農林業問題研究
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個別報告論文
農業経営の法人化と農地流動化
―市町村パネルデータを用いた分析―
徳村 実央子
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2025 年 61 巻 3 号 p. 160-166

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Abstract

As corporation farms are more capable of achieving business expansion and management improvements than other farms, the Japanese government has developed systems to enable these entities acquire farmland rights. This study utilizes municipal panel data from the Census of Agriculture and Forestry to evaluate the impact of incorporation of farming entities on farmland rental. An empirical analysis is conducted using the fixed effect model and the instrumental variable method. The estimation results show that farmland rental is more advanced in municipalities with a higher proportion of incorporated management entities. This finding suggests that institutional reforms that support corporate management entities to acquire farmland rights facilitate farmland consolidation.

1. はじめに

戦後の農地制度は,1952年に制定された農地法に始まり,農業経営基盤強化促進法の制定や農地中間管理機構の設置など,構造改革に向けて様々な変遷をたどっている.生源寺(2011)は高齢の農地所有者が増えることで貸し出される農地が増加し,担い手農家の経営面積拡大に好適な環境が出現すると予想している.さらに,この状況を活用し諸問題を解決するためには,職業として農業に取り組む農業者への支援,そして農地制度を利用優位という理念に沿って的確に運用し農地集積を進めることが必要であると指摘している.現在の農地政策では,貸借による規模拡大を目標とし,意欲と能力のある経営体に対する農地集積1を進めている(農林水産省,2023).このような施策が講じられた結果,担い手への農地集積は2000年の28%から2021年には58%にまで上昇している(農林水産省,2022).しかしながら,農林水産省が2023年の担い手への農地集積率の目標を80%と設定したことを踏まえると,現状の水準では依然として不十分であるといえる.

農地集積を実現する上で,貸借による流動化は重要な要素である.農林水産省(2022)によれば,担い手による農地の所有面積は,2008年以降おおむね120万haで推移しており,大きな変化はみられない.その一方で,貸借による担い手への農地集積面積は一貫して増加しており,2008年度末の63.3万haから,2021年度末には約111万haへと,約1.75倍に拡大している.このことは,農地集積の進展において,貸借による流動化が主要な手段となっていることを示唆しており,今後もその重要性は高まると考える.農地流動化の促進要因を明らかにし農地制度の改善策や問題点を示すことは,今後の農業構造の改善につながる.

農地流動化や農地集積に関しては,多くの実証研究が行われている.都道府県単位のデータを用いた研究には,高橋(2010)Ito et al.(2016)がある.高橋(2010)は,農地の特徴や集落機能が取引費用に影響し,農地貸借に関係していることを示している.Ito et al.(2016)は,農地貸借率と耕作放棄地率に負の相関があることに着目し,土地持ち非農家の存在が農地流動化と耕作放棄の両方に影響を与えていることを明らかにしている.一方で,個票データや集落単位のデータを用いた研究も複数存在する.藤栄(2016)は,個票パネルデータや集落営農パネルデータにより,認定農業者制度や法人化が農地集積にもたらしたインパクトを定量的に検討している.その結果は,農地集積に対する農業構造政策の効果が政策手段に応じて異なり,認定農業者制度が日本農業の構造改善に効果的に寄与した可能性を裏付けている.高山他(2015)では集落単位のデータにより,北海道における農地保有合理化法人設立が農地流動化の促進要因となっていることを示している.また武川(2019)では,京都府の集落を対象に,傾向スコアマッチングによって整備事業の流動化促進効果の有無を検討している.

以上のように,農地流動化や農地集積に関しては,都道府県単位から個票・集落単位まで,様々なレベルで実証分析が行われてきた.しかし,管見の限り,農地流動化について市町村を単位として分析を行った研究は存在しない.農地問題を考える上では,農地市場をいかなる集計単位で捉えるかという点が重要となる.農地流動化の計画を立てる主体となるのは農業委員会や市町村などであるため,市町村ごとの社会経済的特性が計画に反映されていると考える.したがって,農地流動化という農地市場の成果を捉える上で,市町村単位のデータを用いた分析には意義がある.

以上を踏まえ,本稿では市町村単位のデータを用いて農地流動化の実態を分析し,とりわけその促進要因として農業経営体の法人化に着目する.農業経営の法人化は長年にわたり農政上の重要課題とされており,法人経営体は農地の受け手としての役割が期待されている.こうした背景のもと,法人による農地利用に関する制度の変遷は約60年にも及び,その過程では,農地を所有できる法人の要件が緩和され,一般法人のリースによる農業参入も可能になっている(梶原,2021).図1は,借入面積率と法人化率の関係を示す散布図である.図からは,各年において両者の間に正の相関関係が確認できる.しかしながら,単純な相関分析では,両者の因果関係を適切に捉えることは困難である.特に,法人化と借入面積率には内生性の問題が存在する可能性があり,その点に考慮した実証分析を行う必要がある.

図1.

法人化率と借入面積率

資料:農林水産省(2010–2020)『2010~2020年農林業センサス』

1)北海道,東京都,沖縄県を除いた44府県を対象とする.

2)図中の線はそれぞれの年の回帰直線である.

3)2010年,2015 年,2020年の相関係数は,それぞれ0.44,0.57,0.73である.

4)借入面積率は経営耕地面積のある実農業経営体の耕地面積に対する借入している耕地面積の割合であり,法人化率は,各府県の全農業経営体に対する法人経営体数の割合である.

これらの議論を踏まえ,本稿では市町村パネルデータを用いた実証分析を通じて,農業経営の法人化が農地流動化に与える影響を明らかにすることを目的とする.内生性に対処した因果効果の推定を行うために,操作変数法の一種であるcontrol function approach(CFA)を用いて分析を行う.

本稿の構成は以下の通りである.まず第2節では分析に用いるデータと手法について説明し,第3節で推計結果を示す.最後に第4節で本稿の結論と残された課題についてまとめる.

2. データと分析手法

(1) データの概要

使用するデータは農林水産省『農林業センサス』である.分析対象は2010年,2015年,2020年の全国の市町村である.ただし農業構造が他府県と比べて特異な北海道と沖縄県,そして都市化の影響が強いと考えられる東京都は除外する.また,秘匿措置や市町村合併などにより,3時点全てのデータが揃わない地域も存在するため,これらを除外して作成したパネルデータを用いて分析を行う.

目的変数と説明変数を表1に示すように設定した.目的変数には,農地流動化を表す指標として,借入面積率を用いる.説明変数である後継者の確保率について,農地の借り入れと同時決定であると考えられるため,ラグ付き変数として対象年度の5年前に「同居後継者がいる」,あるいは「他出後継者がいる」販売農家の割合を用いる2

表1.

変数の定義

変数 変数の定義 平均 標準偏差
目的変数 借入面積率 借入している耕地面積/経営耕地のある実農業経営体の耕地面積 0.33 0.18
説明変数 法人化率 法人化している経営体数/全農業経営体数 0.02 0.02
経営耕地総面積 農業経営体が経営している総耕地面積(a)の対数値 10.71 1.45
寄り合いの開催率 寄り合いを開催している集落数/全集落数 0.93 0.12
農地保全率 農地を保全している集落数/全集落数 0.40 0.30
DIDまで30分以内の集落の割合 DIDまでの所要時間が30分以内の集落数/全集落数 0.73 0.38
稲作が販売金額1位である割合 稲作が農作物販売金額1位である経営体数/全農業経営体数 0.46 0.28
平均年齢 個人経営体の農業従事者の平均年齢 60.74 2.92
後継者の確保率 5年前に後継者がいた販売農家数/全販売農家数 0.56 0.13

(2) 分析手法

本稿の目的は,農業経営体の法人化が農地流動化に及ぼす影響を明らかにすることであるが,単純なOLSによる分析では,パラメータに以下の二つのバイアスが含まれる可能性がある.一つ目は,各市町村特有の観察できない時間不変な要因や時間にのみ依存し市町村間で共通の要因が存在していることによる欠落変数バイアスである.これに対処するために,市町村効果と時点効果を考慮した二次元固定効果モデルを用いる.二つ目は,農地流動化が進んだことによって,より多くの経営体が法人化したという逆の因果関係による内生性の問題である.この問題に対処するために,Li and Ito(2021)を参考にして,操作変数法の一種であるCFAを採用する.CFAでは,第一段階の回帰から得られる残差を計算し,それを第二段階の回帰に共変量として含める(Wooldridge, 2010).CFAは,通常の2SLSと同じ推定量を与えるが,内生変数が真に内生的であるかを検証するために,簡易なHausman検定を行うことができるという利点がある(Wooldridge, 2015).CFAの第二段階において残差の係数が有意であれば,通常のOLSには内生性が存在し,操作変数を用いることによって一致推定量が得られたことが示される.

推計モデルは,市町村iの時点tにおける法人化率をIit,借入面積率をYitとして,以下の二段階で定式化した.

  
I i t = α 0 + α 1 Z i t + α 2 Χ i t + α i + α t + ε i t (1)
  
Y i t = β 0 + β 1 I i t + β 2 Χ i t + β 3 ε i t + β i + β t + ν i t (2)

固定効果をモデルに反映させるために,市町村ダミーαiβiと年次ダミーαtβtを加える.εitνitは誤差項である.またΧitはコントロール変数で,Zitは操作変数である.この操作変数には,Li and Ito(2021)を参考に,当該市町村を除いた府県の法人化率を用いる.この操作変数は,内生変数と相関関係を持ちながら,内生変数以外に目的変数に影響を与える経路を持たないという除外制約を満たす必要がある.センサスデータの性質上,市町村間の農地の出入り(入作・出作)を考慮することはできない.しかし,農地貸借は,農地法や中間管理機構の制度設計のもとで,市町村単位で管理されている.また農林水産省(2024a)によれば,農地中間管理機構を通じた農地の転貸においては,地域内への転貸が約95%を占めている.ここでの地域とは,借受希望者の募集を行った区域を指し,基本的には市町村より狭い範囲であると想定される.すなわち人・農地プランの区域でも平均95%を達成している以上,市町村単位でみれば,その割合はさらに高くなる可能性が高い.したがって農地制度や農地貸借の実態を踏まえると,市町村外の変数が,市町村内の借入面積率に与える直接的な影響は限定的であると考えられる.そのため,操作変数と,(2)式の誤差項との相関は小さく,除外制約を満たしていると判断する.

(3) 仮説

高橋(2010)は,県単位の政府統計を用いた分析を行っている.その結果,取引費用に関連している農地の特徴や集落機能が,農地貸借に影響を与えることを明らかにしている.Ito et al.(2016)は,農地貸借率と耕作放棄地率の負の相関関係に着目し,農林業センサスの都府県パネルデータを用いてZellner推計を行っている.こうした先行研究を踏まえ,本稿の推計モデルには,法人化率に加えて,コントロール変数として,借入面積率に関連すると考えられる①集落機能を表す変数,②市町村の地域特性を表す変数,③経営体の特性を表す変数を含めている.各変数についての仮説は以下の通りである.

法人化率が高い市町村では,農地の流動化が促進されると予想する.高橋(2013)は,2010年農林業センサスの分析を通じて,農地流動化による貸借の促進要因として,家族経営の減少と組織経営体への面的集積があると推察している.また,安藤(2013)は,法人化のメリットとして,雇用条件の整備による人材の集積や多様な事業展開,事業規模・事業部門の拡大と販売力の強化を指摘している.このようなメリットをもつ法人経営体は,規模拡大を目指し,農地の受け手として機能する存在であり,結果として農地流動化を促進する要因となりうると考える.一方で,藤栄(2016)は,個票データや集落単位のデータを用いた分析を通じて,家族経営や政策対応型集落営農の法人化には農地集積効果がみられず,主体的に組織化された集落営農法人にのみ,その効果が認められることを明らかにしている.

①集落機能を表す変数としては,以下の二つの変数を含める.第一に寄り合いの開催率である.高橋(2010)は,寄り合いの開催が,農業集落のインフォーマルな制度として,農地の取引費用を低減させることを示唆している.これに従い本研究では,寄り合いの開催率は借入面積率に正で有意な影響を与えると予想する.第二に,農地保全率である.農地には外部性が存在し,農地が荒れていると病害虫を発生させて近隣農地にも害を及ぼすことがある.そのため農地流動化が進展するためには,周辺の農家との協力による適切な農地の管理が必要である.よって農地保全率は農地流動化に正の影響を持つと予想する.

次に②市町村の地域特性を表す変数として,経営耕地総面積を加える.また,DID(人口集中地区)まで30分以内の集落の割合と稲作が販売金額1位である経営体の割合を用いる.DIDからの所要時間については,所要時間が短いほど利便性の高い地域であるため担い手が集まり,農地流動化が進むと考える.そのため,DIDまで30分以内の集落の割合が高い市町村は農地流動化が進んでいると予想する.また,Ito et al.(2016)は,水田率が農地貸借率に負の影響を与えることを明らかにしている.このことから土地利用型農業が盛んな地域では基盤整備が進み集積率が高くなると考える.そのため稲作が販売金額1位である経営体の割合が高い市町村でも同様に農地流動化が促進されると予想する.

最後に③経営体の特性を表す変数に関する仮説は以下の通りである.まず農業従事者の平均年齢が高いほど農地流動化が進むと予想する.生源寺(2011)は,高齢の農地所有者が貸し手となることで農地集積が促進されると指摘している.また経営体の特性として,後継者の有無を考慮する.後継者が確保されている農業経営体では規模拡大が計画され,農地の集積が進むと考える.しかしながら,市町村内の経営体の大半が後継者を確保していた場合,農地の貸し手が少なくなる.そのため,後継者の確保率は農地流動化を抑制すると考える.

3. 分析結果と考察

2が推計結果である.操作変数法の第一段階と第二段階の推計結果をそれぞれ(Ⅰ)列と(Ⅱ)列に示す.また固定効果のみを考慮したOLS推計の結果を(Ⅲ)列に示す.CFAの第二段階で残差の係数が1%で有意であり,これは法人化率が内生変数であることを示唆している.すなわち,OLSでは適切な推計が行われていない可能性がある.そこで,以下では主としてCFAにおいて有意性が確認された説明変数について議論する.

表2.

推計結果

変数 (Ⅰ) (Ⅱ) (Ⅲ)
第1段階
法人化率
第2段階
借入面積率
OLS
係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差
法人化率 2.542*** 0.441 0.592*** 0.100
府県の法人化率 0.878*** 0.115
寄り合いの開催率 −0.005 0.005 −0.006 0.026 −0.020 0.017
農地保全率 −0.001 0.002 0.003 0.010 0.007 0.010
経営耕地総面積 0.005 0.005 0.132*** 0.023 0.144*** 0.008
DIDまで30分以内の集落の割合 0.004* 0.002 −0.009 0.014 −0.001 0.010
稲作が販売金額1位である割合 −0.012 0.009 −0.153*** 0.059 −0.181*** 0.028
平均年齢 −0.001 0.001 0.003 0.002 0.001 0.001
後継者の確保率 −0.198*** 0.075 −0.029 0.023 −0.065*** 0.019
残差 −2.040*** 0.524
サンプル数 3120 3120 3120
調整済み決定係数 0.658 0.902 0.902

1)*,***はそれぞれ10%,1%水準で有意であることを意味する.

第一段階では,各市町村の法人化率に対して府県の法人化率が1%水準で正で有意な結果となっている.このことから,府県の法人化率が,内生的な説明変数の決定要因であるという操作変数の条件を満たしているといえる.また,DIDまで30分以内の集落の割合は,経営体の法人化に10%水準で正の影響を与えていることが示された.DIDからの所要時間が短いほど販売に有利な地域であるため,事業の多角化を志向しやすく法人経営体の割合が高いことが推察される.一方で,後継者の確保率については,1%水準で負で有意な結果となった.後継者のいない経営体には,法人化により経営の持続可能性を高めるというインセンティブがある.それに伴い,5年前の個人経営体における後継者の確保率が法人化率に負の影響を与えている可能性がある.

第二段階の結果について,法人化率の係数は2.542であり,1%水準で正で有意な結果であった.一方,OLSでは,係数は0.592にとどまっており,推計モデルの構築段階で懸念していた通り,内生性によって過小推計となっていることが示唆される.また,正で有意な結果は仮説を支持しており,市町村内で法人経営体の割合が増加するほど農地流動化は促進されることを示している.前述の通り法人化した経営体は,その他の経営体と比べて人材の確保が容易であり,販売力の強化も図られている.こうした法人経営体の存在が,農地市場における流動化の促進要因として機能していることを反映した結果であると解釈できる.一方で,藤栄(2016)では,一部の経営体でのみ,法人化による農地集積効果が確認されている.このような差異は,本稿が市町村内の農地市場の成果に注目しているのに対し,同研究が個票データを用いて個々の経営体の行動に着目したものであることに起因すると考える.次に経営耕地総面積は正の係数をとっており,耕地面積の大きい市町村ほど農地流動化が進んでいることが確認できる.また稲作が販売金額1位である割合をみると,仮説とは異なり負で有意な結果となっている.水田作経営は他品目に比べて農外収入などが多く,また副業的な経営体が占める割合が高い(農林水産省,2024b).そのため,稲作が販売金額において主要品目となっている地域では,他の地域と比較して小規模農家が残存していると推察される.これにより,農地の貸し手が不足し,農地流動化が進みにくい状況にあることが,この結果から示唆される.

高山他(2015)は,農地保有合理化法人が地域内の取引費用を低減させ,農地流動化を促進する役割を果たしていることを示唆している.本稿では,寄り合いの開催率が取引費用を低減し,流動化に影響を与えると仮説を立てたが,推計結果は有意性を示していない.このことは,集落での寄り合いの開催が,市町村単位での農地取引において,取引費用の低減に寄与していない可能性を示唆している.

4. 結論

政府は,貸借による規模拡大を目標とし,意欲と能力のある経営体である担い手に対する農地集積を推進している.貸借による農地の流動化は農地集積を進める上で重要な要素であり,また,法人経営体には農地の受け手としての役割が期待されている.そこで本稿では,農業経営の法人化が農地流動化に与える影響をCFAにより検討した.

農林業センサスの市町村単位のパネルデータを用いて分析を行った結果,法人化した農業経営体の割合が多い地域では農地流動化が促進されることが明らかとなった.このことから,農地の受け手として法人が重要な役割を担っていることが示唆される.また,稲作が販売金額1位である経営体の多い市町村では流動化が進んでおらず,兼業農家の存在が農地流動化を抑制している可能性がある.

最後に残された課題であるが,本稿では農地貸借がどの法制度に基づいて行われたかを分析上区別していない.推定に際し,制度間の違いを考慮せずに借入面積を一括して扱ったが,制度ごとの区別を行うことで,より詳細な政策評価が可能になる.たとえば,リース法人による農地流動化の影響や,農地集積・集約化事業に係る交付金を交付する経営所得安定対策への加入状況を変数に加えることで,より厳密な分析を行う余地がある.

1  農地の集積とは,農地を所有し,または借り入れることなどにより,利用する農地面積を拡大することをいう(農林水産省,2024b).一方,農地流動化については,本稿では貸借による農地の権利移動と定義し,その指標として借入面積率を用いる.

2  本稿では,データの制約によりラグ付き変数の使用にとどまるが,動学的内生性や系列相関が存在する場合には,同時決定の問題を十分に解消できない可能性がある.

引用文献
 
© 2025 地域農林経済学会
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