秋田県総合食品研究センター報告
Online ISSN : 2760-2605
Print ISSN : 2185-6699
あめこうじ甘酒に含まれる機能性成分と製造条件の違いが甘酒品質に与える影響
上原 健二松井 ふゆみ杉本 勇人
著者情報
研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2025 年 2025 巻 25 号 p. 1-12

詳細
抄録
 2015 年からの発酵食品ブームにより甘酒市場は急拡大し、現在では飲料市場において 1 カテゴリーとして定着している。このような背景の中、 当センターでも麹に着目した麹菌研究をスタートさせ、「色が白く、味がすっきり、甘い」という従来の麹では得られなかった特徴を持つ秋田オリジナル麹「あめこうじ」を開発し、甘酒市場における県産麹甘酒の差別化に貢献してきた。一方で、日本全国に 1,000 以上あるとも言われる甘酒との差別化を図るには、 県産甘酒の更なる特徴・アピールポイントの明確化が必要であると考えられる。それに加え、県内外に関わらず多くの消費者にリピートしてもらえるよう、 高品質な甘酒の安定的な製造を可能にすることが重要であると考えられる。  そこで本研究では、 特徴の明確化を目的にあめこうじ甘酒に含まれる機能性成分に着目し検討を行った。その結果、あめこうじ甘酒には通常の麹甘酒に比べて約 1.8 倍のエルゴチオネインが含まれていることを明らかにした。また、安定的に高品質な甘酒を製造するためのポイントを探るべく、麹の種類、配合、糖化温度、殺菌・冷蔵保存が甘酒品質に与える影響を検討した。その結果、甘酒明度が低下するため 50℃糖化は避けたほうがよいこと、 甘酒の甘味に関わるグルコースや旨味などに関わるアミノ酸度は冷蔵保存による影響はほぼないこと、 酸度は製造条件により変動し、酸味が変化する可能性があることを明らかにした。 味以外の甘酒品質低下に最も影響するのは、チロシナーゼ活性以外の要因で起こる冷蔵中の着色であり、「色の変化」を適切に追うことが甘酒品質を維持する上で重要であると考えられた。  さらに、 本研究で見出されたエルゴチオネインを甘酒中に安定的に含有させる方法を検討した。その結果、 糖化温度 55℃で最も高い含有量となり、殺菌工程の影響はなかったものの、冷蔵保存により低下することを明らかにした。このことから、エルゴチオネインを甘酒中に安定的に含有させるには、糖化温度 55℃で初発の含有量を高めたうえで、冷蔵保存による低下を考慮すればよいことが明らかとなった。
著者関連情報
© 2025 秋田県総合食品研究センター
次の記事
feedback
Top