抄録
筆者らは、これまで、市町村総合計画の策定過程における住民参加の実態について、岩手県内の農村部町村の事例分析を行い、いかなる条件を有する市町村にどのような住民参加システムが望ましいかを解明することを目的に、住民参加のシステムとして、「事務局参加型」、「審議会充実型」、「住民意見聴取型」の3類型化を試み、現状と課題を明らかにしてきた。また、それらの検証のため、東北地方399市町村を対象としたアンケート調査を行い、類型分けの妥当性やそれぞれにおける課題等について考察を進めてきた注1。
これまでの研究の中で、検討案の作成段階に住民が関わることから、「事務局参加型」が最も住民意向をダイレクトに反映することができるシステムであると考えてきた。ただし、「事務局参加型」では、計画素案までを住民参加型で作成しても、それが審議会で審議される際に、または庁内での検討時に、修正される可能性があり、その場合の調整作業が課題であることを明らかにした。そのため、これらの課題をクリアしている事例を調べる必要があり、町村部のもっとも進んだ事例を調査することが望ましいが、現状では適切な事例が見あたらず、以下の理由から、都市部の三鷹市を調査・分析の対象に選んだ。三鷹市の場合は、審議会を廃止しその機能を市民による検討組織に持たせること、また庁内での検討結果を説明するなどのフィードバックを行うことで、課題に対応している。また、三鷹市においては、'70年代より、住民参加の取り組みが行われ、その経験が蓄積されてきており、その中に、他の自治体で住民参加を進める際の参考となるものが見いだせる注2) 。
さらに、同じ「事務局参加型」に分類されるシステムを採用している場合でも、個々の状況を比較すると、参加の技術、かける手間の面でも差があり、三鷹市の先駆性が際だっている。そこで、本稿では、三鷹市の総合計画策定における住民参加システムに注目し、3つの類型分けの観点から、実態を分析することを通し、町村部でこのような住民参加システムを適用する場合に必要な諸条件について、また、町村部にはそのまま適用することができない三鷹市固有及び都市特有の条件についてe有効な知見を得ることを目的としている。