農村計画学会誌
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特集論文
Executive Plan of Rural Landscape Conservation Direct Payment in Republic of Korea
Dae-Ho UMUhn-Soon GIMKyung-soo HAN
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2006 年 25 巻 3 号 p. 183-191

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抄録
本稿は2004年より韓国で行われている農村景観保全に対する直接支払い制度を取り上げ,諸外国における政策との比較分析,支払基準の分類を通して,その実効性について一定の結論を与えるものである。韓国における農村景観保全への直接支払い制度は農村コミュニティーの再生,農家所得の改善等を目的として,3年計画の一環として実施されている。この制度では,耕作放棄地などに農村景観を形成するための作物を作付けした農家に対して代価を支払う。それにより,農村住民の所得はもちろん,ルーラル・ツーリズムなどの促進を通した農村の再生にも貢献することを目指して実施されている。通常の作物の代わりに,景観形成作物を作付けすることで発生する農家利潤の損失分が補助金として支払われ,農村全体の景観が保全されて始めて意味を持つものであるため,農家に十分なインセンティブを与えるような支払が必要といえる。比較の対象としては,日本,イギリス,フランスについて,それぞれ関連する政策を取り上げた。これら諸外国においては,景観・環境保全の政策や直接支払いは存在するものの,景観保全のみでの直接支払い制度は存在しなかった。これらの政策はそれぞれの国の経済条件に沿って,国民の同意のもとで,実施されなければならず,韓国の農村景観保全に対する直接支払い制度は,韓国の文化や経済環境に適した独自政策の政策と評価できる。支払基準としては比較対照の設定が問題となる。2005年現在では1 haあたり1 700,000ウォンの補助金が支払われている。結論として,このような制度の実施においてはその政策評価および補助水準の決定が重要になる。韓国ではCVMの適用などにより,国民の合意について調査する研究事例もあり,政策施行の手助けとなっている。また,この景観保全直接支払い制度は農家の所得やルーラル・ツーリズムの促進の他にも,様々な形で地域経済,地域住民に恩恵を与えており,農村地域の再生に大きく貢献している政策と評価できる。
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© 2006 THE ASSOCIATION OF RURAL PLANNING
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