抄録
住民主体のむらづくりにおいて、伝統的な集落活動を担ってきた集落内諸集団は、その活動基盤として重要視されている1) 。しかし・従来の集落内諸集団は、年齢や性別などの加入条件が定められ、また集落活動の内容が形骸化しつつある。このため、創意工夫が求められる住民主体のむらづくりを実践していくには限界があり、新たな仕組みづくりが必要とされている2) 3) 。
既往の研究からは、既存の集落内諸集団を包含した組織が出来たことにより、住民参加型の地域づくり事業が尻すぼみにならずに継続されたこと9) や、むらづくりにおいて新規組織と既存の集落内諸集団とが連動したことで地区が動き出したということ5) が報告されている。しかし、集落内諸集団は地域により異なるため、今後、新たな仕組みづくりを検討するためには、既存の集落内諸集団の特徴を明らかにし、新規組織と既存の集落内諸集団の具体的な役割の違いや関係を解明する必要があると思われるが、そうした研究は少ない。
筆者らは、住民主体のむらづくりに取り組んでいる滋賀県甲良町北落集落を対象地とし、集落活動の運営実態と伝統的な集落活動の継続のされ方を組織面から明らかにした6) 。そこで本研究では、同集落における「むらづくり委員会 (新規組織) 」の組織体制と運営実態、同委員会と「既存の集落内諸集団」のそれぞれの役割、およびこれら集団間の関係を明らかにすることにより、既存の集落内諸集団の潜在的能力がいかに発揮されているかを解明する。