について学術的理解を深めるためには理論分析が有効だが,理論的な議論を行う前提知識として,各年代の卸売市場における買い手構成や取引時間の変遷過程を一貫した指標に基づいて示し歴史的事実を検証する必要がある.しかし,日本の卸売市場における買い手構成の歴史的変遷は,個々の事例ベースまたは条例・法律の解釈ベースで説明されており(倉田,1995;堀田,2000;三国,1991など),客観的な指標に基づいた研究が不足している.また,特定の時点における卸売市場の買い手構成を調査した研究はいくつかあるものの(酒井,1991;佐野,2022;髙山他,2015),これらの研究は過去の制度や社会情勢が変化した結果として形成された特定の年度における買い手の実態を分析しており,一貫した指標に基づいて歴史的な構造変化の過程を検討していない.
本研究は,1954年から東京都中央卸売市場で行われてきた生鮮食料品の搬出先業態(以下,搬出先)の調査結果を統合し,青果物と水産物の搬出先構成,および取引方法を反映する搬出時間の年推移を明らかにする.本研究では,一般小売店,量販店,業務用の間で搬出数量シェア(以下,搬出シェア)がどのように変化したのか,搬出時間がいつの時代から前倒し化されたのか,および搬出時間と各搬出先との関係性をデータに基づいて検証する.なお,東京都は,1989年時点で量販店と業務用への搬出割合が高く(酒井,1991),買い手構成の変化が顕著だった可能性が高い地域であるため,本研究課題で扱われる事例として適している.また,小売業の構造変化が起き始めた1960年代(藤谷,1989)から1980年代には卸売市場経由率は非常に高く,中央卸売市場と地方卸売市場はほぼ同様の取扱金額の推移にあったため(農林水産省,2024),中央卸売市場からの搬出データの活用は本研究課題に適している.
東京都中央卸売市場で行われた生鮮品の搬出先調査の内,筆者らが調査結果にアクセスできた年度は,1958年,1964年,1971年,1986年,1992年,1995年,1998年,2001年,2009年,2014年,2019年だった.各調査では,東京都における中央卸売市場と分場が対象となった.調査では,生鮮品の搬出先・時間ごとに搬出数量(kg)が集計された.調査の名称は,2009年以前は生鮮食料品(等)流通実態調査だったが,それ以降は市場流通推計調査に改められた.本研究では,上記年度の調査におけるそれぞれの市場および分場の搬出数量の集計値に基づいて搬出先構成と搬出時間の推移を検証する.計測する指標は,搬出先または時間ごとの搬出シェアと,1986年を100とする各年における数量の相対値である.
本研究で用いたデータは,1954年から継続して東京都中央卸売市場によって行われてきた調査の結果である.1971年以前の調査では全搬出者に対して全数調査が試みられたが,1974年以降の調査では関係各団体を通じて調査票が配布された後に関係団体からの回収もしくは各市場の門での職員による回収が行われた.
調査表における搬出先の定義が年々変化したことを考慮して,搬出先の年比較を行い易くするために,本研究では搬出先の再定義を行った.具体的には各調査において定義されていた搬出先を(A)小売店,(B)量販店,(C)業務用,(D)その他と再定義した1.なお,業務用とは,年代によって定義は異なるが,外食・中食・給食・ホテル・冠婚葬祭業者・学校・病院向け等の搬出先を指す.搬出時間については,東京都中央卸売市場で一般的にセリが行われる5時後半から7時台(東京都中央卸売市場,2024a)より早い時間帯か遅い時間帯かを区別することと,各年度の調査項目とを考慮して,5時前,5時台,6時台,7時台,8時台,9時台,10時以降の7区分を用いることとした.
上記調査結果は各調査の当日における搬出数量を記録したものなので,調査日における突発的な入荷や需要の変化を反映している可能性がある.このため,各時代における安定した状態としての搬出状況を反映していない可能性があることに留意する必要がある.また,上記調査は,中央卸売市場からの搬出のみを対象としているため,中央卸売市場の外部での取引や商物分離の結果は反映しておらず,あくまでも市場からの搬出結果を表している.
農林水産省(2024)によると,1975年の卸売市場経由率(重量ベース)は,青果について87.1%,水産について73.0%だったが,2020年には青果について52.2%,水産について45.7%に減少した.したがって,本研究で用いたデータは,古い年代のものほど,東京都周辺における川下の搬出先を大部分カバーしている可能性が高く,1960年代から1980年代にかけて小売業の構造変化が発生した際の買い手構成の変化を反映する可能性が高い.一方で,卸売市場経由率が低下した近年の調査データは,市場外取引を選択した量販店等への生鮮品の搬出をカバーしていない可能性がある.このため,近年の分析結果については,小売業や飲食業などの産業構造が変化したことと,特定の買い手が仕入方法(卸売市場,市場外など)を変化させたことの両側面による買い手構成の変化を反映する可能性が高い.
表1には水産物(表上段)と青果物(表下段)における搬出先(A)から(D)までの各年の搬出シェア(%)を示し,カッコ内には各搬出先における1986年の値を100とした数量の相対値を示した.
各年における搬出先ごとの搬出シェア(%)と1986年を100とする搬出数量の相対値
| (水産) | 総数(kg) | (A)小売店 | (B)量販店 | (C)業務用 | (D)その他 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1950s | 1958 | 2,042,226 | 53%(88) | 9%(33) | 38%(93) | |
| 1960s | 1964 | 2,287,219 | 63%(118) | 5%(23) | 31%(85) | |
| 1970s | 1971 | 2,358,462 | 52%(100) | 7%(20) | 10%(43) | 31%(88) |
| 1980s | 1986 | 3,416,733 | 36%(100) | 24%(100) | 16%(100) | 24%(100) |
| 1990s | 1992 | 2,820,400 | 47%(107) | 20%(69) | 16%(86) | 17%(56) |
| 1995 | 2,844,663 | 28%(66) | 30%(105) | 13%(71) | 28%(96) | |
| 1998 | 2,400,010 | 28%(56) | 40%(118) | 9%(40) | 23%(65) | |
| 2000s | 2001 | 2,592,471 | 18%(38) | 24%(77) | 12%(58) | 46%(142) |
| 2009 | 2,564,983 | 17%(35) | 25%(77) | 10%(46) | 49%(149) | |
| 2010s | 2014 | 1,797,443 | 28%(41) | 29%(64) | 13%(43) | 30%(65) |
| 2019 | 1,849,564 | 19%(29) | 33%(74) | 19%(64) | 29%(65) | |
| (青果) | 総数(kg) | (A)小売店 | (B)量販店 | (C)業務用 | (D)その他 | |
| 1950s | 1958 | 3,007,670 | 79%(47) | 2%(10) | 19%(33) | |
| 1960s | 1964 | 5,417,022 | 83%(90) | 2%(19) | 14%(44) | |
| 1970s | 1971 | 7,298,788 | 76%(110) | 4%(15) | 3%(39) | 17%(70) |
| 1980s | 1986 | 9,318,209 | 54%(100) | 20%(100) | 7%(100) | 19%(100) |
| 1990s | 1992 | 8,377,374 | 56%(94) | 18%(78) | 9%(122) | 17%(79) |
| 1995 | 8,096,263 | 41%(66) | 33%(139) | 10%(127) | 16%(74) | |
| 1998 | 7,991,558 | 40%(64) | 32%(135) | 10%(120) | 18%(81) | |
| 2000s | 2001 | 8,277,838 | 28%(46) | 35%(150) | 9%(108) | 29%(136) |
| 2009 | 9,712,541 | 25%(48) | 37%(188) | 7%(108) | 31%(172) | |
| 2010s | 2014 | 9,002,485 | 28%(50) | 36%(168) | 9%(121) | 28%(144) |
| 2019 | 8,835,742 | 28%(50) | 34%(157) | 10%(138) | 28%(139) |
資料:東京都中央卸売市場「生鮮食料品(等)流通実態調査」「市場流通推計調査」
1)数値が未表記の場合は,その年度の調査において該当する搬出先が調査項目に無かったことを意味する.
まず,東京都中央卸売市場における生鮮品の流通量と日本における生鮮品の需要量の傾向を比較する.図1には,1960年以降の日本全国における魚介類と青果物の国内消費仕向量および東京都中央卸売市場における取扱数量を示した.図1によると,1960年から1980年代後半にかけて両品目の消費量は増加したが,1990年代以降は魚介類の消費量が大きく減少し,青果物の消費量も微減していた.また,東京都中央卸売市場における取扱数量も1970年代初頭までは両品目で増加したが,それ以降は水産物,青果物ともに停滞・減少傾向にあった.以上から,水産物および青果物の全国国内消費仕向量と東京都中央卸売市場における取扱数量の推移傾向が概ね一致していることが分かった.

国内消費仕向量(百万トン:左軸),東京都中央卸売市場の取扱数量(百万トン:右軸)
資料:農林水産省「食料需給表」,東京都中央卸売市場「事業概要:令和6年版」
1)青果物は野菜と果実,取扱数量の魚介類は鮮魚と冷凍魚の和を指す.
次に,本研究で用いた資料における最も古い1958年と最近年の2019年における搬出先ごとの搬出シェアを比較することで,昔と今の主な買い手構成の違いを検討する.表1から1958年では(A)小売店が搬出数量の最大シェアを有していたことが分かる.搬出シェアは,水産では53%,青果では79%だった.しかし,(A)の搬出シェアは年々減少し,2019年に水産では19%,青果では28%程度になった.
(A)小売店の搬出シェア縮小に合わせて(B)量販店と(C)業務用の搬出シェアが増大した.2019年におけるそれぞれの搬出シェアを比較すると,水産について(A)19%,(B)33%,(C)19%,青果について(A)28%,(B)34%,(C)10%となった.
(A)小売店から(B)量販店と(C)業務用へ主な搬出先が移り始めた最初のタイミングが1971年と1986年の間である.表1によると,(A)の搬出シェアはこの間に水産について52%から36%,青果について76%から54%に減少した.ただし,シェアの観点では(A)の縮小傾向があったのは確かだが,相対値の観点では,青果と水産における数量は大きく変化していないことが興味深い.したがって,この時期に小売店が減った訳ではないことが示唆される.
(B)量販店の搬出シェアは,1971年から1986年にかけて,水産について7%から24%,青果について4%から20%に増加し,(C)業務用の搬出シェアは,水産については10%から16%,青果については3%から7%に増加した.この間,(B)と(C)の両搬出先とも搬出数量の相対値が増加していた点も重要である.1970年代から1980年代までが,量販店と業務用への搬出数量が最も伸びた期間だった.
以上をまとめると,水産と青果の両方において小売店への搬出数量が減ったわけではなかったため,1971年から1986年の時期に主な取引先または搬出先がシフトしたというよりも,東京都周辺において新たな買い手としての量販店や実需者(業務用)が東京都中央卸売市場から荷を仕入れ始めた結果として主な搬出先構成が変わり始めたと言える.
近年,(B)量販店と(C)業務用が上位搬出先となったことは既述の通りだが,一方で1986年以降における搬出の変化傾向は水産と青果とで異なっていた.まず,水産と青果の両方で(A)小売店の数量の相対値は1986年以降減少した.これによって(B)と(C)の搬出シェアは増加・高位安定したが,水産については(B)と(C)の相対値は増加したわけではなかった.1986年から2001年にかけて(B)の搬出シェアは安定していたものの,相対値は微減し,(C)の搬出シェアは微減し,相対値も減少した.青果については,(B)の搬出シェアは増加し,相対値も増加し,(C)の搬出シェアは微増し,相対値も微増した.以上から,1986年以降,量販店と業務用への搬出割合が大きかったのは事実だが,水産におけるそれらへの搬出は減少傾向にあり,一方で青果では搬出が増加傾向にあるという違いが存在した.
(2) 搬出時間の年変化元来,東京都の中央卸売市場の取引では,卸売業者と仲卸業者または売買参加者が特定の時間においてセリで生鮮品を売買し,その後仲卸が落札した生鮮品を市場内店舗等で買出人(小売業者など)に対して交渉によって売る流れが一般的だった.しかし,1960年代から小売業の構造変化が加速し,一般小売店の淘汰と量販店の台頭が進むと(藤谷,1989),卸売市場における買い手構成の中で量販店や飲食店が存在感を増し始めた(堀田,2000).また,量販店が早朝の定時品出しに間に合う時間帯に生鮮品を確保することを望んだことを受けて(酒井,1991),卸売市場では,中央卸売市場法で認められていなかったセリ前の相対取引(予約相対,先取など)が行われ始めた.1971年に卸売市場法が施行されると,セリ・入札売りの原則を堅持しつつも特例的に相対取引が追認された(三国,1991).1990年代初頭には,先取取引が更に頻繁に行われるようになる(菊地,1999;倉田,1995).倉田(1995)によると,1994年時点でいくつかのルールを追加する事で先取を一種の取引方法として容認する流れが見られ始め,1999年の卸売市場法改正時には,早朝取引を行う上でネックになっていたセリ・入札売りに関する原則が撤廃された.以上の経緯で,1980年代前後に卸売市場内のセリ取引を主体とする戦後日本の食料流通形態が変化し始めたと考えられる.
表2には各時間帯における搬出数量(%)と,カッコ内に1986年を100とする搬出数量の相対値を示した.また,上段に水産物の結果を,下段に青果物の結果を示した.表2では,セリ前の搬出が増え始めた年代と,その度合いを検討する.なお,菊地(1999)によると,1990年代に大田市場で行われていた先取りでは,卸売業者が買受人から注文を受け,前日の夜から当日の早朝(当時の都条例では,通常の販売開始時刻の6時間前から1時間前)にかけて荷の搬出が行われていた.したがって,セリが行われた時間を5時台から7時台と想定すると,表中における5時前の搬出がいわゆるセリ前の相対取引による搬出を反映していると考えられる.
各年における時間帯ごとの搬出シェア(%)と1986年を100とする搬出数量の相対値
| (水産) | 5時前 | 5時台 | 6時台 | 7時台 | 8時台 | 9時台 | 10時以降 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1958 | 4%(51) | 2%(48) | 3%(30) | 6%(35) | 9%(21) | 28%(82) | 48%(96) |
| 1964 | 2%(49) | 2%(29) | 6%(35) | 16%(40) | 21%(69) | 53%(120) | |
| 1971 | 3%(39) | 2%(46) | 3%(41) | 8%(50) | 22%(59) | 22%(73) | 41%(94) |
| 1986 | 5%(100) | 3%(100) | 6%(100) | 11%(100) | 26%(100) | 20%(100) | 30%(100) |
| 1992 | 3%(56) | 2%(56) | 9%(132) | 16%(125) | 29%(91) | 18%(74) | 22%(62) |
| 1995 | 7%(127) | 2%(67) | 8%(121) | 14%(108) | 26%(82) | 17%(69) | 25%(70) |
| 1998 | 8%(115) | 4%(101) | 12%(152) | 16%(105) | 32%(86) | 14%(50) | 13%(31) |
| 2001 | 21%(333) | 2%(43) | 4%(59) | 10%(71) | 22%(62) | 10%(36) | 14%(36) |
| 2009 | 37%(593) | 8%(213) | 7%(94) | 14%(98) | 9%(27) | 8%(29) | 15%(38) |
| 2014 | 25%(277) | 6%(114) | 18%(168) | 19%(94) | 13%(26) | 8%(21) | 10%(17) |
| 2019 | 38%(436) | 8%(158) | 12%(119) | 15%(75) | 12%(24) | 6%(17) | 7%(13) |
| (青果) | 5時前 | 5時台 | 6時台 | 7時台 | 8時台 | 9時台 | 10時以降 |
| 1958 | 4%(12) | 0%(2) | 1%(5) | 4%(16) | 6%(15) | 13%(18) | 70%(77) |
| 1964 | 0%(2) | 2%(11) | 5%(39) | 6%(28) | 13%(34) | 73%(145) | |
| 1971 | 1%(9) | 2%(24) | 5%(39) | 3%(32) | 8%(46) | 14%(49) | 67%(178) |
| 1986 | 12%(100) | 5%(100) | 10%(100) | 8%(100) | 13%(100) | 23%(100) | 29%(100) |
| 1992 | 10%(75) | 4%(74) | 14%(124) | 14%(158) | 18%(127) | 18%(73) | 19%(59) |
| 1995 | 13%(96) | 10%(158) | 14%(121) | 12%(125) | 18%(120) | 15%(59) | 17%(50) |
| 1998 | 15%(108) | 7%(103) | 15%(131) | 14%(148) | 20%(134) | 14%(53) | 15%(43) |
| 2001 | 26%(197) | 12%(203) | 11%(101) | 11%(117) | 12%(81) | 10%(41) | 13%(38) |
| 2009 | 34%(304) | 14%(260) | 12%(123) | 10%(132) | 10%(84) | 8%(38) | 11%(39) |
| 2014 | 37%(308) | 15%(264) | 11%(111) | 7%(89) | 9%(65) | 6%(25) | 6%(19) |
| 2019 | 45%(365) | 13%(222) | 11%(103) | 8%(92) | 6%(47) | 6%(23) | 9%(29) |
1)割合の和が1にならない場合は,元の調査において,搬出時間が「不明」の数量があったことを意味する.
まず,1970年代以前は,水産については搬出の総数量が年々微増し,青果については急増していた時期である.この間,搬出時間ごとの搬出シェアは両品目でほとんど変化しておらず,全時間帯で均等に搬出数量が伸びていたことが分かる.1971年において水産では85%の搬出が8時台以降に行われ,青果では81%の搬出が9時台以降に行われていた.
搬出時間の前倒し化が進んだのは1971年と1986年の間だった.水産・青果ともに10時以降の搬出シェアが減少し,それより早い時間の搬出シェアが増加した.搬出シェアの増加は,早朝の時間帯ほど顕著であり,5時前の搬出が最も増えた.また,1986年時点で,水産と比べて青果の方が早い時間帯の搬出が多い傾向にあった.具体的には,5時前と5時台の搬出が,水産では8%だったことに対して,青果では17%だった.青果の搬出時間が前倒し化された年度は,1971年に卸売市場法が施行され,特例的に相対取引が認められたタイミングと一致する.
1986年以降の年度では,卸売市場法で規定されるセリ原則がボトルネックとなったためか,しばらくの間5時前の早朝搬出は増えなかったものの,搬出時間の前倒し化は進んだ.9時台以降の搬出シェアと数量の相対値は水産・青果の両方で減少し,その代わりに,水産では6時台と7時台,青果では6時台,7時台,8時台が増えた.具体的には,1986年から1998年にかけて,水産では9時台以降の搬出シェアが50%から27%,青果では52%から29%へと減少した.一方,水産では6時台から7時台の搬出シェアは17%から28%,青果では6時台から8時台の搬出シェアは31%から49%へと増加した.
そして,次に大きく早朝搬出が増えたのは1998年から2001年の間である.5時前や5時台の搬出が急増し,それ以降の時間帯における搬出が急激に減った.水産では,1998年から2001年にかけて,5時前における搬出シェアが8%から21%に増加し,数量の相対値も115から333に増えた.青果では,5時前における搬出シェアが15%から26%に増加し,数量の相対値も108から197へと増え,5時台における搬出シェアも7%から12%,数量の相対値は103から203へと増えた.この背景には1999年の卸売市場法改正時にセリ原則が撤廃され,早い時間の相対取引を行う大義名分ができたことが関係している.
既存研究では1980年代から先取取引を希望する量販店との相対取引が主流になったと認識されている.表1から分かるように,それは事実だったが,全時代を通して時間別搬出シェアを比較すると,1990年代までの搬出の大部分は6時以降に行われていた.5時前の搬出は,1999年にセリ原則が撤廃された後の2001年から急激に増えたことが分かった.また,2019年において,水産では5時台または5時前の搬出が46%と僅かに半分を下回っているが,青果では58%と過半数を占めている.青果における早朝の搬出シェアが水産を上回る傾向は,1986年以降一貫して確認できるので,早い時間の搬出は特に青果部門で重視されていたことが分かった.
次に,早朝の搬出が量販店対応のみを目的に行われていたのかどうかを同じ調査結果に基づいて確かめる.表3には,水産物と青果物のそれぞれで東京都中央卸売市場の搬出シェアが最大の築地/豊洲市場(水産)と大田市場(青果)における,早朝搬出の主な搬出先を示した.なお,表3における各搬出先の名称は元の調査で用いられた定義に基づく.また,(B)量販店に区分される搬出先を太字で強調し,(C)業務用に区分される搬出先を斜字で強調した.
主要市場における早朝の主な搬出先
| (水産) | 時間帯における搬出数量が40t以上だった搬出先 | ||
|---|---|---|---|
| 築地/豊洲 | 1時前・2時台 | 3時台・4時台・5時台 | |
| 2000s | 2001 | 都外卸売市場 | 都外卸売市場 |
| 2009 | 都外中央・地方卸売市場 | 食料品スーパー,都外中央・地方卸売市場 | |
| 2010s | 2014 | ||
| 2019 | 食料品スーパー,都外地方卸売市場 | ||
| (青果) | 時間帯における搬出数量が50t以上だった搬出先 | ||
| 大田 | 1時前・2時台 | 3時台・4時台・5時台 | |
| 2000s | 2001 | 業務用,総合小売店,都外卸売市場 | 総合小売店,都外卸売市場 |
| 2009 | 総合スーパー,都外地方卸売市場,問屋 | 業務用,総合スーパー,食料品スーパー,都外・都内地方卸売市場,問屋 | |
| 2010s | 2014 | 食料品スーパー,都外中央卸売市場 | 食料品スーパー,都外地方卸売市場 |
| 2019 | 総合スーパー,食料品スーパー,食料品等中心店,専門小売店,都外中央・地方卸売市場 | 業務用,総合スーパー,食料品スーパー,専門小売店 | |
1)数値が未表記の場合は,その年度の調査において該当する搬出先が調査項目に無かったことを意味する.
2)「1時前・2時台」には1時前か2時台のいずれかの時間区分において一定数量以上の生鮮品が送られた搬出先が含まれる.「3時台・4時台・5時台」においても同様の解釈をする.
表3上段の水産について見ると,セリ原則が撤廃された直後の2001年以降早朝における量販店向けの搬出はたしかにあったが,早朝搬出は主に他市場向けだった.表3下段の青果について見ると,2001年以降,6時前のほとんど全ての時間帯において,量販店に一定数量以上の早朝搬出が行われていた.
以上から,2001年以降において,量販店への早朝搬出は水産・青果ともに行われてはいたものの,この現象は主に青果において顕著だったことが分かった.この結果は,従来の文献において1980年代以降に注目される量販店との交渉を主とした調整問題が,主に青果部門で起こっていたことを示唆する.
本研究では,東京都中央卸売市場において長期間行われてきた調査結果を統合し,1958年から2019年までの卸売市場における生鮮品の搬出先構成と搬出時間の変遷を分析した.まず,小売店への搬出が減り始めた時期とその度合いを検討した.1958年から2019年までの搬出先構成の変化を見ると,先行研究で説明されている通り(堀田,2000;酒井,1991など),小売店への搬出シェアが大幅に減少し,量販店と飲食店や実需者(業務用)への搬出が増加したことがデータの面でも確認された.特に,1971年から1986年の間に(全搬出に占める)小売店への搬出シェアが水産・青果ともに大きく低下し(水産では52%から36%,青果では76%から54%),量販店と業務用への搬出が急増していた(量販店については,水産では7%から24%,青果では4%から20%.業務用については,水産では10%から16%,青果では3%から7%).また,この期間が量販店と業務用への搬出数量自体が最も伸びた期間であった.1986年以降,青果と水産との間で搬出数量の変化傾向には差が見られた.青果においては,量販店と業務用の両者(特に前者)への搬出数量が増加した.一方,水産においては,量販店と業務用への数量が減少傾向にあった.青果物と比べ,水産物は出荷計画が建てづらく,鮮度や品質の維持も難しいため,量販店での継続的な大量取引に限界があったと考えられる.水産物における量販店向けの搬出数量は,国内消費量の減少傾向が顕著になった2000年代に減少した.ただし,小売店への搬出数量の減少スピードが速かったため,水産・青果ともに主な買い手構成は,1970年以降一般小売店から量販店・業務用へシフトし続けたことがデータの面で示された.
次に,量販店への早朝搬出が増え始めたタイミングとその度合いを検討した.早朝搬出が増えた時期は2度あり,最初は量販店への搬出が増えた1971年から1986年の間だった.この間,特に青果における早朝搬出の増加が顕著だった(5時前の搬出シェアは,水産では3%から5%,青果では1%から12%).この変化の背景には,1960年代から始まる量販店成長と1971年の卸売市場法制定に伴う相対取引の特例許容が関連していると思われる.したがって,1970年代から1980年代前半の時期が,従来の買い手の減少が顕在化し始め,仲卸にとっての次善の交渉相手の減少と,量販店との一層複雑な調整問題が目立ち始めた時期であると言える.次に早朝搬出が大きく増加したのは,1998年から2001年の間だった(5時前の搬出シェアは,水産では8%から21%,青果では15%から26%).この背景には,1999年に卸売市場法が改正され,セリ原則が撤廃されたことが関連していると思われる.しかし,量販店と業務用への搬出は,この間にあまり増加しておらず,水産ではむしろ搬出シェアが低下していた.5時前の搬出のどの程度が量販店や業務用向けだったのかを2001年以降の資料で確認すると,水産については5時前の搬出の殆どが他市場向けであり,青果については量販店を含めて多様な早朝の搬出先が存在した.以上から,水産と青果に共通して早朝取引を望む量販店等との新たな交渉の調整問題が生じ始めたのは1970年代から1980年代前半までの時期であり,次にその問題が深刻化したタイミングが2000年前後だったことが示唆される.また,特に青果について,量販店等との間で早朝相対取引による交渉の問題が深刻であった可能性が示唆される.
今後,データ分析を通して卸売市場の歴史的変遷を明確化した本研究成果を踏まえた上で,時代ごとの制度,買い手構成,社会状況の要素を考慮した交渉の調整問題の理論的研究の余地が残されている.