In this study, I analyze variable cyclical fluctuations using monthly data on pork-carcass production and wholesale prices for 36 years to 2024. The pork-carcass production cycle increased from 60 months to 106 months through 1995, then remained at approximately 80 months until 2015, and has recently changed to 42 months. For wholesale pork-carcass prices, the cycle period shortened from 120 months to 85 months through 2013 and has increased to 110 months in recent years. Furthermore, the coefficient of determination for the variable cyclical fluctuations was larger than that for fixed cyclical fluctuations, demonstrating the rationality of explaining the relationship between production volume and price using variable cyclical fluctuations that reflect changes over time.
畜肉はその生産・流通の特徴から中長期の循環変動を有することが知られ,一般的に生産量と販売価格は負の相関関係にある.つまり,生産量が多くなると,販売価格が下落する.循環変動分析は古くから行われているが,統計データの完備とコンピューターの普及により,近年の研究成果が多い.1960年代から70年代には,細野(1960)は1906年から1942年までにおける鳥取県家畜市場の子牛価格(牝),全国成牛と殺頭数,全国牛肉平均卸売価格,全国耕用牛頭数などのデータを用いて,コレログラムとピリオドグラムで周期期間を解析した.その結果,成牛と殺頭数,牛肉卸売価格は分析期間において3つの山が見られたが,振幅は小さく,周期期間は曖昧であった.子牛価格と耕用牛頭数の周期期間は明確ではなかった.岸根(1969)は電子計算機を利用したピッグ・サイクルを解析し,1950年から1967年まで18年間の月別データを2期に分けて周期解析した結果,1961年12月まで豚肉卸売価格は36か月間,豚肉生産量は38か月間の周期期間であったが,1962年以後,豚肉卸売価格,豚肉生産量ともに26か月間に周期期間が短縮された.同一期間・同一品目の周期解析では,卸売価格と生産量の周期期間は一致せず,また,解析データ期間の違いによる周期期間は一定ではないことを明らかにした.頼・岸本(1977)は1965年1月から1976年9月までの東京卸売市場における牛枝肉月別卸売価格を用いて,全期間平均で96か月間,1972年以降では30か月間の周期期間を検出し,時間の推移に伴い,周期期間は変化していることを実証した.出村(1979)はスペクトル分析を用いて,1960年1月から1975年12月まで中央卸売市場の豚肉月別卸売価格の基本循環周期期間は48か月間で,肉豚の農場価格(生産者価格)は32か月間,子豚価格は32か月間,と畜頭数,枝肉生産量,豚肉供給量ともに48か月間の基本周期期間を解析し,豚肉生産段階別における周期期間の違いを明らかにした.パーソナル・コンピューターが普及した1990年代以降,畜肉周期解析の研究が盛んに行われてきた.糸原(1993)は1965年から1990年までの26年間月別データでのスペクトル分析により,豚肉市場のスペクトルピークはほぼ71か月間であることを解析した.時代の変遷に伴い,豚肉の周期期間が変調し,長い基本周期を解析するようになった.清水(1996)は豚肉の場合,輸入品との差別化が図られないため,ピッグ・サイクルはいままでに例のない大きな変調をきたしていると指摘した.近年では,万(2020)は価格変動の周期期間が社会諸要素の影響により変化することを指摘し,豚肉,子豚価格における時間の関数とする可変型循環変動を分析し,循環周期期間は徐々に変化していることを指摘した.海外では,Arthur(1960)は1925年から1959年におけるアメリカ豚肉の生産者価格を利用し,1950年から1959年までは明瞭な4年間の周期期間があることを明らかにした.Hayes and Schmitz(1987)は,多くの生産者がピッグ・サイクルに気づき,逆の行動をとれば,ピッグ・サイクルの周期期間が増長すると指摘した.
いままでの研究成果から指摘されたように,畜肉の周期変動は固定されたものではなく,分析に用いるデータの制限により,その期間の生産技術・社会経済などを反映した循環周期期間を解析するものの,時間の推移に伴う技術進歩・消費者嗜好の変化などを背景に,解析する循環周期期間は違ってくることが考えられる.また,同一品目の生産量と販売価格それぞれの循環変動の周期期間は必ずしも一致しなく,単純的な比較説明は難しい.従って,時間の推移に伴う循環周期期間を連続的に分析することが要求される.可変型循環変動の分析方法として,万・笠原(1998)は三角関数によって作成した周期,振幅が変化する16の組合せ系列(真の変動)からそれぞれ固定型循環変動,可変型循環変動を分析し,可変型循環変動と真の変動との偏差が固定型循環変動のそれより小さいことを指摘した.また,現実の経済系列として,鳥取市鶏卵小売価格の可変型循環変動を分析し,その実用性を実証した.1990年代末期から現在まで四半世紀が経過し,社会・経済環境は大きく変化しており,知見を更新する必要がある.そこで,本研究では日本全国の豚肉データを用い,豚枝肉の生産量と卸売価格の可変型循環変動の周期期間を解析し,中長期的な視点からその関連性を分析する.
本研究は2024年までの36年間の豚枝肉月別生産量と中央卸売市場月別平均卸売価格を用いる.卸売価格は日本銀行が公表する2020年基準の企業物価指数(旧卸売物価指数)の農林水産物総合指数で実質価格を求める.時系列データの季節調整はセンサス局法によって行う1.
(1)定常変動季節調整済み系列TCItの回帰分析により,3次までの回帰値を算出し2,(1)式による標準誤差Seが最小の回帰値を傾向変動Ttにした.また,(2)式により季節調整済み系列TCItの傾向変動Ttを除去した定常変動Ytを求めた.
| (1) |
(TCItは季節調整済み系列,Ttはそれぞれ1次,2次,3次回帰値,Nはデータ総数,nは自由度,tは時間である)
| (2) |
(Ttは(1)式の標準誤差Seが最小の回帰値である)
循環変動を分析する際に,トレンドのない定常変動が必要である.ここでは定常変動の定常性を検討するため,定常変動Ytに対してADF(Augmented Dickey-Fuller)検定,PP(Phillips-Perron)検定による単位根検定を行った.ADF検定には赤池情報量基準(Akaike Information Criterion: AIC)を用いた.単位根検定の結果を表1にまとめた.いずれも1%において単位根ありの帰無仮説が棄却された.
定常変動系列の単位根検定
| ADF検定 | PP検定 | |||
|---|---|---|---|---|
| 統計量 | p値 | 統計量 | p値 | |
| 豚枝肉生産量 | −4.56** | 0.0002 | −3.97** | 0.0017 |
| 豚枝肉卸売価格 | −5.09** | 0.0000 | −3.95** | 0.0019 |
1)帰無仮説H0:単位根あり.
2)統計量後ろの**は1%における帰無仮説H0が棄却されたことを意味する.
定常変動Ytの自己相関係数rτを(3)式で算出し,F検定により基本周期pを求めた.その結果,豚枝肉生産量は46か月間,豚枝肉卸売価格は38か月間の基本周期を検出した.また,調和解析のF検定の1%有意水準で有意な調和項を検出し,(4)式のフーリエ級数により循環変動Ctを求めた.
| (3) |
(τはタイム・ラグである)
| (4) |
(A0は位相角,Aj,Bjは有意な調和項の振幅,mは有意な調和項の数,pは周期である)
豚枝肉生産量の循環変動
豚枝肉卸売価格の循環変動
循環変動の数式から,ともにcos,sinの単振動で構成されるが,豚枝肉生産量の基本周期は46か月間であり,豚枝肉卸売価格の基本周期期間は38か月間で,同じ長さではない.固定型循環変動で全分析期間を通した比較の場合,生産量と卸売価格との反比例関係は維持できない.
一般的に言えば,豚枝肉生産量と豚枝肉卸売価格は反比例関係にあり,生産量が多くなると,卸売価格は下落する.しかし,固定型循環変動の場合,豚枝肉生産量と豚枝肉卸売価格の循環周期期間は一致しないため,長期的に見れば,生産量と卸売価格は比例関係になる区間がある.これは中長期から見れば,循環変動は社会の経済状況,消費者嗜好の変化などの経済要素の影響を受け,循環周期期間は必ずしも一定ではなく,変化していることの表れである.そこで,一定期間を計算区間とし,1か月ずつ移動しながら循環変動の周期期間を解析し,現実の経済変動は連続して徐々に変化することを示すために,その平均値をもって可変型循環変動の周期期間とする.ただし,循環変動の周期解析では,基本周期は最低でも2回以上重ならないと周期解析はできなく,数回重なると周期解析の精度が上がる.また,解析データ区間によって周期期間が増長したり,短縮したりして,必ずしも全期間を通した固定型循環変動で検出した周期期間ではない.
可変型循環変動の分析において,計算区間は長ければ長いほど,移動回数は少なくなり,循環変動の可変性が失われる.極端な場合,計算区間は全解析期間と同じ長さにすれば,1つの周期しか解析できなく,固定型循環変動となる.本研究では,全解析期間の36年間を通して,豚枝肉生産量の基本周期は46か月間,豚枝肉卸売価格は38か月間であったため,この値を参考しながら定常変動の10年間(120か月間),15年間(180か月間)のそれぞれを計算区間にして試したところ,計算区間の長さが足りない原因で周期解析はできない計算区間が多く,全期間としての可変型循環変動の分析はできなかった.定常変動の20年間(240か月間)を計算区間にし,1か月ずつ移動しながら循環周期を解析し,計算区間の周期,振幅の平均値を算出して可変型循環変動が分析できた.図1では分析した豚枝肉生産量と豚枝肉卸売価格の可変型循環変動を示し,全期間を通しておおむね生産量と卸売価格は反比例関係にあり,結果は良好である.

可変型循環変動
図2では,算出した可変型循環変動の周期期間の平均値とその回帰値を示している.豚枝肉生産量の場合,1995年にかけて循環周期期間は60か月間から106か月間まで増長し,その後2015年までほぼ80か月間であり,近年では42か月間に変化してきた.豚枝肉卸売価格の場合,循環周期期間は120か月間から2013年の85か月間まで短縮し,近年では110か月間まで増長した.回帰方程式は以下のとおりである.

可変循環の周期期間
豚枝肉生産量
豚枝肉卸売価格
| (5) |
(
図3では,豚枝肉卸売価格の定常変動,固定型循環変動,可変型循環変動を示している.可変型循環変動は固定型循環変動より,定常変動との誤差が小さいことを見て取れる.また,固定型循環変動,可変型循環変動それぞれと定常変動との決定係数R2を(5)式により算出した.豚枝肉生産量の場合,固定型循環変動と定常変動のR2=0.1772であり,可変型循環変動と定常変動のR2=0.5235である.豚枝肉卸売価格の場合,固定型循環変動と定常変動のR2=0.2251であることに対し,可変型循環変動と定常変動のR2=0.7551である.いずれも可変型循環変動と定常変動との決定係数が大きく,可変型循環変動は固定型循環変動より現実に近いことが示唆されている.

豚枝肉卸売価格の定常変動,固定・可変型循環変動
畜肉の循環変動はクモの巣理論で解釈できる.生産物の販売価格は市場によって決定され,生産者は販売価格に対して無力であるが,生産量は生産者が決定でき,当初に決定した生産量は生産完了まで変更できない.上記のような条件で競争市場において,今期の市場価格によって生産量を増大・減少させ,次期に供給量の増加・減少によって市場価格が低落・上昇する.この市場価格に伴う生産量の調整はさらに次期の供給量,市場価格の変化が引き起こされ,連続して供給曲線と需要曲線の交点となる均衡点の周りを幾度も繰り返し,時間とともに均衡点に近づく収斂変動,均衡点から離れる発散変動から,畜肉の循環変動が形成される.クモの巣理論では,市場価格を反映した生産量の調整は,一定のタイム・ラグを経て変更した生産量は現実となり,市場価格は新たな生産量のもとで変化することを説明している.
豚肉の周期変動はクモの巣理論で説明すると,市場価格を見て生産者は生産量を調整し,めす豚に種付けして妊娠させ,妊娠期間は4か月,離乳は1か月前後,肥育は4から6か月となり,1周期は1年半から2年間である.しかし,多くの研究では豚肉の循環周期期間は2年間(24か月間)より長い.これは生産量調整の意思決定など,他のタイム・ラグによって周期期間が引き伸ばされた.めす豚種付きの意思決定は半年から1年間がかかると指摘されている(岸根,1969;出村,1979).また,豚肉の生産は繁殖・肥育の一貫生産農家が多く,市場価格によって繁殖用のめす豚から用意することとなれば,そのタイム・ラグは8か月間から1年間である(岸根,1969;清水,1996).これらのことによって,解析した豚肉の循環周期期間は2年間より長い.
本研究の分析期間である1989年から2024年まで,豚肉の生産面においては,規模の経済性原理で1戸当たりの平均飼養頭数が1989年の236.4頭から2024年の2,810.9頭まで約12倍拡大してきた.飼養戸数は1989年の5万200戸から2024年の3,130戸まで減少した.また,繁殖・肥育一貫生産の農家比率が低下し,子取り用のめす豚のいる戸数の比率は1989年の87.8%から2024年の76.3%まで1割以上減少した3.一方,消費面においては,豚肉消費量は増加してきたが,長期的な経済停滞による消費者の低価格志向,輸入豚肉と国産豚肉の品質差が小さいこともあり,国産豚肉の消費量が1996年からほぼ横ばいで推移し,輸入豚肉の消費量が増大してきた(図4).現実経済における豚肉の循環変動は豚肉自身の生産・消費面などの変化はもちろんのこと,代替材,補完財など外部経済事情による影響も考えられる.これらの経済事情は同時かつ連続的に起こっており,周期・振幅に対する直接影響,または経済事情間の相殺効果・相乗効果などが複雑に絡み,現実の可変型循環変動として現れた.可変型循環変動と固定型循環変動を比較した場合,可変型循環変動と定常変動との決定係数は固定型循環変動のそれよりも値が大きく,可変型循環変動はより現実に近いことが考えられる.

豚肉の国内生産量と輸入量
1)輸入量は財務省「貿易統計」による.くず肉を含む.
2)国産豚肉,輸入豚肉ともに部分肉ベースである.
1971年10月から差額関税制度の導入により豚肉は輸入自由化となった.本研究の分析期間において,図4に示すように,1989年の輸入合計数量は34.5万トン(部分肉ベース.以下同様)であり,国内供給量の2割前後を占めていたが,その後,輸入数量は徐々に増加してきた.WTO体制下における自由貿易が推進され,TPP,EPA/FTAなどの貿易協定の締結で,関税の削減,輸入数量の拡大などもあり,2024年の輸入合計数量は97.6万トンで,1989年の2.8倍となり,国内供給量に占める輸入豚肉の割合は5割前後となった.輸入豚肉は国産豚肉の周期形成への影響は排除できない.ただし,国産豚肉と輸入豚肉は肉質からの差別化は難しく(清水,1996),価格差は牛肉に比べて小さい.また,豚肉は多数国から輸入していることから,複数国の生産状況は同様ではなく,説明が難しい.
本研究では1989年から2024年までの36年間月別データを用いて,豚枝肉生産量と豚枝肉卸売価格の中長期関連性を循環変動の視点から分析した.その結果,全期間データでの固定型循環変動の場合,豚枝肉生産量の基本周期期間を46か月間,豚枝肉卸売価格の基本周期期間を38か月間検出した.生産量と卸売価格との周期期間のずれにより,36年間を通した全期間の固定型循環変動で比較した場合,生産量と卸売価格は必ずしも反比例関係ではない期間が存在する.20年間を計算区間として1か月ずつ移動しながら分析した可変型循環変動の場合,豚枝肉生産量の周期期間は42か月間から106か月間の間で変化していることに対し,豚枝肉卸売価格の周期期間は85か月間から120か月間の間で変化している.全期間を通した豚枝肉生産量と豚枝肉卸売価格の可変型循環変動はおおむね反比例関係にある.分析結果から以下のことが考察できる.①分析時に用いるデータの制限により,分析期間が違うと解析した周期期間は必ずしも固定したものではない.②36年間の全期間データでは,サブ周期が周期解析の過程において数回も重なり,より強い周期期間が形成される.固定型循環変動の場合,基本周期期間は分析全期間のサブ周期期間の影響をうけて短くなったことが考えられる.③定常変動と循環変動の決定係数R2を算出して比較した結果,可変型循環変動のR2は固定型循環変動のR2より値が大きく,時代の変遷を反映した可変型循環変動を用いた生産量と卸売価格の関係を説明することは合理性が高い.
社会経済状況,農家の生産環境,消費者嗜好などは時代とともに変化しつつあり,今後ではデータの延長に伴い,数年間に一度継時的に分析する必要があると考えられる.