This study investigates urban Chinese consumers’ willingness to pay (WTP) for “biodiversity-friendly labeled rice,” produced using farming methods that emphasize ecosystem conservation, such as reducing the use of pesticides and chemical fertilizers. The results reveal that the median WTP for such rice ranges from 74 to 78 Chinese yuan per 5kg—about 30% higher than the average market price of 56 yuan, indicating strong consumer interest in environmentally friendly products. In particular, consumers with biodiversity knowledge and households with children exhibited higher WTP. Additionally, the study highlights the high recognition of “integrated rice-fish farming” in China, which receives even higher WTP (87 yuan) due to its perceived economic benefits despite raising environmental concerns. By comparing these two farming methods, this research explores the potential for promoting “biodiversity-friendly labeled rice” as a sustainable alternative that balances ecological preservation and consumer demand.
中国において,1990年代以降の急速な経済成長とともに,食料増産に加えて環境保全も農政の重要な課題となるに至った.2015年2月17日,中国農業部は「到2020年化肥使用量零増長行動方案」という政策を打ち出した(中国農業部,2015).続いて,農業農村部(農業部から改称)は2022年11月16日に具体的な削減量等は明記されていないものの,「到2025年肥料減量化行動方案」を打ち出した(中国農業農村部,2022).
図1によると,中国農業における耕地1 haあたり化学肥料投入量は,改革開放政策が始まった1978年の109kg/haから30年以上ほぼ増加傾向が続いた.1998年には中国の化学肥料投入量276kg/haが同年日本の262kg/haを上回り,2012年には403kg/haと日本の投入量ピークとなる386kg/ha(1979年)を超えた.その後,農業に由来する環境汚染・健康被害への懸念が顕在化し,2015年422kg/haのピークに達した後,政策導入とともに低減に転じた.

日中農業における化学肥料投入量(kg/ha)の推移(1965–2021)
資料:FAO(2023)より作成.
急速な経済成長とともに,食の安全や環境保全に対する意識が高まりつつある中国において,環境保全型農業の振興と普及の可能性を探ることは重要である.その中で「生き物ブランド米」は環境保全型農法の一つであり,特に水田生態系の保護と生物多様性の保全に配慮した農法により生産された米を指し,農薬や化学肥料の使用を抑制し,生き物に優しい水田環境を維持することで,持続可能な農業の実現を目指している.このような取り組みは,農業による環境負荷を低減しながら,生態系の健全性を維持することが期待される.
一方で,「生き物ブランド米」の市場導入の可能性を検討するにあたり,中国の消費者がこのような環境保全型農産物をどの程度受け入れるのか,その消費・購入実態を把握することが求められる.特に,中国国内では「生き物ブランド米」という概念がまだ確立されておらず,市場化も進んでいない.
本研究では,中国の都市消費者を対象に,農業生態系を保全する「生き物ブランド米」を購入する意向を持つかどうかを明らかにすることを目的とする.具体的には消費者の生物多様性に関する知識や環境保全型農業への意識を問うと共に,「生き物ブランド米」に対する支払意思額(WTP)を推計し,市場での受容可能性を考察する.また,消費者のコメの購入実態や選好要因についても調査し,環境配慮型農産物に対する関心の実態を明らかにする.これにより,中国における環境保全型農業の振興に向けた政策立案や市場戦略の参考となる有用な情報を提供することを目指す.
「生き物ブランド米」並びにそのWTP等について多くの研究蓄積がある.合崎(2005)は茨城県水戸市居住194世帯から得たデータより生物保全米の商品価値が2,639~6,830円/10 kg程度であることを示した.堅田・田中(2008)は新潟県佐渡市トキ資料展示館訪問者267名を対象に,トキの野生復帰を目的とした減農薬・減化学肥料栽培米のWTP平均値8,093円/10 kgに対して,目的としない減農薬・減化学肥料栽培の佐渡産コシヒカリを6,032円/10 kgと推計し,差額2,061円を示した.矢部・林(2011)は兵庫県豊岡市の「コウノトリ育むお米」購入者を対象に,コウノトリ保全の取組に関する知識の有無による限界支払意思額(MWTP)の差異を示した.さらに,宮ノ下他(2019)は「朱鷺と暮らす郷づくり」認証米を対象に,アンケート回答者が概ねトキ認証米の取組に対して肯定的な意見を有していることを示した.全国のトキを対象にコンジョイント分析を用いて,トキ保全米のMWTPが約327円であることを示している.稲垣(2018)は環境保全米について保全対象が異なった場合,“トキ”に対するMWTPが1,090円,“渡り鳥”に対しては同750円となり,変化することを示した.
また種の違いによるWTPの相違について,Sehra and McMillian(2021)は特定の種をモデルにコンジョイント分析を行い,鳥類のWTPが一番高いことを示した.蒲谷(2024)は特定の鳥類,魚類,昆虫を対象にコンジョイント分析を行い,鳥類のMWTPが一番大きく,次いで魚類,昆虫類,両生類の順に低くなった.また,絶滅危惧種の保全を目的とし,無農薬・無化学肥料あるいは減農薬・減化学肥料で生産された米に対して,追加支払意志額が発生することを示した.
日本以外では,Liu et al.(2017)は選択実験により,中国の消費者が食品安全や環境への関心とエコラベル米に支払うプレミアムに正の相関があることを示した.またNguyen et al.(2021)はベトナムにおいて低所得層の消費者は安全認証米を購入する可能性が16%低いことを示した.
中国においては,現在のところ「生き物ブランド米」という明確な概念はまだ確立されておらず,市場化もなされていないと見られる.日本その他における研究成果や取り組みは,中国に「生き物ブランド米」の導入を考える上で参考になるだろう.中国都市消費者の間にエコロジカルな製品への関心が高まっており,「生き物ブランド米」を導入することは,持続可能な農業への需要に応えるだけでなく,農家にとっても新たな市場機会を創出することが期待される.「生き物ブランド米」需要が環境保全型農法の振興・普及を促進する可能性が考えられる.
日本の「生き物ブランド米」では,トキやホタルなど保全対象生物のイラスト・写真等をパッケージに印刷することで,農業生態系保全の取り組みを消費者に直接訴求している.パイロット調査として2024年1–2月に江蘇省淮安市内複数のスーパーマーケットのコメ売り場を視察したところ,「稲漁総合米」のパッケージにも生物イラストの使用事例が複数確認された.水稲作と水産養殖を合わせた「稲漁総合米」は中国国内で広く認知されており,環境配慮型農産物としてのイメージを確立している.「稲漁総合米」とその農法は経済性(生産性)に比重が置かれ,生き物ブランド米とその農法は環境・生態系保全に比重が置かれる点に留意が必要である.
2022年現在,稲漁総合農法の栽培面積は4,296万畝(286万ha)に達し,2021年から8%増を記録した.「稲蝦モデル」(稲+ザリガニ養殖)が最も広く採用され,全国同栽培面積の55%を占めた(于他,2023).
一方,稲漁総合農法の課題も指摘されている.唐他(2020)のサンプル調査によると,稲魚モデルで15%,稲蟹モデルで29%,稲蝦モデルで36%米の収量が稲単作より低下した.また,養殖密度が高くなるほど米収量減の傾向が示され,経済的利益と環境負荷のバランスが課題となる.またGuo et al.(2020)は,稲漁総合農法が土壌の有機質や窒素,リンなどの栄養素を増加させる一方,飼料の過剰投与や管理不足により,水質汚染リスクが高まる可能性を指摘した.養殖密度が適切に管理されない場合,水中の窒素やリンが蓄積し,環境負荷が増加することを示した.
本研究では,生き物ブランド米に対する消費者のWTPを推計するため,仮想評価法(CVM)を適用した.CVMは,仮想的な市場シナリオを提示し,消費者が提示された価格で商品を購入するかどうかの選択を通じてWTPを推計する方法である.
WTPの推計にあたり,本研究はランダム効用理論(RUT)に基づく二項選択形式のダブルバウンド法(DBDC)を用いた.RUTでは,消費者はある選択肢から得られる効用(Utility)を最大化するよう行動すると仮定される.しかし,実際の効用は観察できないため,観測可能な決定要因と誤差項を含む確率的効用関数として表現される.
DBDC法は,回答者に最初の価格を提示し,その支払い意向を確認した後,その回答に応じて異なる価格を再提示する手法である.これにより,支払意思額の推計精度向上ができる(表1参照).
CVM分析に供する二項選択・ダブルバウンド提示額(元/5kg)の群別一覧
| 提示額 | A群 | B群 | C群 | D群 | E群 |
|---|---|---|---|---|---|
| 最初の提示額 | 30 | 40 | 50 | 60 | 70 |
| →次の提示額if YES | 40 | 50 | 60 | 70 | 80 |
| →次の提示額if NO | 20 | 30 | 40 | 50 | 60 |
| 群別回答者数 計650 | 100 | 150 | 150 | 150 | 100 |
1)サンプル数は,栗山他(2013)を参照し,ダブルバウンドによるWTP推計に十分な650とした.
2)元は中国元を指す.
WTPの推計には,ダブルバウンドの対数線形ロジットモデルを用いた.推計に用いた説明変数は提示額の対数値である.WTP評価では平均値(裾切りなし,最大提示額で裾切り)と中央値の3つが候補となるが,受諾確率が50%となる価格を示すWTP中央値を評価に用いた.
支払意思額の推定には,CVM分析専用アプリケーションCVM4.0(栗山,2016;栗山他,2013)を用いた.
(3) 調査対象本研究では,中国江蘇省都市消費者650名を対象に,2024年9月末から10月上旬にオンラインアンケート調査をData Spring China, Inc.に委託し実施した.回答者は,性別(男性・女性)および年代(20代,30代,40代,50代,60代以上)ごとに均等抽出した(表2参照).特定の年代や性別に偏ることなく,多様な層の意見をバランスよく収集するためである.調査対象地は江蘇省都市部とした.米を主食とする食文化を持ち,経済的発展により高品質な農産物への購買力が高い特性を有するためである.
回答者の属性一覧
| 性別 | 男性:325人(50%),女性:325人(50%) |
| 年齢 | 20代:130人(20%),30代:130人(20%),40代:130人(20%),50代:130人(20%),60代以上:130人(20%) |
| 世帯人数 | 1人:26(4%),2人:115(18%),3人:299(46%),4人:150(23%),5人:29(4%),6人:24(4%),7人以上:7(1%) |
| 主食の種類 | 米:622人(96%),麺:16人(2%),その他:13人(2%) |
| コメ購入頻度 | 一か月以内:440人(68%),2,3か月以内:179人(28%),半年以内:24人(4%),一年以内:6人(1%),一年前:1人(0%) |
| コメ購入重量 | 0.5kg:21人(3%),1kg:19人(3%),2kg:61人(9%),5kg:310人(48%),10kg:153人(24%),20kg:81人(13%),その他:5人(1%) |
| 購買価格(元/5kg) | 10~30:77人(12%),31~40:97人(15%),41~50:125人(19%),51~60:131人(20%),61~70:71人(11%),71~80:63人(10%),81~100:51人(8%),101以上:35人(5%) |
1)サンプルは性別・世代別に均等抽出された.
主な調査内容は,コメの購買実態や購入時に重視すること,生物多様性に関する知識の有無や環境保全型農業に対する意識と共に,「稲漁総合農法米」および「生き物ブランド米」(トキ米,トノサマガエル米,ホタル米)に対する支払意思を尋ねた.
なお,「生物多様性に関する知識のあるグループ」の方が「知識なしグループ」より,「世帯に子供がいる子供ありグループ」の方が「子供なしグループ」より環境保全や食の安全性への意識が高く,WTPも高いという仮説の検証も行った.
本アンケート調査回答者世帯の属性のうち世帯数について,一番多いのは3人世帯で,全体の46%(299人)を占めた.次は4人世帯で23%(150人),2人世帯が18%(115人)と続く.また,高校生以下の子の人数について,いない世帯が52%(336人)で最も多く,次いで1人いる世帯が39%(252人),2人いる世帯が10%(62人)だった.3人以上の子がいる世帯はなかった.
複数回答可として米の購入先を尋ねたところ,「スーパー」508人(全体の78%)が最も多く選択された.次に「米屋」317人(49%),続いて「ネット通販」が299人(46%)だった.「農貿市場1」(245人,38%)や「Live通信2」(160人,25%),「農家」(158人,24%)の利用回答も見られた(図2a参照).

米の購入ルートと気になる点
米購入時に気になる点(2項目選択)として最も重視されているのは「鮮度」299人(46%)だった.次いで「有機栽培または減農薬栽培」(276人,42%),「価格」(267人,41%),「産地」(229人,35%),「銘柄」(227人,35%)と続いた(図2b参照).
米(ジャポニカ・インディカ)購入について,1回あたりに購入する米の重量は,全体の48%(310人)の回答者が「5kg」を選択した.次いで「10kg」24%(153人)であり,合わせて7割以上の回答者が一回に5 kg~10 kg程度の量の米を購入していた.5kg/回未満は101人(16%),15 kg以上は81人(12%)だった.
5 kgあたりの米の購入価格帯について,「51~60中国元(元)」の価格帯を選んだ回答者が全体の20%(131人)で最も多く,次いで「41~50元」19%(125人),「31~40元」15%(97人)となった.「51~60元」の価格帯は日本円換算約1,097~1,290円に相当する.日本円換算は1元=21.5円(2024年11月現在)を用いた.
(2) 生物多様性への認識「生物多様性」に対して15%(99人)は「よく知っている」,48%(312人)は「ある程度知っている」と回答し(合わせて「生物多様性についての知識がある層」:知識ありグループ),一方30%(195人)は「言葉を聞いたことがある」,7%(44人)は「全く知らない」と回答した(合わせて「生物多様性についての知識が乏しい層」:知識なしグループ).
「生物多様性や生態系を守り環境を保全するための対策」については,「大いに進めるべきだ」37%(243人)と「ある程度進めるべきだ」55%(356人)を合わせて9割以上の回答者が対策の必要を認識している.
「農薬や化学肥料を使わない方が良いという意見」について,「賛成」28%(182人)と「どちらかというと賛成」67%(437人)を合わせて賛成側が95%(619人)に達した.環境に配慮した農業の重要性が強く認識されている.総じて,本調査回答者は「生物多様性」や「環境保全」に対する高い認識と支持を示している.
(3) CVM分析結果回答者全体の各米5 kgあたりのWTP(中央値)は,「稲漁総合米」87元(1,871円),3種類の「生き物ブランド米」のうちトキ米77元(1,656円),ホタル米78元(1,677円),カエル米74元(1,591円)と推計された(表3参照).WTPは回答者の平均購入価格より30%以上高い結果となった.「稲漁総合米」WTPは3種の「生き物ブランド米」WTPを10%以上上回っている.この結果は,「稲漁総合米」ならびに稲漁総合農法に対して,回答者が「生き物ブランド米」ならびに生態系保全に配慮した環境保全型農業よりも高い購買意欲があることを示唆する.「稲漁総合米」は既に中国市場で広く流通しており,消費者の認知度が高い.稲漁総合農法は,環境保全効果が懐疑的なところがあるものの,明示的に生き物がいるという特性が消費者のより高い支払意思に反映しているとも考えられる.
WTP中央値の推計結果(元/5kg)
| 回答者数 | 稲漁総合米 | トキ米 | ホタル米 | カエル米 | 平均購入価格(アンケート集計) | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 回答者計 | 650 | 87 | 77 | 78 | 74 | 56 |
| (1,871円) | (1,656円) | (1,677円) | (1,591円) | (1,210円) | ||
| 知識ありグループ | 411 | 95 | 83 | 82 | 80 | 57 |
| 知識なしグループ | 239 | 71 | 67 | 69 | 63 | 55 |
| 子供ありグループ | 314 | 87 | 81 | 80 | 76 | 56 |
| 子供なしグループ | 336 | 85 | 73 | 74 | 71 | 56 |
1)知識ありグループ・なしグループ,子供ありグループ・なしグループそれぞれグループ別にWTPを推計した.
2)「平均購入価格」56元は,回答者に普段購入する米の重量と価格帯を尋ね,5 kgあたり加重平均値を計算した.
「生物多様性」について,「生物多様性の知識がある層(知識ありグループ)」と「生物多様性の知識が乏しい層(知識なしグループ)」に分け,それぞれのグループにおける「稲漁総合米」および3つの「生き物ブランド米」(コウノトリ米,ホタル米,カエル米)のWTP(中央値)を推計した.
「知識ありグループ」(411名)の5 kgあたりWTPは「稲漁総合米」95元(2,043円),「生き物ブランド米」のコウノトリ米83元(1,785円),ホタル米82元(1,763円),カエル米80元(1,720円)だった.「知識なしグループ」(239名)のWTPは,「稲漁総合米」71元(1,527円),コウノトリ米67元(1,441円),ホタル米69元(1,484円),カエル米63元(1,355円)だった.
生物多様性の知識が「稲漁総合米」「生き物ブレンド米」共に評価を高める効果が示唆された.
また,回答者を「高校生以下の子供あり世帯グループ(子供ありグループ)」と「子供なし世帯グループ(子供なしグループ)」に分けて,それぞれの5 kgあたりWTPを推計した.
「子供ありグループ」(314名)のWTPは,「稲漁総合米」87元(1,871円),「生き物ブランド米」のコウノトリ米81元(1,742円),ホタル米80元(1,720円),カエル米76元(1,634円)だった.一方,「子供なしグループ」(336名)のWTPは,「稲漁総合米」85元(1,828円),コウノトリ米73元(1,570円),ホタル米74元(1,591円),カエル米71元(1,527円)だった.「稲漁総合米」のWTPは両グループ間の差はわずか2元にとどまっているのに対し,「生き物ブランド米」ではトキ米,ホタル米,カエル米のいずれも6~8元程度の差が見られた.
「子供ありグループ」の消費者は,子供の健康や安全,環境保護に対する意識が高く,「生き物ブランド米」の価値を積極的に評価する傾向にあると推察される.
なお,DBDC法によるWTP推計にあたり十分なサンプル数(650)を用いたものの,統計検定は今回省かれ,WTPの比較において統計的に有意な差とは言えないことに留意を要する.
本研究では,中国江蘇省の都市消費者を対象に,「生き物ブランド米」および「稲漁総合米」に対するWTPを推計し,環境保全型農業に対する評価や需要を分析した.その結果,いずれのWTPも,回答者計のコメ平均購入価格(56元/5kg)を大きく上回った.また,アンケート調査において食品購入時に「マーク」を「とても気にする」28%,「少し気にする」54%(合わせて82%)と回答しており,多くの消費者が食品購入時に「マーク」を気にしていた(表4参照).この結果から,「生き物ブランド米」マークの導入は消費者の注目を得られる可能性が高いと考えられる.「生き物ブランド米」の中国市場への投入は,農薬削減や生物多様性保全を目指す環境保全型農業の振興・普及への寄与が期待される.
食品購入時に「マーク」を気にしますか?
| 選択肢 | 回答者数(人) | 比率 |
|---|---|---|
| 1.とても気にする | 181 | 28% |
| 2.少しは気にする | 352 | 54% |
| 3.ほとんど気にしない | 98 | 15% |
| 4.全く気にしない | 19 | 3% |
| 合計 | 650 | 100% |
本研究の限界として,本調査は回答者を性別および年代ごとに均等抽出したため,実際の人口構成と異なり,ボリュームゾーンに該当する世代のWTPが過小評価されている可能性がある点に留意が必要である.また調査対象は江蘇省都市部在住者であり,中国全体のコメ消費市場を代表するものではない.CVM分析では一般的に仮想バイアス(Hypothetical Bias)を低減するためにCheap talkを挿入することが推奨されている(Penn and Hu, 2018).本研究ではCheap talkを導入しておらず,その結果,WTP推計値が実際より高くなっている可能性がある点にも留意が必要である.
最後に,「稲漁総合米」のWTPは「生き物ブランド米」のWTPに比べて高い傾向にあった.この背景には,「稲漁総合米」の認知度の高さが大きく寄与していると考えられる.調査結果によれば,「稲漁総合米」やその生産方式である稲漁総合農法について,「良く知っている」と回答した割合は15%,「ある程度知っている」と回答した割合は48%に達しており,合わせて63%の回答者が一定以上の知識を有していることが示された(表5参照).一方,「全く知らない」回答者の割合は9%に留まった.「稲漁総合米」は養殖による収益拡大を目指しており,環境負荷の懸念が指摘されている.養殖生物の高密度飼育や過剰な飼料投与により,水質汚染を引き起こすリスクがある.高いWTPを示す稲漁総合農法については,環境負荷のない環境保全型「稲漁総合農法」の開発と普及が課題となろう.
「稲漁総合農法」の認知結果
| 選択肢 | 回答者数(人) | 比率 |
|---|---|---|
| 1.良く知っている | 100 | 15% |
| 2.ある程度知っている | 312 | 48% |
| 3.言葉を聞いたことがある程度 | 180 | 28% |
| 4.全く知らない | 58 | 9% |
| 合計 | 650 | 100% |
本稿の執筆にあたり,2名の匿名の査読者ならびに常任編集委員会の先生方から,丁寧かつ建設的なご助言とご指導を賜りました.記して感謝申し上げます.